ある日、アムネシアに恋い焦がれる青年が、彼女の寝床に忍び込みました。
ほんの少し、彼女の寝顔を見れたらという出来心でした。
青年はアムネシアのベッドを見て驚きました。
そこには上等なシルクでできた、真っ黒なシーツが掛かっていたのです。
同じく彼女に焦がれる、権力者の息子からの贈り物でしょうか?
青年は気味悪がりましたが、そのシーツの襞が放つ不思議な輝きと、そこから漂う甘い匂いにたちまち魅了されてしまいます。
それは、村で彼女とすれ違ったときにふっと漂う香りそのものだったのです。
ふらふらとベッドに吸い寄せられた青年は、そのまま倒れ込みシーツにくるまりました。
ツルツルのシーツと、アムネシアの匂いに青年はおかしくなり嗚咽を上げます。
そして、あろうことかベッドの中で何度も達してしまったのでした。
そこへ、アムネシアがやってきます。
彼女は自分のベッドに忍び込んだ青年をみるや、咎めるどころか妖しく微笑んでベッドに潜り込んできたのです。
アムネシアは、戸惑う青年と指を絡ませ、唇で制しました。
彼は夢見心地のまま何度も達し、どんどん意識が薄れていきました。
そして、今まで真っ黒だったシーツが血のような深紅に染まるのを見たのでした。
そのまま、アムネシアと彼は一夜を共にしたのです。
翌日、道端に裸で横たわる青年の姿がありました。
すっかり弱って気が狂い、見つけた人が話しかけても答えることがありません。
うわごとのように、恋い焦がれる人の名前を呟くばかりでした。
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同じころ、アムネシアの家の小間使いが夢中で彼女のベッドを整えていました。
彼もまた美しいアムネシアに密かな想いを抱く一人でした。
とはいえ若くもなく醜かった彼に、アムネシアは振り向きません。
彼の楽しみは、アムネシアの日用品を整理し、彼女の残り香を味わうことでした。
そうして、彼は妄想の中で彼女との逢瀬を楽しむのでした。
今日は、アムネシアから直々に寝床を整えるように命令されました。
決して彼女の衣服だけは触らせて貰えなかった彼は狂喜乱舞します。
シーツには彼女の残り香がとりわけ濃厚に染みついており、彼は夢見心地になりました。
思わずベッドに倒れ込んでしまった彼の頬をシーツがツルツルと撫でます。
愛するご主人様を全身を感じた彼は、念願叶ったような幸せな気分に浸り、やがてそのまま意識を失ってしまいました。
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その夜、村の集会場に二人の男が運び込まれました。一人は青年、もう一人は小間使いです。
彼らはどちらも意識が混濁し、アムネシアの名をうわごとのように呟くばかりでした。
二人は夜が更けるにつれてどんどん弱っていき、やがて静かに息を引き取ったのでした。