液体に満たされたコックピットに振動と衝撃が伝わる。
一瞬周囲がコンクリートにでもなったかのような錯覚。全身を包むストライカースーツが、そのGに抗うために収縮して俺を支える。太もも、脇腹、背中、そして股間にまでグッと食い込みを感じながら俺は呻いた。液体越し、スーツ越しでこれだ。直撃だったら……想像もしたくねえ。
『ヒダリ フクブパーツ ソンショウ12%』
前地球時代的な機械音声が俺の脳を叩く。ついに本日初被弾。俺は舌打ちをしながら正面のモニターを睨みつけた。シールドが六割まで損耗しているのを失念しちまっていた。
「コンバットトリガーを投与。レベル2だ!」
即座に首筋まで覆っているスーツが波打ち、覆った全身を包み込むように薬剤が塗布される。鈍っていた思考が強制的に叩き起こされる。痛みが遠のき、頭が冷える。
『隊長!』
『イッテツ、状況は――?』
「問題ねえ、フォーメーションは維持だ!」
宇宙空間は音のない世界だ。聞こえるのは、自分の心臓が血液を送り出す鈍い響きと、頭の中に直接流れ込んでくる仲間二人の声だけ。
戦闘開始から既に三時間、注入され続けるトリガー……薬物にも耐性がつき始めてきた。人間の体ってのは不便なもんだ。
そのうえ敵生命体――サイラス共には疲労の概念すらねえってんだから、なんとも不公平なもんだ。
そろそろ勝負に出ねえとマズイ。
『クッ、数が減らねえ! 隊長、次が来ます!』
まるで俺の焦りを感じ取ったように、新入りのリクの報告は悲鳴混じりだった。
若いな、と思うがそれも無理もねえ。俺だってこの耐久戦はなかなかキツい、まだ成人して間もないアイツにとっちゃどれほど酷なもんだろうか。
「ハッ、なァに他人事みてえなこと言ってんだ、隊長様よ」
俺はそんな自分自身に笑いながら喝を飛ばした。
「……それを楽にしてやるのが……ッ、俺の仕事だろうが……!」
ヘヴィヴァンガード 不動隊所属 隊長機不動αパイロット――イッテツ・ヤブキ。
そうだ、俺がやらんで誰がやる。
「やるか……また腰が痛くなるぜ、畜生」
俺は独りごちると、操縦桿のグリップを握りしめた。椅子に座っている状態では届かないほど、腕を、肩を、背中を、思いきり前へ、前へと突き出した。
「不動α……高速強襲形態に……移行ゥ…………ッ!」
呻き声と共に意思を機体に伝えると、背後でパイロットシートが変形・後退し、俺の身体を強制的に前傾させる。足は後方のフットレストにロックされ、体はそのまま前のめりになり、機体と一体化するような低く攻撃的な姿勢へと変わる。
まるで獣に騎乗するかのようなそのフォームは、ストライカースーツに覆われた分厚い胸板と腹筋、内腿までもガッツリと無機質な制御ユニットに押し付ける。
冷たいコンソールの感触が、スーツ越しでも熱を持った肌に伝わってきた。
「βとγはフォーメーションを維持したまま援護だ、行くぞ!」
思考による命令が弾けるのと、機体のメインスラスターが咆哮を上げるのは、ほぼ同時だった。
その瞬間、俺と俺の愛機は一つとなって宇宙空間を疾走った。
人型と戦闘機を混ぜ合わせたように変形した不動αが、前進のみにスラスターの火力を捧げる。
たった今俺に一撃食らわした個体は攻撃の衝撃でバランスを崩している。十数秒。宇宙戦にしちゃ一瞬といっていい時間で追いつく。
「待ちやがれ……ッ!」
俺は筋肉質なガタイを更にコックピットに擦り付け、体を右へと傾けた。振り切ろうとするサイラスの野郎のケツがぐんぐん近づいてくる。
俺は出力をさらに上げた。
距離203……130…………89…………
コンピューターが提示する情報と、不動のパイロットとして長年戦ってきた経験、なにより男の勘ってもんで誤差を修正していく。
3……2……1……。
…………ここだ……!
「随分な……挨拶じゃねえか、よッ!」
ガンッ。
コックピットに衝撃。だが今回は心地いいもんだった。
「本日限定とはいえ、このイッテツ様の釜掘っといて……なァにトンズラこいてんだァ!!」
俺が右腕を突き出すと同時に、不動αの拳が装甲板にズブリと潜り込んだ。
機械と軟体の境目、有機的な柔らかさが操縦桿に伝わってきた。直撃。サイラスの本体だ。
「近接戦闘形態に移行ッ!」
うつ伏せだった体が今度は大きくのけぞる。俺は自由になった右手を握りしめ、操縦桿を引いた。
「タイタン・ステーク起動ッ!」
俺の闘志が吠える。潜り込んだ腕部が巨大な杭へと変形していく。
リンクしている俺自身の腕までもが、まるで別物に変わっていくかのような違和感。俺はそれを飲み込みながら大きく仰け反った。
「くらい…………やがれェェッ…………!!」
自慢の上腕二頭筋ごと食らわしてやるように、俺がガニ股のまま操縦桿を突き出した。
パイルバンカーの機構へと変化した俺の不動αの拳は、完璧にサイラス本体の内部へ、奥へ、そしてコアへと突き刺さった。
一瞬、なにもかもが静まり返った。僅かな抵抗と振動。画面に表示される有効の文字。俺の手に伝わる手応え。それだけを残し……、宇宙の害虫は再び宇宙の塵に戻っていた。
「ハッ、男の純情を散らしやがって、みたかクソサイラスめ!」
『は……ハハッすげえや隊長……』
「そうだろリク! 焦るんじゃねえじ、確実に数は減ってんだ。冷静に対処していきゃあ勝てる」
『りょ、了解です』
俺は人知れず小さく息を吐き出した。
敵の数が1減って、味方の戦意も復活。大収穫といっていいだろう。
「不動α、偵察モード」
立ち上がっていた俺を抱きかかえるようにシートが再び俺のケツに触れる。俺は全身の緊張状態を解いて、体重を椅子に預けた。
聞こえないように深呼吸を一つ。
『リク、イッテツの言う通りだ。パターンは変わっていない。ブースターを使いすぎるな』
スリーマンセルの一人、シュウジの静かな思考と言葉がリクの焦りをなだめるように割り込んできた。あいつはいつもそうだ。俺に足りねえ部分を的確に拾ってくれる。
『はい……も、もう大丈夫です』
返答に緊張感はあるが、もう焦りは残っていなかった。
「さあもうひと踏ん張りだ、やるぜお前ら」
『了解』
『りょ、了解……!』
俺は巨大な鉄の腕の中で可燃性ジェルを練り上げ、絡みついた破片を焼き払った。
連続の変形、そして炎の使用でスーツの中が汗だくだ。出発前に剃っていなかった部分が特に蒸れちまう。
ストライカースーツはそんな俺の神経の昂りを拾ったのか、休息を提案してきた。大丈夫だ、落ち着いてるって、そう念じると、機体のスタビライザーが即座に反応した。
数分もしない間に次の攻撃が来る。奴ら……SILAS共には感情も疲労もない。休むのはすべてが終わってからだ。
Sentient Intellectual Life-form Assimilation Swarm (知性を持つ生命体の同化群体)――通称サイラス。
その宇宙生命体と、我らが移民船レガシーの初接触から42年。そして、この一方的な防衛戦が始まって39年が経った。
移民船始まって以来の地球外生命体との接触に、かつてレガシーは歓喜に湧いていた……そんな幼少期の記憶が僅かばかり残っている。
新たな知性との対話、未知の文化の交流。誰もが輝かしい未来を夢想した。だが、現実は違っていた。
やつらには意志や感情、言語といった概念は存在しなかった。
知性の差、なんて単純な話じゃない。やつらにとって知や進歩といった積み上げる類のものはすべて「食料」でしかなかったのだ。
サイラスは極めて凶悪に進化したアメーバのようなもんだ。触れたものの構造を理解し、分解し、情報を吸収して模倣する。ただそれだけの生き物だ。
俺達の文化も、歴史も、生命の設計図さえも、奴らにとっては格好の餌でしかない。
幸いレガシーは初接触の段階でその本質をいち早く見抜き、接触を断って逃走を続けてきた。
常にこの生命体群との距離を保ち、こちらの情報を極限まで与えない。それが、俺達人類が生き残るための唯一の戦略だった。
おかげで、奴らが模倣しているのは、いまだに40年前の旧式兵器だ。今は名前を呼ぶこともなくなった無人の宇宙戦闘機。
奴らは一度学習したその兵器の情報を、ただひたすらに複製し続け、俺達にぶつけてくる。
技術力の差は年数とともに開いた。もし今の最新部隊をぶつければ、それだけで戦闘は圧勝だろう。
レーザーで焼き切り、銃で蜂の巣にし、迷彩で不意をつく。
人的被害も労力も最小で済む、結構なことだ。
だが、そんなことはできない。許されない。
万が一にでもその戦闘で殲滅しきれず、データを持ち帰られ、模倣されたら。
次にその威力の犠牲になるのは、我らが母艦レガシーであり、そこに住む人々だ。
だからこそ、それらと戦う俺達……ヘヴィヴァンガード部隊に重武装は許可されていなかった。それだけじゃねえ。通信手段も限定され、帰還までは俺達は故郷レガシーの位置すら知ることが出来ない。
この暗黒の宇宙の中、信じられるのは時代遅れの近接兵器と、鍛え抜かれた己の肉体、そして二人の仲間……男たちだけだ。
兵器も限定されていりゃあ、パイロットもガッチガチだ。
機体ごと取り込まれた際に、「人間」という最も重要な情報が渡る量が少しでも減るために、パイロットは男に限定されている。
なにがあっても移民船レガシーを守る、犠牲になることさえ組み込まれた兵器。
それが、この「ヘヴィヴァンガード」部隊だ。
「よし、もうひと踏ん張りだ!」
意識を覚醒させるコンバットトリガーを追加。スーツが俺の筋肉を隙間なく締め付ける。疲労の溜まった筋肉と頭が無理やり叩き起こされる。
「うっし」
膨れ上がった体をシートに深く押し付け、俺はコックピットにふんぞり返った。
『――モクヒョウ、サイセッキン。ジュウヨウ ハカイ スウ ノコリ 20%』
仲間の声と聞き分けるため、敢えて機械的にされた合成音声が新たな戦いの到来を告げる。
モニターの中、漆黒の闇の中でサイラスが放つ波長が迫ってくる。しかし随分と数は減った。確実に戦いは終わりが見えてきている。
いいだろう。何度でもやってやる。
俺は全身の神経を機体へと同調させ、操縦桿ではなく、己の四肢そのものとして「不動α」を意識した。
近接戦闘形態。巨大な鉄の腕が、俺の腕になる。
……疲れた体には応える操縦法だ。パイロットをしながら、同時に格闘家のような消耗までする。おそらくこのあと数サイクル後に筋肉痛がやってくることだろう。
「まあ、やるしかねえ、けどな!」
……子供の頃、夢中で見ていた地球時代のロボット乗りのアニメは、こんな液体漬けの棺桶とは違っていた。
パイロットも男女それぞれバラエティに富んでいて、たまには母船との通信もあって、そりゃあもう賑やかなもんだと思っていた。
そもそもパイロットといえば、髭面のゴツい親父じゃなくってもっと若くて溌剌とした年齢で……。
ああ、想像とは大違いだ。
だが、少しも後悔はねえ。
レガシー。地球を知らない俺にとって、ここが人類の故郷であり、何より守るべき家族が眠る船だ。
そのために命を賭して戦えるんだ。それ以上の誇りが、男にあるものか。
俺は背後を振り向いた。レガシーがその方角にあるかどうかもわからない。だがこういうのは気持ちの問題だ。俺の背がみんなを守っている。その実感で男はどこまでもやれるってもんなのだ。
『リク、シュウジ!潰すぞ!』
俺の不動αは腕を組みながら仁王立ちで奴らに向かい合った。
思考による命令に、二つの短い同意が返ってくる。
俺は、押し寄せる鉄の津波の中心、最も密度の濃い一点を目指して、スラスターを起動した。
孤独結構。玉砕上等。
この闇が男イッテツ・ヤブキの最高の晴れ舞台なのだ。
俺の拳が、いや……不動αが奴らの本体を握り潰した。
ぐにゃり、とした感触。それを合図に、さっきまで疫病のように宇宙を埋め尽くしていた機械の亡霊たちの動きが変わる。
俺達を包囲しようとしていた動きから一転、一斉に遠ざかっていくのがレーダーに映った。
今の一体で撤退の既定値に達したのだ。
そうなれば戦闘は強制終了だ。
奴らに感情はない。戦闘継続が利益を生じないとわかる戦力差になれば必ず撤退する。執着はない。コレは長年の戦いで確定している奴らの習性だった。
『……サイラスの撤退行動確認。追撃はどうする、イッテツ?』
「……ナシだ。さすがに……もう腕も脚もへとへとだ、そんなに求められても、もーハッスルできねえって……」
『ハハッ、了解っす』
『品のない男だ、まったく』
リクの少し上ずった思考と、呆れながらも安堵しているシュウジの思考が俺に流れ込んでくる。
聞こえるのはそれだけだ、アラートの鳴っていない宇宙空間は静かで心地よかった。
『各機、損傷報告。軽微なものも見逃すな』
シュウジの冷静な声が僅かに浮かれていた空気を僅かに引き締める。
「よし」と俺は液体の中で小さく頷き、思考を切り替えた。
「こちらヘヴィヴァンガード、隊長機不動α。現宙域のサイラス群の無力化を確認。戦闘行動を終了する」
非戦闘時のみ許された回線で、俺は司令機体に連絡した。
『――了解。不動部隊、任務完了を確認。周辺宙域に敵性反応なし。パイロットのバイタル低下を鑑み、22サイクルの休息を推奨します』
いつものように俺たちの仕事を評価し、次の行動を提案してくる。22サイクル。疲労を残らず回復とまではいかないが、今はそれでも十分だ。
「聞いた通りだ、総員……っつってもまあ俺含め3名、22サイクル休息だ。おっと、各自、機体のチェックもだが、自分の体のメンテも済ませておけ。コックピットの循環液も交換、忘れるなよ。だらだらするのはそれからだ」
『了解!』
『了解』
二つの返事を確認し、俺はようやく全身から力を抜いた。
終わった。
一人も欠けることなく勝利。
あの新入りを庇って被弾したときには肝が冷えたが、なんとかなった。今回の戦闘で、アイツも大きく成長したことだろう。二度と同じポカはしないはずだ。
「フゥー………」
俺は背中を座席に預けながら呟いた。
「あー……洗浄シークエンス、起動……」
小さな機械音がして、コクピットを満たしていた生暖かい液体が、足元のドレンから急速に排出されていく。
「うぅッ! フゥーー……慣れねえんだなあ、これが。何年経ってもよ」
スーツに残った液体のせいで、身体がビタッと圧着される。まるで真空パックにでもされた気分だ。何時間も戦い続けた体のラインが、容赦なく浮き彫りになる。
蒸発を待つまでの数分、圧縮された体の中で心臓が一際大きくなったように感じた。
ドクン、ドクン、と全身に血が巡っていく。この孤独な鉄の球体の中で、俺という生命がまだ燃えている証だ。流石に今回は危なかった。冷静になった今、ドッと感情が押し寄せてくる。
「ン……むぅ……」
気がつけば、その力強いリズムに呼応するように俺の体の中心が盛り上がっていた。
「ったく、コイツは毎度毎度……しょうがねえな」
俺は自分の体を見下ろして、ボリボリと頭を掻いた。
命の危機を感じると「そう」なるというのは俗説だったかどうだったか。
興奮剤の連続使用と、アドレナリンの過剰分泌、おまけに高速強襲形態への変形による物理的な刺激。恥ずかしいもんで、俺のナニはすっかりデカくなっちまっていた。
「う…………おぅ……」
ビクン……とチンポがスーツの中で上下すると、強烈な吸引が股間を中心に俺の全身を包む。
「あーーー……まずッ、これ……ちょっと……アレだな」
俺は股を開き、シーツに背中を擦り付けながら喘いじまった。
亀頭から根本で、バキュームされるみてえな刺激で鈴口が開くのがわかる。
「まあ……誰に見られるでもねえしな……仕方ねえ、これも……生きてるもんの特権、男の証拠ってヤツ……だ」
俺はそう自分に言い聞かせながら目をつぶった。
「…………ふぅ」
さっきまで操縦桿を握りしめていた手が、スーツの上からそっと自分の硬い場所に触れる。
スーツがガッチリと体に圧着されているせいで、ある意味、裸以上にその形が強調されている。まるでこの勃起した姿こそが、俺という雄の正常な姿なのだと主張しているかのようだ。故郷を守った英雄の雄姿を誇るかのような、ふてぶてしい立派な剛直だ。
だが……まあ……なかなか立派なもんだ。
頭の中に、そんな言葉が響いた。鍛え上げた肉体と合わせて、随分と男らしく、頼もしい姿だ。これがあるから今日の戦いだって、体力も尽きず、痛みにも挫けず戦い抜けた。
コイツはまさにその証だ。この厚い胸板。鋼のように硬い腹筋。そして、今まさに生命をグツグツと生み出しているこの雄々しさ。
――見せる相手がいねえのが残念だな。
「……ば、馬鹿いえ、何を考えてんだ俺は」
人肌恋さが募ったのか、どうにも今日の俺は変だ。
こんな親父が全身ピッチピチにした姿を見られたいなんて、いくらヘヴィヴァンガード部隊の英雄とはいえ……引かれるだろ。
……いや、引かれるまではないか。実際、この格好で戦い抜いたんだ。
「…………」
無意識のうちに俺は立ち上がっていた。狭いコクピットの中で、ゆっくりと腕を組み、胸を張る。モニターに映る自分の姿は、まるで彫像のようだった。ストライカースーツが光を鈍く反射し、隆起した筋肉の陰影をいやらしく際立たせる。
特に、堂々と天を突く下腹部の膨らみはなんというか堂々たる存在感だ。
見慣れなパイロットの恰好なのに……どういうことだ、今日は目が離せねえ。
目の奥からじんわりと、脳の中に熱いものが流れ込んでくるように興奮してきちまう。
悪くねえ……。いや、なかなかどうして……。
体が熱くなり、頭がだんだんボーっとしてくる。興奮が脳からじわじわ背骨から伝わって、ケツの谷間まで浸透してくる。
もっと……。
腰を前に突き出す。
まるで見えねえ糸に引っ張られるように、竿の先端がぐんぐん先に伸びていく。そして雄竿の先端も、それに合わせるように力強くスーツを伸ばしていく。
「う……くっ…………おぉ…………っ」
粘っこい汁がスーツの中で溢れてくる。
俺は無意識のうちに、組んでいた腕をといて左腕にぐっと力を込めた。ストライカースーツの上からでもわかるほど、力こぶが硬く盛り上がる。モニターに映るその光景に俺はくらくらしちまった。
「フッ……! フゥッ……!」
なにしてんだよ……。
で、でも……やめられねえよ。
俺はその格好のまま、右手で激しくスーツの股間を……チンポを擦った。ガチガチに立ち上がったソイツは、さながら欲望の操縦桿だ。そこが俺の手で刺激されてさらに強く、ガチガチになっていく。
あーー…………凄え……頭がくらくらする。
音もない宇宙空間の中で、ただ俺の雄臭い喘ぎ声だけが響く。
興奮が、脳髄に直接蜜を注ぐように甘く囁く。
もっとだ。
もっとやれ。
「もっと……もっと……だっ……」
俺は頭の声にあわせるように叫んだ。欲望は雪玉が転がるように、やればやるほどデカくなっていった。
「お、おおお、俺のチンポ……俺の、デカマラ……俺の……っ!」
声が抑えられねえ。もっと伝えねえと。もっと声を張れ。伝えろ。
俺は自分の竿を指で包み込み、形をくっきりと浮かび上がらせた。
「あ……な、…………なん……だっ……」
のけぞりながらオナる俺の耳に、微かに電子音が鳴る。
これは……通信の音だ。それも強制介入の。
やけに電波が悪いが、聞こえたのはリクの声だった。
『た……いちょ…………応…………答……ッ』
他人の声。
それを意識した瞬間、全身を巡る血がさらに熱くなるのを感じた。
「おおぅぅ……う……ハァ……!」
興奮で思考がぶっ飛びそうだ。
もっとだ、もっと俺を知ってくれ、見てくれ、聞いてくれ。
本能が叩き起こされ、声がますますデカくなる。
「あぁ……聞こえ……る……かぁ」
舌っ足らずな声を出しながら俺は腰を前後に振った。
まるで見えない相手と交尾するみてえに動くと、それだけでスーツの前から気持ちいい振動が突き抜けてる。
「今、ああ……俺ぇ……きもちぃい……すっげえ……隊長は……きもちい……ぞぉ……」
俺はまるで報告でもするように呟いた。
そうするとますます頭の中が気持ちよくなってくる。そうだ、それでいい。そんなふうにルールが勝手に決められているみてえだ。
「ハァ……ハァ……い、今チンポ勃起してる、俺、すげえ勃起……しちまってる……」
まるで変態が電話越しにいたずらするみたいなことを、俺はコックピットに備えられた通信で行っている。
頭の中の隊長イッテツが憤慨している気がする。だがやめられねえ。
「ああ……き、聞こえるかあ……勃起だ、チンポ……勃起、ガッチガチ……ィィ……」
そんなことよりもっと大事な気持ちよさが俺を勝手に突き動かす。
俺の体を、チンポを、口を動かす。
ああ……振動がますます強くなってくる。チンポも腹筋も内腿も、スーツに覆われた部分が全身たまんねえ。
「お前も立派な男になれよ、皆に誇れる、ヘヴィヴァンガード乗りとして」
出撃前にそんなことを語った相手に、俺は今情けねえ喘ぎ声を聞かせている。
いいか、男ってのは気持ちいいとこんな声になるんだぜ。
ヘヴィヴァンガード乗りだろうが、レガシーを守る戦士だろうが関係ねえんだ。気持ちいいってのはそれだけ強えことなんだ。そうやって人類ってのは繁殖してきたんだ。
「あぁ……チンポぉ、つぇえぇ……つぇえよぉお…………♥」
そんなことを全部込めこんで、俺は単純に変態に繰り返しヨがった。
ああなにしてんだよぉぉ、俺。
なにがおきてるんだぁ…わっかんねえぇ……きもちいい……どんどん体があったけえもんに包まれて、溶けて、全部全部さらけ出したくなってくる。
『たい…………ちょう……』
「あぁ……イきそうだぁぁ……俺……隊長、も、もうイッちまいそぉ…………♥」
でもたまんねえぇ…………。
見せてぇんだ、教えてぇんだ、俺のすべてを……。
そうしなくっちゃならねえんだ……俺は必ずそうやって……
『隊長ッ』
「あぁ……あぁ♥♥ 聞こえるかあ、ぐっちょぐちょ音だしてんぞぉお……おれ、おれぇ……隊長からこんな音でてんだぞぉ♥」
股間がビリビリと痺れる。
俺はすがるように、種付けするように、『目の前の硬い物体にチンポを擦り付け』た。
「おぉぉお♥ 受け取れぇッ、俺の、俺の雄イキみろぉお聞けぇぇ……感じてくれええ……♥♥」
俺は激しく腰を揺らしながら、グリグリと勃起を擦り付けた。
スーツの中のぬるんぬるんのチンポが押し付けられ、痺れて、情けねえ喘ぎ声漏れる。
俺の鍛え上げたガタイだ。スーツに締め付けられてきっととんでもなくエロい格好になっちまってる。ああ、すげえ、見せてえ、声だけじゃなくって全部、全部…………。
「ぜ、全部、俺を知ってくれぇ…………ああぁイグゥゥウ…………♥♥」
俺は顔面をぐにゃぐにゃにほころばして、弓なりになって射精した。
本能が満たされる気持ちよさで、なにもかもどうでもよくなってくる。ああ……すげえ……これが……これが……知られる気持ちよさ…………。
『隊長! 起きてください、隊長!』
『イッテツ! 応答しろっ!』
リクとシュウジの切羽詰まった思考が、頭の中に直接響き渡ると同時に、俺は目を覚ました。
「――ッ!! な、なん、何が起き」
すぐには理解できなかった。頭より先に、体の快感と違和感が俺を襲った。
「ぬ……あぁ……ぬあぁぁあ♥ 出る、出ちまうゥゥック、あぁあ……とまらね……あぁぁあッ♥♥」
射精の気持ちよさを感じながら俺は目を回していた。
けたたましい警告音がコクピットに鳴り響いている。全身がどろっどろになっている。汗――違う、そんな量じゃねえ。
俺は目を見開いた。
さっきまでと光景は一変していた。
見慣れたコックピット。機器にスクリーンに操縦桿、機械だらけの空間が、黒くグチャグチャな粘液に溢れていた。
なんだ、これは。
一瞬の混乱。そしてすぐに理解した。
俺は……俺の体と頭と不動αは…………。
「さ、サイラス、サイラスに…………乗っ取られ……あぁぁあああッ♥」
それを伝えた瞬間、俺の脳は本能的な気持ちよさを感じてまた激しく射精した。
つづく

づけかつ Dukekatu
2025-10-12 09:39:43 +0000 UTC代行NT10116
2025-10-08 03:23:03 +0000 UTC