【あらすじ】
ガテン系イケメン・足立雄也と入れ替わりを果たした「僕」は、雄臭い足立の家へと帰宅する。記憶を辿り、同じ現場で働く後輩・勝山大貴を部屋に呼び寄せた「僕」は、勝山を手に入れようと雄のフェロモンを剥き出しにして──。
***
僕は仕事を終えて、とっとと『足立雄也』の家に向かった。今日は嫁も娘も実家に帰ってる日で、いろいろと都合がいい。自宅のアパートの前で立ち止まり、僕は鍵がどこにあるのか、この男の記憶を辿ってみた。……おう、そうだった。あそこだな。ドアの前の鉢植えをずらすと、記憶通り、家の鍵が隠されていた。
「あぁ、これがガテン系イケメンの部屋か……堪らねえ。……ん、これがヤニ臭ぇってやつか。なかなか悪くねぇな」
僕は低い声でそう言って、テーブルの上のタバコを手に取り、味わった。胃のなかに煙を充満させて、慣れた手つきで、親指と人差し指で支えて。鏡に映る新しい自分が、いやらしく、誰かに見せつけるようにしてニヤリと口元を緩める。
そのとき、ピンポーン、とインターホン音が鳴った。知らない男の声──いや、勝山の声が聞こえる。
「足立さんー? 勝山です!」
「おう、わりぃな。いきなり呼び出しちまって」
こいつは勝山大貴、28歳。うちの会社に入って7年くらい経つ、バリバリに働く頼れる肉体派。……僕は足立の記憶を辿って、このイケメン後輩を見つけ出した。黒髪短髪、人懐っこい犬顔。更衣室で着替えている彼の肉体は、肩周りも胸筋もバキバキに鍛えられていて、足立自身も、勝山のことはイケメンだと考えていたようだ。そんな勝山が、仕事を終えてスウェット姿で足立の家へとやって来た。
「嬉しいっす。でも珍しいっすね、家で飲もうって。あれ、サシっすか?」
「ああ。募る話もあるからな。それじゃ、一杯やろうぜ」
缶チューハイを勝山に渡し、乾杯した。僕は勝山とは初対面であるが、足立の記憶を辿ると自然と会話が弾む。仕事の話、勝山の彼女の話……なんでも話ができ、冗談を言い合える間柄だ。
「え。本当っすか? 離婚するんすかッ!?」
「ああ、俺にはもういらねえんだ」
「めっちゃ愛妻家だったじゃないですか。それに、娘さんも……。なんかあったんスか?」
「そうだなぁ。人格が入れ替わった、くらいじゃねえか?」
「人格が入れ替わ……? え?」
僕は、勝山の身体を押し倒し、唇を重ねた。勝山は目を見開き、状況を掴めない様子で驚きの表情を浮かべる。そして必死に抵抗しようとするが、上から押さえつけているためガタイのいい勝山でも振り払うことはできない。
「んん!? あ、だち……さ! んはッ! なにす……んんッ!!」
困惑と恐怖の表情を浮かべる勝山の顔を見て、僕は厳つい顔にデレッとスケベな笑みを浮かべる。
「驚いたか? 俺、お前のこと、ずーっとエロい目で見てたんだぜ?」
「俺、男っす! そういう趣味ないってか、本当に足立さんッすか? おかしいですって!?」
「あぁ? そうだな、お前も入れ替わったら、気持ちがよくわかると思うぜ。どうだ、『俺といっぺん入れ替わってみねえか』?」
入れ替わる。その言葉を口にした途端、勝山はぴたりと抵抗をやめた。両手を下ろし、完全に脱力状態になる。顔から、困惑と恐怖に満ちた表情が抜け落ちる。そして一瞬言葉に詰まるように口をぱくぱくとさせたが、次第にその動きもなくなっていった。
「......なんだ、そんなことっすか。早く言ってくださいよ。てか、嬉しいッす! ずっと憧れてた足立さんになれるんすか、俺!?」
「ああ、そうだ。俺がお前に、お前が俺になる。俺の37年分の記憶、身体、全部お前にくれてやんよ。……まぁ、僕も、この身体、ちょうど手に入れたところなんですけど。でもまあ、あなたのような若い脳筋イケメンなら問題ないです」
勝山は目を輝かせて、緩いスウェットを自ら下ろした。股間の膨らみを見せつけるように、ゆっくりと。カルバンクラインの黒いボクサーパンツがあらわになる。僕は、自分の勃起したチンポをぼろりと取り出し、勝山をうつ伏せに寝かせ、行為に及んだ。
「ああ、やべぇぇッ! 俺、足立さんに、犯されてるぅうう!」
「俺の、足立のくそでけぇチンポが、勝山のケツマンに!」
意識が交わる。自分が今どの肉体にいるのか、足立なのか、勝山なのか、はたまた昨日まで入っていた田村なのか、わからなくなる。勝山の中で尽き果てたとき、すでに視点は変わっていた。挿入していたはずが、挿入されている側に。ケツの中からヌルっとした液が垂れていた。
「あー、あー。よし、入れ替わり成功っと。あー、やっぱすっげぇなこのムッチムチの雄っぱい」
鏡に映る勝山の姿を見ながら、その立派な雄っぱいを揉みほぐしていると、「んん……」と低い声が聞こえてきた。振り返ると、先ほどまで『自分』だった足立が目を覚ましている。
「か……つやま? お前、どうしてここに……な、なんだよこれ……おい、俺......か? お前のこと、俺……その、ヤッたのか?」
「はい、見ての通りです。足立さんのその精液が、俺のケツを中から汚しました。責任、取ってくれますよね?」
「お、おい。待て、俺にはそんな趣味ねぇし……つうかしばらく記憶がねぇんだ」
「それじゃ、今度は俺の番ッすね。ちょっと寝転んでくださいよ、足立さん」
僕は、精悍な顔に怯えた表情を浮かべる彼の肉体を押し倒して言った。
*
「よぅし、それじゃ、今日はここまでだ。明日も朝早いから、各自しっかり休んどけよー」
「ういー」
今日も厳しい太陽の光が照りつける中、威勢のいい男たちが汗を流して働いている。いつものように仕事を終えると、頭を白いタオルで巻いた足立さんが、少し遠慮がちに声をかけてきた。
「なぁ、勝山。今日は......俺の番ってことでいいんだよな? その、お前の身体、自由に使っていいのはさ」
「そうっすね。あ、新入りのアイツにも声かけてみます? なかなか入れ替わり甲斐のありそうなヤツでしたよ」
「それはいい考えだな。よし、早速声かけてみっか!」
僕たちの入れ替わり生活は、まだまだ終わらない。
<終>