ふとした拍子だった。
背を向けて着替えようとした瞬間――
彼の手が私の手首を取って、身体がふわりと浮いたかと思うと……。
「……きゃっ!」
気づけば、私はベッドの上に押し倒されていた。
仰向けになった私の上に覆いかぶさるように、彼が覗き込んでくる。
部屋には、少しだけ開いた窓から、風の音。
それ以外は、私の鼓動がうるさいくらいに響いていた。
「な、なによ……っ、急に……!」
頬が熱い。目をそらせばよかったのに、なぜか、彼の瞳から目が離せなかった。
(近い……。なんで、こんなに近くに……)
彼の手が私の髪に触れる。
優しくて、でも無防備すぎる仕草に――息が詰まりそうになる。
「……バカ。ちょっと押し倒されたくらいで、ドキドキするわけ……」
(……ある、じゃない)
顔を隠すみたいに、腕を目元に添える。
視界が少し曇って、彼の顔がうまく見えない。
でも、ほんの少し、心の奥が揺れていた。
「……そんな顔で見られたら、怒れなくなるでしょ……」
声が震えるのを悟られたくなくて、そっぽを向いた。
本当は――ずっと、こういう風に触れてほしいって、どこかで思ってたのかもしれない。