SakeTami
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そして“わたしたち”はひとつになる(本編外/R-18)



「――――」

 多くの爆弾によって破砕され紅蓮の業火に包まれ燃え盛る家屋。それはGHQが接収し、進駐軍の施設として再利用した屋敷の慣れの果て。誰も彼もが死に果て、或いは避難した狂騒の結果であった。


 誰もいないはずの空間の中でひとりの人間が瓦礫を退けて立ち上がり、一歩踏み出した。彼の名は■■■■――狂気の果てに虚構と現実の区別がとろけてしまい、狂気の自爆テロを敢行するに至った愚かな青年である。意識が覚醒した彼の鼻腔に、建物内で人間の焼ける異臭がする。爆弾による自爆を敢行したのだが、どうやら彼は生き残ってしまったらしい。全ての感情が消え去った虚無の顔で、自らの肌を骨をも焦がす炎熱がちりちりと焼く感覚さえないものであるかのようにぼんやりと虚空を見上げていた。

「…………」

 自らの死を受け入れんとした彼の目に、ひとりの白人女性の骸が目に入る。白い肌は焼け付き、爆発の衝撃でやられたのであろう虚ろな蒼玉の瞳がただ空を見上げていた。

「――アメリア」

 それは骸の名。爆発に巻き込まれた際に爆炎に呑まれることは免れたのだろうが、物体を通過して破壊する衝撃波からは逃れられなかったのだろう。死体は綺麗なままだが、無残なことに七穴より血を噴いていた。だが、そんなことは関係ない。その高貴な美しさを保った彼女に震えるまま近づき、垂れ流された血を静かに拭き取った。

「……ああ、私はなんという幸せ者なのだろうか。我が身の終わり、我が大望の成就の前に彼女を“娶る”ことができるとは。国の垣根を超え、今ここに私達はひとつになれる……靖国の英霊に、報いることができる……」

 それに同意する者も異議を唱える者もいない。ブツブツと万歳三唱しながら、彼女の軍制服を脱がしてゆく。背後に梁が落ちる音が聞こえ、退路を絶たれたことさえも無視して。


「おお……」

 煌々とした橙に照らし出されるのは土気色になってなお、美しい肢体。日本人ではありえぬコーカソイドの肌は白雪のように美しく、そして手を沿わせると感じる女性らしい柔らかさは彼にとって何物にも変え難い宝物のように感じられた。恥も外聞もなく、人並外れて豊満な乳房にむしゃぶりついた。舌先で転がし、胸をもみしだいても反応は返らない。だが、自らが焦がれた女性を穢すという事実はただただ彼を興奮させる。

 ふは、とその行為を終えてひと呼吸つくと僅かに意識がくらりとぐらつく。すでに酸素が燃やし尽くされ、酸欠状態になりつつあるのだ。だが、その不快感さえも今の彼にとっては生と死の境界を曖昧にするスパイスに過ぎない。見下ろした先で物言わぬまま脱力している『あの少女』を見て、彼は妄執に満ちたおぞましい笑みを浮かべた。既に人ならざるものに近い彼は、少女を抱擁して耳元に口を近づけて囁いた。

「愛している、アメリア」

 ■■■■はそう言うと唇を重ねた。反応もなく、温かさもほとんど残っていない硬直した骸が揺られてゆらりと動く。


「アメリア……アメリア……!!愛している。愛しているんだ、私を――私と共に永遠に――――」

 ――抱き締め、繋がりあった男女のシルエットは程なくして紅蓮の業火に飲まれ、■■■■の絶叫にも似た高笑いの中融け落ちてひとつの塊となってゆく。炎に包まれた瓦礫が舞台の幕を下ろすように崩れ去る――ひとつの悲しき物語が、完全に終幕したことを告げるように。



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