平素は格別のご厚誼を賜り厚く御礼申し上げます。
夜勤明け、家への帰り道、穏やかな春の日差し。
晴天なれど風つよし。
桜並木には桜の花びらが舞い散っていた。
そんな中、ひとりの少女が風の中たたずんで桜を眺めていた。
こちらと目が合う。
桜と同じくピンク色の服に身を包み、桜がよく似合っていた。
次の瞬間、大きく風が吹いた。
ふわり。
舞い上がるスカート。
ちらりとのぞく桜色のなにか。
さっとスカートを押さえる少女。
あぁ・・・と思わず残念そうなうめき声をあげてしまう。
少女はにやにやと不敵な笑みを浮かべ、声を掛けてきた。
「見ちゃったからには・・・ね?」
指を5本指し示す。渋沢さん5人・・・か。
財布を取り出した、その瞬間。
突如荒れ狂うつむじ風。
またしても巻き上げられるスカート、そしてさらにセーターまで・・・!
桜吹雪の中、見えそうで見えない景色を焼き付けようと、眼球が飛び出さんばかりの勢いで極限まで目を見開き――
「ああああああ!!! 目が!! 目がああああ!!!」
舞い上がった砂埃が大量に目に入り、両手で目を押さえムスカみたいな悲鳴を上げる。
地面に落ちる財布。
もだえ苦しむ自分を尻目に、財布の中身をごっそり抜き出し、走り去る少女。
涙を流しながらなんとか目を開くと、そこにはすっかり軽くなった財布だけが落ちていた。
あの景色の続きを夢で見られるだろうか――。
軽くなった財布と同じくらい軽い足取りで、家に向かい桜並木を歩くのだった。
それではまたお会いできる日までごきげんよう。
So
2025-03-18 14:22:41 +0000 UTC猫男爵@最新単行本10月予定
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