“奪”イーツ (2)
Added 2020-07-06 15:13:40 +0000 UTC裕斗は目を覚ますと、見知らぬ部屋の中にいた。部屋は薄暗い。Tシャツや短パンは脱がされたまま、手足を縛られ、口にはガムテープが貼り付いていた。
「ん……ん!!?」
「おう、やっとお目覚めかぁ?」
金髪の男が姿を現すと、裕斗の口を塞いでいたガムテープを勢いよく剥がした。
「んは……!!お前、なにが目的だ?」
裕斗は男を睨んだが、男の目は笑っていた。
「お前のこと、ず~っと狙ってたんだよ……」
「ずっと?」
「この前、デリバリーでお前を見たときからな……次の人形に相応しいんじゃねぇかって」
「次の人形……?」
「そうだ。紹介するよ、俺の可愛いペットたちを」
男が部屋の電気を付けると、裕斗は目が眩んだ。目を慣らすように、少しずつ視界を開いていく。見渡すと、無数の“人形”が並んでいることに気がついた。一つひとつの“人形”はそれぞれ違う造りをして、どれも若い男の容姿。ピッチリとしたTシャツやパンツを穿いていて、裕斗と同じようにデリバリー用のリュックを背負っていた。
「これは……?」
「んで、お前のは、これだ」
人形の中から、男は顔がツルツルでなにも特徴がない人形を取り出した。デッサンに使われるような、カラダの基礎となるパーツしかない、シンプルな人の形をしていた。
「お前には、この人形と『同期』してもらう」
「……は?」
「お前のカラダの権限を“奪う”ことができるんだ……そういう裏アプリがあってな」
男は笑いながら腹を抱え込んだ。
「ふざけんのも、いい加減にしろよ」
「……俺は、最初にお前を見かけたとき、こう思ったんだ。次手に入れるなら、お前みてぇなイキのいいガキが良いってよ。せっかく“奪う”なら、顔もカラダもイケてる奴がいいしな」
「さっきから、ワケわかんねぇよ」
「なぁに、気にすんな。俺はずっとサツに追われててな……。クスリもやめらんねぇ。んで、色んな奴の人生を奪いながら、ノビノビと生きてるっつーわけ」
「……」
「まぁ言ってもわかんねぇか。黙って見ておけよ、今から面白いことが始まるぜ」
男はそう言うと、裕斗の目の前にその人形を座らせた。裕斗と人形は、向かい合わせになる。男はポケットからスマートフォンを取り出した。
「そんで、あとはこの裏アプリで、ボタンをクリックすれば操作完了。カンタンだろ?」
裕斗の額から、冷や汗が流れた。男の言っている意味がまるで分からない。でも、ここで逃げ出さないといけない。そんな勘が無意識に働いた。なんとか逃げ出すチャンスを作ることはできないか?裕斗は決心し、立ち上がった。
「さっきから、うるせえんだよ!!!」
裕斗は縛り付いたイスを振り回すように、勢いよく金髪の男に突進した。
「おっと。それじゃ、ポチッと!」
男はアプリの『同期』ボタンをタッチした。その途端、裕斗の動きが突然止まった。まるで機械から電源が抜かれたように、すとんと腰が落ち、その場で座り込んでしまった。
「な……?」
裕斗にはなにが起こったのか分からない。ただ、床に置かれた人形の変化に気がついた。眩しい光を放つと、髪が生えていなかった頭は黒髪短髪になり、カラダには胸筋や腹筋のようなものが浮き出て、脚にも筋肉の膨らみが再現された。しかし、顔だけは、目や鼻が描かれていない平らな顔のままだ。それ以外は、まるで“裕斗”のような見た目をした人形になっていた。
「もうちょっとだな。それじゃ、お望みどおり、解放してやるよ」
男が裕斗の手足を拘束していたロープを解いた。
「どうだ、自由になれた感想は?」
「ん……カラダに、ちからが、入らねぇ……??」
イスに座り込んでいた裕斗は、ついに床に転がり落ちた。
「まだ、『同期』の途中だから、口は動くみてぇだな。あとは時間の問題だろ。さっそく、お前のカラダで遊んでみるか」
男は、自分の服を脱ぎ捨て、アンダーウェア一枚という格好になった。部屋の中には、裸の男が二人になった。男は床に置かれた人形を手に取り、ポケットに入れる。そして、自分の右手を、ゆっくりと高く挙げた。
「……!?」
裕斗は驚きのあまり言葉を失った。裕斗の右手も、まるで鏡のように、ゆっくりと高く挙がったのだ。
「さ~て、何して遊ぼうかな」
男が立ち上がると、床に倒れ込んでいた裕斗も、同じように立ち上がった。
「カラダが……勝手に!?」
「あぁ、お前のカラダの『権限』を奪ったんだ……。まだ、完全に終わってないけどな」
「ふざけ……」
「さ、次はどこを動かそうか?」
男の動きに、裕斗は全身が凍り付いた。男が股間に手を伸ばすと、裕斗も同じように自分の股間に手を伸ばしていた。
「おい、そこは……」
男はアンダーウェアの上からもっこりとしたチンポに指先をなぞらせた。裕斗もまったく同じ動きをした。男はニヤニヤと口元を緩ませた。
「あっ……」
「なんだ、敏感じゃねぇか」
「それ以上は……!」
男がアンダーウェアをゆっくりと下ろすと、裕斗も尻を締めていたアンダーウェアをゆっくりと下ろしていく。毎日自転車を漕ぐことで鍛えられたプリケツだ。そして、キツそうにしまい込まれていたチンポがぼろりと姿を現す――彼女である亜美と会うたびにヤリまくっていた、淫らで若い真っ黒なズリ剥けチンポだ。
「へぇ、生意気だな、いいモンぶら下げてんじゃねぇか……お仕置きしねぇとな」
男がチンポを強く握りしめると、裕斗も自分のチンポを強く握りしめた。裕斗のカラダに強い快感が走った。
「んは!!?」
男が激しくチンポを上下に扱くと、裕斗も同じように激しくチンポを上下に扱く。
「やめ……ろ……んふ」
「お前が勝手に扱いてんだろう?くく」
裕斗のチンポは次第に硬くなっていった。男は自分のカラダを慰めることを止めない。左手で自分の乳首をイジり始めると、裕斗もそれに応じるように、左手で自分の乳首をイジり始めた。
「あぁっ!やめっ!!」
「へぇ、乳首感じるんだ?いつもは彼女に吸ってもらうのに、今日は自分で慰めてんのか?」
「やめっ……あっはふん」
男は裕斗に近づいた。裕斗も同じように、男に近づき、二人は向かい合った。
「それじゃ、これは、どうだ?」
男が裕斗に唇を重ねた。裕斗は舌を自由に動かすことができるが、男からカラダを離すことができない。
「くちゅっくちゅっ……」
裕斗の顔は嫌悪感に満ちていた。しかし、次第に力が抜けるように、顔の表情が緩んでいく。
「なぁ、感じてんだろ?なぁ、気持ちイイだろ?」
「んっ…あっ……!」
「認めろよ、なぁ……。気持ちいいか?」
「気持ち……いい……」
裕斗の口からは大量の涎が零れ落ちていた。
「誰かに自分を操作されるのは、ラクだろ?もうなにも考えなくっていいんだ。ただ、気持ちイイことがあるだけだ」
「気持ち……イイこと……」
「あぁ、支配されるってのは、気持ちイイことだぜ?もう、なにも考えなくていい。気持ちイイことだけを考えてりゃいいんだ」
「あっ……『なにも……考えなくって……』」
「人生を誰かに奪われるのは……気持ちイイこと……なんだ」
「……あっ…『気持ちイイこと……なんだ』」
裕斗は男の言葉を、ただ繰り返すだけになっていた。もう、裕斗には自分の“意思”というものが完全に欠落していた。
「もう自分の権限を、手放していいだろう?手放して、ラクになって……」
『手放していい……だろう……手放して、ラクになって……』
「俺は、カラダの支配を手放すことに、同意する」
『俺は、カラダの支配を手放すことに……同意……する』
その言葉を裕斗が発した途端、床に置かれた人形がふたたび光を放った。光は強くなり、裕斗のカラダさえも包み込んだ。部屋には静けさが訪れた。
「どれどれ?」
光が消えてなくなったとき、裕斗のカラダも消えてなくなっていた。床には、裕斗の顔をした人形が落ちていた。
「くく……奪ってやったぜ……俺の新しいペットちゃん」
男は“裕斗”を床から拾い上げると、人形の並びにそれを加えた。