「ギル!!また東の食糧庫がやられてる!」 息を荒げ、どたどたと慌てた様子で牛獣人は庫番の虎獣人に叫んだ。 ギルと呼ばれた虎獣人は作業を止め牛獣人を振り返る。 普段冷静な顔をしている牛獣人の彼の青ざめた顔をみて、事態は深刻であると理解した。 「またか…何だってんだ、一体…」 ギルは頭を抱えた。 先日の大嵐の影響で食糧庫が壊滅してしまい、地面も泥濘(ぬかるみ)になってしまった為、 新たに村の東にある洞窟近くに食糧庫を建てた。 洞窟は儀式の用途として使っていた場所だが、 先日の嵐で地下水に影響が出てしまい半分ほどが浸水してしまった。 儀式の祭壇は南の山に新たに作られる予定だったが、 村人はここしばらくの食糧庫の件を「神の怒りに触れたのだ」と恐れる様になっていた。 「…? ダン、それは?」 ギルは牛獣人、ダンが何やら布袋を手にしている事に気付いた。 生ものだろうか…袋からなにやら水分がにじみ出ていて、 どこか嗅いだことのある様な生臭いがする。 「見てくれ、こんなの見た事が無い」 袋を覗くと透明のゼリー状の塊があった。 「なんなんだ、コレは…」 「これが食糧庫の扉付近にあって、何か引きずったような跡が洞窟へ続いていたんだ」 「洞窟……」 ギルは考え込む。 「ダン、ディンを呼んで来てくれ。3人で洞窟を調査する。 先日の大嵐で洞窟によくないモノが流れてきたかもしれない」 ダンは目を見開いてぶるっと震えた。 牛獣人でギルよりも大柄な身体をしているが、怪物を相手とすると震えあがってしまう性分だ。 「お、おお、俺もか?」 「3人いた方が心強い。それに、お前の臆病さは用心にもなる。 頼む、一緒に来てくれ」 ギルに真剣なまなざしを向けられると、ダンはぎゅうっと目をつむって一瞬考えた後、 「分かった!」 と強く頷いて応えた。 「嵐の後に来てみると、不気味なもんだな」 犬獣人のディンは槍を手に周囲を警戒しながら言う。 洞窟の奥の方から水が静かに流れる音がかすかに聞こえてくる。 ギルは先頭で灯りをもって足元を照らす。 その後ろからナイフと灯りを持ったダン、ディンが続く。 一行は洞窟内を5分ほど進んだ場所に来ていた。 地下へ向かってうねり伸びた道のりを進んだため、入口の光も届かず闇が広がっていた。 「ダン、お前さっきから震えてるけど大丈夫か?オレ様が抱いてやろうか?」 ディンがにやりと笑う。 「帰ったら抱いてくれぇ…本当に、無理なんだ、早く原因を見つけて帰ろう…」 「……しっ」 ギルが止まって後ろに続く2人にも静止の指示を出す。 ディンが耳を澄ます……、洞窟の奥からずるりと、なにか重いモノを引きずる様な音がする。 「なんだ…?生き物…?でかいぞ」 「向こうも気付いてるかもしれない、ゆっくり近づこう」 3人は息を殺してゆっくりを音の方、奥へ奥へと進んでいく。 異変に気付いたのはダンだった。 「おい……なんか、壁が変じゃないか…?」 ダンが照らす壁のほうに、ギルも灯りを向ける。 壁が、脈打っているように見えた。 それは目の錯覚かに思えたが、ディンが血相を変えて呟いた。 「……ワナだ……」 ドクン。 洞窟の壁が脈打つ。 まるで心臓の様な低い鼓動が響き渡り、何百もの触手が3人を目掛けて伸びる。 「くそっ、逃げろ!!」 ギルが叫び、ダンの手を引き駆け出す。 ディンも2人を追いながら近づく触手に向かって槍を振るう。 だが、ディンが振るった槍に触手が絡みつき、するするとディンの手、腕に絡まる。 「あぁあぁぁッ!? 離せ!」 振りほどこうと抵抗するが物凄い力であっという間に四肢を締め付けられる。 「ディン!!」 後方のディンの異変に気付いたダンが振り向く、その刹那、ダンの首に触手が絡まった。 「ガッハァッ…?!」 触手は力強くダンを壁の方、太い触手がとぐろを巻く場所に引き寄せる。 首を絞めつけられ、正気でなくなったダンはギルの手を強く握ったままだった。 ダンと一緒になってギルも触手に引き寄せられてしまう。 「ダン?!」 気付けばギルも触手の餌食になっていた。 そして、こうなっちゃいました。という感じです。 完成までめっちゃ時間が掛かっちゃいました…!イメージ的には部族が触手に襲われて~という。 触手難しいし、作業量がとんでもない事になってましたが、楽しかったです。 でもしばらくは描きたくないかな…。