カグヤ 「……………」 任務に出た、チグサの隊が戻ってこない。 その話を聞いてからカグヤは、ずっと心配を していた。 カグヤ 「くそっ……」 だが、いくら待っていても上層部が動く気配 は無い。 カグヤ 「何をやっているんだ……まったく……」 これ以上待っていられないと思ったカグヤは 直談判の為に単身上層部の元へと向かう。 カグヤ 「一刻も早く捜索隊を編成して、向かわせる べきです!」 食ってかかるように上層部に詰め寄るカグヤ だが、上役達は難しい表情を浮かべていた。 上層部 「そう焦るな、カグヤ」 カグヤ 「焦ります! 何かあったに違いない!」 上層部 「そう決まった訳では無かろう。少し任務に 手こずっているだけかもしれない」 上層部 「今しばらく、様子を見るのだ」 カグヤ 「そんな……悠長な事を!!」 焦りからか、上層部に対してカグヤは、声を 荒げて怒鳴りつける。 カグヤ 「チグサの小隊が遅れた事など無いんだっ! きっと何かあったに違いないっ!!」 あまりの迫力に気圧されたのか、上層部は顔 を見合わせると諭すように告げる。 上層部 「しかし、捜索隊を組むにも時間はかかる。 少し待つのだ」 カグヤ 「くっ……!」 上の者達の言葉に、カグヤは思わず唇を噛み しめ、その場を後にした。 カグヤ (これ以上悠長に待ってなどいられるか!) そう思ったカグヤは、上層部の言葉を無視し て単身飛び出していく。 カグヤ 「チグサ……無事でいてくれ……」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その頃、シュラは養成所に潜り込ませておい たスパイと接触していた。 シュラ 「カグヤを1人で来させる為の文だ。これを 渡せ」 それを受け取ったスパイは、なぜか困惑した 表情を浮かべる。 シュラ 「なんだ……どうした?」 スパイ 「いや……カグヤは、もう1人で飛び出して 行きましたが……」 シュラ 「ほお、そうか。それは都合がいい」 シュラはスパイの報告に、口の端をつり上げ て笑う。 その笑みには、どす黒い悪意がたっぷりと込 められていた。 シュラ 「それにしても、こちらの思う壺。やはり、 カグヤにとってチグサは余程大事とみえる」 スパイ 「どうやら……そのようです。上層部の判断 にも、かなり反発したようで」 シュラ 「そうか……」 思った以上にチグサがカグヤに対して有効だ とわかり、シュラはすっかりご満悦という表 情を浮かべる。 自らの作戦は、自分の想像以上に上手く展開 しているのだから。 シュラ 「ふふふふっ……はははははっ!!」 シュラが高笑いを上げている頃、カグヤは顔 面蒼白で森の中を疾走している。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ カグヤ 「はぁ……はぁ……はぁ……」 シュラ 「……ほお、思ったよりも早いご到着だな」 カグヤ 「なに?! そ、その声は!!」 不意に投げかけられた声に、カグヤは顔を向 ける。 すると彼女の目に、死んだ筈のシュラの姿が 飛び込んできた。 カグヤ 「シュラ!? まさか……お前は、私が始末 した筈……」 チグサ 「カ、カグヤちゃん……」 カグヤ 「チグサ!?」 よく見るとシュラは、チグサを完全の拘束し ている。 その状況に、カグヤは状況を理解していく。 カグヤ 「そうか……そういうことか……シュラ…… 貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」 シュラ 「ふふふふっ、会いたかったぞ、カグヤよ」 カグヤ 「ふざけるな!! チグサを離せ!!」 シュラ 「くっくっくっ……そう言われて、はいそう ですかと離すとでも思うのか?」 カグヤ 「シュラ……貴様ぁぁぁぁ……」 激高するカグヤに対して、シュラは彼女との 再会を心底喜んでいるようだった。 シュラ 「本当に会いたかったぞ……………カグヤ。 貴様のことを忘れた事など……一秒たりとも 有りはしない」 カグヤ 「そんなのは、嬉しくないな。私は貴様など 死んだと思いすっかり忘れていたのだから」 シュラ 「そうか……私は、お前に復讐をする事だけ 考えて、生き延びてきたのだからな」 カグヤ 「っ……………」 この時、カグヤは自分の甘さを呪う。 なぜあの時、死体を確認しなかったのか。 そんなミスが今の状況を生んでいるかと思う と、情けなくなっていく。 シュラ 「死にかけた私は、上級妖魔に運良く拾われ その妖魔の協力を受けて身体に妖魔を宿し、 こうして復活したというわけだ」 カグヤ 「どうりで、昔以上に気味の悪い姿になって いると思った」 シュラ 「相変わらずの憎まれ口だが……まあいい。 ようやく、私の念願が叶うのだからな」 カグヤ 「……………」 チグサ 「カグヤちゃん……」 一触即発のカグヤとシュラを見て、チグサは 一抹の不安に駆られる。 カグヤは人質を優先しない。 このままでは、自分はともかく同じように捕 まってしまっている隊員達まで皆殺しにされ るのではないかと。 だが、そんなチグサの考えは間違っていた。 シュラ 「では、恨みを晴らさせて貰うぞ!」 そう言うとシュラはカグヤとの間合いを一気 に詰め、拳を彼女の腹部へとめり込ませる。 カグヤ 「げふっ……………」 チグサ 「カグヤちゃん!!」 シュラ 「どうした? 反撃してもいいのだぞ」 カグヤ 「……………」 勝ち誇ったかのような顔をするシュラを、カ グヤは鬼の形相で睨み付けた。 だが、抵抗しようとする様子は無い。 シュラ 「ほらほらっ! どうしたっ!」 カグヤ 「うぐっ! あうっ! ぐっ……うぅっ」 為す術も無くシュラに嬲られるカグヤを見て チグサは困惑を隠せない。 チグサ 「カグヤちゃん……どうして……?」 自らの隊の隊員を火遁で焼いたカグヤの姿は そこには無い。 人質の命を考え、何の抵抗もしないままに、 叩きのめされていくカグヤの姿に、チグサの 心は締め付けられていく。 チグサ 「カグヤちゃん……」 シュラ 「そらっ! そらっ!」 カグヤ 「……ぐふっ! うっ! くぅぅっ……」 無抵抗に殴られ蹴られ、カグヤはぼろぼろに 傷ついていった。 その姿にチグサは耐えきれなくなり叫ぶ。 チグサ 「カグヤちゃん! 私達の事は気にしないで 戦ってっ!」 カグヤ 「チ、チグサ……………うぅっ……」 チグサ 「カグヤちゃん!!」 チグサの悲痛な叫びにも、カグヤはシュラに 抵抗する素振りは見せない。 そんなカグヤの姿を見て、シュラはサディス ティックな笑みを浮かべて見つめた。 シュラ 「くっくっくっ……チグサも、ああ言ってい ることだし、少しは抵抗したらどうだ?」 楽しげにそう言いながら、シュラは触手を鞭 のように使ってカグヤの身体を打ち据える。 バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! カグヤ 「はうっ! くっ! んんんんっ!」 鈍い音が鳴る度にカグヤの身体は弾かれ続け ていく。 シュラ 「はははははっ! そらそらそらそらっ! どうしたっ! カグヤ!」 カグヤ 「くっ! ううっ! っ……うぅっ……」 全身が傷だらけになり、よろけているカグヤ には、すでに戦闘力は残されていない。 それを確信したシュラは、触手の一本で彼女 の首を絞め吊し上げると、自分の目の前へと 運ぶ。 カグヤ 「うぐっ! くっ……ううっ……」 シュラ 「どうだ? このまま絞め殺してもいいんだ が……命乞いをするなら、生かしてやる事を 考えてやってもいいぞ」 勝ち誇ったようにそう告げるシュラを、カグ ヤは軽蔑の眼差しで見つめると、吐き捨てる ように呟いた。 カグヤ 「み、醜い顔を……ち、近づけるな……」 シュラ 「……なにぃ?」 カグヤ 「しゃ、喋るな……息がクサイ……」 カグヤのその言葉に、シュラの表情が険しく なっていく。 シュラ 「貴様……自分の立場が、わかっていないよ うだなっ!!」 怒りにそう叫ぶと、シュラはカグヤを吊り上 げた触手を振り回し始める。 カグヤ 「ぐあっ! がはっ……んっ! ぐふっ!」 まるで人形のように振り回されたカグヤは、 何度も地面へと叩きつけられていく。 その度に赤い血が飛び散り鈍い音が鳴る。 チグサ 「やめてっ! カ、カグヤちゃんっ!!」 あまりの惨さにチグサは、思わず悲鳴のよう な声を上げた。 それでもカグヤを吊り上げた触手は、激しく 暴れグッタリとした彼女の身体を、地面へと 打ち付け続ける。 チグサ 「カ、カグヤちゃんっ!!」 カグヤ 「うぐっ……うっ……うぅぅっ……」 ピクピクと身体を痙攣させるカグヤの首を、 シュラの触手が容赦なく締め上げていく。 カグヤ 「ぐはっ! あっ……あっ……ぁぁ……」 薄れゆく意識の中、カグヤは視界の端に泣き そうな顔のチグサを見つける。 カグヤ 「チ……グサ……」 彼女の前で無様な姿を晒したくないと思いな がらも、カグヤの意識はどんどん遠ざかって いく。 カグヤ 「あっ……うぅっ……………」 ガクッと首を落としたカグヤは、触手に吊り 下げられたまま、ピクリともしなくなった。 チグサ 「カ、カグヤちゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」 カグヤが死んでしまったと思ったチグサは、 泣きながら彼女の名前を呼び続ける。 チグサ 「カグヤちゃんっ! 死んじゃやだよっ!! カグヤちゃん! カグヤちゃぁぁんっ!」 悲痛な叫びを上げるチグサに、シュラは気味 の悪い笑みを向けて口を開く。 シュラ 「安心しろ、まだ殺してはいない」 チグサ 「えっ……?」 シュラ 「そう簡単に殺すわけがないだろ?」 シュラの言葉に一瞬ホッとしたチグサだが、 そのイヤな笑いに不吉なものを感じた。 シュラ 「簡単に殺してしまっては面白くないからな。 カグヤには私が味わった以上の屈辱を与えて やらないと気が済まない」 チグサ 「な、なんですって……」 シュラ 「くっくっくっ……カグヤには、たっぷりと 地獄を味わって貰う。もちろん、お前も一緒 にだ、チグサよ」 チグサ 「っ……」 シュラ 「では、早速案内してやろう。お前達の地獄 『デビルズネスト』へな」 シュラの言葉が終わらぬうちに、蠢く影が全 てを包み込んでいく。 それは妖魔が使う通り道だった。 次回より少しずつエッチになっていきます。