お世話になっております。若林です。
うちで一番長く働いてくれてるアシスタントのAさんは、よくつまらないミスをします。
「これ何度も言ってるじゃないですか」
「普通に考えたらこうはならないじゃないですか」
「順序通りやってれば間違えないはずじゃないですか」
そういうやり取りを今まで何度もやってきましたが、いまだにミスは無くなりません。
そもそも人間は失敗する生き物なため、ミスを完全に無くすことは無理なのですが、他の新人アシスタントと比べても、明らかにミスの頻度が多いです。
でも実は、僕がアシスタントだった頃、似たような感じでした。
21~24歳の頃ですね。いつもつまらないミスをして、先生に怒られてました。
当時は、自分ではちゃんとやってるはずなのですが、やってみるとちゃんとならないということが何度もありました。
これは技術的な問題ではなく、心理的な問題だったと思います。
先生は「僕にもできる仕事」を指示してくれていましたし、何なら僕にはそんなに高いクオリティの仕事を求めてなかったと思うんですね。たぶん。
それでもできなかったのは、「怒られたくない」とか「迷惑をかけたくない」とか、プレッシャーが原因だったのでしょう。
その後自分がプロになって、自分で自分の責任を取るようになってから、「他人に迷惑をかける」というプレッシャーから解放されて、少しずつ作業が安定していきました。
ただ今度は、アシスタントをしてくれている妻が、同じような状態になっていったんですね。
これは完全に僕のせいで、連載始めたてでピリピリしてたので、妻にプレッシャーをかけていたんです。
ある日妻から「怒らないで」って言われて、「怒ってないじゃん……」って思った瞬間に「あ……僕は怒ってる自覚が無いのか……」と気付いて、そこから徐々に落ち着いていき、妻もプレッシャーから解放されたのか、変なミスをしなくなりました。
そういうことがあって以来、アシスタントにはなるべく怒らないように、プレッシャーをかけないように……してるつもりだったのですが……。
そこでいろいろ調べてみたところ、「イップスではないか」という仮説にたどり着きました。
イップスとは、よくスポーツ選手などが陥る状態で、「できるはずのことができなくなること」らしいです。
心理的な問題で、原因は人それぞれなのですが、大体何かの失敗や重圧をきっかけに始まり、頭が固定観念や強迫観念でいっぱいになると、マイナスなイメージに支配され、それを無意識に実行して「できるはずのことができなくなる」のだそうです。
そのため、本人のやる気とかの問題ではなく、むしろ真面目で考えすぎてしまう人が陥りやすい症状なんだとか。
特に普段から「~しなければならない」「~すべき」という考え方をしがちな人ほど、イップスになりやすいそうです。
イップスを克服するには、まずは自分自身と向き合って、ありのままを受け入れるところからスタートらしいです。(「自己肯定感」についての本とかを読むと、同じことが載ってたりしますね。)
それから「~しなければならない」「~すべきだ」という考え方を、「~したい」「~しよう」という考え方にするようにして、普段からポジティブな思考を身につけるのが大事だそうです。
……どうでしょう。このコラムの最初の文に戻ってみて下さい。
僕こそが「こうしなきゃダメでしょ」「こうするべきでしょ」みたいな言い方をしてるんですよねー。
アシスタントが何かミスして、教える作業が発生した時に、いろいろ言い方あるだろうに、わざわざこういう言い方をしてたんですね。
ちなみにその人以外の、最近入ったアシスタント達には、たぶんこういう言い方をしてないはずです。あの人達にはそもそもミスを指摘する機会が少ないので。
でも長く働いてくれてるアシスタントは、常にイップス状態なので、どうしてもミスをします。そしてミスをすればするほど、こういう指摘のされ方をされるので、悪循環になってたんでしょうね。
今後は僕も言い方を考えます。反省。
※追記
ちなみにこの「イップス」、そもそも多くの漫画家志望者にも当てはまることのような気もします。
よく描けない人の話を聞いてると、考え方が「~できない」「~しなければならない」「~すべき」みたいな感じのこと、多いですし。
「じゃあ思ってるように描けばいいじゃん」って言っても、思うように描けないのは、たぶん無意識にいろんなことを我慢して、無理なことをしようとしてるからではないでしょうか。
たぶん僕も、描けなかった頃はそういう考え方だったような気がします。
むらた
2021-06-17 01:50:42 +0000 UTCzaehar
2021-06-15 01:23:54 +0000 UTC