お世話になっております。若林です。
こないだ新人作家さんから「作家としての『個性』や『自分らしさ』はどうしたら見つけられますか」と質問されて、なんとなく答えたことをここで文章化します。
まず個性についての僕の考えは、以前別のコラムでも書きました。
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このコラムでは「何度も同じことをしてると個性として認識される」という話をしています。
ただこれは、そもそも「やりたいこと」「個性として打ち出したいこと」を自覚できてのことなので、それが無い人にとってはあまり役に立たない話かもしれません。
そこで今回は「個性の出し方」ではなく、「個性の見つけ方」について、僕なりの考えをお話しします。
まず前提として、漫画の中で個性として認識されやすいのは、「描き方」や「表現方法」です。
仮に野球漫画ばかり描いてる作家さんがいて、世の中から「あの人といえば野球漫画」として認知されてたとします。
でも他の野球漫画と比べれば「あの人の漫画は他の野球漫画とは違う」と言われたり、別ジャンルの漫画を描けば「野球じゃなくてもあの人の漫画だってわかる」と言われる……。
これが個性が認識されてるということです。
よって「個性を見つける」というのは「自分らしい描き方を見つける」ことだと思って下さい。
ではそのための方法をざっくり言うと……
「なるべく自分にとって楽しい描き方をする」
「それが他人にとっても楽しく感じてもらえるように工夫する」
「その工夫が成功したら個性として成立する」
まとめると「自分にとって楽しい描き方が、他人にとっても楽しく感じてもらえるようにできると、それが個性になる。」ということです。
漫画の描き方っていろいろありますけど、なるべく自分に合った方法で描きたいじゃないですか。
でも自分にとって楽しい描き方が、既に世の中で認められてる描き方と同じとは限りませんよね。
この時、既に世の中で認められてる描き方をなぞって描いてれば、それっぽいものは描けます。ただ、個性が無いとされる人達は、表面的な部分だけをなぞって描いてしまうので、それっぽいものしか描けずに終わるんです。
ただ世の中で認められている描き方に反して、自分にとって楽しい描き方を無闇に選べば、読者に全然伝わらない表現になってしまいがちです。
でも、自分にとって楽しい描き方を他人にも伝わる表現にできたら、それは新しい表現ですし、他に誰もやってないものなので、個性的ですよね。
「自分にとって楽しい描き方」「新しい表現」……こういう言い方をすると、なんだかとても独創的なものを要求されてるように感じるかもしれません。
でも実際は、ほんの些細なことだったりします。
僕は「描きにくい」「描くのが辛い」って思った時にヒントが見つかると思っています。
世の中で既に認められている描き方をやろうとすると、よくそういうことにぶつかります。その時に「この描き方をしないで済む方法はないか」と考えると、自ずと「何が自分にとって楽しい描き方なのか」が見えてくるものです。
また、人はついつい「こう描かなければならない」という考え方をしてしまいがちですが、最初に言った通り、漫画の描き方はたくさんあるんです。
なので「こう描かなければならない」という考えをいったんやめて、「本当はどう描きたいのか」「どう描けたら楽なのか」という考え方をしてみましょう。
「女の子をかわいく描くの無理。ほどほどで許して。」とか
「キャラの過去とか説明するのが疲れる。今だけ描きたい。」とか
「場面を見せるコマを描くのが難しい。描きたくない。」とか
これらは雑な言い方をすると「わがまま」ですが、わがままを通せたら最高に楽で描きやすいですよね。
もちろんわがままを通すのは難しいのですが、それが通用するように工夫できると、個性として成立します。
最初は「そんな描き方をしたらダメだ」と言われることもあるかもしれませんが、何度もやってると「そういう漫画」「そういう表現」として自然と認められるようになります。
その表現が、どれだけ多くの人に楽しんでもらえるかは、作家の腕の見せ所というやつでしょう。
以上が、僕なりの「個性の見つけ方」です。
自分なりに考えだした描き方が、実はもう世の中にあった……なんてこともあります。でも大事なのは、形になった描き方ではなく、その描き方が導き出される過程だと思います。
形になったものは模倣が可能で、目立つ個性はどんどん真似されていきますが、導き出した思考や経験は自分だけの財産です。
自分のわがままを通す自分なりの理論が、新たな表現を生む基礎になってくと思います。