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"巨大"ヒーロー様の受難 加筆修正版(前) 約13000字

こちらは既に公開していた小説 "巨大"ヒーロー様の受難 の加筆修正版になります。前編は公開済みの1と2をまとめて加筆した内容、後編は新規書き下ろしとなっています。最初の公開から少々期間が空いてしまったため、前編を全体公開とさせていただきます。


ーーー


「っ……ここ、は……?」


目を覚ましたレン・アスカジの目の前には、奇妙で不気味な異空間が広がっていた。薄い緑色の半透明な壁に囲まれたその場所は、見る限り外部と完全に遮断されている。唯一、壁越しに何かが動いているのがぼんやりと分かるだけだった。試しに壁にタックルしてみるが、衝撃を吸収するかのように身体がぐにゅりと沈み込む。硬度はまるで弾性のあるゴムのようで、破壊するのは不可能だと悟った。


(……っ、そうだ! みんなは……!?)


意識が混乱する中、レンの脳裏に過ぎったのは、自分が所属する防衛組織の仲間たちの顔だった。最後の記憶は、侵略生命体の出現アラートを受け、現場に急行したところで途切れている。星の安全を守るため、巨大ヒーローとして出撃したはずだ。しかし、その後の記憶がない。まるで断絶されたかのように真っ白。何とか思い出そうとすると頭がずきりと痛んだ。


(……まさか、敵に捕まったのか?)


己の状況を確認するべく辺りを見回すが、周囲には誰の姿も見えない。不気味に静まり返った空間に、レンはただひとり孤立していた。心に浮かぶのは、守るべき街や市民の安否。さらに言えば、頼れるバディであり、共に戦ってきたタクヤの姿も見当たらない。焦燥感が徐々に胸中を支配していく。


(いや……問題ない、作戦続行)


しかし、そんな中でもレンは己の冷静さを失わなかった。幸い、身体には特に異常は感じられない。拘束もされておらず、自由に動けることを確認すると、レンはすぐに立ち上がった。状況が分からない以上、いつ敵が現れても即座に対処できるように感覚を研ぎ澄ましつつ、肉弾戦を前提とした行動計画を練り始める。


その判断力は、やはりさすがといったところだ。

レン・アスカジ――26歳という若さながら、すでに250以上の戦果を挙げ、歴代最年少で巨大ヒーローの頂点に立ったスーパーエリート。その体躯は一般人よりも頭三つ以上高く、鍛え上げられた肉体は鋼鉄のような強度を誇り、数々の攻撃を無効化してきた。それでいて頭脳明晰。整った顔立ちは俳優さながらで、多くの人々の憧れの的だった。レン自身も、自分がこの星の希望であることを確信しており、その自負は揺るぎないものだった。


だからこそ、レンは想像すらしていなかった。

自分の誇り、信念、そして人生を支えてきた勝者の証が――ただの一瞬で、粉々に砕け散る瞬間を。


ーーー


(……? 壁が……)


突然、ブウンと鈍い音が響き、辺りを覆っていた半透明の障壁が解かれた。視界が開けると同時に、生暖かい蒸し暑さと異臭が漂い始める。レンは眉をひそめながら、周囲を警戒しつつ目を凝らした。


(なんだ、これは……?)


レンの目に飛び込んできたのは、巨大な膨らみだった。高さは実にレンの身長の20倍以上。圧倒的な存在感を放ちながら目の前に鎮座するその物体は、球形のガスタンクを優に超える規模で膨らんでおり、表面が生物のように微かに脈動している。異様な熱気と臭気はどうやらこの膨らみから発生しているようだ。表面は黒い布地のようなもので覆われており、中央には濃いシミが広がっている。そこからむわりと漂う臭気は鼻を突き、どこかで嗅いだ覚えのある独特な臭いだった。


(……凄い匂いだな。毒性はなさそうだが……)


レンは臭いに顔をしかめながらも、視線を膨らみの足元へ移す。今、自分が立っている地面はツルツルとしたガラスのような質感をしており、明らかに人工的なものである。膨らみの両脇からは、まるで樹齢数千年の大樹のような肌色の太い柱が地面に向かって伸びている。その不気味さに寒気を覚えつつも、レンは冷静に状況を分析する。


(これは高度文明の廃墟か? いや……この膨らみ、臭いで獲物を弱らせる食虫植物の一種かもしれない)


推測を立てつつ、レンは膨らみの正体を見極めるべくさらに上を見上げた。


(……ぁ、えっ……?)


次の瞬間、レンの思考が停止する。


膨らみの上にそびえ立っていたのは、空を覆い尽くさんばかりの巨大な壁だった。肌色に輝くその壁は、レンの故郷にある国王の城壁を遥かに凌駕する威圧感を放っていた。表面には深い溝が刻まれ、いくつものブロック状の隆起が層を成している。その全体からはじわりと水滴が滲み出し、湿った光沢を帯びていた。そして、その下部には黒い膨らみへと繋がる太いパイプのような束が這っていた。


(……まさか、そんなはず……)


レンの背中を冷たい汗が伝う。心の奥底では、その物体の正体をすでに理解している。しかし、それを認めることはただならぬ恐怖を受け入れることを意味していた。自分の仮説が間違っていることを祈りつつ、レンは恐る恐るさらに上を見上げた。


だが、残念ながら――レンの見立ては当たっていた。


壁の上にあったのは、膨れ上がった筋肉の塊だった。パンパンに張り詰め、まるで岩のように隆起した"大胸筋"が、レンを押し潰さんばかりの圧倒的な迫力で空を支配していた。逞しい胸筋は乳首を下に向けるほど盛り上がり、筋肉の影が地面にまで及ぶ。


(……まずい……逃げなきゃ……はやく……)


圧倒的な存在感に完全に呑み込まれたレンの足が後ずさる。だが、その逃避行動すら封じ込めるように、空間を震わせる低音が轟いた。




『おい』




轟音にも似た声がレンを包み込む。


「……ぁ……ひっ!」


思わず声を漏らすレン。その視線の先、空の彼方からさらに巨大な顔が覗き込んでいた。鋭い眼光が矮小なレンを捉え、容赦なく圧をかけてくる。そこにあるのは人間離れした圧倒的な肉体美、そして支配者の威厳。


レンの体は震えた。その星の最強と謳われた自分が、この存在の前ではまるで砂粒のように小さい。絶対的な力を持つ“本物"の前に、ただ情けなく腰を抜かしていた。

目の前の壁が「ゴゴゴゴッ!」と轟音を立てながら動き、レンの上に覆いかぶさるように迫り出してくる。その"壁"と比べ、レンの身体はあまりにも小さく、無力だった。大きな筋肉でできた"ドーム"が、彼の視界を完全に飲み込んでしまう。



ズドォォォォンッ!!



「うわっ……っ!」



レンの足元を揺るがすほどの衝撃が走る。彼のすぐそば、地面に隕石のような質量を持つ巨大な"手"が叩きつけられていた。その手首から続くのは、樹齢数千年の大樹のように太く、筋肉で隆々とした"腕"。そこから続く逞しい肩、太い首。さらにその上には――。





「……あ、ああ……っ」





『気分はどうだ?"巨大"ヒーロー様?』



低音の声が響き渡る。その声はレンの鼓膜だけでなく、辺りの大地全体を軋ませるように響いた。あまりの音圧に大気がビリビリと轟く。恐怖で足がすくむレンの遥か頭上には、空を覆い尽くすかのように巨人の顔が鎮座していた。その唇は、まるで自分の弱さを嘲笑うように弧を描いている。この星の人類とは比ぶべくもないほど、圧倒的上位存在の生命体。彼こそが、今回のレンの相手。星を守る"巨大"ヒーローとして、勇敢に立ち向かわねばならない敵性生命体だった。



「ぎゃああああぁぁぁぁっ!!」



レンは腰が抜けたようにその場に崩れ落ちた。そして、地面を這うようにして後ずさる。自分の影を完全に飲み込んでしまうほど圧倒的な巨体。人智を超えた質量の筋骨隆々とした肉体が、恐怖を容赦なく彼の心に刻みつけてくる。その姿に"巨大ヒーロー"としての威厳など微塵も無く、ただただ無様で滑稽だった。





『逃げられるわけないだろ。大人しくしろ』




巨人が冷たい声色で、吐き捨てるように言い放つ。

直後、レンの進行方向に隕石のように巨大な拳が振り下ろされた。

ズンッ、と地面が震え、レンの目の前に拳が突き刺さる。



「……あ……ぁ……」



もしも、その拳が少しでもずれていれば、レンの身体は跡形もなく潰されていただろう。圧倒的な力の差を目の当たりにしたレンの顔は青ざめ、身体はガタガタと震えていた。その恐怖に完全に飲み込まれながらも、彼は最後の勇気を振り絞り、かすれた声で問いかける。



「お……お前は……」




『……なんだ?』



「お前は……何者だ……!? ここはどこだ!? 俺たちの星はどうなったんだ……!?」



抜けた腰をなんとか支えながら、レンは立ち上がり、巨人を睨みつける。その姿は、彼なりに"ヒーロー"としてのプライドを守ろうとする最後の足掻きだった。しかし、その瞳には怯えがありありと映り、全身が小刻みに震えている。もはや、巨人の前ではただの小動物にすぎなかった。



『フン……"巨大ヒーロー"のくせに、その程度か』



巨人は鼻で笑い、レンを見下ろした。その圧倒的な存在感と巨大な体躯は、レンの心をさらに追い詰めていく。

巨人からすれば、自分など対話をするまでもないほどの存在でしかない。それこそ、今、彼が股間の膨らみを少し前にずらして手を離されたら。それだけで簡単に潰れてしまう。そんな想像に怯えるレンの胸中を全て分かりきっているかのように、巨人は悪い笑みを浮かべる。目の前の"玩具"をどう弄んでやろうか。そんな、相手を完全に見下した感情を全く隠す素振りも見せず、勿体をつけるように髪をくしゃりとかきあげて口を開いた。



「俺は天凪 統弥。お前たちの星を襲い……、この手で破壊した者だ」



統弥の拳がギュッと握りしめられ、上腕がボコリと膨れ上がる。その威圧感に、レンは言葉を失った。



「……なっ、そんな……!?」



自分の耳を疑いたかった。しかし、目の前の巨人が放つ圧倒的な力を見れば、それが嘘ではないと否応なく理解させられる。

統弥のような存在を迎え撃つ手段は、自分たちの星にはなかった――いや、本来ならばレン自身がその"切り札"として機能するはずだったのだ。しかし、今の自分はその切り札どころか、ただの無力な存在でしかない。星の最高戦力たる自分が太刀打ちできない相手に、対抗しうる武器などあるはずがなかった。



「ウソだ……俺の星が、そんな簡単に……滅びるわけがない……っ」



必死に否定するレン。しかし、その言葉にはもはや説得力などない。目の前にいる巨人が、全てを蹂躙する力を持つ存在であることは明白だったからだ。 もはや、確定的ともいえる状態だったが、レンは故郷の滅亡を認めたくない一心で現実から目を背けた。


だが、目の前の巨人は無慈悲にもそれを許さない。





『フッ……まあ、信じたくないのも分かるがな、証拠を見せてやろう』



統弥はその言葉とともにゆっくりと手のひらを差し出した。その上に映画館のスクリーンのように、ホログラムが浮かび上がる。




「……これは……?」



目の前にレンが守ってきた星が映し出される。宇宙から見た美しき故郷の姿。澄んだ碧の海洋と、熱き赤銅色の大地。奇跡のバランスによって生命が育まれた宝の船。これから、何百年、何千年と先の子孫たちに続いていくはずの惑星だった。




しかし、その尊い星の運命は突如終焉を迎える。





スクリーンの下から、星と同じ程の大きさの影が惑星に迫る。徐々に姿を露わにしていく巨大物体。その全容が明らかになったとき、レンは声にならない悲鳴を上げた。


それは紛れもない、赤黒い男性器の先端だった。




「…………ッ!? 何、を…………」


"それ"が現れてからは一瞬だった。


惑星に住む全人類をあざ笑うかのように、地表スレスレの位置でぶるんぶるんと亀頭が揺れる。

その衝撃波の威力はまさに神の一撃。迎撃のために待機していた宇宙艦隊はズタズタに叩き潰され一瞬で壊滅。海が割れ、大陸が丸々1つ消し飛ばされる。

そんな大惨事が巻き起こされた地表の反対側からは、ゴツゴツとした男らしい掌が迫り来る。巨大な掌はそのまま大陸の6割を押し潰し、硬球でも握り込むかのように星全体をガッシリと包み込んだ。


あまりの急展開を目の当たりにしたレンは、ただスクリーンを力なく見つめていた。そんなレンをよそに、星の終焉を告げる映像が淡々と流れていく。


地表に立てられた指の先端が何十もの国を丸ごと押し潰し、海を跳ね除けてずぶりと沈み込む。根こそぎほじくられた世界最高峰の山脈は、土くれとなって統弥の爪の隙間に挟まった。天文学的な握力で握りしめられた惑星は、地盤が粉々に砕け散り、マグマが星の至る所から溢れ出てどんどん地表が赤く染っていく。この時点で、星に住んでいた人類がほぼ絶滅したであろうことは誰の目にも明らかだった。




「ぁ…………」




あまりの残酷な仕打ちにレンはとっくに言葉を失い、半ば放心状態で故郷が滅びゆく様を見つめている。

真っ赤に目を腫らしたレンにさらなる追い打ちをかけるように、統弥の惑星オナニーは最終段階に移った。


獲物を前にして興奮が収まらない獣のように、びぐんびぐんと震える惑星並の亀頭。よだれのようにカウパーをどくどくと地表に垂らし、奇跡的に生きている最後の人類を容赦なく押し潰していく。興奮が最高潮に達し、ぶるりと竿が一際大きく震えたのを合図に、亀頭が星から離れる。




「…………やめろ………………」




うわ言のようにレンが呟く。


惑星と亀頭を繋ぐ粘っこい銀の糸がツウと垂れてたわむ。

そして、




ズグシャアァアァアアァッ!!!!




思いきり突き出された巨根が星を跡形もなく粉砕した。




「ああああぁあああぁあぁああああぁっっ!!!!!!」




声にならない声を上げて、レンは力なくその場に泣き崩れた。レンの心を粉々に打ち砕いてなお、蹂躙は止まらない。

ガチガチになった亀頭によって星は核ごと突き崩され、泥の塊になって哀しく亀頭にまとわりついた。

その上から巨大な手のひらが覆いかぶさり、星の残骸を潤滑油代わりにしながら刺激を求めていやらしく亀頭を揉みしだいていく。星が砕け散った後も残骸のうちまだ形の残っているものは器用に指で手繰り寄せられ、裏筋やカリに擦り付けられて巨人様の偉大な巨根に刺激を与える餌になった。

そして、全てが砂粒のようになるまですり潰された後、亀頭から吐き出された精の奔流に飲み込まれてレンの故郷は宇宙から完全に姿を消した。




「う、嘘だ…………」


あまりにも無情な現実を受け入れられないレンに統弥が冷たく吐き捨てる。


『嘘じゃない。間違いなく俺が潰した。証拠も残っているかもな……、ほら』


そういうと統弥は勢いよくボクサーパンツをずり下ろした。

大人顔負けの立派な逸物が、レンの頭上でぶるんと揺れる。萎えた状態でも皮はしっかりと剥けており、ぶりんと大ぶりなズル剥けの亀頭がそれだけで一頭の怪物のような存在感を放ちながら神々しく鎮座している。若い雄特有の酸っぱい汗の臭いと微かに混ざるアンモニア臭、そして優秀な精の種を吐き出したばかりだと感じさせる栗の花の臭いを撒き散らしている。

故郷を滅ぼした仇。そう分かっていても、レンの身体は動かない。失意に打ちひしがれるレンを嘲笑うかのように巨根がビクビクと揺れていた。


『この頃、少し溜まっていたからな。自慰の玩具としてありがたく使わせてもらった。……もしかしたら、チンコに故郷の残骸がこびり付いているかもしれないな?見たかったら、好きに探していいぞ?』


統弥が巨根を見せつけるように腰をググッと前に突き出す。ぶるんと竿が揺れた拍子に、ポロポロと赤茶けた土塊のようなものがいくつかレンの目の前に零れ落ちた。


「ぁ………ぁぁぁぁぁぁ…………ぁぁぁ…………っ」


土塊をひとつ残らず必死にかき集め、手で顔の前にすくいあげる。どこか懐かしさを覚える色。レンの故郷の星特有の金属が混ざった大地と同じ色だった。鼻に近づけてみても故郷の懐かしい香りはせず、雄臭いツンとする臭いがするばかりだった。


「これが……俺たちの星だっていうのか……?」


レンの手のひらから、かつての故郷の大地だったはずの土が、さらさらと音を立てて零れ落ちる。そこにあったのは、ただの瓦礫と灰の塊。繁栄を誇っていた都市も、人々の生活も、すべてが跡形もなく消え去り、ただの塵と化していた。


『ああ、そうだ。理解できたか?』


頭上から降り注ぐ声。この大殺戮を起こした張本人の巨人が冷淡に答える。彼の様子に悪びれる態度など微塵もない。ただ、圧倒的支配者の傲慢な余裕を漂わせて矮小なヒーローを見下ろしていた。


「なんで……なんでこんなことを……っ!」


レンは震える足で立ち上がり、その巨体を見上げた。目には怒りとも絶望ともつかない感情が渦巻いている。故郷のすべてを守れなかった無力感。理由も告げられぬままに破壊され尽くした星。理解するにはあまりにも厳しい、現実離れした惨劇だった。


『理由か?』


統弥はわずかに眉を上げ、肩をすくめるような仕草を見せた。その表情には嘲笑の色が浮かんでいる。


『お前たちの星には、何の価値もなかった。ただそれだけだ。』


「な、んだと……?」


『お前の故郷は資源の含有量……人類の脆弱性……文明の発展度合。どれをとっても特色がなく、保存するに値しなかった。だから破壊した。我が星のルールでは、利用価値のない星は調査担当者が自由に処分していいことになっている。それが答えだ』


統弥の言葉は、重い槌のようにレンの胸を打ち据えた。しかし、その冷酷な宣告は、レンの心を打ち砕いても止まらない。


『本当に価値の無い惨めな惑星だったが――、最期に多少、存在した意味を持ったな?お前が命を懸けて守ってきた故郷は、星に住む全員で俺の快楽のために勤めを果たしてくれたぞ?矮小人類を使い潰すのはやはり気持ちがいい』


統弥の笑みはますます広がり、その巨体から放たれる威圧感がレンを飲み込んでいく。巨人の優越感のためだけに滅ぼされた故郷――その現実に、レンの拳は激しく震えた。それが怒りによるものなのか、悔しさによるものなのか、それともただの恐怖によるものなのか。彼自身にも、その感情を判別することはできなかった。


「くそッ……ッなんで……そんなことが……!!!」


『どうする?復讐するか?』


統弥の挑発的な言葉がレンの耳に届く。中指を動かしながら煽る巨人の瞳には圧倒的な余裕があり、レンがどんな反応をするのかを楽しんでいるようだった。


「俺は……俺は……っ」


レンは必死に言葉を探そうとしたが、震える喉からは声が出ない。自分がどれほど無力なのか、この瞬間ほど思い知らされたことはなかった。


統弥は、ふっとため息をつくと、冷たい声で続けた。


『まあ、ヒーローに戦わせず、先に星を潰してしまったのは悪かったかもしれないな。お前は一応、注意対象として認定されていたからな。俺が到着した瞬間、カプセルに閉じ込めさせてもらった。おかげで、お前の力を試す暇もなかったからな――』


統弥は自嘲気味に笑い、次の言葉を口にした。


『だから、最後のチャンスをやろう』


そういうと、統弥は指先でレンの小さな身体を慎重につまみ上げた。その動作には、壊れやすい玩具を扱うような慎重さと、圧倒的な支配者の余裕があった。潰してしまわないように加減してやっている、と言わんばかりの巨人の態度にレンの胸は言い知れぬ敗北感で満たされた。


「……っ!」


レンは統弥の巨大な指に掴まれ、身動きが取れない。恐怖と屈辱で目を見開いたまま、統弥の次の行動を見つめるしかなかった。


統弥は振り返ると反対側のデスクへと向き合う。天板の上は綺麗に整頓されており、中央にはまるで展示物のように四角い半透明の箱が置かれている。そして、レンをその上にそっと降ろした。


「……こ、れは」


そこには――レンの知る景色があった。かつての故郷、自分が生まれ育った都市そのものだった。


『お前の国の首都だ。保存状態は完璧だろう?』


統弥はその街並みを指し示しながら、余裕たっぷりに微笑む。その声には嘲弄がたっぷりと込められていた。


『お前が"ヒーロー"なら、今度こそこいつらを守ってみせろ。……せいぜい、俺を楽しませてみせるんだな?』


そう言うと、統弥は一歩、また一歩と天板の縁すれすれまでレンに向かって近づいてきた。その足音は、地響きとなって街並みに振動を伝える。巨大な逸物が街の一角に大きく影を落とし、巨体が発する圧力と熱気が、まるで嵐のようにレンを襲った。


(……ッ、一体、どういうことだ……?)


巨体の圧力に圧倒されながら、レンは目の前に広がる街並みを見下ろしていた。その景色は――間違いなく、故郷の首都だった。信じられない思いで目をこするが、大陸一の高さを誇る電波塔、友人と通った複合型の娯楽施設、国内最大のテナント数を誇る大型デパート――どれもが、自分の記憶にある姿そのものだ。


都市の中で日常を送る市民たちの姿さえ見える。それはレンが愛し、守りたかったもののすべてだった。だが――確かにそれは統弥によって、彼の目の前で完全に破壊されたはずだった。


(無事だったのか……? 本当に?)


レンは胸の内で安堵と疑念が入り交じる。だが、それ以上にこの状況が理解できなかった。一体どういうことだ? どうしてこの街だけが――。


レンの視線に気づいた統弥が、ふと嘲笑を浮かべながら説明を始めた。


『星を潰す前に、この都市だけを特別に保護してやった。座標を指定して、オリジナルの地盤ごとこのケースの中に転送した』


統弥は椅子の座面を覆う透明なケースを指し示しながら、上空に空いている方の手でコンコンと天井を軽く叩いた。その音がケース内に反響し、都市にいる人々に届いたのか、騒然とした様子が見える。


『ここにざっと300万匹いる。正真正銘、あの星の最後の生き残りだ』


レンはすぐさまケースに駆け寄り、中を覗き込んだ。そこには、活気に満ちた故郷そのものの姿があった。市民たちが街を歩き、建物の中で日々の生活を営んでいる。その光景は、あまりに現実感がなかった。


(まだ、生きている……よかった……!)


胸の奥にじわりと熱いものがこみ上げてきた。守れなかったはずの人々がここに生きている。それがどれほど奇跡的なことか。しかし――同時にレンの心の中には、統弥への強烈な疑念が湧き上がっていた。


(どういう風の吹き回しだ? 本当に、こいつが助けてくれたのか?)


統弥の行動の意図がまるで読めない。彼のこれまでの蛮行を思えば、この都市を「保護した」という言葉があまりにも不自然だった。


「何を考えている……?」


レンは小声で呟いた。


それが聞こえなかったのか、あえて聞き流したのか、統弥はそのまま言葉を続ける。


『この都市だけは利用する価値があったからな。……特別に、残してやったんだ』


どこか含みのある言い方に、レンの疑念はさらに深まるばかりだった。何にせよ、無事だったのはいいことだが、それでも巨人の行動が読めない。自分に対する詫びとして残してくれたのだろうかと考えたが、それもすぐにかき消された。


(いや、ありえない。だって、こいつは――――)


レンの脳裏に故郷の惨たらしい最期がフラッシュバックする。目の前の巨人が故郷の星をあまりにも屈辱的な方法で破壊したのは間違いない事実だ。

その星にどれだけの人間が住んでいるかを知っていながら、自分のオナニーのためだけに数十億人を虐殺するやつが純粋な心で街を残してくれるわけが無い。

もう一度、俺たちのことを弄ぶつもりではないか。もしそうだとしたら、レンにとって到底許せることではない。怒りが巨人への恐怖を押し退けて溢れ出し、レンの拳は再び震え始めた。


(……ただ、身体がデカいだけのくせに……!)


統弥の圧倒的な暴力。その巨体の前に人類はただ無力で、逆らうことさえ許されない。レンの拳に力が込められ、爪が食い込み、血が滲む。本当ならば、この巨人を殴り倒し、苦痛を与え、殺したい。だが――。


(……ダメだ、俺は……)


レンは拳をゆっくりとほどき、自分に言い聞かせる。


(皆を守る、ヒーローだから……)


巨人と対等に交渉できるのは、自分しかいない。感情的に反発しても、この場で叩き潰されるだけだ。それでは人々を守ることができない。ここにいる300万人の命を救える可能性があるのは、自分が冷静でいる間だけだ。


レンは感情を抑え込み、統弥に向き直る。


「俺たちを……守ってくれたんですよね? ありがとうございます」


統弥の瞳にほんの一瞬、意外そうな色が浮かぶ。だがすぐに、それは冷たい笑みに変わった。


『そうだな、守ってやった。だが――このケースのおかげで生きていられるだけだ。これを外せば、こいつらはすぐに死ぬ。……こんな風にな』


統弥が不意に手を伸ばす。ケースを覆う透明な壁の一部を指先で操作すると、左側半分だけがスッと消えた。その瞬間、ケース内の都市に異変が起こる。


「何だ……? 急に空が……」

「何あれ?」

「なんだ、この匂い……」


都市の中の人々が、突然現れた巨大な影と、まとわりつく熱気に戸惑う。その影は――天に聳え立つ統弥の巨根だった。都市の規模をはるかに超える巨大なチンコが都市の上に突き出されている。その肉棒はむわりと熱を放ち、わずかに湿った臭気を纏っていた。


「やめろ……! 何をする気だ!」


レンは必死に叫び、統弥の巨根を見上げた。だが、巨人の表情は変わらない。それどころか、楽しむようにゆっくりとチンコに添えた手を動かし始める。レンの背中を嫌な汗が伝う。必死に静止を求めて叫び続けるが、統弥がそれを聞き入れる様子は全くない。


ぬちゃぬちゃといやらしい音を立てて扱かれ、徐々に完全体へと近づいていく大巨人のチンコ。統弥の大きな両手で握りこんでも余裕で持て余すほどにまで成長しきった逸物は、都市の両端をその中に収めてしまえる程に長大だった。もはや一生物の男性器とは到底思えないほどの存在感で、都市の上空を支配している。その正体に気づいた人間達の戸惑いが、徐々に阿鼻叫喚の悲鳴に変わっていく。


『ふん……愚かな奴らだな。そこで見ていろ、こいつらの行く末を』


統弥の言葉とともに、巨根がさらに都市に近づく。建物が風圧で崩れ、人々が悲鳴を上げながら木の葉のように吹き飛ばされる。


「あ、うわあぁあああぁあっ!ぎゃっ……」

「嫌だ、嫌だ、嫌だあああ!!!っぐべッ……が……」

「助けてぇ!!! レン!!! 助けて!!!」


ヒーローの助けを求めて叫ぶ声が、都市全体にこだまする。その声が聞こえるよりも速く、ヒーローは地面を蹴り巨根が迫る街の中心へと駆け出した。その背中に、何百何千という人々の希望が乗っている。


「あぁあ…………もうダメだぁ!!!」

「潰される!!!!!」

「うあああぁぁあぁあああっ!!!!」


絶望の声が彼の背中に重くのしかかる。統弥の圧倒的な巨体により、街全体が震撼し、風が唸りをあげて吹き荒れていた。彼がほんの少し肉棒を動かしただけで、都市は嵐に見舞われたかのような混乱に陥る。 民達の無数の悲鳴を押し潰すかのように、ぐんぐんと地表に圧し迫る圧倒的な逸物。人智を超えたその質量は凄まじい量の大気を押し退け、雄臭い暴風を巻き起こしながら微生物のような人間達の元へ降りてくる。至る所の窓ガラスが粉々に砕け散り、小さな家屋がグシャリと音を立ててひしゃげ潰れていく。吹き飛ばされるバスや自動車、そして人間。目の前で散っていく命をただ見ていることしか出来ない己の無力さに、レンは歯を食いしばる。自分は全ての命を救えるような、万能な存在では無い。それでも。


自分に出来ることがあるのなら。


「これ以上、やらせない! 誰も……殺させない!!!」


レンはすべての力を振り絞り、巨根の真下に滑り込んだ。その瞬間、地面全体がひしゃげるような轟音が鳴り響き、圧倒的な質量が止まる。街のランドマークである高層ビルの屋上と巨大な竿の裏筋が、目と鼻の先にまで迫った瞬間。彼はそのすべての重みをその身に受け止め、街を守る盾と化した。 隕石をその身で受け止めたかのような衝撃に、レンの全身が軋む。


「っ……ッぐぁ……ッ」


本来ならば到底耐えられるはずもない圧力。しかし、ヒーローとしての意地が、レンの心を、身体を、強く支えていた。まさに、ヒーローの鑑。その大きく、逞しい背中は、希望の象徴として生き残った民衆達の目に強く焼きついた。




しかし、




『ふん…………。その程度で、本当にこいつらを守ったつもりか?』




人間達にとっては神にも等しいヒーロー様も、




『これなら、どうだ?』




大巨人の前ではただの微生物に変わりない。


巨人の低い声が轟いた。冷酷でありながら、どこか愉悦に満ちているその声が、都市全体を覆い尽くすかのように響き渡った瞬間。




「ッ!!……な、うぐ……ッああああぁぁっ!!!」




統弥が巨根を抑えていた手を外した。


ただ、それだけだった。


巨人にとってはただの微かな身動きでしかない。

しかし、レンと都市にとっては破滅的な力を持つ動作だった。


鉄のような硬度で勃ち上がった巨根はぶるんと大きく反動をつけてそそり立ち、バヂンと勢いよくボコボコに割れた腹筋に埋まるように叩き付けられる。


その瞬間、都市全体に強烈な上昇気流が巻き起こった。凄まじい勢いでビルや家屋、車両、そして人間までもが一瞬にして空中に巻き上げられていく。

若い雄の汗の匂いに満ちた暴風が大きく渦を巻き、名だたる高層ビル郡を容易くなぎ倒して暴れ回る。

無数の人間達が空中に放り出され、とてつもないGの負荷に身体が潰れて霧散していく。勃起によって引き起こされた雄臭い爆風によって、全てがずたずたに引き裂かれ、塵のようになった後、還るように元の大地へ降り注いだ。


「ッ……!!」


空中に巻き上げられたレンは、辛うじて何かに掴まりながら風圧に耐えたが、体を打ちつけられ、再び地面へと叩きつけられた。その身体は鍛え抜かれているものの、このような規格外の衝撃には到底耐えられるはずもない。


「……あぁ……ぁ……」


何とか起き上がり、息を切らしながら立ち上がったレンは、目の前の光景に言葉を失った。


一瞬にして変わり果てた街の姿。無数のビルは瓦礫となり、大地は抉られていた。大気中に舞う粉塵の中、地面に散らばるのはかつて生きていた人々の残骸だ。雄臭い風の匂いが漂う中、都市全体がまるで戦場跡のような無惨な姿を晒していた。


「だ、誰か!誰か生きている者は!!!」


辺りに呼びかけても、返事は返ってこない。翳してみた生体センサーにも、何も映ることは無かった。

大巨人の勃起チンコという未曾有の大災害に襲われた街は、保護機能の壁を境に綺麗に運命を隔たれた。


『ふん、本当に脆弱だな』


フン、と鼻を鳴らし、冷めきった目でレンを見下す統弥。あまりにも弱すぎる矮小種族に対する嘲りをもはや隠そうともしない。ただただ、ふてぶてしい態度でニヤリと笑っている。いきり立った巨根からは消化不良だと言わんばかりにどぷどぷと我慢汁が溢れだし、誰も居なくなったクレーターの上に大きな池を作り出していた。


『見ろ、俺がチンコを振りかざしただけでこの有様だ。直接手を下すまでもない。弱く、愚かで、抗うすべもなく、ただ無様に命を散らす。本当に無様だな?なあ、ヒーロー様』


統弥の声が上空から降り注ぐ。それは、レンにとってこれ以上ない侮辱だった。彼の目には、レンも、街も、人間も、何もかもがゴミのようにしか映っていない。


「…………」


レンは拳を握りしめた。自分が必死に守ろうとしたものが、あまりにも簡単に壊されていく。それを見下ろし、あざ笑う統弥の存在は、彼にとって最大の屈辱だった。


「これでも……まだ満足しないってのか……!!」


怒りに燃える声が、大地に響いた。 震える声で遥かなる上位存在に向かって叫ぶ。こちらも、溢れ出る激情を隠そうとはしなかった。


「あるに決まってるだろ!!!!!ッ……だから!!!もう、もうやめてくれ!!!沢山の人がいて!!!活気に溢れた営みがあって!!!人の数だけの幸せがあるんだ!!!!!もう、これ以上俺たちから何も奪わないでくれ!!!!!」


レンの熱の篭った叫びに一瞬、統弥の眉がピクリと動く。生意気にも自分に意見をする矮小種族のヒーロー気取り。その気になれば指先で肉塊にしてしまえるような図体の貧弱さで歯向かってくる、その健気さを見て統弥は――――、


『そうだな。それなら――――』


統弥がウィンドウをなぞると小さな半透明のボックスが彼の手のひらの上に現れた。それを親指と人差し指で摘んでレンの目の前に突き出す。大きさはレンの背丈と同じくらいで、中には見慣れた人影。


「……なんだ、これ……。…………!レン!レン!!!聞こえるか!?レン!!!」


「…………タクヤ……?」


戦友であるバディーヒーロー、タクヤの姿があった。


『こいつか、街の残り半分。どちらかを差し出せ。…………全てを奪われたくなければな?』


その健気さを見て統弥は、より屈辱的にいたぶってやりたいと胸を高鳴らせていた――――。



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