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【コラム】連載が決まった時はいつも負け方を考える

お世話になっております。若林です。


連載が決まった時、僕はいつも「負け方」を考えます。

「負け方」というのは、漫画が売れずに終わった後の、受け身の取り方のことです。

(漫画の物語の終わり方のことではありません。)


前提として、漫画なんて売れない可能性の方が高いので、負けた時のことを考えるのは当たり前です。

それに、売れた時のことはその時考えればいいですが、売れなかった時のことをその時考えても遅いです。


考えることは大きく3つ。


①経験を得られるか

②仕事を増やせるか

③お金を残せるか


①経験を得られるか

「経験」というのは、単純な技術のこともそうですが、重要なのは「自己認識」だと考えています。

連載を通して見える、自分の作家性。

これが連載で得られる一番大きな財産だと考えています。


②仕事を増やせるか

たとえ連載が打ち切りで終わっても、可能性を見せることができれば仕事の依頼は来ます。

仕事の人脈さえできれば、一から営業する必要もありませんし、次の行動を早めることができます。


③お金を残せるか

生活基盤が安定してないと、人は焦ります。

そのせいで、自分に向いてない漫画を描いたり、悪条件の契約を結んだりするんです。

連載を終えた時にいくらお金を残せるかは重要です。


以上のことを踏まえた上で、僕が理想とする「負け方」は「いかに次につなげられるか」です。


経験については、ぼんやり描いてたら、得られる経験もぼんやりしたものになります。

そこで連載を始める前には「この漫画の狙いはこれ」というものを決めます。

それがちゃんと狙い通りにいったか・いかなかったかを、後で検証できるようにしておくんです。

そうすることで、「できること・できないこと」「向いてること・向いてないこと」が客観視できるんです。

すなわち「作家性」です。


「作家性」がわかったら、他人にもわかってもらえるように可視化します。

雑な考え方をすれば、単純化して、パターン化して、繰り返せば、嫌でも他人に伝わります。

これによって「自分はこういう作家です」というのをアピールします。

これは読者へのアピールでもありますし、編集者へのアピールでもあります。

何ができる作家なのかがわかると、何を期待すればいいのかもわかるようになるんです。


「自分の作家性」「仕事を選べる状況」この二つが残っていれば、お金がそんなに残らなくても焦ることはありません。


僕は今まで二度、連載を打ち切りで終わらせています。

その度に上記のような負け方をして、次につなげてきました。

だからって、現状を勝ってるとも思ってませんが、才能無い人間が工夫しなかったら何も残りません。


……こんな話を、いつも初連載が決まった新人にしてたのですが、初連載で気分がアガってる新人に「負けることが前提」みたいな話をしてもおせっかいが過ぎるので、ここに書いておきます。


※追伸

僕が考える最悪の「負け方」は、「次何していいかわからない」です。

僕はできることが見つかると前向きになりますが、できることが見つからないと後ろ向きになります。


「自分は何を描けばいいんだ……」

「どうすれば面白いものが描けるんだ……」

「何も描きたいものが無い……」


っていう地獄みたいな状況を新人の頃に散々味わいました。

あの頃「君は〆切とか無いから全然苦しくないじゃん」などとプロの先生から多忙自慢マウントを取られたことがありますが、僕からしたら〆切に追われることより「何も描けない」の状況のほうが辛いです。

何者にもなれず、作ったものに価値も無く、誰からも必要とされないのって、本当に辛いんですよ。


なので僕は、「次につながる負け方」をいつも考えています。

【コラム】連載が決まった時はいつも負け方を考える

Comments

なるほどー こうゆうところまで考えてから 筆を持って描かれた作品なんだなってなんか納得できます。 作品から滲み出てる気がします。 失敗を繰り返して試行錯誤されて 意識から外れたところから出てきた動きって 武術とか料理人の動きとか ジャンルに関わらずよくわからんけどなんか見入ってしまう そんな感じがあります。


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