SakeTami
錫(あおがね)
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Special 5th イラスト連動SS

青い髪をした少女:メルクは川で一人行水をしていた。 冷たい川の水を浴びた彼女の身体は、太陽の光で煌めいていた。 銀色の髪飾りもそれに合わせてキラキラと光らせる。 今日はとにかく暑い。 セミの鳴き声がけたたましく響き渡り、強い日差しがメルクのいる森と川を照らす。 上流から流れてきた川の水は、熱されたメルクの身体を冷やすには十分な冷たさだった。 全身を冷やすために、メルクは川の水を豪快に浴びたり、潜水したりして涼をとっていた。 ふと、メルクは上流の方に目線を向けた。 上流から一本の棒切れが流れてくる。 すかさずメルクはその棒切れを手にとり、それを調べた。 川の水で冷やされたからか、ひんやりしている。 金色とも銅色とも言えるような色合いの金属で出来ている。 ずっしりと重く、片手で持っていたら疲れてしまいそうなほどである。 蛇のような装飾と、赤く輝く珠がついており、どこか不思議な感じがする。 よくよく見ると、これは棒切れというよりは杖である。 おそらくこのあたりの土産屋で売られている、ちょっと高価なお土産なのだろう。 メルクは面白半分にその杖を用いていろんなポーズを取ったりした。 カンフーっぽいポーズに、魔法のホウキにまたがるようなポーズ、 両手で持って構えてみたりと、いろんなポーズをした。 調子に乗ったメルクは杖を天に掲げ、何か叫んだ。 「メタリゼーショーーーン!!」 「・・・やっぱりダメなんだね。  これで変身出来たり魔法が使えたりしたら嬉しいけど、出来ないよね。」 すると杖が震えだし、強い閃光が放たれた。 「えっ、すごい。声に反応して光るんだ!」 ちょっと興奮するメルクだったが、閃光がメルクの身体を包み込んですぐに、閃光は止んでしまった。 「おもしろーい。これ、貰っていこうかな。」 するとメルクの身体に異変が起きた。 「あれ?なんか、手が冷たくてスベスベする・・・。」 杖を持っていた右腕が冷たく感じ、そしてスベスベ・・・いや、 ツルツルしていて、硬くなっていた。 不審に思ったメルクは、自分の右腕を確かめる。 「・・・えっ!身体が鉄になってる!!」 メルクの右腕はまさに金属のそれと同じような見た目と質感に変化していたのだ。 銀色に染まり、叩くと金属特有の響く音が聞こえてくる。 そう、この杖は本物の魔法の杖だったのだ。 しかし、メルクの身に起きている事態を考えると、この杖は呪いの杖ともいえようか。 「ええ・・・どうしよう、身体がどんどん銀色になっていく・・・。」 さっきまでは右腕だけが銀色に染まっていたのだが、銀色の侵食は進んでおり、 メルクの右胸を銀に染めていたのだ。 柔らかく、ぬくもりのあった肌色の胸も、今となっては硬くて冷たい銀色の胸になってしまった。 銀色の侵食は衰えるところを知らず、メルクの身体をじわじわと染めていった。 「いやだ・・・わたし・・・まだ死にたくない・・・こんなところで、銀色の像になりたくない!」 しかし、無慈悲にも侵食は一向に止まず、ふっくらと柔らかかった腹部はカチンカチンでツルツルに固まってしまった。 「どうしよう・・・元に戻さないと・・・」 銀の侵食はメルクの顔に差し掛かる。 侵食を止めようと、侵食してる部分をもんだりせき止めたりしてみたが、治まらない。 ・・・しかし、そこでメルクはあることに気づく。 「・・・あれ?腕が銀色なのに動くよ・・・?」 そう、銀色に染まり、金属の塊と化したはずの両腕がいつも通り動くのだ。 メルクは思い切って銀色になった腰を回したり、腕を振り回してみた。 銀色のお腹も少しつまんでみた。 冷たくなった頬も触ってみた。 ・・・普通だ。 普通に動くのだ。 銀色で少し硬くなり、冷たくて、ツルツルしていることを除けば、 今まで通りに動くのだ。 そして気が付くと、真夏の暑さを全く感じなくなり、程よい冷たさが全身を支配していた。 日差しで熱されたメルクの身体は、金属化した身体のお陰で冷たくなっていた。 完全に銀色に染まってないメルクは、調子に乗って再び杖を掲げ、叫んだ。 「メタリゼーショーーーーン!!」 カチンッ メルクの脳裏になにかが響く。 身体のすべてが金属と化したことを告げる音だ。 メルクの身体はすべてが銀色に染まっていた。 柔らかでほんのり熱を感じられる肌色の肌も、鋭い冷たさと不思議な硬さを持つ銀色の肌になり、 涼しげな青色をしていた髪も、無機質な銀の糸に変わり、 エメラルドのように輝く緑色の瞳も、冷たく鋭い目線を放つ銀色の瞳に変貌していた。 彼女を構成する何もかもが、人間の特徴を失っていた。 そこにあるのは、すべてを銀色の金属へと身を変えた、メルクの姿であった。 川に映る自身の姿をみたメルクは、なんだか少し嬉しそうだった。 「綺麗・・・身体がキラキラしてる・・・身体中冷たくて気持ちいい・・・」 もはや彼女の脳裏には、自分が人間であることではなく、 銀色の身体を享受することしか考えてない。 彫刻のようになった自分の体に惚れてしまったメルクは、何故かその場で立ち尽くし、 まるで本当に彫刻になろうとしたりと、とにかく今の体験を享受しようとしている。 すると杖から声が聞こえてきた。 「オマエハ エラバレタ。」 「え?」 メルクは声がした杖を軽くにらんだ。 「オマエハ マオウヲ タオス ユウシャニ エラバレタノダ。  デンセツノ ギンノ ヨロイヲ マトウ ユウシャヨ。  ワタシト トモニ マオウヲ タオスノダ。」 どうやらメルクは伝説の銀の鎧を纏う勇者として、杖に選ばれたようだ。 銀の鎧というのは、金属化したメルクの身体のことを言ってるのだろうか。 「なんだかおもしろそう!いこう!!」 声帯までもが金属化してしまったからか、メルクの声は、まるで鉄のパイプを通したかのように発せられた。 「わあ、おもしろい!私、なにもかも金属になったんだ!」 銀色のメルクは上機嫌のまま、杖に導かれるように上流の方へと歩み、 森の中へと消えていった。 メルクの冒険は、始まったばかりである。 「ところで、このからだ、て、もとにもどれるの?」 「モドレヌ。 オマエハ ショウガイ ギンノ ヨロイヲ ハズセヌ。」 「そうなんだー。でも、ずっとぎんいろのままでもいいかな。」 その後メルクは、魔物を退治した英雄として街の伝説に残ったそうだが、 それはまた別の話・・・。 -Fin?-


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