SakeTami
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効率のよいハント(後編)

この2人はドア/水を介して空間を繋ぐ能力なんですが、

属性とかを好きに捻じ曲げられるのでその延長でサイズも変えられますよっていう。

「まずどの階に何人くらい居るかざっと見る」

「ハイッ」

ふたりは上から下まで順番に中を覗いていく。

「おー居る居る。見ろよ」

「ホントだ。こんないっぱい。こいつらもう逃げられないんスよね?」

「そういうこった」

中の小人たちはそれを聞いて騒ぎ出すが、ふたりはそれを気にも留めない。

「七階かな」

そう言うと、芳樹は膝立ちになってビルの七階に腕を突っ込んだ。

中のものを窓の外へ掻きだしていく。

オフィスには荷物の詰まったデスクや棚、コピー機など、重量のあるものも沢山置いてあるが、

それらがひとつ残らず紙屑のように道路に投げ出されていく。

ものの数分もしないうちにフロアは空っぽになった。



「○×ビルの皆さ~ん、七階に集まって下さいね」

先ほど以上に明るい調子で中の小人たちに呼びかける。しかし小人たちは中々動こうとはしない。

「さっさとしねーと上から順に潰してくから」

今度は打って変わって元よりも低い声で言う。それを聞くや否や、ほぼ全員が一斉に歩き出した。

芳樹は移動待ちの間に向かい側のビルでも同じことをする。

「お前もそっちのビルでやってみ」

「ハイ!……あ、床抜けちゃったッス」

「……ハァ。多少小人居てもいいから一個上の階で再チャレンジな」

「ウィーッス」

中には小人が高層階に行かず低層階で集団脱出を図っているビルもあった。

そんな時には容赦なく2、3階に蹴りを入れ、大穴を開ける。

「俺、言いましたよね?下の階は危ないって」


小人をワンフロアに集め終わったら、次の行程へと移る。

「お待たせしました。さて皆さんには選択肢をあげます」

ガラス越しではなく直接相対する巨人の迫力に、小人たちは微動だにせず立ち尽くしている。

「痛いのが嫌な奴は俺の手に載って」

芳樹はそういって窓枠の前にその手を広げる。しかし誰も動く様子はない。

「痛いの好きかー、そっか」

その時、一人の小人が窓の方へ駆け寄ってきた。

「よしよし良い子だ」

自分から手に乗った小人をやさしくジップ○ックに移し替えると、窓から中を覗いて吐き捨てるように言った。

「……お前らはいいんだな」

直後、小人達がわらわらと窓際に集まる。

「初めからそうしろってんだよ」


それでも来なかった小人たちは手を突っ込んで、乱雑に引っぱり出す。その過程で何人かの手足が折れたり、千切れたりした。

あとは仕上げに他の階をざっと確認して完了だ。

秀雄の様子も見てみたが、少々つまみ食いが激しい以外は特に問題はなさそうだった。

手に乗ってくるまでにかかる時間に限っては芳樹より短いくらいだ。


――1時間後


芳樹が用意したマチの広いジップ○ックには大量の小人が詰め込まれていた。

「もう十分溜ったな。そろそろ帰るかぁ」

そうは言うが、まだ封鎖したビルは半分ほど残っている。

「え~、もう帰っちゃうんスか?勿体なくないっスか?」

「いいからいいから」

二人はそんなやりとりをしながらその場を立ち去った。



巨人達が帰っていく。

ドアが閉じられるとその姿は徐々に薄くなっていき、隠れていた向こう側の景色が見えてくる。

「終わった……の……か……?」

「た……助かった。助かったぞ!うわぁああ!!」

「やった!」

「よがっだよぉぉ!!」

獲物を中途半端に残して帰ったことに一抹の不安は残るものの、みんな喜びを隠さなかった。

後は、巨人の力で滅茶苦茶に破壊されてしまった入口をどうやって抜けるか考えなければならない。

「助けが来るのを待つか?」

「非常用の梯子とか無いかな」

「俺、一階を見てくるよ」

そう言ってひとりの男が非常階段を下りた。

一階はガレキやガラスの破片で酷い有様だったが、なんとか通れる道を見つけて外へ抜け出した。

隣のビルの方を見ると、窓は割れ、道路には家具やOA機器が山積みになっている。

その中には隠れていたであろう人の姿もあった。男は思わず目を覆った。もう少しタイミングが違えば

自分たちのところもああなっていたかもしれない。


あの巨人、どのくらい大きかったんだ。ふとそんなことが気になり、ドアのあった方を眺めた。

そしてドアの様子を思い出そうとした。そうそう、こんな感じの色で……えっ?

何もなかった空間に再びドアが現れようとしていた。それも今度は先ほどとは比べ物にならない大きさだ。

「なっ……」

蝶番の金属音が有り得ないほどに低く、重い。ギギ、ギギ、ギギ。少しずつ開いていく扉。

道沿いの建物が次々となぎ倒され、挽き潰されていく。


「あー……ダメだ……」

ドアの先に現れた人影を見て、男は自らの運命を直感した。


――更に1時間後


災厄を運んできた巨大なドアは今や影も形もなく、後には数キロ四方の更地だけが残った。

先ほどの男がどうなったのかは誰も知らない。


「いやあ、ぶっ壊すのも良いもんっスねえ!あのサイズだと小人も蟻んこみたいだし」

「だろだろ。それにしても大漁だな。他のヤツらにもおすそ分けしてやるか?」

「そっスね~。あ、じゃあ、こびパしましょうよ(※注:こびパ=こびとを食べるパーティー。たこパの親戚)」

「いいなそれ。小っこい方は食い応えねぇし、サラダのトッピングにでもすっかな~♪」

「えーオレ野菜嫌いっス~」

「偏食すんなよ。肉つかねーぞ」

他に誰も居ない野球部の部室で、小人を使ったキャッチボールをしながら今日の収穫について話し合うふたり。

秀雄は唐突に手を止めて、小人を脇に置いた。

小人は逃げ出す体力も残っていないらしく、ぐったりと横たわっている。

「あの……先輩……」

後輩が、もじもじと両の人差し指をこすり合わせながら言う。

「ん?どした?」

「良かったら、また一緒に行ってくれませんッスか?」

「おう、いいぜ(お、ラッキ~)」

「やったぁ、じゃあ明日練習終わりに!」

「ってはえーな!……でもまぁ、行くかァ!!」

「ハイっス!!!」


(終)

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