○登坂慎介(32)……警視庁の刑事。元柔道部。正義感に溢れ、野心家。犯罪組織のリーダーである中山の行方を追う。
○稲本洸(23)……登坂の後輩。元サッカー部。登坂とバディを組む。
○中山篤人(42)……指名手配犯。密輸ディーラー。登坂とのある取引を企てる。
○河田稜(34)……中山を慕い、中山と共に行動する。
***
<警視庁本部>
「誰か、中山の行方について新しい情報はないか?」
中山篤人の捜査会議で、主任の坂井が口を開いた。中山篤人の消息が絶たれて約1ヶ月。捜査は手詰まり状態で、捜査本部の中も諦めムードが漂いだしていた。
「登坂、進捗はどうだ?」
「はい。中山篤人ですが、先月のコンテナ埠頭での取引きに関する情報の提供以来、有益な情報は確認されておらず──」
登坂は立ち上がり、険しい表情を浮かべて詳しい状況を説明した。淡々とした面持ちで説明を続ける彼の横顔を見ながら、登坂とバディを組む稲本は、どうしても違和感を拭うことができなかった。登坂の喉から発せられる低くて力強い声には、ねっとりとした下心のようなものが感じられ──。
「なあ、稲本ぉー」
「……は、はいッ!」
その日の会議が終了すると、登坂は帰り際の稲本に声をかけた。
「今日この後、一緒にメシでも食いに行かねえか?」
「え、あ……」
「なんだ、都合悪いのか?」
「ちょっとこの後、先約があるんスよ……」
稲本はとっさに嘘をつき、登坂の誘いを断ろうとした。どうしても嫌な予感がしてならない。たしかに登坂の見た目や仕草は普段と何も変わらず、誰からも好印象を与える爽やかなルックスをしている。それでも、やはり何かがおかしい。稲本の刑事の勘はそう教えていた。憧れ、慕い、尊敬していた、いつもの登坂慎介とは相容れない何かがそこにはあるのだと。
「そうか、それは仕方ないな……」
登坂の残念そうな表情を見て、稲本は後悔した。異性だけでなく、同性からも好かれる登坂の精悍な顔は、同じ男として、ただ側にいるだけで誇らしい気持ちになってくる。そんな憧れの先輩からの誘いを断るのはどうも気が引けてくるのだ。それだけではない。稲本は登坂とバディを組んで2年ほど経つが、辛いときや苦しいときはいつも登坂が稲本を支えてきてくれた。どんな悩みでも聞いてくれる、頼もしい憧れの先輩だ。もしも今、登坂の様子がおかしいとしたら、恐らく中山のことで何かあったに違いない──。これまで自分は支えられてばかりいたのだから、今度は自分こそが、登坂を支える番なんじゃないか?
稲本は気持ちを切り替え、登坂の背中に向かって、
「……あ、先輩、予定なんですけど別の日でした! メシ、連れてってくださいッ!」
「お、そうか? それならイイんだ。それじゃ一杯、飲むかッ!」
登坂は振り返ると、大きな手で稲本のソフトモヒカンをくしゃっと潰して笑った。稲本は苦笑いをしながらも、内心では一緒に飲みに行けることを嬉しく思った。
<木造アパート前>
「……で、ここ、どこっすか??」
二人がやって来たのは、路地裏にぽつりと立つ一軒の木造アパートの前だった。安い居酒屋に行くと思っていた稲本は少し驚き、
「先輩、いつの間に引っ越したんすか?」
「ああ、ちょっとな。いわゆるセカンドハウスってやつだ。帰りが遅くなるとき、最近はここに帰ってるんだ」
「……あ、なるほどッすね!」
少し怪しみながらも稲本は納得した。招かれるままアパートの部屋へと入っていく二人。稲本が部屋の中に入ると、登坂はドアがしっかり施錠されているのを確認した。
「ところで先輩、なんか趣味、変わりましたね……」
稲本は部屋を見渡してごくりと唾を飲んだ。酒の空き缶や薬品の空き瓶で散らかった小さなワンルーム。部屋の中央には小さなローテーブルが置かれ、タバコの灰皿には吸い殻があふれていてヤニ臭い。ここは本当に登坂の部屋なのか? 稲本は嫌な予感がした。何かただならぬことが登坂の身に起きている、に違いない。
「あ、登坂先輩。ちょっと俺、用事を思い出して……」
稲本が部屋から出ていこうと振り返った瞬間、登坂は稲本の体をドンッと勢いよく壁に押し付けた。咄嗟の動きに稲本は抵抗できず、登坂と稲本の顔は向かい合わせになる。
「先輩ッ?!」
「お前の顔、やっぱ近くで見ると、エロい顔してんな……」
登坂は鼻の下を伸ばし、恍惚とした表情で、黒髪短髪モヒカンで目鼻立ちの整った稲本の顔を覗き込んだ。
「ちょ、先輩、冗談はよしてください……」
「もう俺、我慢できねえんだ……ほら?」
登坂は力強く稲本の手を掴み、自らの股間に押し当てた。登坂のギンギンに固まったチンポの感触に、稲本の背筋は凍りつく。
「……な、なにするんですかッ!?」
「ああ、いいねえ、その顔……くくッ。もっと見せてくれよぉ、お前の色んなところ……」
稲本は必死に手を振りほどこうとするが、元柔道部の登坂の腕力に勝つことはできない。登坂は、稲本の泣き出しそうな顔を見て、鼻孔をさらに大きく広げた。膝立ちになり、稲本のスラックスを勢いよく無理やり脱がせる。Calvin Kleinのボクサーパンツの膨らみをやさしく撫で、愛おしそうにその輪郭をなぞった。
「……ああ、スんゲェ、これが20代前半の若手刑事の股間……ッ♡」
「ちょッあッ! 登坂先輩、恥ずかしいッす……」
登坂の目の前には、稲本の黒くて大きなチンポがぼろりと飛び出した。登坂は鼻息を荒くしてそれをぱくりと咥えて上下にピストン運動を始める。
「んはッ! ちょっ、……んぱいッ、やめッ……あンンッ」
「きも……ちい……らろ? もっお……きもちよう……しられうからな♡」
登坂の動きはさらに激しさを増していく。恥ずかしさ。屈辱。快感。憧れの先輩からのフェラチオ。妻と娘がいる同性とのセックス。稲本は状況を飲み込めずにいるが、同時に自分の体が激しく“感じている”のを拭うことはできなかった。
「ああ、ヤバいっす! ……先輩、あぁあん、イッちゃいま……!」
「……いい……ろ……おの……まま……イッらッれ!」
「あん゛んッ!!」
稲本が抵抗をやめ、快楽に身を任せるとエクスタシーは突然訪れた。体を痙攣させて勢いよく射精すると、登坂の精悍な顔は、白濁として精子でベトベトに濡れてしまう。そのまま稲本は、快感とパニックの狭間で、その場に倒れ込んでしまった。
「はぁ……はぁ……うへへッ」
登坂はゆっくりと立ち上がり口を手の甲で拭うと、稲本を見下ろして、自らの後頭部に手を回した。切り込み口を見つけ、被っていた顔の皮を脱ぐと、重たい一重瞼をしたスキンヘッドの男──犯罪者である中山篤人のふてぶてしい顔が現れる。分厚い筋肉質な“登坂”の肉体を身にまとった中山は、不気味な笑みを浮かべて“中山”の声で言った。
「あー……。もう、出てきていいぞ」
「うっすッ!」
その時押入れから出てきたのは、待機していた中山の連れ・河田だった。彼は稲本の体に近寄ると、ポケットから小さな針を取り出してそっと彼の首元に向ける。
「ちょっとチクリとしますよーーー」
「……ん?」
その瞬間、稲本の体からパンッと大きな破裂音が鳴った。そしてシューーーッと空気が抜ける音を立て、彼の体は静かに萎んでいく。
「……んぁ? あれ、なん……力が……入らね……」
稲本はなんとか地面に這いつくばり、立ち上がろうとするがどんどん空気は抜けていく。
「ちく……しょ……こういうことだった……のか?」
稲本は河田を睨みつけたまま、地面に張り付き、“皮”一枚の姿となっていた。
「作戦完了っすね。それじゃ今日から改めてよろしくお願いしますッ!」
そう言って河田は、その薄い皮をつまみ上げ、背中の切り口を両手で大きく開いた。
<警視庁本部>
中山の消息が絶ってから一年。捜査本部は一旦幕引きという結果になった。最後の捜査会議が終わると、登坂と稲本は同時に席を立ち、お互いを見つめた。
「……先輩、例の取引でいい皮を入手したんすよ。試してみませんか?」
「おー、悪くねぇな。俺もそろそろ“登坂”に飽きてきたところだ。どうだ、今夜?」
「いいっすね! でも、その前に一度お互いの体、味わっておきましょうよ……まあ、この皮がある限り、いつでも“稲本”に戻れるんすけどね」
「それは名案だな。さすが、お前は俺の永遠の相棒だ!」
「うっす!」
<皮ディーラー・終>
keeely
2022-04-13 17:31:11 +0000 UTCAdam
2022-04-13 14:10:18 +0000 UTCkeeely
2022-04-12 05:11:58 +0000 UTC