お世話になっております。若林です。
今までの自分の失敗経験を見直してふと思いついた、漫画が描けなくなる10個のパターンを紹介します。
たぶん誰にでも1つや2つは当てはまるような気がします。
①「漫画を描かなきゃ」って思っちゃう
描かなきゃって思うと、逆に描きたくなること、ありませんか?
「~しなければならない」とか「~するべき」って考えると、人は無意識に「失敗した姿」や「困難な姿」を想像してしまうようです。
「コップの水をこぼしちゃいけない」って強く考えるほど、水をこぼした姿や、コップの中で水がブルブル震える様子なんかを想像して、失敗しやすくなるんだとか。
それと同じで、「漫画を描かなきゃ」って考えてしまうと、描けない自分や、苦しんでいる自分を想像してしまうものです。
あと僕は、思いつきで描いた漫画がバズったりして、同人で描いてるうちは純粋に楽しいのですが、それが商業化したタイミングで毎回ちょっとテンションが下がります。
趣味から仕事になって、義務とか責任が増えたことで、「描かなきゃいけないもの」になるからなんでしょうね。
なので僕はいつも「描きたい」「描こう」って思うようにしています。心から思えない時は、構想を人に話して「何それ面白そう!!早く描いて!!」って言ってもらって気分を上げています。
②批判してくる人の意見に「本当のことを言ってくれてる」と思っちゃう
自分で自分の漫画を面白いと思えない時って、あるじゃないですか。特に新人の頃は。
そういう時って、人からの肯定的な意見に対して「気を遣われている」「本当はつまらないと思ってるくせに……」って思っちゃうことがあるんですよ。
逆に否定的な意見を言ってくる人に対して「この人は本音で話してくれている」って思っちゃったりするんですよね。
もちろん、つまんないけどそのまま感想を言うと傷付けちゃうから、言葉を選んで伝えたり、いいとこだけ見つけて伝えてあげようっていうことは、よくあります。
っていうか、たぶんプロの世界ではそれが基本で、そっちのほうが人は伸びるってみんな知ってると思うんですよね。
実際のところ、悪いところを探して直したって、あんまり作品は良くなりません。良いところを見つけて伸ばしていくと、悪いところも自然と直ってくことが多いです。
悪いところ探しは、精神の健康的にも良くないです。傷つけられて大切にされてるとか思うようになっちゃうと、いずれ他人にも同じことをし始めて人間関係も壊れます。
自分でつまらないと思ってるものが人から褒められたら、「自分では気付いていない、あるいは価値を感じてなかった部分に、意外といいところがあったんだな。びっくり。」とか思っとけばいいです。
③ノウハウばっかり探しちゃう
描けない時って、何かいい方法や智恵があるんじゃないかと思って、ついついネットでノウハウを検索したり、ハウツー本を買ったりするじゃないですか。
それ自体は別に悪いことじゃないのすが、実際それが役に立ったことってどれだけあったでしょうか。
もちろん、役に立ったこともあるでしょう。世に出回ってる情報は、基本的に全部「正しい」ことだったりしますし。
ただ、ノウハウばかり詰め込み過ぎて、逆に自分の中でハードルが上がって、描けなくなっちゃうこと……ありませんか?
「情報通りのことができない」「情報通りやってるのに上手くいかない」「情報通りやらなきゃいけないって思うと手が動かない」……こういうことってありませんか?
誰かにとっての正しさが、自分にとって正しいとは限らないんです。
自分の教科書は自分で作りましょう。実際、自分で発見したことだけが自分の血肉になります。
それが結果的に、誰かの情報と同じことだったとしても、その結果にたどり着くまで自分で考えて実践して経験した過程が大事だったりします。
④他人の漫画の悪いとこばっかり見ちゃう
ある程度の技術や知識が身につくと、他人の作品を見た時に、それとの答え合わせをしたくなりますね。
でもこういう時って、自分の中で余裕が無くなってる時だと思います。他人を否定することで自分を肯定しようとしてる状態です。
同時に、自分の作品に対しても、悪いとこばかり目が行ってる状態かもしれません。
悪いとこ探しもいいです。それで発見があったりしますし、他人と違う発想にたどり着くこともあります。
ただ、良いところをたくさん見つけられるほうが、目利きとしては優秀で、心の健康的にも良いです。
他人が気付かないような良いところを見つけて「俺が見つけた!!」って言いたいものです。
⑤感想より知識ばっかり言っちゃう
映画とかを観て「どうだった?」と訊くと、「感想」を言う人と「知識」を披露し始める人がいます。
「感想」っていうのは、心がどう動いたかを言語化する作業です。「あのシーンが良かった」「主人公の気持ちに共感した」「あいつだけは許せない」などの、主観的な意見です。
でも「どうだった?」と訊かれて、自分の感想を言うのが苦手な人が世の中にはいます。
知識を前提として「あのシーンの演出はさすが」「主人公の描き方が監督らしい」「あいつは誰々をモデルにしたらしい」など、自分の意見を言ってるようでただ知識を言ってるだけのこと、ありませんか?
知識や技術に注目して、それについて話すのもいいです。「監督らしい」とかも、そう思ったんなら、感想っちゃ感想です。
ただ、もしそれが、「ちゃんとした意見を言わなきゃ」っていう強迫観念から来てるのだとしたら、そんな必要は無いです。
その強迫観念は自分の作品制作にも影響してきます。無意識にハードルを上げて「ちゃんとしたものを作ろう」と迫ってきます。
まずは「面白かった」「つまんなかった」でいいです。知識を引用してもいいので、そこから自分の気持ちを引き出して、素直になりましょう。
⑥型にはまろうとしちゃう
型にはまること自体は、全く悪いことではありません。
ただ、新人がはまろうとする「型」は、表面的なことが多いです。
「ONEPIECE」が出た後、ワンピっぽい新人の読切をよく見た覚えがあります。何にも考えてなさそうな主人公が出てきて、問題を抱えたヒロインが出てきて、いかにも後でコテンパンにされそうな悪役が出てきて……っていうやつです。僕も描きました。
そういう型をなぞって話を作ることによって、「キャラがストーリーのために動かされてる」みたいになること、ありませんか?
名作の型を参考にするのは大事だと思うんですけど、素人が型だと思って見てることは、その作品の表面的なことだったりします。
かといって、作品の根本的な型を見出すのは、常人には難しかったりします。
他人の型にはまるのは、普通に難しいことです。相性によって「はまれる・まはれない」もあると思います。
無理する必要は無いんです。「はまらなきゃいけない」って思うとキツくなります。「一回はまってみるか」って思うくらいがちょうどいいと思います。
⑦一つのアイデアに固執しちゃう
普通、人には発想力なんてそんなにありません。
漫画家を目指す人が、みんなぽんぽんアイデアを発想できるかというと、そんなことはなく、一つのアイデアを出すために苦労してる人のほうが多いです。
そのため、苦労してひねり出した一つのアイデアに固執してしまうことがあります。
一つのアイデアに固執すると、視野も狭くなりがちで、変なこだわりも強くなっていき、いつまでも何も形にならなかったりします。
もちろん、一つのアイデア、一つの世界を突き詰めて考えていけば、すごいものができることもあるのでしょうが、それは他のアイデアを走らせながらでもできることじゃないでしょうか。
もしかしたら、アイデアを捨てることで「自分の大事なものを捨ててる」ような感覚になるかもしれませんけど、本当に大事なものだったら捨ててもまたどこかで必要になりますよ。
⑧一つの原稿に時間をかけすぎちゃう
絵にしても話にしても、描くスピードは速ければ速い程良いです。
時間がかかればかかるほど疲れるので、次の作業が面倒になります。
もちろん速すぎてクオリティが落ちてもしょうがないのですが、多少時間を省略しても、実はクオリティはそこまで変わりません。
たまに時間が無くて、「クオリティを犠牲にするしかない……!!って思いながら描くことがありますが、後で読み返すとそんなに普段とクオリティに差が無いってことがよくあります。
創作活動には「妥協」が必要だと思います。「妥協」って考えるのに抵抗があるなら、「取捨選択」とかでいいと思います。
「妥協」無しに作品は形になりませんし、そもそもみんな無意識に何かしらの妥協をしてるはずです。
自分の中で、何は妥協して良くて、何を妥協しちゃダメか、考えながら自分の創作活動を楽にしてあげましょう。
「何を妥協するか」も個性とか作家性の一部なんだと思います。
⑨「自分にはできない」って思いこんで考えを止めちゃう
誰にでも、できないこと、やりたくないことはあります。
でも、「できない」かどうかはやってみないとわからないので、とりあえずやってみたほうがいいです。
ただ、できないことをそのままやって、意外とできた……なんてことも、そんなにありません。無理なものは無理です。
なので、できないことをそのままやるのではなく、「自分にできる範囲でやるとしたら」「自分ならどうするか」という視点を持つことが大事な気がします。
結果的に面白いものや売れるものができてればいいはずなので、やり方は何でもいいんです。僕だって「素敵な恋愛漫画を描くなんて自分には無理」って思ってましたけど、「でも自分が描くならこう」って思って描いてたら形になりました。
できることが見つかると、人は前向きになれます。
⑩他人の話をちゃんと聞かずにわかった気になっちゃう
僕も大人になってから痛感したことなんですけど、人って、他人の話、実は全然聞けてないんですよ。
僕もそうでしたが、アシスタントと仕事をしてると、こっちの出した指示を勝手に解釈して、指示と違うことをされることがあります。
そのためうちでは、アシスタントに指示を復唱してもらうようにしています。言われたことを自分の言葉で言い直すという工程を挟むと、お互いに指示を客観的に確認することができるみたいです。
また、漫画を編集さんに見せた時、編集さんがいろいろ意見を言ってくれるんですけど、そのほとんどをよく理解してないまま「わかった」って思うっちゃうことがあります。
僕は昔、編集さんから「キャラが立ってない」って言われて、なんとなく「魅力が無い」っていうふうに解釈して、ネームの直しをしてました。
ただある日「キャラが立つって何だろう?」と思って編集さんに訊いてみたんですね。そしたら「それは人による」って言われたんですよ。びっくり。
お互いに解釈の曖昧な言葉を使って仕事してれば、目指すものもよくわからなくなります。
人の話を聞く時は、「自分は相手の言ってることをちゃんと理解できてるか」という視点を持って、確認・理解する工夫が大事だと思います。
……いかがでしたでしょうか。
描けない人には、たぶんいくつか当てはまると思います。
どの項目においても、「~しなきゃいけない」「~すべき」という他者基準の考え方をやめて、「自分ならどうするか」「自分はどうしたいか」という主体性のある考えるのが良い気がします。
考え方はクセになりますね。