【あらすじ】
元野球部の営業リーマン・高木浩介(26)がある配車アプリを使ってタクシーを呼ぶと、現れたのは色気のあるガチムチ体型の運転手だった。そのタクシーに乗り込むと、浩介は想像もしなかった事態に遭遇する……。
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「へえ、アプリでタクシー呼べるんだ。随分便利なんだな、これ」
彼の名前は高木浩介、26歳。優秀な営業リーマンだが、学生時代は野球部に所属していて、現役を離れた今でも社会人野球を続けていた。くっきりとした眉が特徴で、ガッチリと逞しい体躯をしている。その男臭い風貌やリーダーシップのある性格は、男女問わず人気があった。
その日、彼は仕事で得意先の元へと急いでいたところ、同僚からある配車アプリの情報を手に入れて、早速そのアプリでタクシーを呼んでみることにした。「少し前までは電話で配車していたのにな……」と感心しながらアプリを操作すると、そのタクシーは間もなく彼の元にやって来た。
「お客さん、どちらまで?」
タクシー運転手が尋ねる。その運転手はガタイの良い体格をしていて、後席から見る背中は目を見張るほどの大きさで威圧感があった。
「どうされましたか?」
「いえ、なにも……」
ドアが閉まると、浩介はその異常な様子にすぐに気がついた。まず最初に、タクシー運転手の見た目と声のギャップだ。背後からの見た目は若々しく、30代前半のような面影があり、艶のある肌質をしていた。しかし、運転手の声は若くてハリのある声……というよりも、どちらかと言えば60代男性というような低くて渋い声をしていた。そしてもう一つこそ、浩介が目を疑うような異常な点だった。
(......は? どういうこと......?)
助手席に置いてあるタクシー運転手の顔写真を見た時、浩介はごくりと唾を飲んだ。彼が驚いたのも無理はない。その運転手の顔写真を見てみると、M字禿げのオッサンが写っていたのだ。しかも年齢は64歳と書いてある。しかし、ルームミラー越しに見えるタクシー運転手の容姿は、まるで別の男のように見えた......というより、別の男だった。
実際にハンドルを握るそのタクシー運転手の容姿は、まるでアスリートのような風貌だった。黒髪短髪に、くっきりとした目鼻立ち。男臭さを漂わせる口髭や顎髭を生やしており、その濃い目の顔つきは、一般的なタクシー運転手とは相当かけ離れているものだった。さらに筋肉も隆々で、ハンドルを握る腕の筋肉はしっかり発達している。胸板や肩まわりがガッチリしているのか、Yシャツははち切れんばかりにピチピチになっていた。とてもではないが、タクシー運転手……というより“ラガーマン”と呼んだ方が明らかにしっくりと来る容姿をしていた。
「ええと……こちらの住所までお願いします」
浩介は内心動揺したが、あまり時間もなかったので急いで行き先の住所を伝えると、タクシー運転手はこくりと頷いた。
「かしこまりました。それでは、お客さん、シートベルトをしっかりお締めください」
浩介は言われた通りにシートベルトを締めて、シートに深く身を沈めた。浩介は窓に目を移し、その表情に『?』を作りながらもひと息つく。その様子をタクシー運転手はミラー越しで確認して、にんまりと微笑みを浮かべた。
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