目が覚めたのはつい数分前のことだった。 気が付けば、広い荒野のような場所に佇んでいた。 おぼつかない足取りで辺りを散策してみたが、これといった成果は得られなかった。 本当に、何もない。 荒野というには地面が砂で覆われているわけでもなく、どちらかと言えばリノリウムの床だろうか。 そういえば、先ほどまで渡り廊下を歩いていたような気がする。 授業に遅れそうだったから走っていて…… ああ、そうだ。確か、そこで転んでしまったんだ。 だったら、ここは渡り廊下のはずだが―― ずしん、ずしん。 唐突に、その音は聞こえてきた。 重く、鈍い音だった。 ずしん、ずしん。 橋の下で大型トラックが走っているのを聞いているかのような音だ。 音は物凄い速さでこちらへ向かっている。 ずしん、ずしん! 振り向くと、先ほどまで何もなかった荒野に巨大なオブジェができていた。 これは、なんだろうか。タイツを穿いた女性の下半身のように見える。 心なしか、そのオブジェは動いているような気がした。 そのまま目線をあげる。 高く、高く、もっと高く。 首が上がらなくなりそうになったところで、ソレと目が合った。 ソレはオブジェなんかではなく、れっきとした人間だった。 俺の体より大きいのではないかと思うような目が、こちらをしっかりと捉えている。 俺はこの人を知っていた。 同じクラスのミズホさんだ。 だけど、俺の知るミズホさんはこんなに大きくはない。 一体、どうして…… そんなことを考えているうちに、ミズホさんの巨大な手がこちらに向かって伸ばされる。 殺される! ふっと沸いた感情は、体まで動かすことはできなかった。 足がすくんで、動けないのだ。 虫けらのような俺は、ミズホさんの指の中に囚われてしまった。