少女の小さな嗚咽と鼻を啜る音が、静まり返った部屋の中に響いていた。 「――っ、ぅ゛……。ぁ゛ぁ……っ」 オレンジがかった艶を帯びた赤毛が目を惹く少女は、震える上唇と下唇の隙間から小さな嗚咽を漏らしている。琥珀やトパーズなどの宝石を見る者に抱かせる金色の瞳は、止めどなく溢れる涙によってうるうると潤んでいた。 彼女の目元は泣き腫らした結果、真っ赤に腫れ上がっている。 「ひっく……っ、ぅ゛っ…………うぅ゛ッ」 横隔膜が痙攣した時に起こるしゃっくりのように、少女の嗚咽に混じり『ひっく、ひっく』という声が漏れており、それに合わせて華奢な肩がビクっと震えている。本気で泣いたことにより過呼吸気味になった身体がビックリしてしまい、今のような状態になってしまったのだ。 涙を流すことを我慢し続けて泣き方を忘れてしまった結果、彼女は泣くこと自体が下手になってしまっていた。 そんな少女の強く抱きしめられれば折れてしまいそうな華奢な身体を、黒髪の青年は両腕で優しく包み込むように抱きしめている。男と女の間に生じる性的な意味合いが一切含まれていない抱擁は、例えるならば親が泣いている子供を抱っこするのに近いのかも知れない。 「ひっく……っ゛。……ぅ゛っ、うぁ゛。ごめん……っ、ごえんねぇ……」 自分がどうして謝っているのかは分からないのだが、彼女はポロポロと泣きながら謝罪の言葉を口にする。本当に言いたい『ありがとう』という言葉の代わりに、『ごめんね』という言葉が自然と漏れ出てしまう。 しゃっくりを上げながら涙を流す少女の心に寄り添うように、彼は背中をポンポンと軽く叩き『――大丈夫だよ。大丈夫だから……』と、声という音である筈なのに何故か"温かさ"を感じる柔らかい声色。彼女の赤く染まった耳元で、優しく労わるような言葉を何度も囁いていた。 「――立花はいっぱい頑張ったよ。今は好きなだけ泣いて良いから……落ち着くまでずっと傍に居るから」 「~~~~っっ゛、ぅ゛ぅ……。ぁ゛っ、ぁりがとぅ……っ」 彼女の心を覆い尽くすように張り付いていた"氷"は、彼の全てを許すような労わりの言葉と抱きしめらる人肌の温もりによってゆっくりと溶かされ、それが両の目から大粒の涙となってポロポロと流れているのだ。 堰を切ったように少女が涙を流し始めてから、どれだけの時が経過したかは定かでは無い。体感時間では少なく見積もったとしても、半刻を超える時間が過ぎている。それでもまだ涙が枯れることが無いのは、彼女が隠し抱え込み続けてきた"暗い感情"が大きいからだろう。 現在では多少なりとも落ち着きを取り戻しつつあるが、先程まではもっと大きな声を上げながら、物心が付いたばかりの幼ない子供のように少女は泣いていた。この時のことを彼女がふとした拍子に思い出せば、真っ白な頬や耳の先端まで真っ赤に染めながら、ベッドの上などでバタバタと脚を動かしたい衝動に駆られることだろう。 少女の記憶に残っている限りでは幼少期の頃を含めたとしても、ここまで人目を憚らずに大泣きしたことは初めての経験であった。しかし、不思議と声を上げて泣けば泣く程に、自重だけで圧し潰れてしまいそうだった彼女の心は軽くなっていく。 青年の広い背中に回した両腕に少しだけ力を込め、彼女は彼の温かさと感触を確かめる。 目尻から零れた大粒の涙が重力に従って朱色に染まった頬へと伝うのと同時に、心の奥底へと仕舞い続け、少しずつ堆積して溜まっていたヘドロのような"淀み"が少しずつ吐き出されていく。その淀みとは彼女がずっと隠してきた悲しみ、恐怖などの一般的に負の感情の吐露であり、自分と同じ境遇の相手と出会うことでようやく流すことが出来た涙なのである。 本当は辛くて、怖くて、悲しくて――本当は直ぐにでも人目も憚らずに泣き出したかったのに、笑顔という名の仮面を強引に縫い付けるように被り、心という器が完全に壊れてしまう寸前まで、ずっと我慢し続けたのだ。 ――きっと"花の魔術師 マーリン"が介入しなかった世界線では、彼女は"壊れて"しまったのだろう。 文字通り生死を掛けた『人理修復』という過酷な旅を続ける道程の中で、赤毛の少女――"藤丸 立花"は心の奥底に無理矢理に弱音や心労を押し込め、それこそ恋人であるマシュ・キリエライトにすら心配を掛けたくないという思いから本音を隠し続けてきた。 ここに居るのは人理焼却された世界を救うために、カルデアで日夜奮闘する人類最後のマスターでは無く、どこにでもいる年頃の少女である。 魔術やカルデア――ましてや人理焼却などと言う世界の危機とは、ほんの少しも関係が無かった。当たり前のことで、誰もが理解している筈なのに、皆が同じ危機的な状況に置かれたせいで分かり難くなっていたのである。 普通の少女としての立花のことを一番良く理解していたのが、並行世界の自分自身だったことは必然であったのかも知れない。自分が感じていた痛みや苦しみを理解してくれる立香に対して、彼女が惹かれてしまうのは仕方の無いことであった。 (――――っ♡♡ ほっ、本当は駄目なのにぃ……っ゛♡♡♡ ――すっ、好きになっちゃぅ♡) ――心の中にあった淀みが無くなった分だけ、立香に対する"想い"が強くなっていく。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― ――立花の涙が枯れた後には、穏やかな時間が訪れた。 ただ二人は無言の状態で抱き合ったまま時を過ごしており、互いの熱や感触を身体全体で確かめ合っている。このまま時が止まってしまえば良いと思える程であったが、抱きしめられる側である立花の"気持ち"の我慢が出来なくなってしまった。 「――ん゛ぅ゛……っ♡♡♡ ぅ゛っ♡♡ ふぅ……っ♡♡♡」 無意識の内に身体を上下に擦り合わせてしまい、自分の匂いを相手に付けるように動かしてしまう。身体が擦れる度に痺れるような快感が走り、吐息にも似たくぐもった嬌声が漏れ出る。 それはもっと相手の温度や感触を、身体全体で感じたいという思いの表れであった。しかし、昂った気持ちが身体の触れ合いだけで満たされることは無く、涙を流す前にしていた行為をしたいという思いが抑えられないのだ。 唇同士を触れ合わせ、唾液に濡れた舌同士を絡み合わせ――心まで繋がる錯覚を覚える"濃厚な口付け"をしたいという欲求が泉のようにトプトプと溢れてしまう。 (――あぅ……っ♡♡♡ ギュッてするだけじゃ足りない♡♡ ……きっ、キスしたぃ♡♡) 欲望に打ち勝てなかった立花は頬を林檎のように真っ赤に染めながら、立香の直ぐ目の前で目をギュッと閉じて瑞々しい桜色の唇をツンと突き出す。それは一般的に"キス顔"と呼ばれるものであり、言葉よりも分かり易い、相手に口付けを求める行為であった。 耳の先端まで真っ赤な彼女の思わず唇を奪いたくなるキス顔を見詰めていた立香は、小さく囁くような声で『良いんだよね?』と、問い掛ける。彼の問い掛けに対して、立花は朱に染まった頬を更に真っ赤にしながら、無言のまま唇を更に突き出す。 ――二人の唇同士が触れ合うのは、それから直ぐのことであった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「――ちゅぷッ♡♡ ちゅるっ♡ ちゅるるるぅ……っ♡♡♡ んぅ゛♡ もっりょっ♡♡ もっりょキスぅ♡♡♡ んむ――っ♡ じゅるるっ♡♡ ぢゅる……ちゅぅっ♡♡♡ ――ちゅぷ……っ♡♡」 身体をピッタリと密着させながら抱きしめ合う立花と立香の二人は、柔らかい唇や唾液に濡れた舌、口内粘膜を触れ合わせ、ネットリと蛞蝓同士の交尾のように絡み合わせていた。唇同士の境界線が曖昧になっていき、ドロドロに一つに溶け合う感覚を覚える口付けに耽っている。 「んちゅっ♡♡ ちゅぷ……っ♡♡♡ んぅ゛♡ じゅるるぅ♡♡♡ じゅるっ♡♡ ――ぷはぁ♡ はぁ゛……っ♡♡ もっろぉ♡♡♡ りっかぁ……っ♡♡♡ ――んむぅ♡♡ ぢゅるる♡ ちゅっ♡♡ ちゅぷっ♡♡ じゅるる……ちゅぅっ♡♡♡」 甘く蕩けるような声で立花は何度もキスを求め、二人の混ざり合った唾液を水音を立てて啜る。 彼女はこれまで自分の心を抑圧していた反動のように、立香のガッシリとした腰にしなやかでムッチリとした肉付きの両脚を獲物に巻き付く蛇のように絡み付かせていた。下手をすれば倦怠期に突入した恋人同士や夫婦がする淡白で味気無い性行為よりも、淫らで熱く蕩ける濃厚なキスを自分から求めている。 「ちゅる……ちゅっ♡♡♡ ちゅっ♡♡ ちゅっ♡ ちゅぅ……っ♡♡♡ ぢゅるっ♡ じゅずるるるぅ゛♡ じゅぷ――ん゛ぅ゛……ッ♡♡ ぢゅぷぷっ♡♡ じゅるるるぅ――ッ♡♡」 肉欲だけでは決して無い"愛し合う"男女の口付けは、キスだけでは説明できない快感が伴っていた。何度も意識が途切れそうな程の快感が押し寄せ、立香の太指で丹念に解された膣口から粘っこい愛蜜が『こぷっ♡♡ こぷっ♡♡♡』と、大量に溢れ出る。 腰に絡み付かせた両脚だけではなく、立花は彼の太く逞しい首にも両腕を回す。もっともっとと求める気持ちの表れのように、自分の方へと彼を引き寄せていく。次第に二人の体勢は変化していき―― 気が付けば立花の背中はベッドに密着しており、仰向けの彼女に立香が覆い被さる体勢になっていた。 立花の引き締まっているのに適度に柔らかな腹部には、彼の怒張し切ったペニスが自然と押し付けられる体勢であり、二人の意識は口付けよりも更に繋がりが深くなる性行為に向いていく。股下から余裕で鳩尾にまで届くペニスが心臓の鼓動に合わせるようにドクっ、ドクっと力強く脈打ち、自分が組み敷く少女を貪りたいと暴れている。 いつの間にか立花の仰向けでも殆ど形の崩れていない、シコった桜色の乳首がツンと上を向く豊満な美乳へと、立香の大きな右手が伸びていた。乳搾りでもするように乳房を揉みしだかれ、掌で乳頭の先端を擦られている。母乳が出る身体であれば『ぴゅっ♡ ぴゅぅ……っ♡♡♡』と、乳首から噴き出していたことだろう。 「ちゅぅ……っ♡♡♡ ん゛むっ♡ ん゛ちゅぅ……っ♡♡♡ ちゅぷっ♡♡ ぢゅぷぷっ♡ ぢゅずるるるるるぅ゛♡♡♡ ん゛ぅ゛……ちゅぷっ♡♡ ――ちゅぅ゛ッ♡♡」 無毛のツルツルの恥丘は性的興奮によりふっくらと膨らみ、開いた小陰唇から覗きヒクヒクとする膣口からは涎を垂らすように交尾蜜が大量に溢れていた。言い訳など少しも出来ない程に、早く勃起した長大なペニスを挿入して欲しいと淫らなおねだりをしている。 言葉にしていないだけで二人とも交尾を求めてしまっており、その期待感と欲求は際限なく高まっていた。どちらとも無く唇を離した立花達の間には、名残惜しさを伝えるような銀の糸が引いている。お互いの瞳をジッと見詰め合ったまま、最後の一線であった言葉を同時に口にしてしまう。 「「――シたい」よぉ……っ♡♡♡」 その言葉が出てしまった時点で、立花達がすることは同意の上での和姦しかなかった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「――挿入れるよ?」 「~~~~っッ゛♡♡♡ ぅん……っ♡♡」 これからペニスを挿入するという立香の言葉に対して、立花は白い頬を朱に染めながら控えめにコクリと頷いた。そして、身体の上に覆い被さっている彼に向かって両手を伸ばし、恥ずかしがりながらも自分の素直な気持ちを言葉にする。 「ずっ、ずっと心が苦しくてねっ。このままじゃ駄目になっちゃいそうだったけど……立香のお陰で元気になれたからっ♡♡ こっ、今度は私が少しでも"お返し"がしたいの……っ♡♡♡ だっ、だから――」 立花は自分でも驚くほどにトロトロに蕩け切った声を発しており、それは正しく恋する乙女が意中の相手にしか出さないであろうメス声であった。彼女自身もそのことに気が付いており、それが余計に自分が"恋"をしている自覚を強めてしまう。 羞恥により耳の先っぽまで真っ赤にしながらも、立花は勢いに任せて言葉を紡ぐ。 「――来てっ♡ りっ、立香も一緒に気持ち良くなろ?♡♡」 規格外の大きさのペニスを膣孔に受け入れる緊張にメス声を上擦らせながらも、二人で一緒に気持ち良くなりたいという想いから立香を誘惑する言葉を口にした。キュンキュンと痛い位に疼く"子宮"が、早く 長大なペニスを膣孔に迎え入れたいという浅ましいメスの本能と、彼のことが好きだという気持が溢れている。時間が経てば経つ程に二つの思いは強くなり、僅かに残った理性では抑えられないものであった。 ――自分から口付けを求めてしまった時点で、既に彼女は手遅れな状態だった。