SakeTami
雪中アヤメ
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お嬢様のリハビリはラバー人形で

 この伯爵家のお嬢様が誘拐されたのは、今からちょうど一年前のことだった。  街に出掛けた際に、内通していたメイドの手引きで伯爵家を恨む者に攫われてしまったのだ。  幸いその日のうちに救出された上、貞操は汚されていないとすぐに確認された。服の上から縛られていたのと……半日以上そのままにされていたせいで失禁してしまっていたからわかったのだが、後者は禁句とされている。  伯爵閣下の対応は素早かった。お嬢様が姿を消した場所を目撃情報から即座に割り当てると、街の全兵力を的確に使って半日で見つけ出したのだ。救出に成功すると下手人を全て捕まえて拷問で情報を引き出し、全員を火炙りで公開処刑することで怒りを示した。お嬢様の受けた理不尽な恐怖と奴等の筋のない逆恨みによる凶行、貴族への重大な反逆を思えばこの国ではやり過ぎな刑罰ではなかったが、何よりも再発防止のためだったのだろう。  内通したメイドはさらに悲惨だった。吐く情報もないのに屋敷内の目立つ場所でひたすら拷問を与えられてから、朽ち果てるまで正門横で晒し者にされた。……これは恐らく、使用人への見せしめであり脅しだろう。裏切ればこうなるぞ、という。代わりとばかりにその月から給金が増えたから、伯爵閣下に人の心がないわけではないのだ。  ただ……それでも、お嬢様の受けた被害は深刻だった。蝶よ花よと育てられつつも聡明で優しいお嬢様にとって、信じていたメイドに裏切られたのは余程堪えたのだろう。人の姿を見るだけで悲鳴をあげるだけならまだまし、震えが止まらなくなって立っていられなくなったり過呼吸になったりして、まともに生活も送れなくなってしまった。閣下はそれでも生涯伯爵家で面倒を見ると、貴族の慣例を無視してまで愛娘の安寧を優先したが。  当初は部屋の前に食事を置いて去るだけという、貴族令嬢が受けるはずもないような扱いしか取りようがなかったが……しばらくすると、お嬢様が恐れるものがわかってきた。  大きく分けて、3つだ。  ひとつは男。攫われて監禁されていた場所で、主犯の男たちに余程怖い目に遭わされたのだろう。扉越しに父と兄に謝罪するお嬢様の声色は、あまりにも痛々しかった。  ひとつはメイド……というよりは給仕服や、何かを隠すことができるようなゆったりした服だ。それを着ていない女が相手なら、本当に多少ではあったがましになっていた。恐らく件の裏切り者が、給仕服の裾あたりからナイフでも取り出して突きつけたのだろうか。  そして最後のひとつ……最も対策が難しかったのが、人の顔。お嬢様は今、他者の顔を見るだけで恐怖を抱いてしまう状態だった。  故に、屋敷では現在、とある対策を取っている。 「エメル、用意はできていますね」 「はい。よろしくお願いいたします」  使用人用の作業室で、私は給仕服を脱いで全裸になっていた。そのまま隠すことなく足を肩幅に開き、腕も斜めに広げて、指も開いている。  私の目の前にいるメイド長は、そのまま私の左の手の甲に真っ黒で柔らかいものを触れさせて、魔力を流した。するとそれは肌の表面を薄く覆うように広がっていき……腕全体を黒く包むと、そのまま胴体へ。  右腕や脚といった他の四肢はもちろん、そこそこあると自負している胸も、最近は特に細く保つよう意識している腹も、それどころか空気に曝しているのも恥ずかしい股まで、全て同じように覆われていく。それは頭すら例外でなく、やがて髪も全て内側に納めた上に頭頂まで素肌を隠してしまった。  これは本来なら重犯罪者や魔術師の捕虜などに使うための拘束具だ。起動すると対象を完全に包み込んでしまって捕らえ、起動時に込めたものと同一人物の魔力を再び注ぐまで極小の檻であり続ける。  今は何にも触れずに全ての関節を開いているから包まれただけだが、対象に触れている床以外のものは巻き込む上に関節を閉じていたらまとめて包んでしまうから普通は動けなくなる。おまけに魔力は通さず、包まれていると魔術も使えない。  例外は二つだけ、口と目だ。尋問にも使うからか口は包んだ時点では開くようになっていて、目元には小さな穴が空いているのか視界は狭いものの確保されている。おかげでこうして開いて身につければ動けるから、本来の用途でない使い方をしているのだ。 「よし。……では、終わったらここに戻ってきて私を呼びなさい」 「かしこまりました。行ってまいります」  ……そう、お嬢様だ。全身を何かを隠したりする余地などなく包み、顔もすっかり隠してしまう上に魔術も封じられているこれは、絶対的に無力かつお嬢様の恐怖を刺激しないのだ。  これを見出して以来、お嬢様に気に入られていた一部のメイドが持ち回りでこの“ラバー梱包具”を身につけてお嬢様のお世話を行うことになっていた。私もその担当の一人として、三日に一度ほどこの姿となりお嬢様の部屋へ入っている。  あまり人数がいるわけでもない上、伯爵閣下が無理を言って取り寄せたラバー梱包具は本来一般には流通しないからひとつしかない。だからそうやすやすと脱ぐわけにはいかず、少なくとも夜まで、お嬢様の気分次第では朝までこのままだ。  用意されていたワゴンを押して廊下を進む。……必要な事だから平然としろとは言われているものの、こんな体の形をそのまま出すような格好が恥ずかしくないわけがない。裸とさして変わらない、それどころか下手をすれば裸よりも恥ずかしい格好で、しかも上に何かを着ることもできない。その上頭まで完全に包まれて、顔立ちも髪も奪われているのだ。……元が犯罪者や捕虜用の拘束具だから少し締め付けが強めになっていて、恥部の筋にも食い込んでいるから余計に。 「お嬢様、朝食をお持ちしました」 「……エメルね。例の、着てるなら入って」 「はい。失礼いたします」  だが、お嬢様のためだ。私はお嬢様のために生きると事件よりずっと前から決めているから、そのためなら、お嬢様以外の誰に見せるわけでもない以上はいくらでも耐えられる。  お嬢様のお部屋をノックすると、声が返ってくる。まだ梱包具を身につけているかを確認するほどの怯えが健在だが、それさえあれば明るい声も出るようになってきたのだから着実に改善はしている。 「どうぞ」 「ええ、ありがとう」  そのまま室内のテーブルにつくお嬢様に、持ち込んだ朝食を給仕。全身に与えられる密着感は意識させられ続けているが、それ自体にはもう慣れている。それでも羞恥は消えず、むしろ悪い慣れが進んでいる自覚はあるが。  お嬢様が求めたわけではないが、担当を回しているメイドたちで決めたことがある。なるべく余計な動きをせず、無防備な姿を見せ続けてお嬢様を安心させ続けよう、というものだ。たとえば食事中なら今のように、じっと直立して両腕を下腹の前、浮き出ている臍と割れ目の間に重ねておく。手を見える位置に置き、隠せる恥も全て晒す忠誠の姿勢だ。 「…………」  当然、恥ずかしい。お嬢様が上品に料理に口をつける間、ずっとこうして見世物のように静止しているのだ。まるで彫像のようだと自分でも思う。ただでさえこの格好は、人としての尊厳を全て奪い去ってしまっているのだ。  しかも慣れてきて以降は、お嬢様も遠慮なくこちらを見るようになっている。それこそ美術品を楽しむように、女体の全てをじっくりと。外からは中身の目が見えないようになっているのが、気を楽にさせるのかもしれない。 「……ご馳走様でした」 「お下げいたします」 「ええ」  お嬢様のこの言葉が、再び動いていい合図。あくまでお嬢様を安心させるため私たちが勝手に作った制約だが、それすら守れないようでは伯爵家でお付のメイドなどやっていられない。  空になった食器を下げて、それを乗せたワゴンを部屋の外に。廊下に置いておけば、あとは担当の者が片付けてくれる。  これが一日の始まり……そう、まだ始まったばかりだ。お嬢様につきっきりで行う生活とリハビリのお手伝いも、私には、そして恐らく他の二人にとっても、とても恥ずかしい一方で癖になるような梱包具によるいつもの体験も。  生活とはいっても、今のお嬢様に本来普通の貴族令嬢の生活を送ることは難しい。できるのはせいぜい敷地内とはいえ庭を散歩することやお茶、そしてお嬢様はほとんど終えてしまっているお勉強くらいのものだ。領内の視察や許嫁との逢瀬などもってのほか、パーティへの参加なども当然できない。  その分空いてしまう時間を、お嬢様は積極的にリハビリに使う。このリハビリというのは、少しでも元通りに過ごせるように訓練することなのだが……根本的な三つの問題は何度も緩和しようと試みては失敗していて、まだその時ではないという結論が出ている。  では何をするかといえば、安全な格好をしたメイドと触れ合うことだ。せめてもう一度人肌に慣れたり、メイドが自分の思う通りに動くことを確認して他者を信じられるように試みる。  その方法は共に考えたことで多岐にわたるが、お嬢様と三人のメイド、全員がわかっていて目を逸らしていることがあった。……このリハビリは全般的に、とても背徳的で卑猥だ。  だが、誰も止めなかった。お嬢様を安心させるため監視など一切なく、いくらでも支配し生殺与奪を握れてしまう拘束がなくともメイド三人はお嬢様にその身と忠誠を捧げているから。 「……エメル。そのままこちらにおいで。恥ずかしいでしょうけれど、ご主人様の命令だもの。できるわよね?」 「……んん、っ」 「そうよ、そのまま……いい子」  お勉強と何の変哲もないボードゲームで午前中を過ごした昼過ぎ、昼食を終えてから行っているこれはそのうちのひとつだ。腕と脚を畳んで梱包具にお嬢様が魔力を流し、半分の長さになってしまった四肢を四足とする。そのままメイドに犬のように振る舞わせる遊戯だ。  部屋の隅でそう拘束された私は、四本の短い脚で立ち上がってベッドに腰掛けたお嬢様へ歩いていく。拙い足運びも少し慣れてきてしまっているほど、何度も繰り返している行為だ。 「ふっ、ふっ……」 「その調子。焦らなくていいわ、あなたがわたしの言うことを聞いていることだけが大事なのだもの」 「ん……っ、ふ、ぅ!」  口のところも閉じられてしまっているが、鼻にも孔が空いているのに加えて口許にも穴は残されているから呼吸は問題ない。ただ、口が開かないせいで言葉は発することができず、呻き声しか出ない。  不格好な犬の出来は悪い。必死に歩いてもひどく遅く、梱包人形どころではなくなっている強烈な恥辱に打ち震えて意識が被虐に染められている。尊厳を粉々にされて、人未満の犬の行動を強いられて……それでどうしてかぞくぞくと湧き出る興奮の中にいる。当たり前に行使される主人の権利としてだけでなく、辱められること自体に従いたくなっている。 「よくできました。エメルは人間なのに、こんなみじめな命令をされても従えて……自分のことよりもご主人様を優先できて、偉いわ」 「んうっ……ぅ、ふ……!」 「あら、甘えんぼさんなのね。ふふ、いいわよ。たくさん撫でてあげる」  他の二人も聞くに似たようになっているようだが、果たして私たちはどうなってしまったのだろう。メイドとしての仕事をお嬢様に褒められるより、このように決して清廉でない遊戯で、本当は人として恥ずかしいことを突きつけられながら認められるほうがよほど嬉しいのだ。  潤んだ目もお嬢様には見えていないだろうに、我慢できずに擦り着いただけで甘やかして撫でてもらえる。……お嬢様もお嬢様で、私を辱めることを妙に楽しんでいるように思えてならない。 「それじゃあ、もっと恥ずかしいことをしましょう。従って、くれるわよね?」 「っ! んぅ!」 「ありがとう、わたしは幸せ者ね。……はい、お手」  遊戯はエスカレートしていく。先日まではこのリハビリは、犬として歩き近寄って擦り寄るだけで終わりだった。だが今日のお嬢様は違った。ベッドに腰掛けたまま少し前傾すると、自身の膝の前に掌を差し出す。  今の格好でそんなことをされて、これが何かを理解できないほど鈍くはない。……犬の、芸の躾だ。私は今、従い這うばかりでなく、人を楽しませる仕草でさえ犬になることを求められている。  …………私は、そっと片方の前足を挙げた。途方もない屈辱を表情の見えないマスクに隠されたまま、“お手”をした。拘束されていてそうとしか動けないから、では言い訳できないような恥を晒す。  そもそもこの国において貴族とは、平民が従うことを当たり前とされている存在だ。その分だけ責務はあるのだが、全ては紐づいているからどこかが狂えば齟齬が出る。  お嬢様は誘拐という形で平民に大きな反逆を受けて、その関係を信じられなくなっている。そうなれば貴族として国と民のために尽くす理由すら失われてしまうから、そこの矯正は急務だった。これもそのために、私を平民の象徴に仕立てて、どんなことでも従うそれに触れることで認識を取り戻そうとする行為なのだ。……荒療治なのは、承知の上である。 「おかわり」 「……っ」 「じゃあ、おすわり」 「ぅっ……」 「……それなら、ふせ、できるかしら?」 「ぅぐ、むん……!」  そこからは立て続けだ。私がそんな惨めな芸すら迷わず従うとわかったお嬢様は、もう止まる必要がない。私は逆の前足を出して、後ろ足を寝かせて尻を床につけて、しまいには床へ全身で這いつくばった。命令だからと、格好だけでなく姿勢も、意思も人間であることを捨て去った。  だが、止まれないのだ。こんな簡単な芸をこなすだけで嬉しそうに破顔するお嬢様に、私は心酔している。ただでさえそうなのに、従うことも、結果として起こる屈辱も、子供の頃からメイドとして尽くしてきたせいで本物を知らない私の子宮を疼かせる。普通なら有り得ないはずの浅ましい興奮と、仄暗い悦びが不自由な全身を巡っていた。  それがどれだけ致命的かを私はまだ知らないが、それを考えるよりも先に多幸感が思考を押し流す。起き上がって抱きつくことを許してくださって、ラバー膜の体を撫で回してくださったお嬢様の瞳にも、同じ色がある気がした。 「ワンちゃんもとても可愛くて名残惜しいけれど……」  そのまましばらくただ戯れてから、お嬢様はそう呟きながら犬拘束を解いた。床でただの四つん這いに戻った私は、ひとまず立ち上がって黒人形、もといメイドに戻る。だがもはややることもない昼下がり、夕方にも差し掛からない頃合ではまだ時間が余っている。  それを確認したお嬢様は、私にベッドへ寝転がるよう指示した。その時点で、なんとなくは次に何をされるか想像がつく。私は言われた通り、ベッドの中央に仰向けに寝た。四肢は全て伸ばして体の横につける。 「お昼寝をしましょう。エメル、あなたは抱き枕よ」 「かしこまりました……んっ」  お嬢様が外側からひとつひとつ触れていくと、四肢のラバーが隣接したところと接着して離れなくなる。それを繰り返すと、私から可動域は再び失われた。今度は腕は一切曲げられず、脚は開かなくなった一本の棒だ。  そしてほんの少しの間だけ開いていた口元も、またすぐに閉じた。抱き枕は喋らないからだ。さらに……必要ないからと、目元に空いている小さな穴も一時的に塞がれた。私は視界を塞がれて暗闇に落とされ、感触だけが世界の全てになる。 「……ん。あたたかくて、柔らかい」 「んっ……ぅ、ふ……」  お嬢様はそんな細長いラバーの塊と化した私に、全身で抱き着いてくる。遠慮なく密着して頬擦りまでするお嬢様の感触が、目隠しのおかげでどんな姿勢かすら手に取るようにわかる。本来ならば貴族令嬢がしてはならないはしたない姿勢だが、今は誰もそれを見る者がいない。  ラバー梱包そのものはとても薄いから、柔らかいのは当然だ。私の素肌の柔らかさがほぼそのまま出ていて、あちこち触れられて反射的に動いてしまう反応すら楽しそうに押さえ込まれている。しっかり谷間まで張り付いて二つに分かれた乳房に顔を埋められて、堪能されている。 「……わかっているのよ。人間がほんとうは、こんなに温かいものだとは」 「……」 「だけど、まだ。まだこれだけなの。……少しずつ、慣れていくから。手伝ってちょうだいね」 「むんっ……!」  私は物扱いされることに興奮していて、お嬢様はこうすることでようやく得られる人肌の温度にご満悦。いわば互恵関係ともいえる。……これ自体が本来少しでも早く脱さなければならない治療だとは、互いにわかっている。  だが……お嬢様はどこか、心の傷が癒えて今の楽しみがなくなることを惜しんでいるように思えてならない。そうだとしたら、少なくとも私は。 「それでね。……一歩だけ進もうと思うのだけど……まだほんの少し怖いから、勢いに力を借りることにしたわ」 「……?」 「そのまま待っていてちょうだいね」  それでも進むことはやめないお嬢様は、私たちの誇りだ。そんなお嬢様が進むというのなら、私は何をしてでも力になりたい。そう思っていたのだが、お嬢様の感触が離れていっても私は抱き枕のままだった。  少し離れたところから……衣擦れの音が聞こえる。部屋着から着替える必要もない室内の昼下がり、それが指すことはひとつだった。 「そのまま動かないでね」 「……!?」 「そのままよ……えいっ」 「んっ!?」  まずは、私の拘束が解けた。それどころか、ラバーが上へと引いていく。それは首まで下がるとそこで止まって、本来ならばメイド長でないと解除できないはずのそれはただの全頭マスクになる。……これほどの目に遭って後遺症で屋敷に篭っているが、それでも純潔が残っているというだけで未だ縁談がなくならない理由。お嬢様は卓越した魔術の才と実力を誇るのだ。本来なら部分的にとはいえ解けてはならない厳重な拘束具を、こうして操れてしまうほどには。  そうして首から下だけが裸になった私が、命令通りに気をつけの姿勢を崩さないことを見届けると……お嬢様はそこに、先程と同じ姿勢で直に抱き着いた。両腕は私の肘を抱え込むようにして、脚はお世辞にも淑やかとは言えない曲げ方で私の腰を左右から掴んで、頭は私の胸に埋めて深呼吸。  ただ私にもわかる、何よりも重大な要素があった。───お嬢様も、裸なのだ。胴体には誤解しようがないほど温かく柔らかい小柄な少女の裸体が、速い鼓動ごとこれでもかと押し付けられている。 「……エメル。これからしばらくの間、わたしとあなたはひとつのモノよ」 「んっ!?」 「やってみたかったの。……大丈夫よ。術式はエメルにかかっているから、わたしは内側からでも操作できるわ……ひゃ、んっ……これ、案外……いい感触、なのね……っ」  そしてお嬢様はそのまま、一度首まで下げていたラバー梱包を下げ直した。再び私の足先まで全て包むように、自身を巻き込んでしまいながら。  私の体とともに完全にラバーに取り込まれたお嬢様は、本当に操作ができているようで呼吸孔を作った。私の胸にも空気が当たって、生々しくわかってしまう。やがてそこには、人が二人封入されたラバーの塊がひとつだけ残る。  お嬢様は肌を撫でるラバーの感触に気に入ったようだが、この梱包は密着しているものの隙間にまでは入ってこない。ぴったり密着しているお嬢様と私は、互いに触れ合う体温を全く余さず伝え合うこととなっていた。 「……ふふ。ここ、ぬるぬるじゃない。膜に包まれて、犬になって、興奮したの?」 「……っ、んぅ……ぅ、っ!」 「大丈夫よ、責めているわけではないの。……ほら、わかるかしら? わたしも、濡らしていたの。あなたの恥ずかしい格好を眺めて、あなたを犬にして」 「……!」 「わたしたち、おそろいね」  そんな中、特にまずかったのが、股の間。まさかこんなことをされると思っていなかったからお嬢様に知られる用意はできていなかったが、梱包と拘束、犬や抱き枕として扱われることで明らかに普通でない痕跡を残していた。お漏らしとすら思えるほどの愛液を溢れさせて、ぐちゃぐちゃに濡らしていたのだ。  それを指摘するお嬢様だったものの……わかってしまった。内側ではなく、外側から。上から垂れてくる液体が、そこに混ざり合う感触が。  お嬢様も、垂らすほど濡らしていた。それがどれだけ嬉しかったか、お嬢様もわかったのかもしれない。自身もきつく梱包されてほとんど動けないまま、甘えるように抱きしめてくるお嬢様は会心とばかりにはにかんで────。  たったひとつ、悪かったのは。二人まとめての梱包では完全でなかった拘束の緩みが、お嬢様が腰を揺らすことだけは許してしまったことだった。  くちゅ、くちゅ。ゆっくり少しずつ、味わうように始まった卑猥な水音は、やがて速くなり止まらなくなって、ついには夕暮れが過ぎて夕食のワゴンが届くまで続いた。私はもう、その間に何度絶頂したかを覚えていない。最愛のお嬢様が私の乳房に、甲高く幸せそうな嬌声を何度ぶつけたかも、残念ながら。


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