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"巨大"ヒーロー様の受難 2 約4600字

「え…………なん、で」


統弥に摘みあげられた状態で椅子の座面上に広がる街並みを見下ろすレン。どう見ても間違いなく故郷の首都だ。一瞬、自分の目を疑ったが、流石に見間違えるわけが無い。大陸一の高さを誇る電波塔。友人と通った複合型の娯楽施設。世界有数の大規模な多目的ドーム。国内最大のテナント数を誇る大型デパート。そして、ありふれた日常を謳歌する市民達。どれもが愛おしく、守りたかった、けれど守れなかったはずのもの。それが今、すぐそこにある。


(無事、だったのか。……良かった。良かった、ん、だが……)


一体どうして?目の前の憎き巨人によって破壊されたのではなかったのか?あまりに怒涛の展開に、レンの柔軟な思考でも何が起きているのか理解できなかった。統弥の表情を伺うために顔を上げるが、妙に淡々としており特にこれといった動きが無い。


『星を潰す前にこの都市だけを特別に保護してやったんだ。座標を指定してオリジナルの地盤ごと、このケースの中に転送した』


統弥が指し示すように都市の上空に空いている方の手をかざす。そのまま手の甲でコンコンと空を――、ケースの天井を小突いた。


『見えるか?この中にざっと300万匹いる。正真正銘、あの星の最後の生き残りだ』


ゆっくりと椅子の座面に下ろされると、レンはすぐさま駆け寄って透明なケースの中を覗く。そこには、活気に溢れた人類の営みがあった。この中にまだ生きている人達がいる。いざ目の前にすると、その実感がふつふつと湧いてきてレンの胸がじわりと熱くなる。


(しかし、一体どういう風の吹き回しだ……?本当に、こいつが助けてくれたのか?)


喜ばしい思いはあれど、レンの中では当然ながら統弥に対する猜疑心が渦巻いていた。この都市だけを特別に保護した、と言っていたが、肝心なその詳細については未だ不明のままだ。これまでの巨人の発言から推測するに、自分に対する詫びとして故郷を選んでくれた、とも考えられなくは無いが――――、


(いや、ありえない。だって、こいつは――――)


レンの脳裏に故郷の惨たらしい最期がフラッシュバックする。その瞬間、もしかしたらなどという淡い希望的観測も掻き消えた。目の前の巨人が故郷の星をあまりにも屈辱的な方法で破壊したのは間違いない事実だ。その星にどれだけの人間が住んでいるかを知っていながら、自分のオナニーのためだけに数十億人を虐殺するなんて正常な奴の思考だとは思えない。それとも、自分たちの種族のことなど本当に微生物如きの存在としか思っていないのか。


(ただ……身体がデカいだけのくせに…………)


あまりにも常軌を逸した傲慢な態度、横暴な行為も生物としての圧倒的な体格差を持ち出されてはただそれを受け入れることしかできない。怒りに打ち震える拳に爪が食い込み、ぽたりと血が滴った。本当ならば、今すぐにでも、目の前の巨人を殴り倒して、想像できないほどの苦痛を味わわせて、殺してやりたい。


(でも…………ダメだ。俺は)




皆を守る、ヒーロー、だから。




今、巨人と対等に話ができるのは自分しかいない。そんな自分が喧嘩腰で向かっていっては、人間達は巨人との対立を望んでいると示しているようなものだ。なんとも情けないことだが、自分も皆も巨人の気まぐれで生かされているだけにすぎない。巨人からすれば、自分たちなど文字通り吹けば飛ぶような存在だ。真っ向から立ち向かったところで、一撃で叩き潰されて故郷の悲劇が再演されることになるのは明白だった。


あくまで穏便に。巨人を下手に刺激しないように振る舞う。そうすれば、もしかしたら、ここにいる皆だけでも。

守れるかもしれない。


レンは大切な使命のために激情をぐっと押し殺し、巨人のご機嫌取りを試みる。


「俺たちを守ってくれたんだ……ですよね?ありが


しかし、人間がどれだけ頭を巡らせて行動しようと、


『だが、こいつらは本当に矮小で脆弱だ。俺が想定していたよりもずっと、な。今はこのケースの保護機能が働いているから生きていられるが、それが無くなればすぐに死ぬ』


巨人はそれら全ての課程を当然のように踏み躙っていく。


統弥が操作ディスプレイに触れると、ケースの周りを覆っていた透明な壁が街の左側半分だけスッと消えた。


「なんだ?いきなり空が…………」

「何あれ?」

「つか、なんだよこの匂い…………」


突然の出来事に戸惑う人間たち。彼らの目に飛び込んできたのは、都市一つを優に跨ぎこす大きさの巨大な円柱状の物体。母星の移民船を彷彿とさせるサイズのそれは、仄かに熱を帯びてむわりと蒸れた臭気を纏っている。どこか見覚えのある、それでいて神々しい姿を晒す肉の柱。そこから発される雄臭い匂いがたちまち都市全体を包み込んだ。


「おい、何をする気だ……。やめろ……!」


レンの背中を嫌な汗が伝う。必死に静止を求めて叫ぶが、統弥がそれを聞き入れる様子は全くない。


『ふん……愚かな奴らだ……』


ぬちゃぬちゃといやらしい音を立てて扱かれ、徐々に完全体へと近づいていく大巨人の巨根。統弥の大きな両手で握りこんでも余裕で持て余すほどにまで成長しきった逸物は、もはや一生物の男性器とは到底思えないほどの存在感で都市の上空を支配していた。徐々にその正体に気づいた人間達の戸惑いが阿鼻叫喚の悲鳴に変わっていく。


「なんだよ、あれ…………!嘘だろ……」

「嫌だ、嫌だ嫌だああああ!!!」

「助けてぇ!!!レン!!!助けて!!!!!」


助けを求める民衆の声が小さなケースの中に響き渡る。一度は失ったと思ったかけがえのないたくさんの命。彼らを守るため、レンは必死に巨根の下へ駆けだしていく。


(絶対に…………やらせない…………っ!!!!)


「あぁあ…………もうダメだぁ!!!」

「潰される!!!!!」

「うあああぁぁあぁあああっ!!!!」


民達の無数の悲鳴を押し潰すかのように、ぐんぐんと地表に圧し迫る超巨大男根。人智を超えたその質量は凄まじい量の大気を押し退け、雄臭い暴風を巻き起こしながら微生物のような人間達の元へ降りてくる。至る所の窓ガラスが粉々に砕け散り、小さな家屋がグシャリと音を立ててひしゃげ潰れていく。吹き飛ばされるバスや自動車、そして人間。目の前で散っていく命をただ見ていることしか出来ない己の無力さに、歯を食いしばる。自分は全ての命を救えるような、万能な存在では無い。それでも。


自分に出来ることがあるのなら。


「くっ…………う、おおおおおおおぉぉおぉらああああっ!!!!」


『…………ほう』


街で一番の高層ビルの屋上と竿の裏筋が目と鼻の先にまで迫った瞬間。統弥が圧倒的なまでの規格外チンコで街をズタズタに蹂躙せんとしたその刹那。レンはその下に体を滑り込ませ、巨人の蛮行を間一髪で押しとどめた。


「っは…………ッ!これ以上、やらせないっ…………!もう、誰も…………!殺させない!!!!」


ヒーローとしての意地が、レンの心を支え、身体を突き動かしていた。彼こそが守るべきものを持つヒーローの鑑。その大きく、逞しい背中は、希望の象徴として生き残った民衆達の目に強く焼きついていた。




しかし、




『ふん…………。その程度で、本当にこいつらを守ったつもりか?』




人間達にとっては神にも等しいヒーロー様も、




『なら、これでどうだ?』




大巨人の前ではただの微生物に変わりない。




「ッ!!、な、ッうぐッああああぁあああッ!!!!」




ギンギンにイキりたった竿を押さえつけていた指が外される。鉄のような硬度で勃ち上がった巨根はぶるんと大きく反動をつけてそそり立ち、バヂンと勢いよくボコボコに割れた腹筋に埋まるように叩き付けられた。


ただ、それだけだった。


ただ、勃起したチンコを弾いただけ。


それだけの何気ない動作。ほんの一挙手一投足。


統弥にとっては、ただの生理現象でしかない。しかし、


人間達にとってはそうではない。


圧倒的体格差が生み出す、純然たる力の差。目の前に聳え立つ大巨人と自分たちとの生物としての格の違いを改めて思い知らされる。


街を縦断して覆い尽くすほどの質量を持った肉の塊が、上空で勢いよく跳ね上がる。その衝撃は人智を遥かに超える衝撃となって巨根の下にある矮小な都市を襲った。


統弥の勃起が勢いよく振りあがった瞬間、レンは洗濯機に放り込まれたかのような感覚とともに、為す術なく吹き飛ばされた。人間の力では抗いようのない、凄まじい速度の上昇気流が街を襲う。

地盤ごと剥ぎ取られるような勢いでビルも家屋も人間も、埃のように軽々と上空に巻き上げられていく。むわりと若い雄の汗の匂いに満ちた暴風が大きく渦を巻き、名だたる高層ビル郡を容易くなぎ倒して暴れ回る。人間達はとてつもないGの負荷に身体が耐えきれず、空中で次々と潰れて霧散していく。巨根の勃起によって引き起こされた雄臭い爆風によって、全てがずたずたに引き裂かれ、塵のようになった後、還るように元の大地へ降り注いだ。


勃起チンコの起こした爆風に吹き飛ばされたレンは、身体を強く地面に打ち付けられながらも何とか立ち上がった。ヒーローとして鍛え上げられた肉体はこの程度で屈するほどヤワなものでは無かったが――――、


「あ……あぁ、ぁ…………」


誰もが皆、レンのように強くは無い。


レンの目に映ったのは、一面の更地。大巨人の勃起という未曾有の大災害に襲われた、悲劇の大地。

先程まで健在していた国家の一大都市は、保護機能の半透明な壁を境に綺麗に運命を隔たれた。

機能外に出された地域はどのような人工物であろうと等しく粉砕され、そこにあった全てが葬り去られていた。


『ふん、本当に脆弱だな』


フン、と鼻を鳴らし、冷めきった目でレンを見下す統弥。あまりにも弱すぎる矮小種族に対する嘲りをもはや隠そうともしない。ただただ、ふてぶてしい態度でニヤリと笑っている。いきり立った巨根からは消化不良だと言わんばかりにどぷどぷと我慢汁が溢れだし、誰も居なくなったクレーターの上に大きな池を作り出していた。


『見ろ、俺がチンコを振りかざしただけでこの有様だ。直接手を下すまでもない。弱く、愚かで、抗うすべもなく、ただ無様に命を散らす。本当にこんな奴らを守る価値があると思っているのか?』


「あ…………る…………」


震える声で遥かなる上位存在に向かって叫ぶ。こちらも、溢れ出る激情を隠そうとはしなかった。


「あるに決まってるだろ!!!!!ッ……だから!!!もう、もうやめてくれ!!!沢山の人がいて!!!活気に溢れた営みがあって!!!人の数だけの幸せがあるんだ!!!!!もう、これ以上俺たちから何も奪わないでくれ!!!!!」


レンの熱の篭った叫びに一瞬、統弥の眉がピクリと動く。生意気にも自分に意見をする矮小種族のヒーロー気取り。その気になれば指先で肉塊にしてしまえるような図体の貧弱さで歯向かってくる、その健気さを見て統弥は――――、


『そうだな。それなら、条件を提示しよう』


統弥がウィンドウをなぞると小さな半透明のボックスが彼の手のひらの上に現れた。それを親指と人差し指で摘んでレンの目の前に突き出す。大きさはレンの背丈と同じくらいで、中には――――


「……なんだ、これ……。…………!レン!レン!!!聞こえるか!?レン!!!」


「…………タクヤ……?」


戦友であるバディーヒーロー、タクヤの姿があった。


『こいつか、残った街全部。どちらかを差し出せ。…………全部奪われたくなければな?』


その健気さを見て統弥は――――、より屈辱的にいたぶってやりたいと胸を高鳴らせていた――――。




Comments

何も知らぬまま守るべき星を破壊され、今度は何もできぬまま都市を破壊され……レンへの尊厳破壊がすさまじいですね……!!巨根が跳ね上がる衝撃だけで吹っ飛ばされ都市が崩壊するなんて……! そしてまたレンにとってつらそうな展開の予感……!!

ichiya


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