こちょクエ!? ⑬『青い髪に白衣の美女は無口なクール系女子であると私の中では決まってる』
Added 2025-09-11 10:37:09 +0000 UTC13:『青い髪に白衣の美女は無口なクール系女子であると私の中では決まってる』 村の西にそびえる一際高い山の麓に洞窟はあった。その洞窟は勇者である私を待ちわびていたかのように入り口大きく開け、中へ入る事を歓迎してくれている。私とピリカはその洞窟に何の躊躇もなく踏み込んで探索を開始した。 洞窟の中はかなり広いが、ご丁寧にそこかしこに火の灯ったランプが吊り下げられていて洞窟特有の暗さはあまり感じられない。 洞窟の床は鍾乳石から雨水が定期的に零れていて所々に小さな水溜りを作っている。その水気と地熱の熱さからか洞窟内の湿気と温度は馬鹿みたいに高く、まるでサウナの中に居るような不快感を私に与えている。 湿度と温さのせいか……モンスターの生態系も爬虫類系や両生類系が多く、それも私の不快感を助長してやまない。 『この辺の雑魚モンスターに“コチョイベント”は無いから、間違ってもワザと負けたりはしないでくれよ? 僕はカエルとか蛇とか苦手なんだからさ……』 ピリカは雑魚モンスターを見て嫌そうな顔をしてその様に進言してくるが、ワザと死ぬのは私の意思ではない為その言葉を伝える相手としては不適切である。 『私だってこんな気持ち悪いモンスターにヤられたくないってのっ!! 忠告は気まぐれな操作主に言えっ!』 っと、私は反論するが、ピリカはモンスターと戦っている私にも嫌そうな目を向け『えぇ~? だって君……こういうモンスターにもくすぐられたいとか思ってそうだしぃ~』と、失礼な言葉を返して来る。 それを聞いた私は、襲ってくる毒蛇の頭を剣の横なぎによって切り飛ばしながら怒りの言葉を返して対抗する。 『思うか、馬鹿! 誰が好き好んでこんな爬虫類に身体を舐められたいと思うのよっ!!』 『え? いや……僕は別に“身体を舐められる”だなんて具体的な事言ってないケド?』 『…………うっ! ぐっ!』 『うわぁ~~引くわ~~~♥ もうそんな具体的な責められ方まで妄想していたんだねぇ? 流石、ルカ様が認めた変態だわ……キモ過ぎて引くわ~~~』 急にギャル口調になって私の事をなじり始めるピリカに私は額に血管を浮かせて怒りの感情を表現する。しかし、彼女の言葉に反論が出来る筈もなく……怒りの感情はただの憤りとなって私の心の内に留めておき話題を別の物へと切り替える事にした。 『ところで! イライザの妹って……何? そんなキャラ……前からいたっけ?』 私は憤りを剣の勢いに変えて雑魚敵を切り裂いて着実に経験値を得てレベルを上げていく。そして、洞窟の奥へと敵を倒しながら進みつつ、気になっていた疑問をピリカにぶつけてみた。 『いいや、エルサは今回のアップデートで追加された新キャラだよ……』 『やっぱりそうよね? ハーピィの洞窟に行くのは覚えてたけど、その時のクエストって確か……ろくでもないモノを採集させられる虚無イベントだった筈だもん……』 『(うわ、ろくでもないとか虚無イベントとか言ってる。後ですぐる様にチクったろ♥)』 『変更があったって事は、何か重要なイベントになってたりするの?』 『う~~ん、まぁ……登場キャラが増えるって意味では君にとっては重要かもだけど、直接勇者のパーティに加わるとかではないから……シナリオ上は重要とは呼べないね……』 『はぁ? じゃあ何で追加したのよ? シナリオ上で重要じゃないなら、別に今更イライザに妹を新キャラとして追加する意味なんてないじゃない!』 『いやぁ~~それがさ、妹の登場イベントを追加して欲しいってお願いしたのは……実はイライザの中の人(ルカ様)なんだ』 『え? ルカ様が??』 『妹を追加するのは彼女の強い要望でね……自分の人格をこの世界にコピーするなら、是非とも実の妹もこの世界にコピーして欲しい……って、作者のすぐる様に頼み込んだのさ』 『た、頼み込んだ!? そんなのあり!? いや、その前に……自分がコピーされるのを事前に知らされていたの? ルカ様は?』 『彼女はこの界隈じゃ有名人だしね♪ 特別待遇ってやつだよ♥』 『あ、あんなにやりたい放題、好き勝手ヤってる人が……特別待遇!?』 『(お? ルカ様への暴言も確認っと♪ これも後でルカ様に報告したろ♥)』 『私なんて事前通告もなしに勝手にコピーされて転生して来たというのにっ!!』 『まぁ“君”の場合は自分の願望を叶える形でこの世界に飛び込んで来た感じじゃん?』 『うぐっ! ま、まぁ……そう言えなくはないというか……そうだとも言えるかもしれないけど……』 『プレイヤーとして召喚される君みたいなケースはそのままコピー&転生……で済ますけど、ゲストとしてゲームの世界に滞在してもらう人のコピーは界隈では有名な人ばかりだからね。そりゃあ……有名な人には事前に話は通すし許可も取るよ♪』 『むぅぅぅ! なんか……納得できないっ!! つか、コピー&転生ってなによ! 私は文章のコピペじゃないってのっ! 気軽に転生しないでくれる?』 私は念話でピリカと会話をしつつ洞窟の最深部手前まで進軍を続けた。 どうやら、現実のワタシはコチョイベントがあるシーンまでは“オート操作”を選択しているようで、イベントが起こるまでは私の意思のままに制限なく戦闘が行えている。 このまま食事でもしてキーボードから手を放し続けてくれればどんなに助かるか……と、いつも思うが……悲しいかなこの理不尽にも最近は慣れてきている様な気がして怒りがあまり湧いてこない。 『ったく……ゲームシステムの“オート操作”が“ゲームの中では私の自由に繋がっているってのはどういう了見よ?』 怒る代わりに呆れの感情が強くなっている私だが、まぁ……自分が主導権を握っている間は無駄な場所で死ぬリスクが減るのだから、その分有難いと思うより他ない。 何せ、ここまでで私のレベルは5になっていたのだ。ワザと死のうとしない限りはその辺の雑魚にヤられる事など無いと言って良い。 相変わらず……無駄に体力だけは大幅にアップするが、腕力やら素早さやらも全く上がっていない訳でもない。だから、雑魚戦に限れば苦労はしないで済むのだ。 『フゥ……。やっと最奥まで辿り着いた……って! 何このデカい扉っっ!?』 道中の雑魚敵を蹴散らしつつ最奥へとやってきた私の前には、いかにも“ボスが居ますよ”と言わんばかりの豪奢で大袈裟な扉がそびえ立っていいて……私の事をその風体だけで威圧していた。ゲームの画面越しには1マスのドット絵でしか表現されていなかったから感じなかったが……実際に自分の頭よりも遥かに高くてゴツい扉を目の前にすると、ボスの威厳やら迫力を感じずにはいられない。 私は扉の横にさりげなく置かれていたセーブ用のクリスタルに触れながら、警戒するようにその扉の前に立った。扉は少しだけ隙間を開けていて、そこから覗き込めば中の様子を見る事が出来そうだと思い私はその隙間に顔を近づけていく。 『……? なんだろ? 扉の中から……声が……聞こえる??』 顔を近づけていくと、隙間から複数の女性のクスクス笑いと控えめな声量の苦悶の声が混ざって漏れ聞こえて来る。 苦悶を浮かべる女性の声はか細く……苦しむように咳き込みを繰り返し、悶えている様な切ない喘ぎ声を上げているのが分かった…… 私はその声を聞いた瞬間、反射的に股間に熱いものを生み出しつつ胸奥にゾワっとした寒気を走らせてしまった。 『……誰かが悶えてる? 辛そうに苦悶の声を上げて何かに耐えてるような声が聞こえるっ!?』 その声が“悩ましい苦悶の声”であると察した私は途端に“このイベントシーンは是非じっくり見たい!”と思い至り、僅かに開いた隙間から目を覗かせて部屋の中の様子を盗み見ようとした。 『おぉ……広い!』 扉の隙間から見た中の景色は……今いる扉の前よりも格段に広く、広い癖に妙に明るくて見通しが良い。 その明るさがランプや蝋燭に照らされている明るさではなく、左右に開けられた大きな溝の下に溜まった“溶岩”の明るさであると気付かされると、私は目を丸くして驚きの表情を浮かべてしまう。 『な、なんでこんなとこに溶岩の溜池が??』 手が加えられて作られたであろう広い長方形の溝に、赤々と滾った高温の溶岩が入れられ周囲に熱と光を放っている。なぜ火山でもないただの洞窟に溶岩の溜池があるのかは謎だが、この異常な熱気と湿気の正体はこの溶岩の存在が原因であると分かり私は妙な納得を得る。 『溶岩の周りに巣みたいな塊が沢山あるから……卵を温めるために熱でも必要なのかも……?』 溜池の周りに沿うように藁をお椀型に編み込んだ巣らしきモノが並べてあるのが見える。その巣にはそれぞれ4個ずつ程の黄色い大きな卵が置かれていて、溶岩の熱でそれを孵化させようとしているのが何となく理解できる。 私はその溶岩の溜池と巣を交互に見ながら、壁や奥にある玉座らしきものにも視線を配る。 中央の玉座にハーピィの女王らしき影が座っていて、片足を組み肘置きに頬杖を付いて何かを好奇な目で見ている様子が伺えた。その視線の先には、鳥人である彼女らには似つかわしくない物が大量に天井から吊り下げられおり、私は思わず首を傾げてしまう。 『……あれって鳥籠(とりかご)よね? 何で鳥を捕まえるための鳥籠がハーピィの巣に沢山吊るされてんの? 当てつけのつもりか何か?』 天井からは……インテリアなのか実用的な物なのか不明な、縦に長い円柱状の鳥籠がいくつも吊るされてあった。 鳥籠自体は格子の目はあまり細かくなく、鳥を閉じ込めるというよりももっと大型の何かを閉じ込める事に使いそうな雰囲気ではある。その証拠に、籠の上部には動物の手を拘束する為であろう枷が備え付けられていて……籠に入れらたその動物を中で更に拘束できるよう工夫が為されていたのだ。 『っていうか、あの鳥籠……人間を閉じ込める為の檻なんじゃ……』 大きさと言い形と言い、サイズがピッタリなのは鳥や獣よりもむしろ人間ではないか? と考えが至った私にその認識が正解であるという事を示すような光景が目に入り、私は驚愕と興奮を同時に覚えるという稀有な認知の仕方を経験する。 「んっ……んく……くぅ……うぅぅ……」 吊り下げられた複数の鳥籠の一つに3匹のハーピィが群がっていて、その籠の中からは女性の呻き声らしき声が断続的に聞こえてきていた。 私は、先程聞いた苦悶の声がその籠の中から発せられたものだと察し、閉じ込められている人物をもっとよく確認しようと身を乗り出す勢いで扉の隙間に顔を押しつけて様子を伺ってみる。 籠があるのは部屋の奥だが、溶岩の明るさのせいか私の目にはハッキリとその鳥籠に入れられている“女性”の姿を確認できた。 白衣の下に黒いキャミソールと赤いショートパンツを穿いた格好の青髪の女性が、籠の中で両手を万歳の格好にさせられテッペンに用意された枷に手首を拘束されている様子がまず目に入って来る。足は両足とも素足に剥かれて籠の底に配置された枷に繋がれ、少し肩幅に開かされた状態で拘束されてある。 深い藍色に近いダークな青髪を後頭部で曲げて結ってあるその女性は、片方の前髪を降ろしていて右目をその髪で覆って隠している。逆に反対の左目の方の髪は耳にかけて流している為、額と目は隠されておらず美しい薄紫色の瞳を軽く潤ませて小さな口をフルフルと震わせつつ苦悶の表情を浮かべている。 無口だけど知的で大人びた雰囲気が漂う見た目……というのが私の見た第一印象だが、そんな大人しそうな彼女は複数のハーピィ達に囲まれ鳥籠の中で身体を前後に揺すりながら何かに耐えるような仕草を繰り返している。 「はふぅっ! ぅくぅぅぅぅ……んんっ……」 時折零される吐息交じりの色っぽい苦悶の声……抵抗しようと身体や手を動かして鳴らせている枷のガシャガシャという金属音……そして、ハーピィの手先から響き渡っているシャカシャカという肌を何かで擦っている様な軽快な音…… それらの声や音を聞くだけでおよそそこで何が行われているか察する事も出来るが、しかし私は行われているそれらの行為をしっかりと見たいと目をガン開きにして狭い隙間からその様子を見届けようとする。 「んっ! んぁっ♥ ぁふぅぅ!」 そうして見えてきたのは……想像通りというか、期待通りというか……まぁ、そういう光景だったわけで…… 籠の中で拘束され無防備になっている女性に対して籠の外に集まったハーピィ達は、手に持った細長い“純白の羽根”の先を揺らして身体を刺激し彼女を苦悶させていた。 『うっ……! あの子……ハーピィ達に寄ってたかって身体を……くすぐられてる?』 私はハーピィ達が何処をくすぐっているのかを正確に把握しようと、開きかけた扉をもう少しだけ内側に開いて、顔を捻じ込んでその様子を食い入るように見つめた。 『青い髪のハーピィは足担当かな? 籠の下から格子の隙間に羽根を挿し込んで足裏をくすぐってる……』 鳥籠は全て格子で組まれた隙間だらけの檻である為、籠の底面も足場は格子状になっている。底面も格子状になっているという事はそこには隙間が存在してしまっており、そこに立たされれば嫌が応にもその隙間から足裏が露出させられることになる。 吊るされた鳥籠の真下にホバリングして位置取っているその青い髪のハーピィは、その隙間に手に持った長い羽根を挿し込んで直接女性の足裏をくすぐっている。 手の拘束に加え足も拘束され動く事を制限させられているその女性は、籠の下から挿し込まれてくる羽根からその可愛らしい足裏を逃がす事も叶わずくすぐられる事を受け入れるしかない。 「くっふっっ……んんっ……んふぅ……」 素足の足先をモジモジとじれったそうに藻掻かせているが、足裏をコソコソと撫でる羽根の刺激からは逃れられず……知的な顔を苦悶の表情に歪めてその刺激に笑ってしまわないよう必死に耐えている。 『うわぁ~~我慢してる顔……めっちゃエロい♥ 見てるだけで興奮しちゃう♥』 真面目そうで、クールそうな美人女性がくすぐったい刺激を我慢して苦しそうな表情を浮かべている様子を見て、私は胸奥に熱いものが生まれて来るのを感じた。 その熱いものに顔が勝手に火照り、股間に宿った淫様を手で慰めたくなる衝動に襲われるが……私はそれをグッと我慢し、女性の足から上に視線を移動させ彼女の上半身を責めているハーピィ達の方にも目をやった。 『おほぉ~~~♥ 白衣の隙間からチラ見えする腋を……羽根が焦らすように撫でてるぅ♥ こりゃ堪らんですわ♥』 赤い髪と緑の髪をしたハーピィはそれぞれ囚われの女性の真横にホバリングし、同様に長い白羽根を格子の隙間から挿しこんで女性の剥き出しにされた美腋を丁寧になぞる様に撫で回している。 ボタンを外され全面を大きくはだけさせられた白衣は、裾を背中の方の格子に結ばれ白衣の生地で腋を隠せないよう配慮がなされていた。裾が結ばれているから白衣は開いたカーテンのように斜めに開かれ、黒いキャミソール姿の女性のふくよかな胸元を露わにさせている。そして、キャミソールであるが故に完璧に露出した女性の美し過ぎる腋は、手首の拘束がある為腕が下ろせず無防備極まりない格好に晒されてある。 骨と筋肉の入り混じった美しいスジを形成しているその腋に、二匹のハーピィは左右それぞれから羽根を挿し込んで、その先端を肌に薄く触れさせつつ……コソリ♥ コソリ♥ と、撫でてこそばゆい刺激を女性に与えていく。 その刺激は私が考える以上に耐え難いものだろうと想像つくが、青髪の女性は笑うのが苦手なのか……それとも笑うという行為に慣れていないのか、顔を苦痛に歪めながらも困惑するように眉根を寄せて顔をイヤイヤと横に振り乱している。 『敢えて白衣を脱がさなかったのは……絶対、あのハーピィ達の拘りよね? だって……腋をくすぐるなら脱がせた方が早いし……』 白衣を剥ぎ取ってキャミソール姿のまま拘束していればもっと腋を露出させる事も出来たのに、そうせずにワザワザ裾を後ろで縛って開かせる姿にさせたのは“癖”以外の何ものでもない。 “効率よりも拘り”を大事にしているであろうこのハーピィ達の行いに、私はなぜか敵なのに共感を深く示してしまう事となる。 『だって……この方がエロいって感じるし……』 敵に向ける共感ほど無駄なものは無いと分かってはいるが、視界の中の光景があまりに倒錯的で扇情的であったからか……心の中でグッジョブの親指を立ててしまう私。そんな私の姿を冷ややかな目で見ているピリカは、早く中に入れよと言いたげに大きな溜息をついて私を牽制する。 しかし、覗き見ている光景のあまりの素晴らしさに目が釘付けになっている私はピリカの牽制など耳には入らない。もっと深く興奮したいと……更に扉に顔を押しつけて中の光景を覗き見ようと試みてしまう。 「んっっ……んっ! くぅ……うぅ! やめ……て……、くす……ぐっ……た……い……」 悶える中に苦悶の息を零しながら顔を横に振るその女性……。そんな彼女から泣きそうな程か細い声で“くすぐったい”と言う言葉が漏れたものだから、私は興奮が抑えられず目を血走らせて扉の隙間に張り付いてしまった。 恥ずかしそうに頬を赤く染める彼女の顔……その顔が涙目でその言葉を漏らしたことが私の性感にぶっ刺さり、守ってあげたい思う庇護欲とイジメてあげたいという加虐欲を同時に浮かばせ戦わせてしまう。 『うぉぉぉ堪らん! 助けてあげたいって思う反面、このままイジメられるのも見たい気持ちも湧くし……むしろ私自身が直接イジメてみたいって欲も湧いてしまうぅぅ!!』 私は彼女の苦悶に歪む切なそうな顔を見て一層の興奮を覚え、鼻息荒く変態丸出しな言葉を脳内に羅列してしまう。それを念話で聞いていたピリカは、中々扉を開けて入ろうとしない私にいよいよ我慢の限界に達したようで、実力行使と言わんばかりに魔法で扉を強制的に開かせてしまう。 「うおっ!? ちょ、ちょっっ!!」 体重を顔の押し付けに預けて覗き見ていた私は、その突然の扉開きに対応できず……覗き込む姿勢のまま扉の中へと倒れ込み、思いっきり額と鼻を床に打ち付けてしまった。 「いったぁぁーーー!! ピリカぁ! いきなり何してくれんのよ!!」 私は勝手に扉を開けたピリカに向かて怒声を飛ばすが、ピリカは口を尖らせて口笛を吹いて知らんぷりしている。その態度に腹を立てようと拳を握った私だが…… 「あらあら、また愚かな人間が迷い込んできたのじゃ♥ わらわの巣に土足で踏み入るとは良い度胸じゃのぉ……」 私が扉から転ぶように入ってきた様子を見てクスクスと余裕の笑みを浮かべながらその様に零すハーピィの女王。彼女は玉座にて頬杖をついたままの態度を崩さず、鳥籠の中の女性を責め立てていたハーピィ達に視線をやって彼女達に端的な言葉で指示を下す。 「お前達……あの無礼な人間を捕らえてまいれ。捕らえて嬲って処刑して……この地に足を踏み入れた事を後悔させてやろうぞ……」 女王がその様に発すると、青い髪の女性をくすぐってイジメていた部下のハーピィ達は一斉に持っていた羽根をその場に捨てて宙へと高く舞い上がる。 私はその様子を見届けながらも転倒の姿勢から立ち上がって剣の柄に手を運ぶ。 『よし……まだ、主導権は私が握ったままだ……戦える!』 私は、自分の意思で剣の柄に手を添えられたことにひとまずの安堵を零し、今までの惚けた心持ちをリセットする意味でハーピィ達を睨み見る。 「ヤれ……我が娘達……。ハーピィの恐ろしさを人間どもに思い知らせるのじゃ!」 天井付近を旋回して獲物を見定めるよう睨みを利かせていたハーピィの中の一匹が、その言葉を聞いて急降下を開始し私の方へと突っ込んできた。私はそのあまりに素早い突撃に度肝を抜かれるが、剣を鞘から抜く前にその突撃を横に素早く躱し、地面にヒビが入る程のその突撃攻撃から身を守った。 『くっ! 速くて……強い……』 鋭く尖った爪を地面に叩きつけるその突撃は、竹刀が振り下ろされる速度程に早く……のんびりと構えていては身体が追い付かない。 そして、地面に激突してきたにもかかわらずそのハーピィは傷一つ負っておらず、爪が折れたり傷ついたりもしていない。その事象を見て彼女の持つ爪が想像以上に頑丈で武器として優れていると察し、私は改めて気を引き締める思いで剣を鞘から抜いて構えを取る。 突撃してきたハーピィはそのまま私の顔を睨みつけて、脚の爪に力を込め始める。そして、その場から縦に宙返りするように身体をぐるりと回転させ、力を込めた脚の爪で私の身体を切り裂こうと頭上から振り下ろしを行う。 ――ガキンっ! 咄嗟に頭上に構えた私の剣がその勢いの乗った脚爪を受け止める。爪と剣が交わったその音は金属が打ち合ったような音を鳴らせその爪の硬さを如実に表現するが、それ以上に回転した勢いの乗った振り下ろしの威力が思った以上に重く……私は剣を頭上に構えたまま膝を折りそうになってしまう。 『くっ! 重いっ!!』 爪に全体重を乗せて圧倒しようとしてくるハーピィの攻撃に、私は必死に足に踏ん張りを利かせて対抗しようとする。しかし、鳥人族であるハーピィの爪攻撃の威力は伊達ではなく……私は踏ん張らせていた足をジリジリと後方に追いやられてしまう。 『振り払わないと……このままじゃ押し切られる……』 私がその様に危機感を募り、剣を横なぎに振り抜こうと力の込め方を変えようとすると……そうはさせまいと背後にもう一匹のハーピィが降り立ち、腕と翼が一体になった手を伸ばし私の妨害を始める。 「ニシシ♥ 人間はコウイウ攻撃にトッテモ弱い……」 そう言って剣を構えていた私の両腕の付け根にその翼を這わせて見せると無防備になっていた私の腋にその翼の羽根を触らせ、上下に大きく動かしくすぐる刺激を送り込み始める。 ――コショ、コショ、コショ、コショ♥ 「にょひょっほっ!?!? ちょ、な、何すんの! や、やめっっ!!」 爪を受け止める為に最大の力を込めて対抗していた私の左右の腋に、羽根先のこそばい刺激が一斉に広がって私の手から力を抜かせようとしてくる。 私は力を抜かれまいと必死に手に力を込めなおすが、いやらしく腋の縁を撫でるその羽根があまりにこそばゆく感じ……私は、真剣勝負の最中に思わず吹き出してしまう。 「ぷひゃっっはははははははははは!! ちょ、やだ! くすぐるなっっ!! 今はヤバぃぃぃひっ!? んひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!?!?」 ズルっと剣から力が抜け、私の体勢はとうとう膝を折るまでに追い込まれてしまう。 このまま剣から手を放せば間違いなく致命の一撃を食らってしまうのは明らかだ……そう思った私は、どうにか最後の力を振り絞って爪の受け止めに集中し直すが…… 「ほれ、人間よ……もっと笑え♥ 笑ってもっと力を無くさせろ♥ ほれほれ♥」 翼に生えた沢山の意志ある羽根先が力んだ私の腋を満遍なくくすぐって私の事を笑わせようとしてくる。その刺激に耐えようと懸命になるが……羽根のこそばゆさは真剣になればなるほど強さを増し、私に笑いと脱力を与えようとしつこく責め立てて来る。 私はその刺激に負け、戦闘中であるにもかかわらず笑う事を余儀なくされ……徐々に手から力を抜く事を強制される。 「んくぅあぁぁははははははははははははははははははははははははは、ぷひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! だ、駄目! 駄目だってばぁははははははははははははははは、今ワキをくすぐるの反則ぅぅふふふふふふふ!! 反則だってぇへへへへへへへへへへへへへへ!!」 血管が浮き出る程力がこもっていた腋の肌に、繊細で細かな毛先が生え揃った羽毛がコショコショとくすぐったい刺激を送り込んで来る。 なまじ力を込め過ぎていた分、緊張し刺激に敏感になっていたその腋が羽根の刺激をこそばゆいと認知しない筈がなく……私はそのくすぐったさに身悶え笑わされ……そして爪を支える力すらも無くすことになる。 「くっ!! 仕方ないっ!!」 このままではマズいと察した私は咄嗟に剣を手から離し身を翻す動作を身体にさせたが、爪の素早い一撃を完全には躱す事は出来ず腕に深い傷を与えられる結果となった。 「うぐっ!! くっ!! 痛っっ!!」 躱し損ねた左の腕に3本の爪傷が付きそこから多量の血を滴り落とし始める。私はその腕を逆の手で庇うように抑えながら、私をくすぐってきたハーピィに睨みを利かせる。 「くっそ……ふざけた事してくれんじゃないっ!!」 攻撃を仕掛けて来たハーピィとくすぐりを行ったハーピィは、私が落としてしまった剣の前に立ち武器を再び取らせまいと威嚇を続けている。私はその威嚇から目を離さず念話にてピリカに話を振ってみる事にする。 『ピリカ! あの剣って……確か魔法で召喚したやつだよね?』 『あぁ……そうだけど? それがどうしたんだい?』 『だったら、あの剣をもう一度召喚し直す事は出来る筈でしょ?』 『……出来るけど……タダではやらないよ?』 『はぁ? 金取るの? こんな時に??』 『そりゃそうさ、剣を召喚するにも僕の貴重な魔力を消費するんだから……それなりの代償を請求するのは当然だろ?』 『くっ!!』 そんなやり取りをしていると、宙で旋回を続けていた3匹目のハーピィが突如私めがけて急降下を開始し、先程の傷を与えて来たハーピィ同様の攻撃を繰り出そうとしてくる。私はもはや一刻の猶予もないと察し、ピリカの条件を呑む形で剣の再召還を要求する。 『あぁもう! 分かったからさっさと新しい剣を召喚してっ!! このままじゃ攻撃も防御も出来ないっ!!』 『ハイハイ……ったく、妖精使いが荒いなぁ……』 私に急かされたピリカは不貞腐れるように頬を膨らまえると、素早く呪文を唱え腰に抱えていた剣の鞘に光を灯し始めた。それと同時に鞘に灯った光は剣の柄を形成し、再びそこに魔法の剣を召喚した事を鞘の重さで実感させられる事なった。 私はその重みを感じるや否や柄を右手で握り、弾丸のように急降下してくるハーピィとの間合いを目視で計算する。そして剣の切っ先が届くと判断した瞬間、勢いよく剣を鞘から抜いて宙に向けて一閃の切り上げを見舞ってやった。 「ぐぎぎぎぎっっ!?!? ぎはっっ!!」 私に爪を構えて飛びかかろうとしていたハーピィは振り上げられた剣閃に頭から胴までを真っ二つにされ、私に爪を当てる事なく左右に胴を別れさせて絶命を遂げる。 その様子を見ていた残り2匹のハーピィは、激昂するように怪物然とした雄たけびを上げて宙に羽ばたき同時に私に飛びかかろうと構えを取る。 私は、剣に着いたハーピィの血を切っ先を振って散らしつつ、残ったその二匹に睨み目を向ける。 「ぎぃぃぃっっ!!!」 っという鳥人種特有の合図を送り合った2匹のハーピィは、同時に爪を構え前傾姿勢になり攻撃態勢を整える。私はすぐさま剣を構え直し、防御に徹するか攻撃に転じるかの選択を頭の中で巡らせる。 しかし、片方のハーピィが前に飛び出ようと翼を広げた瞬間…… 「火の精霊よ……かの魔獣を焼き払え……ホーリーフラム!」 という詠唱が部屋の奥から聞こえ、片方のハーピィの方へと大きな火球がぶつけられた。 「ひっっ、ひぎぃぃぃぃぃっっ!?!?」 その火球に包まれたハーピィは絶叫と共に全身を炎に包まれ瞬く間に灰と化す。 『あの子……魔法使いだったんだ?』 部屋の奥から放たれたその火球は、鳥籠の中で拘束されたままになっていた筈の白衣を着た青髪の女性が詠唱したものだった。 私はその女性が魔法で援護してくれたのを好機と捉え、防御ではなく攻勢に出る事を選択し素早く足を前に踏み込ませる。 一方、相方が隣で燃やされた事に一瞬意識を奪われていしまったハーピィは私の踏み込みに気が回せず、剣を振りかぶる勢いを止める事も出来ずに、こちらも一閃の内に胴体を真っ二つにされ床に転がる事を余儀なくされた。 「ふぅ……助かった……」 正直……二匹同時の攻撃は捌き切れないと思っていた私に、彼女の魔法の援護は渡りに船だった。彼女が隙を作ってくれなければきっとまた防御に徹する事になっていただろうから、攻撃の機会が訪れるのは先になっていただろう。そうならなかったのは彼女のお陰であり、ナイスな援護射撃であると賞賛を送りたい……。 だけど、一連の戦闘を見ていたハーピィの女王は……そんな余計な事をした彼女に憎悪の感情剥き出しの怒り顔を向け、大地が震えるほどの大声量で怒声を吐き出した。 「良くも我が子達をぉぉぉ!! 許さんぞぉぉぉ人間っっ!!」 その怒声に青髪の女性は「ヒィ!」と怯えるような声を零して、これ以上手助けはしないと伝えるように顔を下に向けて自分は無力ですという意を示す。 それを見た女王は「フン」と吐き捨てるような息を吐き、翼を左右に大きく広げ玉座から高く舞い上がる。 「絶対に殺してやる! 苦痛と恐怖を何倍も味合わせながら殺してやるから……覚悟せよ! 人間ッ!!!」 凄まじい迫力の威圧感に気圧されそうになる私だが、下げていた剣の切っ先を女王に向けて戦闘の意思がある事を彼女に無言で伝える。それを見た女王は、口元をニヤリと歪ませてその場でホバリングしながら身体を傾け横に回転を加え始める。 まるで扇風機の羽根の動きを見ているかのように急速に回転しきった女王の身体は、後ろに引いた足の方に空気の渦を発生させ小さな竜巻の様な物を形成する。そして、その竜巻を足で蹴るような仕草を取ると、回転していた身体は真っすぐに顔の向いた方に射出され…… まるで弾丸のような速さを纏って、女王の身体は私めがけて撃ち出された。 ――ビュンッ!!! っという風切り音と共に、私の頬に一筋の傷をつけて飛び去る女王。その速さは弾丸であると称するに余りある速さで私の左頬を掠り、致死の一撃を仕掛けてきていた事を如実に表す。 『あ、危なっ!! 先に横に逃げてたからたまたま食らわずに済んだけど……あんな素早い攻撃……何度も避けられる訳ないっ!!』 頬に掠った傷からタラリと垂れる血を気に留める余裕もなく、私は口に入り込んできた血をペッと吐き飛ばして旋回する女王の動きを注視する。 女王は体勢を整え直すと再び横回転の動きをさせ始め、私をロックオンするように狙い澄ます。 次は避けられる自信はない……。ガードしても弾かれるのは必至……。それならばどうすればいいか? 私は女王の姿を目で追いながらも自問自答にて次の行動の選択を行う。とは言え、攻撃手段も防御手段も限られた私にやれることは少ない。だから、答えはすぐに出される。 『同じことをヤるしかない。攻撃される前に命を断ち切る……さっきのハーピィのように女王を屠る以外に私に勝利は無い』 私はそう結論付けるが、先程の女王のスピードを見ているのだからそれが成功する確率はゼロに等しいと簡単に理解出来てしまう。 タイミングはさっきとは段違いにシビアだ…… 何せ弾丸の速度で迫ってくる相手を見切って一閃に臥さないとならないのだ……剣の達人だってそんな事出来るとは思えない。 剣道の県大会にしか出場した事ない私にそんな芸当が出来るとは到底思えない。 しかしやるしかない。多少なりともレベルが上がって常人よりも身体能力はアップしている筈なのだ。だから、やれるはずだ……そう信じるしかない。 私は腕の傷も頬の傷の痛みも忘れ、竜巻を纏い始めている女王を集中して見据える。 剣の切っ先をやや下に構え、振り上げる勢いで切り臥すイメージを何度も繰り返し……浅く呼吸を整える。 やがて、周りの音が聞こえなくなる。 視界が白黒に見える。 自分の鼓動音だけがタイミングを刻むように規則正しく鳴り響く。 そして、私の鼓音がドクッ! と強く収縮したタイミングに合わせて、女王の弾丸が射出される! その瞬間が……私には見えた! 女王が自分めがけて放たれる瞬間がコマ送りで見えた! 剣に込める手に力が入る。筋肉に勢いよく血が流れ込んでいる感覚を肌に感じる。 女王との距離感が手に取るようにわかる。 コレが達人の域という奴なのだろうか? 私はこんな短い間にその域に達してしまったというのだろうか? これならば容易い。剣を振り上げるタイミングなんて……コマ送りの彼女を見ていれば児戯にも等しい。 楽勝だ…… と、私が勝利を確信した次の瞬間…… 「……あれ? 手……動かくなったんだけど?」 茫然となってそう言葉を零した次の瞬間には、私ではなく女王の一閃の方が私の身体を貫き……私を玩具のように跳ね飛ばしてしまう。 「ふぎゃ~~~~~~~~っっ!!」 女王は吹き飛んだ私の身体を何度も宙に浮かせ空中コンボを叩き込んでいく。 みるみる体力ゲージがゼロに近づいていく私……それをまた唖然とした顔で見ている青髪の女性…… 私の身体が……ここ一番の大事な時に乗っ取られたのは言うまでもない事。 その乗っ取りのせいで剣を振り上げられず、女王にいたぶられながら処刑イベントに直行させられたのも言うまでもない事…… そして、私の体力がゼロになるとお決まりのアナウンスボイスが流れて私の敗北を決定事項である事を知らせて来る。 私は遠くなる意識の中で【勇者は後一歩のところでハーピィの女王によって倒されてしまった……】という女性のアナウンスを聞き、心の中でツッコミを入れる。 『いや、女王に倒されたというより……自分に倒されたと言うべきなんだけどね? 邪魔したの……何を隠そう自分なんだよね!』 と、そう呟いて……私は意識を手放していくのだった……