「それで…」 二本の指で丸眼鏡の位置を正すと 記者はオーロラナイトに質問を続けた。 「カナダでの活躍をまとめると今のような感じで良いですか?」 「ああ、いいだろう」 オーロラナイトは大きく頷いた。 バシャッ! 強めのストロボでシャッターが切られる。 会話の合間に撮影をするカメラマン。 キャップを深く被り人相は窺えない。 スタッフジャンパーで隠れてはいるが、 とても体格が良さそうだ。 「先週の帰国から間もないのですが、既にご活躍と聞きました。 どのような人命救助をされたのですか?」 記者の鋭い眼光がヒーローを見つめる。 「?…、ああ、ヴィランに襲撃されていた民間人を何人か救助した」 オーロラナイトは一瞬の思考の末、記者の質問に答える。 プライバシーやコンプライアンスに問題がない範囲で 状況や対応策を話す。 神経質そうな記者は録音機器のスイッチを切った。 「ヒーローインタビューはお陰様で記事に纏められそうです」 「それは良かった」 オーロラナイトは微笑む。 日本国民が拠り所としてた最強と名高いヒーローが引退し、 不安が広がっている昨今、自分の露出を高め、皆を安心させたい。 オーロラナイトは使命感でこのインタビュー依頼を 快く引き受けたのだ。 「次は撮影に入りますので、少し休憩にしましょう。 喋り通しで喉が渇きましたね、ミネラルウォーターでも…」 撮影の際、光の反射を補強する通称レフ板を持っていた、 これまた逞しい男性は指示を受けて 奥の冷蔵庫から良く冷えたペットボトルを取り出し、 コップに注ぐと2人に手渡した。 記者はすぐさまゴクリ、ゴクリと喉を鳴らす。 オーロラナイトのコップを受け取る手が震えていた。 心配になった記者が声を掛ける 「大丈夫ですか…?」 「いや、すまない、帰国後から休まずに活動していたものだから さすがに疲れたかな…」 そう言って、駆け寄り支えようとするスタッフを左手で遮った後 「大丈夫だ。ありがとう」 と言い、 水をグイっと飲み干した。 ◇ ◇ ◇ インタビューが行われていたのは 都下のあるビルの一室。 剥き出しのコンクリート壁。 無機質なデザイン性重視の部屋は冷たい空気が漂っていた。 ドサッ オーロラナイトは大きく頭部を揺らしたかと思うと コンクリートの床に倒れ込んだ。 「ふぅ…」 カメラマンがオーロラナイトの左肩を足で何度か揺する。 ヒーローは起きない。 「流石だなセクレイター」 記者に向ってそう言い放つと、 昏倒するヒーローをバシャッと撮影した。 大柄な2人、カメラマンとアシスタントは変装を解く。 1人は白髪で浅黒い肌にサングラス。 もう1人は黒髪に青い瞳、白い肌。 彼等は頭部と脚部に別れてヒーローを抱え、 隣室へと運び込んだ。 ベッドに荒々しく横たわらせる。 弾むベッドのバネ。 「重いんだよ!」 悪態をつく白髪。 手際よくオーロラナイトを脱がしていく2人。 ボディラインが分かりやすいフィットしていたシャツと ジーパンは瞬く間に放り投げ、捨てられた。 Tシャツとローライズブリーフ姿にされても 意識を取り戻さないヒーロー。 作業をしながら黒髪の男性が セクレイターと呼ばれた記者に質問する。 「今回のオーダーは【箱庭】か?」 「ああ」 ぶっきらぼうに答える記者。 「なら穏健派の【揺り籠】?、それともブっ飛んでるカグ…」 せせら笑いながら喋る白髪を 「黙れ赤爪。さっさとしろ」 記者はピシャリと遮った。 「へぇい」 褐色の大男は渋々奥からビデオカメラを持ってくると、 三脚にセットし ベットに横たわるヒーローにピントを合わせた。 「青糸はコイツを縛り上げろ。得意だろう」 小さく頷く色白の筋肉質な男性。 するすると手際良く革や荒縄等で 意識の無い巨漢のヒーローを拘束する。 ◇ ◇ ◇ (ぐ、ぐむぅ) オーロラナイトは朦朧としながらも、 何とか意識を保っていた。 最初の違和感は記者の質問だった。 ヒーロー活動は様々である。 なのに、彼は「人命救助」と断定した。 その無意識の警戒が、手渡された水にも向けられた。 オーロラナイトは熱を操る。 念の為、一気に飲んでも火傷しないギリギリの温度まで ミネラルウォーターの温度を一瞬で上昇させたのだ。 効果範囲の狭いコップの中で、 出力調整も微量なコントロールが可能と言う事は、 オーロラナイトの卓越した能力の証である。 この加熱が、薬物を微力ながら弱めていたのだ。 (箱庭…?、むぅ、うぅ……、ゆ、揺り籠……何だ…?) 強烈な目眩。 意識が飛びそうになる。 (ヴィランの組織か…?、き、聞いたこと…無いな… クソッ、身体が動かん…) 抵抗止む無し。 次の瞬間、衣類を脱がされながら ヒーローの意識は陥落した。 -------------------- 凌辱インタビュー②へ続く