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肥満化催眠 美人エージェント潜入捜査物語 OP~第一話

『導入部』 都内某所。 都心から離れた郊外に建てられた高級住宅地の中でもひときわ大きな屋敷に彼女は居た。 紅葉を迎えた庭の木々を背景に、シックなダークカラーのアフタヌーンドレスを身に纏い、ロッキングチェアに座って前に垂らして胸先に降りたハニーイエローの髪をゆっくりと撫でつける様子はまるで洋画の様。 「――なるほど、たった一年で次々と売れっ子スターが表舞台から姿を消す学園、ね。」 その怜悧なアッシュカラーの瞳が手元の依頼文――そう、彼女に充てた【捜査依頼】の文に鋭く向けられる。彼女の名前は美貌院 秀子(ビボウイン シュウコ)。解体された今なお息づく財閥「美貌院」家の一人娘。そして女神の様な美貌と頭脳を持ち合わせた神童。その才覚をもって特殊調査代行会社「S・Bエージェンシー」を立ち上げ、既に何件もの難事件・怪事件を解決してきた超絶美人天才捜査員である。 そしてそんな彼女に届けられた依頼とは、とある学園の調査。 「しかし、リリ学の調査とはね。あの時は確かに私の負け。……でも、本腰を入れてやるのなら丸裸になるまで露わにしてみせようじゃない♪」 『聖・出撫理満久理学園』――通称リリ学。 昨年に設立されたこの学園には多くのティーンズTVスター達が多く転入して話題になったのだが、そのセキュリティと情報統制によってマスコミ達からも秘匿され、世間の話題からもあっという間に姿を消してしまっている秘密の園。それは秀子にとっても同じであり、興味から調べてみようとしても片手間の作業だったとはいえ、まるで情報を取り出せず悔しい思いをしたものだった。そのリリ学への調査依頼、個人的なリベンジマッチでもあるし、蜂蜜のような甘い香りのする手紙を読んだ秀子はすぐさま依頼を受ける事を決めたのだった。 不思議な事にその依頼は聖・出撫理満久理学園の理事長からの依頼であり、報酬についても一切記載されておらず、更に彼女の入学の手続き書類も全て同梱されていたのだが―― 「すんすん……はぁ、それにしても良い香り……♪ 一体どこの香水を使っているのかしら?」 その時の秀子には、どうしてか文章の内容を受け取る以上に頭を働かせることは出来なかったのだ。 -------------- 出撫理満久理学園 学則ノ一 「学園の常識は世間の常識。疑う事なく学則には絶対服従すること」 そうして、依頼から数日後。 『聖・出撫理満久理学園』は物理的な侵入の難易度を上げる為か、とある島を買い取ってその一帯を敷地としており、秀子もまたフェリーに乗って陸の孤島、『恵呂肉島』に足を踏み入れた。 「此処が恵呂肉島。そして――」 目前に広がる、どこぞのテーマパークもかくやという広大な敷地を存分に使った学園に自然とごくりと喉が鳴る。自ら行った事前調査では、マスコミだけでなくゴシップ紙からの強行取材はおろか、知名度目当ての有名ハッカー集団のクラッキングすら跳ね避け続けている未知の牙城。そこに身一つで入り込むというのは自分でも思ってみない程の緊張があるが、 「リリ学、だね!しゅーこちゃん! うわぁ、ドキドキするなぁ…。私ぐらいのかわいい子なんていっっ~~……っぱいいるんだろうなぁ~。」 その横でほう、と息をつき身近な未来を想う少女――同じフェリーに乗船していた化粧っけが薄いにも関わらず目の覚めるような凛々しい美しさを持ち、スレンダーながらも秀子に負けず劣らず出るところの出た、鈴の鳴るような可愛らしい美声を持つショートボブの黒髪の彼女は『高良 美波(タカラ ミナミ)』、みなみんの愛称で若くして「恋するジュエリー」、「待ちきれないの」などミリオンヒットを持つ今まさに人気の絶頂にあるアイドルなのだが、彼女もまたこの学園に転入を決めたのだという。 曰く、「入学のお誘いを受けたときに、もう『行くっきゃない!』って感じがしてさ♪」とのこと。こんな不便な地に根を張ってしまえば、アイドル業、都内でのツアーやイベントの参加なども難しいのだろうに、事務所がよく許可を出したものだと思ったが…… 「ほら、しゅーこちゃんもこういうお手紙、もらったから来ようって思ったんでしょ?このあま~い香りの手紙。」 そう言って取り出された蜂蜜の様な甘い香りのするカード。そこには『高良 美波様に、翌月から当学園に転入して頂きたくお願い申し上げます。』と短いメッセージが書いてあり、そのあまりにも素っ気なく、パンフレットすらつけていない手紙を読んで秀子は不信感を覚えて手紙を手に取り―― 「――スンスン……あら、これもあの甘い香りが……?」 「くんくん…… えへへ、匂いだけで蕩けちゃ~う♪そうなの~♪こんな素敵なお手紙でお願いされちゃったら、細かい事なんてどーでもいいよね~?」 「ど、どうでもいいことは無いのですが……っはぁん……v ずっと嗅いでいたくなってしまいます……v」 ふわり、と広がる蜜の香りに思考が散らばっていく。気が付けば二人で手紙に顔を近づけあってスンスンと鼻を鳴らして恍惚に浸ってしまっていた。 「――っと、こんな場合じゃありません。美波さん、早くしないと門限になってしまいますよ!」 「はわっ!? そ、そうだった。 いこ、しゅーこちゃん!」 そうして二人が慌てて門の方に駆けていくと、門の前に誰かがプラカードをもって立っている。 「(そういえば入学の際にはルームメイトとなる生徒が待ち合わせする、と言っていましたわね。)」 それは全寮制の学園の生活のパートナーとなる人物。いわゆる『お姉さま』を作り上げる旧い小説などでしか目にしないような珍しい制度を導入しているようだった。ともあれ否応なくこれからの生活を共にする相手なのだからと表面上は穏やかに、内心は推し量るように鋭く目を向け―― 「……も、もしかして『RIKKA』ちゃん……ですか!?」 隣を歩いていた美波が目をまん丸にして大声で叫ぶ。 「あれ?私の事知ってた? ふふふ、そうで~っす♪アイドルやってたRIKKAこと桜木 立花(さくらぎりっか)でーっす♪ よろしくね? ええと、貴方が美波ちゃんかな?それでそっちの子が秀子ちゃん?」 おどけたようにポーズをとるRIKKAこと立花。私は、その堂々とした様子に尋ねる言葉を呑みこんで話を促す。 「はい、美貌院秀子と申します。若干14歳でデビュー、幾つものコラボを実現させながら俳優と声優を両立させ、14企業合同の伝説のライブを成立させたRIKKAさんがルームメイトだなんて光栄です。 しかし美波さんのことを知っていたということは……」 「や、やだなぁ~そんな褒められちゃうとなんか恥ずかしいよぉ~♪ そ・れ・で、お察しの通りルームシェアは最大三人だから三人で相部屋になるんだ。二人とも、これからよろしくね♪」 「り、RIKKAさんと相部屋……!!?リリ学来てよかった…! でも、あの、その――」 興奮し、言葉に詰まる美波が立花さんと話す間に私はよくよく立花の姿を――既にこの学園に在籍している人間を観察していた。 記憶にある最後の彼女の姿――昨年の同じ頃に行われたライブでは、柔らかな房の大きなポニーテールを靡かせ、トロンとした目じりの瞳。愛嬌のある柔らかな笑みと出るところの出た、しかし下品さを見せないアスリート然とした野性的な美しさを両立させたスマートな彼女は―― 「んぅ? やぁだ。そんなにじっくり見られちゃうと恥ずかしいなぁv」 大きな房のポニーテール、柔らかい瞳こそ変わらないが、全身を色気のない芋色のジャージに身を包み、メリハリのある体型はそのシルエットを失って滑らかな楕円を描き、遠めに見ればまさにサツマイモの如し。今、昔の様にへそを出せば狸の様な丸い腹がはみ出る事だろう。小さくはなかった胸も、そのボリュームに負けて殆ど貧乳にしか見えない。こんな倍近い体重の増加をしてしまえばアイドルとして復帰して舞台に立とうとしても、バックダンサーすら許されることは無いだろう。――そんな有様で、なぜ二人が立花の事をあの伝説的アイドルである『RIKKA』だと認識できたかと言えば―― 「……ところで、『ソレ』はいったい何なんですの?」 「え? ……あぁ、これ? この頭に着けてるベルトと写真? これはね、入学した当時の写真をつけるように義務化されてるの。そうしたら、いつ誰に会っても誰が誰だか分かりやすいでしょ?」 彼女の頭に巻かれたハチマキと、額の部分に飾られたポーズを決めている『RIKKA』の姿。     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ それは、例えどんなに入学当時から変わり果てていても本人を保証する装備品だった。 ……頭の中で、何かが引っかかる。 何故ただの学園で「本人を認識する為の装具品」が必要なのか。RIKKAほどのアイドルがこんな短期間でこれほどまでの激太りをするものなのか。そもそもアイドルたちが休止をしてまで転入する理由は何故か。むしろなぜ自分は偽名すら使わず馬鹿正直にこの学園に―――  ・・・・・・・・・・・・・ 「出撫理満久理学園 学則ノ一!」 「っ!!」 そこまで考えていた私の意識が、思考のとっかかりに手をかけそうになったその瞬間。耳元で叫ぶように告げられた言葉に一気に引き寄せられる。 「『学園の常識は世間の常識。疑う事なく学則には絶対服従すること』 複唱ッ!!」 「「学園の常識は世間の常識。疑う事なく学則には絶対服従すること」」 立花さんの言葉を復唱すると、頭の中のもやもやがすぅっと解消される。 ――そうだ、何を私は考えていたのだろう? 身に着けるものも、身分詐称をしないことも学則で決まっているのだからそうするに決まっているじゃないか。学則で決まっているのだから入学通知が来たら誰だろうと入学手続きをするのは当然だ。……私はどうしてしまったのだろうか、もしや気が付かない間に私は何かをされているのだろうか?こんなに簡単なことで一々悩むだなんて……。 愕然として、自身に起きていたかもしれない変化に知らずに身震いしていると、立花さんがぎゅっとそのふかふかの身体でハグをしてくれる。 「だいじょーぶ、変に難しいこと考える必要なんてないんだよ? 一つ一つ、この立花先輩が教えてあげるからねー♪ 秀子ちゃんが間違えそうになっても、ちゃんと学則を教えてあげる。 ……あ、今のなんだか先輩っぽい事言えちゃったかな?」                   ・・ 弱った心に、立花さんの――いや、立花先輩の言葉がしみていく。 ……そうだ、この人は先輩なのだ。先輩は自分の前を行く人物であり、従い、その姿に学ばねばいけない人のこと。先輩の助言に任せれば安心なのだから、悩み事は全て先輩に預ければ問題ないのだ。        ・・        「り、っか……先輩……。」 「あ、ずるいっ! 私もハグしてくださいっ、立花先輩!」 「あはは、いいよーおいでー♪まとめてハグしてあげる……ぎゅ~~っ♪」 「きゃーっv あのRIKKAさんにハグしてもらえるだなんて……はぁ、しあわせぇ……」 早速不安に躓きかけたものの、私の頭の中にはしっかりと立花先輩への――学園への服従が刻み込まれた。ちょっとやそっとのことでへこたれてはいけない。キチンと学則に従い、この学園の真相を探らないと……。 出撫理満久理学園 学則ノ一  「学園の常識は世間の常識。疑う事なく学則には絶対服従すること」 [メモ] ・学園の先輩の教えは正しいので従う事。 ・本人証明票は頭部の良く見える位置に装着すること。


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