そして、事件から3年後……。 カグヤ 「はっ! やぁぁぁっ!」 カグヤは、よりその力を磨く為に、鍛錬を続けていた。 その強さは3年前とは比べものにならないものになっていた。 しかし、その為に人を寄せ付けない雰囲気をも身に纏っている。 そんなカグヤの修行を、チグサはいつも見守っていた。 チグサ 「カグヤちゃん……」 どんどん凄みを増していくカグヤを頼もしく思いながらも、一種異様な存在になっていく友に不安を感じてしまう。 だから、ついついカグヤの修行を見に来てしまうのだった。 そんなチグサの前で、カグヤは大きく息を吸い込むと、次の瞬間、巨大な火炎を吹いてみせる。 カグヤ 「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 激しい業火に一瞬驚いたチグサだが、あまりにも見事な火遁に思わず拍手をしていた。 カグヤ 「……んっ?」 拍手の音に火遁を止めて、チグサの方へとカグヤは目をやる。 その視線を受けて、チグサもカグヤの方へと歩み寄っていった。 チグサ 「すごいすごぉい! 火遁を使いこなせるようになるなんて、ホント、カグヤちゃんは天才だね」 笑顔でそう言ってくれる友人に対して、カグヤは首を横に振って見せる。 カグヤ 「いや……まだまだだ……」 押し殺すようにそう呟いた彼女の目は、3年前よりも冷たく鋭くなっていた。 チグサ 「カグヤちゃん……」 カグヤ 「……取りあえず、今日はこれぐらいにしておこうかな」 チグサが来た事で、カグヤは修行を終わりにすると、汗を拭きながら語りかける。 カグヤ 「なあ、チグサ。私の部屋で、お茶でも飲んでいかないか?」 チグサ 「えっ……!?」 カグヤの誘いに、チグサの顔が、若干青ざめていった。 チグサ 「カグヤちゃんの部屋って……」 カグヤは、火遁を習得してからというもの、自室にガマガエルを大量に飼い始めた。 その部屋を思い出して、チグサはすっかり引いてしまっていたのだ。 カグヤ 「どうしたんだ?」 チグサ 「あっ……いや……カグヤちゃんの部屋は、カエルがいっぱい居るから……ちょっと……」 カグヤ 「えっ?」 チグサ 「それに、お茶って……またあのガマ茶なんでしょ? あれも……ちょっと……」 思わず顔をしかめたチグサは、以前に飲まされたガマ茶の味を思い出していた。 その強烈なニオイと独特の味は、完全にトラウマになってしまっている。 しかし、拒絶された方のカグヤとしては、面白くない。 カグヤ 「なんだチグサ、討魔士がカエルぐらいで……何を言ってるんだ」 チグサ 「で、でもぉ……」 カグヤ 「それに、ガマ茶の何が気に入らないと言うんだ。美味しいのに」 チグサ 「お、美味しいって……」 カグヤ 「それにガマ茶は身体に良いんだぞ。慣れれば問題はない」 チグサ 「な、慣れるって……」 カグヤ 「部屋のカエルだって、慣れればなんてことはないぞ」 チグサ 「そりゃ……ちょっとぐらいなら、気にならないかもしれないけれど……」 反論したチグサの頭には、カグヤの部屋が思い起こされている。 そして思わず身震いするのだった。 チグサ 「さすがに……部屋を埋め尽くすくらいのカエルは……さすがに気持ち悪いよ」 カグヤ 「き、気持ち悪い……」 チグサ 「それに、毒を持っているのもいるし……」 カグヤ 「それはそうだが……でも、気持ち悪いって……あんなに可愛いのに……」 チグサ 「……………」 完全に俗世間とはかけ離れていって締まっているカグヤを、チグサは急に心配になってくる。 そこで、チグサはカグヤを諭すように語り始めた。 チグサ 「カグヤちゃん……周りの部屋の人たち、気持ち悪いとかうるさいとか言って、皆移動しちゃったんでしょ?」 カグヤ 「まあ……そ、そうだけど……」 チグサ 「ちゃんと飼育場で飼わないと、みんなに迷惑かかっちゃうでしょ。ダメだよ、そんなの」 そんな友人の忠告も、カグヤの一念を揺るがす事はできない。 カグヤ 「強くなるには仕方のない事だ。共に生活する事で、より良質な油を得る事ができるのだぞ」 カグヤの口から強くなるという言葉が出る時は、彼女は揺るがない。 それはそれでいいのだが、チグサはふと不安になって考え込む。 強さを求めすぎて、カグヤは孤立しているのではないだろうか? その不安が、思わず彼女の口を突いて出る。 チグサ 「カグヤちゃん、最近……隊の人達とは、ちゃんとコミュニケーション取れてる?」 カグヤ 「コミュニケーション? そんなものは必要ない」 冷たく言い放つカグヤに、チグサは困惑しながら詰め寄った。 チグサ 「なに言ってるの! チームで動くのだから、信頼関係を築いて士気を高めるのも重要だよ」 カグヤ 「士気など高めなくても、私一人で敵を殲滅する事が出来る」 チグサ 「そういうことじゃなくてっ!」 カグヤの冷たい受け答えに、思わずチグサが語気を荒げた時、不意に任務の知らせが届く。 カグヤ 「任務だ……行ってくる……」 チグサ 「カグヤちゃん……」 任務が入ったとなると、これ以上カグヤに詰め寄るわけにはいかない。 カグヤはチグサに背を向けると、任務に向かって走り出していく。 チグサ 「カグヤちゃん……昔はもっと優しかったのに……」 その後ろ姿を見送りながら、チグサは思わず表情を曇らせていた。 次回に続きます。