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濁り丸
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【オリジナル 有料先行公開】 幼い頃から成長を見守ってきた妖艶な妖狐は、 隣村に行こうとする青年を助平な肉体で引き留める 前半

 ——ザァァアァーーーーっッ!!



 外では篠突くような激しい雨が大きな雨音を立てながら降り続いており、唯一の出入り口である扉も締め切られた木造建築の建物は外部と遮断されてしまっている。滅多に人が出入りしていないであろう埃っぽさが感じられる室内では、仰向けの体勢で押し倒される青年とその腰上に馬乗りとなっている七尺(現代で二メートル十センチ)はあろうかという長身と実った稲穂のような美しい髪色をした女性の姿があった。


 明らかに人間では無い妖などの超常的な存在に組み伏せられてしまっている青年だが、命を握られている恐怖というよりも困惑の感情が如実に表れている。妖艶な雰囲気を醸している絶世の美女の頭部から生えるピンと立った狐耳や背中から見える何本も生えたふわふわの尻尾など、人ならざる狐のような特徴を持っている幾つもの部位に視線を彷徨わせながら何とか言葉を搾り出す。



「——おっ、”お稲荷様”……っ。何故このようなことをっ」

「くふふ……っ、ほんに人間は阿呆じゃのう。疾うの昔に信仰の失われてしもうた廃れた神社には、神使(かみつかい)を降ろされた性悪な”妖狐”しか住み着いて居らに決まっておろう。狐の言葉を信じてはならぬぞ」



 自分を神の使いと勘違いしていた哀れな青年のことを嘲笑う妖狐は、純白と朱を基調とした巫女を思わせる色合いの着物を真っ白な肩や美しい窪みの鎖骨、深い谷間を大胆に露出させる花魁のような着こなし方をしていたが、そのまま胸元を下ろして人間の頭よりも大きな乳房をまろび出させるのであった。



 ——タっプンっ♡♡♡♡



 たわわに実った大玉スイカの如く重量感たっぷりであるおっぱいは外気に飛び出した反動だけで上下に踊るように弾み、雄として本能に逆らえず青年の視線は搗き立てのお餅のような質感をした乳房に釘付けになってしまう。



「〜〜〜〜っッ?!! いっ、いけません妖狐様っ」

「くふふっ♡♡ そう言っとる割に妾のたわわに実った乳に夢中じゃのぅ♡♡♡ ……居りもせぬ神に毎日のように健気に祈ってた哀れなお主には♡♡ せめてもの情けで”女”の味を教えてくれようっ♡♡♡♡ 特別にじゃぞっ♡ ——んむっ♡♡」



 ぽってりとした柔らかくて瑞々しい唇によって唇を塞がれる青年は、このような状況になった経緯を思い出すことしか出来ない。








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 ——”佐吉”は孤児(みなしご)であった。



 まだ産まれて間もない赤ん坊であった頃に村の首長である庄屋の門前にボロい風呂敷に包まれた状態で捨てられており、お寺の方で引き取るかの話し合いになったが最終的には庄屋の主人が里親となることで落ち着いたのである。


 地位や役職の補佐をするという意味と当時は拾い子の存在が縁起が良いものとされていたため、”佐吉”と名付けられた幼子はすくすくと育っていった。そして、物心が付いた頃から自分が捨て子であることを教えられていた彼は、年貢奉公に出された子どもの如く家事や人手不足である畑の手伝いに精を出すようになったのである。


 親などの身内という甘えたり頼れる存在がいなかった佐吉は、自分の食い扶持を稼ぐために我儘の一つも言わずに日々を過ごしたのだ。


 食べる物には困らない生活を送っていたが同年代の子ども達からは孤児であることを馬鹿にされていたため友達が出来ず、孤独だった佐吉が一人の時間を過ごしていた場所は専ら裏山の中腹に位置する苔生した石畳の階段の先にある”廃れた神社”であった。彼は狛犬では無く”狛狐”が門を守る誰からも忘れられた神社と両親に捨てられた自分自身を重ね、暇を見付ける度に誰にも気付かれぬようこっそりと訪れるようになったのである。


 狛狐の存在から稲荷神を祀っている神社であることを知った佐吉は、”お稲荷様”と呼びながら慕っていたのであった。



「お稲荷様、今日は隣の畑の手伝いをして来ました。お昼に出された握り飯がしょっぱくて、水で流し込まないと呑み込めなかったです」



 親や友達がいない佐吉は神社でお祈りしたり清掃をしながら最近の出来事を喋り、神様にしか見られていないことから孤児では無い本当の自分を曝け出せる場所になっていたのである。既に信仰が失われて神が去ってしまった神社を拠り所にしながら、彼は片手で足りる年齢から年月を積み重ねていったのだ。



『……ほんに哀れな子どもじゃのぉ』



 佐吉以外に訪れる者がいなくなった神社である筈なのに、境内からこっそりと覗き見ている”存在”がいるとも知らず。








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 十年の年月を経て立派に成長した佐吉はこの時代では珍しく身長にも恵まれ、重労働な水汲みや畑作業に率先して取り組んだことで村一番の力持ちである逞しい青年へと成長していた。来月にはこの時代での成人となる元服を迎える歳となった彼は、食事を終えた夜に里親である庄屋の主人に珍しく呼び出されたのである。



「佐吉、お前さんも月を跨げばめでたいことに元服だ」

「はい、ここまで育てて頂きありがとうございます」



 里親と里子の会話というよりも会社の上司と部下のようである庄屋の主人と佐吉は、お互いに悪感情を覚えている訳では無いという不思議な関係性であった。主人はこの時代では珍しくお猪口に注がれた酒をちびちびと舐めるように呑みながら、里親としての最後の責任として元服した後の生活についての提案を始める。



「馬鹿息子の庄太郎に爪の垢を飲ませてやりたい位だ。真面目で実直と評判なお前さんならどこでもやっていけるだろう。……そこで隣村が人手不足なのは知ってるか?」

「……去年、開墾の手伝いに行きました」

「あそこは畑を増やすから若い男衆が欲しいって、前からこの村にも打診が来てた。ここまで言えば賢いお前さんも分かるだろう?」

「はい、隣村で働けば良いのですね」

「まあ、そういうことだ。元服と合わせて独り立ちするには丁度良いだろう」



 それなりに頭が回る人間同士の話はトントン拍子に進んでいき、佐吉は元服を迎えるのに合わせて隣村で畑仕事に従事することが決まったのだ。


 佐吉は主人の提案に対して一切の不満を覚えることは無かったのだが、ただ一つだけ心の奥の引っ掛かりとして通い続けた神社の姿を思い浮かべていたのである。隣村であると言っても村同士でそれなりに距離が離れているため、移り住んだ後は通うことも難しいだろうことは自明の理であった。



「明日、お稲荷様に報告に行くか……」



 想像しただけで佐吉は既に一抹の寂しさを覚えてしまうのだが、明日は神社に報告に向かうと決めたのである。


 翌日、朝からどんよりとした曇り空が広がっている中で彼は畑仕事に勤しみ、本格的に雨が降り出しそうということでお昼には解散することとなったのだ。その足で彼は神社の方へと向かい普段通りに両手を合わせながら、元服した後には隣村で開墾をしながら農家として働くことを伝えたのである。



「お稲荷様、来月の元服に合わせて隣村で働くことが決まりました」



 ——ガタッ



「んっ? 気のせいか。隣村は離れているので滅多に来られないかも知れません」



 ——ガタガタっ 



 佐吉がこれからのことを伝える度に何故か神社全体がガタガタと揺れており、風か野生の獣の影響かと不思議に思いながらも感謝の言葉を続けて口にする。



「ここまで生きてこられたのはお稲荷様が見守ってくれたお陰です」

「…………」

「隣村に行ったらもうここには来られないかも知れませんが、それでもこの先もずっとお稲荷様を信仰し続けますっ」



 気付けばポツポツと小雨が降り始めていたのだが、佐吉はそのことを余り気にせず神社に向かって深く頭を下げるのであった。深い感謝の気持ちを伝えるよう彼は暫く頭を下げ続け、雨の勢いが強くなるばかりであったため踵を返して去ろうとする。



 だが——



「そこの人間、このままじゃとずぶ濡れじゃぞ」

「え……っ、お稲荷様?」



 振り返った先にはずっと閉まっていた筈の神社の扉が開かれており、その隙間から狐耳を生やした美女が手招きをしていたのだ。


 間違い無く人間と異なる存在でありこれまでの人生で一度も見たことのない絶世の美貌に呆けていると、恐らくお稲荷様であると思われる美女は聞いているだけで鼓膜と共に脳まで蕩けてしまいそうな美声で境内に招こうとする。



「中なら雨宿りに丁度良いからのぅ。そう怯えずとも取って食ったりせぬから、雨が止むまで話でもせぬか?」

「おっ、畏れ多いです……っ」

「良いからさっさと来ぬか。身体が冷えて風邪を引くぞっ」

「はっ、はい……っ! 失礼しますっ」



 聞き分けの悪い子どものように叱りつけられた佐吉は、驚き混じりに返事をして草鞋を脱いで境内に足を踏み入れるのであった。



「くふふっ、それで良いそれで良い。聞き分けの良い人間は好きじゃぞ」

「あっ、あの。お稲荷様、小さい頃から数々のご無礼を……」

「それっ」



 含み笑いを浮かべる狐の美女はそのまま開いていた扉をパタリと閉め、子どもの頃から自分の居場所のようにしていたことを謝ろうとする佐吉の力では開けられない状態にしてしまう。そして、見るからに緊張しながら畏まっている彼のことを床に押し倒し、そのまま腰の上に馬乗りになるという冒頭の状況へと続くのである。



「お主が悪いのじゃぞ。いきなり隣村に行くなどと言いおって……っ」


【オリジナル 有料先行公開】 幼い頃から成長を見守ってきた妖艶な妖狐は、 隣村に行こうとする青年を助平な肉体で引き留める 前編


【オリジナル 有料先行公開】  幼い頃から成長を見守ってきた妖艶な妖狐は、 隣村に行こうとする青年を助平な肉体で引き留める  前半

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