SakeTami
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寄生警察(3)

「あの、何やってるんすか……?」


重なり合う田伏と新山の体躯を見下ろすようにして、公衆便所の入り口で若い青年が立っていた。小麦色の肌を露出させたタンクトップとショートパンツ。ランニング中の彼の額には滝のような汗が流れていた。


その青年は辺りを見渡し唖然とした。二人のマッチョな男が地面に倒れているのだ。一人は全裸。もう一人は上半身だけシャツを着ているが、第三ボタンは外れ、胸もとははだけていた。さらに青年の鼻腔を、大人の男の汗臭さとイカ臭さが混じり合った強烈な臭いが刺激した。壁やトイレの個室のドアには、白濁とした精液が、まるでバケツで振り撒いたかのごとく激しく飛び散っていた。


「お前、アレを見たのか……あひっ」


田伏はゆっくりと立ち上がり、青年を睨んで口角を上げた。青年は、田伏のブルーのシャツに施された正義の証である腕章を見て驚いた。


(この二人、本当に警察官......?)


青年は言葉が見つからなかった。彼は部活の自主練で公園の周りを走っていると、誰かの助けを求めるような声が聞こえたのだ。公衆便所に近づいてみると、助けを求める声は、むさ苦しい男の喘ぎ声へと変わっていた。


彼は言葉を失ったが、同時にある“繋がり”に気がついた。ここ数日、連絡が取れない部員が数名いた。そのうち姿を現すだろうと、まだ警察には届けを出していない。しかし、青年はこの二人の警察官が何か鍵を握っているのだということを直感的に理解した。


「......もしかして、お前ら最近もこうやって?」


青年は意を決して田伏に尋ねた。田伏は、口元から溢れる涎を腕で拭いながら答えた。


「あぁ、あの学生達か?あいつらもなかなか寄生するには良い“器”だったな......今ごろ、同じ仲間を探して、あちこち男を貪り回ってんじゃねえの」

「寄生......?」

「......うひっ。へえ、その肉体もうめぇだろうな」


田伏は青年の身体を隅々まで、まるで店の商品を一つひとつ品定めするかのような視線で確認した。坊主頭に、若い青年のくっきりとした一重まぶたと高い鼻筋。額から流れる大量の汗が首をつたって、彼の胸元や脇をぐっしょりと湿らせていた。肩回りはむりっと筋肉の膨らみがあり、上腕二頭筋が丸太のようにぶ厚い。手はごつごつしているようで、何か物を投げたり掴んだりするような種目のスポーツをやっているのではないかと、田伏は察した。


「ねえ、君のこと、色々教えてよ?」


田伏は目を見開き、若い青年の瞳をじっと見つめた。その鋭い眼光に、青年は自分の精神を丸裸にされたような気分に陥った。


「はっ?なんでお前みてぇな怪しい奴に……」


そこまで青年が言い掛けたところで、彼は口を紡ぎ、身体の動きは微かに止まった。そして身を硬直させたまま、もう一度口を開いた。


「俺の名前は松井雄大、21歳。部活は陸上部だ。専門種目はハンマー投げで……」


雄大は喋りながら目を丸くした。自分の意思に反して口が勝手に話し始めたのだ。雄大がたじろぐ姿を、田伏はニヤニヤしながら聞いていた。


「彼女とは去年別れて、今はなし。性欲はほとんどオナニーで発散してる。元カノをオカズにチンポを扱いてて……って俺、何言ってるんだ!?」


雄大は力を振り絞って手で口を塞いだ。


「よく喋るじゃん」


田伏は笑った。寄生体は、雄大の脳内の回路に「真実を包み隠さず話したくなる」という電波を送りつけたのだ。その電波が自身の欲求であるかのように錯覚を起こし、雄大は自分自身のことを進んで話し始めていた。


「そうだ。先輩、そろそろ起きてください」

「……あッひふんっ!?」


新山の背筋に電撃が走った。彼はそれを“快感”だと錯覚し、身を震わせて目を覚ました。


「お、田伏。どうした、何か問題でも起きたのか?」


先輩である新山は膝をゆっくり立たせて、田伏の顔を覗いた。新山の表情は、冷静さを保っていた。昨日までの彼と何ひとつ変わったところが見受けられない。キリッとした整えられた眉。不正を見逃さない鋭い目つき。警察官としての威厳を感じさせる、凛々しい顔立ちをしている。しかし、首から下はどうだ。逞しい胸板や六つに割れた腹筋や、股間に生い茂った真っ黒な毛には、白濁とした精液がいまだに滴っていた。


「君、そのいやらしい雄っぱいとか、若い筋肉を見せつけるような服装はなんだ?お巡りさんが、逮捕しないとな」


新山は、片方の手首に掛けられた手錠をぐるぐると回転させながら、一歩ずつ雄大へと近づいていった。



<続く>


Comments

いつもありがとうございます。 寄生や増殖系は、寄生される側から寄生する側に......と、繰り返されていくのが、なんとも無慈悲ですね。

Adam

増殖系の王道、「俺の仲間はこうやってやられていったのか・・・!」と知るが、今から自分もやられるので知っても無意味という無慈悲展開!果たして雄大君は逃げられるのか・・・?(多分無理)

フカヒロ


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