SakeTami
霊符
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おしょくじSS①

いつもの店、ただのチェーン店のサイゼリヤ。 家から近いからそこに決めただけの店。 1名様でしょうか?という問いに声を返すのも億劫に思い、指を一つ立てて応える。 店内はもうだいぶ混み合っているのか店員はキョロキョロとあたりを見回してから4人がけのテーブルに案内した。 良いのだろうか、と思うが広く場所を取れるのは好都合だった。 ごゆっくりどうぞ、という言葉を聞き取る前からメニューを開き、ミラノ風ドリアとマルゲリータピザを頼む――いや、頼もうとして止める。ぐぅ、と腹の虫が大きく鳴った。「ソレだけじゃ足りないぞ」と異議申し立てをするように。 視界いっぱいに広がるアイドルのようにキラキラと一番キレイに、おいしそうに見える宣材写真集のように料理達に改めて見回していくとビビッとくる存在を見つけた。「イタリア風もつ煮込み」ミートドリアのどっしりとした味わいにも、マルゲリータピザのこってりとした味わいにも居ない、しっかりとした肉の形。これだ、と注文票に書き込む。 だのに、ずく、と胸にしこりが残る。それで良いのか、と誰かが横で強く叱責するように苛む。 食べたいものを食べて、その食べたいものの不足分も食べるというのに何故か。 大盛り、という文字がメニューの下の方でちらちらと伺っていた。 けれど、それを頼むとどれだけお腹が一杯になるか。 午前10:13 (日) ズラ、と並ぶドリア、ピザ、もつ煮込み。 もう戻れないな、と思いながらドリアの真っ白な平原にスプーンを入れて少しだけ掘り返す。もくもくと立つ湯気を横目にスプーンについたソースをぺろりと舐めてそのままもつ煮込みに手をのばす。 熱さから、食べられる順に食べるのだ。 早速と言わんばかりにメインの「もつ」を口に放り込む。 スープの爽やかでコクのある味わいと、くにゅくにゅとした楽しい食感を味わいながら、アクセントのように追って野菜たちを放り込む。 しゃくしゃく、くにゅくにゅ、もしゃもしゃ。次々と変わりながら混ざっていく味覚と食感を楽しみながらもう一度ドリアにスプーンを入れる。 もう、食べ頃になっていた。 ずしっと重みを感じるほどにいっぺんにスプーンでドリアを掬う。大衆食堂という誰しもが誰しもに無関心な場所だからこそ、誰も見ていないだろうことを良いことに大きく口を開けていっぺんに放り込む。そうしてコレでもかと『ミートドリアの味』が、チーズとミートソースと米の味が、エンドロールのファンファーレのように盛大に広がるのを楽しむ。 それを口の中で転がして、唾液でとろかし、流し込んで、もう一口。 合間を縫うようにしてもつ煮込みのスープを挟む。 お腹に、どしどしと重みのある塊が落ちてく。そしてぽかぽかと温かい心地よさが全身に広がっていく。 10分も経たず、ものの数分でドリアも、もつ煮も空になっていた。 普段の食事なら、これでいい。此処で満足できる。だというのに、だ。 手は、ピザを半分にだけ切り分ける。それをそれぞれ半分に大胆に折りたたんで――テレビで見た本場の屋台での食べ方がそうだったから――がぶりと口に押し込むようにしてかぶりつく。 ガツンとくるチーズとトマトの味、けれどミートドリアより幾分さっぱりとしたそれを大きく咀嚼しながら口に押し込む。 飲み込んでいく。そしてそれを、もう一度。 最後は1分もかからずに平らげていた。 すっかりと嵩の増した、固くなった――表面はやっぱり柔らかい――お腹を撫でる。 テーブルいっぱいに広がった空の皿を見ながら、二人席ならやっぱり狭かったな、と店員の慧眼を内心で褒めた。勿論、そんな事いちいち考えてはなかったのだろうけれど。いや、どうだろう。悪意にせよ、善意にせよこちらを見て”そう”考えたというものなくはないか。 伝票を手にとる。 これ以上は入らないだろうと。 メニュー表の裏手に隠れていた、プリンが私を誘惑していた。 ...end


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