SakeTami
Aki
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『去勢暗殺者#10』

「最近ここら辺、下校途中に変質者が出るみたいやで」

快活な関西弁で友達の美優と話す由香。

「ほら、あそこの団地に不審者出たやろ? それでうちの高校にも連絡あったやん」

美優は声を小さくして言う。

「あ、そっか。でもあれどうなったんやっけ?」

「まだ捕まって無いらしいで、気を付けなあかんよ!」

由香はそう伝えると、美優はじゃあねと手を振りながら、教室を出ていった。

「……」

残された由香は、去っていく美優の背中を見ながら、少し考えこむ。

「(……まあ、大丈夫やろ)」

そして、由香も自身の部活動の為部室へ。その時、後ろから何か声が聞こえた気がした。

『……けて』

「……!?」

由香は驚いて振り向くが、誰もいない。

「気のせいか……?」

そう呟いた時、また声が聞こえる。

『助けて!』

その声は悲痛な叫びだった。

「美優?まさか・・・」

由香は声の聞こえた方へ走って行った。

そこには男に襲われている美優の姿が。男は下卑た笑いをうかべ、その手に持ったナイフで、今にも彼女の服を切り裂く所だった。

「お前、何やっとんねん!」

由香は叫びながら走り出す。

男は由香を見ると、嬉しそうに叫んだ。

『ああ!君もとっても可愛いねえ!』

その男の目には欲望しか写っていない。

『君はどんな声で鳴くのかな~?今から楽しみだなあ~!』

由香はそのおぞましい姿に吐き気すら覚える。

だが、今はそんな事に構っている暇はない。

早く助けないと、美優が危ないのだ。

由香は男の正面から体当たりする。

すると、意外にも簡単に体勢を崩し、倒れてしまう。

「あんた、女の子を襲うなんて最低やな!」

そう言って、美優を助け起こす。

「大丈夫?」

「う、うん……」

しかし、美優は震えていた。当たり前だ、怖いに決まっている。

「怖かったなぁ、美優ごめん・・・ちょっとの間目を瞑っててもらえるか?」

美優は震えながら頷く。そして、言われた通りに目を瞑った。

由香は美優を庇うように立つと、男を睨んだ。その目には明確な殺意が宿っていた。

「オッサン、美優に手ェ出したのが運の尽きやったな。」

『よくも邪魔してくれたねぇ~!おじさん怒っちゃったよぉ~』

そう言うと、立ち上がりナイフを構えた。それを見て、由香は身構える。

『君みたいな可愛い子を殺すのは惜しいけどぉ~、仕方ないよね~!』

男はナイフを構え、突進してきた。由香はそれを冷静に見極めると、身を低くし、腹に蹴りを入れる。

『ぐっ……!』

男はよろめき、隙ができる。それを見逃さず、すかさず由香は顔面に正拳突きを放つ。すると、男はそのまま後ろに吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

「なんや、全然弱いやんけ」

由香は冷たく言い放つ。男は鼻血を流しながら立ち上がった。

『ぐうっ……クソガキが……調子に乗るなよ!』

再び襲いかかってくる。今度はナイフを捨てて素手で殴りかかってきた。由香はそれを躱すと、思い切り股間を蹴り上げた!

ゴキッ!

『ガハッ……』

男は蹲り、胃液を吐く。

「まだやるんか?」

由香が問いかけると、男は苦しげに答える。

『ま、参った……助けてくれ……』

それを聞いた由香はニヤリと笑うと、男にこう告げた。

「誰が許すって言うたん?」

次の瞬間、由香は男の肩に手を置き、渾身の力で男の股間を膝蹴りした。

グチャッ!

『グァッッ!?』

「あはっ、いい声出るやん」

由香はさらにぐりぐりと膝を押し付ける。

『ヒィッ!?アッ、ガッ……!オエッ、やめっ……!』

「ほらほらぁ、苦しいやろ?もっと泣いて喚いてええんやで♡」

由香はそう言って楽しそうに笑う。その間も膝を動かすことは止めない。

『アァァァァ!!ウグッ、ヤメッ、アァァ!ゴメンナサイィィィ!!!』

あまりの苦痛に泣き叫ぶ男。だが、由香は止める気など毛頭なかった。それどころかさらに激しく動かす。

「ははっ、楽しいわぁ♡まだまだこれからやからな?」

『ウッ、ゲホッ、イダイ、モウヤメデ……グァァァ!』

男は懇願するが、由香は止まらない。むしろさらに強く押し潰してきた。もはやそれは拷問と言ってもいいレベルだ。

「ほらほら、もう限界なんちゃう?」

『ギャァァァ!!!モ、モウダメデスゥゥ!』

「ふふっ、じゃあそろそろ終わりにしたるわ」

そういうと、由香は一旦手を止めた。そして拳を堅く握り締めると、思いっきり振りかぶり、男の股間に叩き付けた。

・・・ドガッ!

『ギィァァァァ!!!』

絶叫する男を無視して、何度も拳を振り下ろす。由香の顔は恍惚としていた。まるで新しい玩具を与えられた子供のようだ。

しばらく経つと、満足したのか、ようやく手を止めた。

「これでよしっと」

動かなくなった男を見て満足そうに微笑む由香。

「あー楽しかった」

そう呟いて、美優の方を見る。彼女はまだ目を瞑ったままだった。

由香は彼女に近づくと優しく声をかける。

「終わったよ」

その声に反応して、恐る恐る目を開ける美優。そこには倒れている男と、返り血を浴びた由香の姿があった。

「ひっ……」

思わず小さな悲鳴を上げてしまう。無理もないだろう、いきなり目の前でこんな惨劇を見せられたら誰だってこうなるはずだ。

しかし、そんな状況でも由香は動じない。

「どうしたん?」

キョトンとした顔で聞いてくる彼女に恐怖を覚える美優。

「こ、この人死んでるの……?」

震える声で聞く。

「当たり前やん、美優に手ェ出したんやから」

その言葉に絶句する美優。

「大丈夫?どっか怪我とかしてない?」

その問いに黙って頷くしかなかった。

安心したように微笑む由香の笑顔に狂気を感じ、ゾッとする美優だったが、なんとか平静を保つと、お礼を言った。

「あの……助けてくれてありがとう……ございます……」

消え入りそうな声だったが、ちゃんと聞こえたようだ。

「どういたしまして!無事でよかったわ!」

そう言う彼女の顔には一点の曇りもない。それがかえって不気味に映った。

「ほな帰ろか」

そう言って手を差し伸べてくるので、その手を取る。とても暖かい手だった。さっきまで人を惨殺していたとは思えないほど優しい手つきだ。

そのまま手を繋いで歩く二人。美優はなんだか不思議な気分だった。先程まであんなに怖かったはずなのに、今は不思議と落ち着いている。むしろ安心感すら覚えるほどだ。

しばらく歩いていると、不意に由香が立ち止まった。何事かと思い、前を見ると、そこは駅の前だった。どうやらいつの間にか着いていたようだ。

「ここまで来れば帰れるやろ?気をつけて帰りや~」

手を振りながら去っていく由香を見送りながら、ふと空を見上げる。夜空に浮かぶ月はとても綺麗だった。それを見た途端、急に眠くなり、欠伸が出た。

帰ったら早く寝て、今日のことは全て忘れよう・・・そう心に決め、足早に家路についたのだった・・・。



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