SakeTami
HIC*
HIC*

fanbox


アサヒ

※動画とアプリ版(win、mac)をDLいただけます。

アサヒSS


ND_Asahi-win


ND_Asahi-Mac


***以下SS***


「ただいまー」

「…………」

「あれ? ムルムル?」


 いつも店にいなければ部屋で出迎えてくれるはずのムルムルの姿がどこにもない。さては、ジュリオがまた抱き枕代わりに連れていったのだろう。

 あいつ、狙った相手にはもてないくせに、子供や動物に妙に好かれるからな……。今日もきっとムルムルを好物でつって、今頃は抱きまくらがわりにして一緒に寝ているのかもしれない。

 自分の部屋に普段であればあるはずの気配を感じないことに少しだけ寂しさもあるけれど、ムルムルがここに住む皆と仲良くしているのはうれしくもある。

 調理に接客、そして後片付けと明日の仕込みを終えて精根尽き果てていた俺は、思わずそのままベッドに倒れこみそうになったけれど、なんとか気力で耐える。

 仕事着が皺になってしまうし、汚れた体のままで横になるのは抵抗がある。


「……はぁ、疲れた…」


 俺が住んでいるこの建物の一階は、元々ばあちゃんが営んでいた料理店でそれを俺がそのまま継いだ。

 店名は『ノルンズダイン』。この世界を創ったと言われている運命を司る女神さまが、名前の由来だ。

 俺が跡を継いでからも、昔からの常連さんは変わらず通ってくれているし、ありがたいことに俺の料理を目当てに来店してくれるお客さんも増えてきているのを最近特に感じる。

 2階に下宿してる従業員のリトと二人で店をまわしているから、リトが不在で今日みたいにお客さんがたくさん来てくれた日はとにかく大変だ。

 だけど、やっぱり俺の料理を喜んで食べてもらえるのはうれしい。

 ただ、従業員はそろそろ増やさないだめかもしれないな……。


 そんな事を考えながら服を脱ぎ、浴室の魔具に魔力を流して、シャワーを浴びる。

 本当はゆっくりとお湯に浸かりたかったけど、湯船にお湯を張るのは時間もかかるし、今日はシャワーだけで我慢をすることにして、夜着に着替える。

 正直、疲れた身体は限界で今夜はもう眠ってしまおうと、倒れ込むようにして今度こそベッドに身を預けた。


「ん……」


 それなのに、なかなか寝付けそうにない。

 疲れた俺の体は、眠気ではなく違うものを催しはじめていたからだ。

 自分の下半身が熱を帯びて、下着の中が窮屈になるのを感じる。

 そういう欲求を覚えることすら久しぶりで、少し戸惑ってしまった。


 そういえば、いつも食材を持ってきてくれている問屋の店主が、珍しい食材を持ってきてくれたんだった。南の都市から取り寄せた果物で、精が付くから恋人同士で一緒に食べると盛り上がるよ……と。

 お店の新メニューに使えるかなと思って試食してみたけれど、もしかしてアレが効いているのだろうか。


 股間の昂りが苦しくて、俺はズボンと下着をずり下げた。すでに半勃ちの性器を下着からつかみ出して、ためらいがちに上下に擦る。

 そういえば、最後に自慰をしたのはいつだっただろう。ずいぶんと久しぶりで思い出せない。

(普通はエッチな妄想をしたり……好きな人のことを考えながらするんだろうな)


 でも、俺には想像力が足りていないのか、それとも何か大事なものが欠如しているのか、エッチな気分を盛り上げるようなことなんて何も思いつかない。いわゆる『大人の本』も持っていない。

 そして、誰かを好きになったこともないし、思い浮かべるような相手もいない……。

 いや、そういう相手を作るのが俺は本当は怖いのかもしれない……。

 俺が大切な人を作るということは、ある秘密をその人と共有することになってしまうから……。


「はっ、あっ……!」


 そんな思いとは裏腹に俺のペニスは、手のひらで擦る刺激だけで完全に勃起した。

 あの食材の効果なのか、いつもよりも硬く反り返っている。


「く、うっ……あ、やばっ! このままじゃ」

 先端から先走りがあふれて、指先に絡みつく。それがパジャマの裾へと滴り落ちそうになり、俺は慌てて汚れていない方の手で服を捲った。

 露出した腹部と胸に、冷たい外気が触れる。

 敏感になっている俺の体は、それだけでぴくんと反応してしまった。


「んぁ……っ!」


 思わず声が出そうになって、少し恥ずかしくなる。


「んっ! ふう、ん、んんっ」


 ぬるぬるとした露に濡れた指で、少し強めに扱いてみる。どこか卑猥で粘着質な音がして、先走りがぽたぽたと飛んだ。

 勃起したペニスが自分が出したもので濡れているところを見たくなくて、俺は自分の股間から目を逸らし枕に顔を埋める。


「っ、う、ん、うぅ」


 早く終わらせてしまいたくて、ペニスへの刺激を強くする。激しく上下に扱けば、質量を感じる水音がより大きくなった。

 荒くなっていく俺の息遣いと、ぐちゅぐちゅといういやらしい音が、暗くて静かな寝室では妙に響いて聞こえる。

 羞恥と強い快感に、俺はギュッと目を瞑る。


「あっ、ふっ! うぅっ!」

 こみあげてくる射精感に身を任せると、手のひらの中で硬い肉がびくびくと跳ねる。生温い液体が、びちゃびちゃと音を立てて飛び散るのを感じた。

 射精の快楽で、ふわっと体が浮いたような感覚になる。でも、その気持ちよさは一瞬で、すぐに霧散して現実だけが残ってしまう。


「はあ……拭かないとな……」


 自分が出したものの匂いを感じて、今しがた終えた行為について少し後悔する。

 事が終わった後、片付けをするのはひどく面倒だ。それに、性欲処理のためだけに一人でするこの行為は、寂しくて虚しい。

 ため息をついて、俺はベッドの上で上体を起こす。サイドテーブルに置かれたチリ紙で汚れた部分を拭くと、汚れた紙をゴミ箱に放り込んだ。

 洗面所まで気怠い身体を引きずっていき、蛇口の側の魔導石に魔力をこめれば澄んだ水が流れ出る。

 その水で、自分の精を受け止めた手を洗う。


(俺は……一生、こんな虚しい行為しかできないのかな……)


 ふと脳裏によぎったそんな思い。

 すっかり綺麗になった手を見つめながら、自分の中の深いところから浮かんだそれをあえて無視して水を止め、寝室へと戻った。

 今度こそ眠りにつこうとベッドに横になる。

 冷たいシーツの肌触りで奥深くに沈めたはずの思いが蘇りそうになり、慌てて枕に顔を埋めたが、ふと馴染みのある気配を感じてゆっくりと顔を向けた。


「ムル……ムル……」

「ムルムル、お前ジュリオのところじゃなかったのか……お腹空いてないか?」

「ムルッ!」 

「よし、それじゃ一緒に寝るか」

「ムルッムルッ!」

 ベッドに潜り込んできたムルムルの柔らかな毛皮と温もりがひどく心地よい。

 ふと、あの果実を手渡してくれた店主の言葉を思い出す。

 恋人と一緒に食べるというその言葉。

 好きな人と一緒に食事をするって、どんな感じなのだろう。

 俺が作った料理を、あの実を二人で分け合って食べて、ベッドで共に快楽を味わう。大事な人との行為の後なら、こんな虚しさを覚えたりはしないんだろうか。


「………………」


 俺にも、いつか現れるんだろうか。

 あの実を分かち合いたいと思えるような人が。


 それこそ『運命』のように。



アサヒ アサヒ アサヒ アサヒ アサヒ アサヒ

More Creators