SakeTami
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“奪”イーツ (3)

裕斗の彼女である亜美は、心配していた。毎日連絡を取っていた彼氏から、もう一週間もLINEに既読が付かないのだ。


「裕ちゃん……どこに行ったの?」


彼が消息を絶ったのは、×××イーツのアルバイトを入れていた日。なにか情報を知っている人がいるかもしれない。彼女は試しに×××イーツのログイン画面を開き、裕斗のアカウントにログインしてみた。


「パスワードは……これかな?」

『ログイン完了』

「よし!」


パスワードは、予想したとおり二人の付き合った記念日であった。早速、デリバリーの履歴を確認してみた。


「このマンションで、最後だった……?」


亜美は居ても立っても居られず、家を飛び出した。



裕斗が最後にデリバリーを届けたマンションの前。亜美は少し緊張していた。ここまで踏み込んでいいものか……と。しかし、裕斗が心配でたまらない。なにか行動に出るしかない。


『ピンポン』

「あ、あの」

「……あ?」


インターホン越しで男の声が応えた。


「あの……裕斗のこと、知りませんか?あの、デリバリーに来た」

「あぁ、あいつの女か?」

「えぇと、じつは裕斗が行方不明で……、なにか知ってること、ありませんか?」

「そうだな……まあ、入れよ」


亜美は少しためらった。普段なら見知らぬ男の家に上がることなんて、あり得ない。しかし、裕斗の行方の手がかりを少しでも知ることができたら良い。

ドアが開くと、金髪の男が姿を現した。


「どうぞ、お嬢さん」

「失礼します……」


案内された部屋には無数の人形が置かれていた。どれも若い男の見た目をしている。一つひとつの表情が細かく刻み込まれて、今にも動き出しそうなほどリアルに作られていた。


(なんて、不気味な部屋……)


その時、亜美はある人形に目が止まった。黒髪短髪、鼻筋の通った顔つきに、ガッチリとしたカラダつきの人形。まるで亜美の彼氏である“裕斗”のような見た目をしていた。


「あの、これは……」

「まぁ、座れよ」


段々亜美は恐ろしくなってきた。この金髪の男にはどこか正気でないところがある。それも強い陰の力を持っている。はやく事情を説明して、この部屋から抜け出したほうが良いかもしれない。亜美は強くそう感じた。


「じつは、裕斗と連絡が取れなくなって、一週間たつんです。今まで、そんなことなくって。それで、裕斗が最後に来た部屋がここだって知って……」

「あぁ、あの兄ちゃんな……威勢のいい男だったよ……最後まで」

「最後……まで?」


男が不敵な笑みを浮かべた。


「なぁ、嬢ちゃん。彼氏にもう一度会いたいか?」

「もちろん……なにか、知ってるんですね?」

「あぁ、知ってるもなにも……。まぁ、一つ条件がある」

「条件?」

「俺もさぁ、いろんな若い男の人生を奪って、まぁ楽しくやってんだけど。自分ばっかり遊んでも、なにかと限界があるんだ。だから、嬢ちゃんの“魂”を預けてもらえば、好きな分だけまた大好きな彼氏と会える。どうだ?」

「私の魂?」


亜美は男の言葉の意味がわからなかった。それでも、もう一度裕斗に会いたい。その気持ちに嘘なんてない。亜美の答えはすでに決まっていた。


「なんでもいいわ。裕ちゃんと会えるなら、“魂”でもなんでもくれてやるわよ」

「お、話がはやいな。それじゃあ、『同意』っていうことで、いいか?」

「ええ。私は完全に『同意』するわ!」


亜美が言葉を発した途端、彼女のカラダから白い光がうっすらと放たれた。


「なに……こ……れ?」

「それじゃあ、嬢ちゃんには……そうだな〜。んじゃ、この『野球部員・すぐるクン』にしようか」


男は数ある人形の中から一つを持ち上げた。そしてポケットに入ったスマートフォンを取り出し、裏アプリの画面を開いた。


「よし、それじゃあ。『同期』始まりっと」


男がスマートフォンの画面をタップすると、亜美のカラダに変化が現れた。やわらかく白い肌が、こんがりとした小麦色に。おおきな胸の膨らみがギュッと凝縮され、固くぶ厚い胸板に……。長く美しい髪が引っ込むと坊主頭になり、目は一重に、鼻が潰れるように平たくなり、ぽつぽつとニキビが浮き出てくる。亜美のきれいな顔やカラダは、ゴツゴツとした雄臭い男の姿――あの人形と同じルックスに変化を遂げていた。


「きゃあ……なに、これ!?」


亜美は大声で叫んだ。その声は、野太くかすれた若い男の声に変わっていた。


「それじゃ、次は俺だな」


金髪の男は『裕斗』の人形を取り出し、同じようにスマートフォンの画面をタッチした。彼の象徴であった金髪は、真っ黒な短髪に。一重の瞼に鼻筋は高く、胸筋や肩まわりがガッチリと大きくなり、太腿やふくらはぎは膨らみ、筋肉質な筋が深く刻まれた。


「あーあー。よし、俺も『同期』完了」


男の姿を見て、亜美は驚愕した。その姿は、連絡が取れなくなり、行方を捜していた、亜美の彼氏——裕斗そのものであった。


「裕斗……!?」

「そうそう、あいつ、なかなか良いツラしてたし、人形にして奪っちまったんだ。意味ねぇのに、最後まで威勢よく抵抗してたよ」

「ふざけないで……!」

「そんで、お前の姿の『すぐる』も、デリバリーやってて、気に入ったから手に入れたっつーわけ」

「元に戻して……」


『裕斗』は亜美に太い腕をまわした。


「なぁ、怒んなよ。待たせてごめんな?」

「ちょっ……!」


その時、亜美は嫌な予感がした。視線を下ろすと、股間が大きく膨らんでいるのだ。


「やだ……!」

「へぇ、ずいぶん正直じゃねぇか」


『裕斗』の姿をした男は、かつての裕斗が見せないようなイヤらしい目つきで亜美の全身を舐め回すように見つめた。


「……なぁ、待たせてごめんな……、すぐる」

「すぐる……?あたしは……すぐるじゃ……」

「なぁ、許してくれよ、すぐる」

「あたしは……ええと……すぐ……る……あれ?」


亜美は動揺した。自分が誰であったのか、記憶が定かでなくなっていく。


「だんだん、記憶も変わってきたみたいだな〜、すぐる」

「記憶……?あたし……?ん、なんで、あたし……あれ、俺?」

「なぁ、楽しいことしような、すぐる」

「んあ……俺はすぐる……あぁ、そうだな、裕斗」


『すぐる』の表情から迷いが消えるのを見て、『裕斗』は口元を緩めた。


「それじゃ、今日はどこから攻めようか?」


部屋の中には若い男が二人。

お互い慣れた手つきで、肉体をピッチリと締め上げるシャツを脱がせ合った。


Comments

ありがとうございます!今作は3話で終わりですが、球児系入れ替わりは今後も扱っていきます。

Adam

球児が絡んだ入れ替わりいいですね!もっと読んでみたいです

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