SakeTami
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【前編】観光客の外国人女性と日本人小学生が入れ替わる話

 私はジェシカ・ホワイト。日本が大好きなアメリカ人だ。そして今、あこがれの日本に来ており、タタミのあるワシツでパパ、ママ、ジミーとくつろいでいる。  『すごい!これが日本のワシツなのね!心が洗われる気がする!』  『ジェシカは本当に日本好きだな。けど確かに心が洗われる気がするな。』  『そうでしょ!やっぱり一度来てみる価値はあったわ!次は日本のブツゾーを見てみたい!』  私は昔どこかの本で日本についての記事を読み、それ以来日本のゼンやニンジャにずっと興味があった。パパやママも私の日本好きを子供のころから知っているようで、テレビで日本のことが特集されているとたびたび教えてくれた。そして、私の18歳の誕生日に、子供のころからの願いだった日本旅行をプレゼントしてくれたのだ。  『ジェシカが喜んでくれてパパも嬉しいな。でも俺はゼンやブツゾーじゃなくてニンジャやマイコのショーのほうがおもしろいと思うけどな。』  『えぇ!?あのお寺や神社にある神々しい感じが良いんでしょ!パパは日本のことを全く分かっていないわ!』  『そんな怒らなくていいじゃないか、ジミーもブツゾーよりもニンジャのほうが好きだろ?』  『僕は日本のことキョーミないし』  『ジミーはもう少し日本に興味持ったほうがいいわ!!』  しかし、私以外の家族はあまり日本には興味がなく、ただ私の成人旅行に同伴しているような感じだった。パパやママはまだ私の日本の熱を理解して興味ないなりにサポートしているが、弟のジミーはそれすらもない。飛行機に乗るときなんか、アメリカにいたほうがいいやと吐き捨てたくらいなのだ。  私以外の家族はこんな感じなので、私が一人で暴走しているみたいで少し引け目を感じる。実際、今日あの有名なキンカクジを訪れた時も、私だけキャーと叫んでいて少し寂しかった。  『まあ明日は週末で京都は混むだろうから、新しい観光地で気持ちをリフレッシュしたらどうだ?』  『僕はあまり人がいないところがいいな』  『私も。京都は私たちと同じ観光客ばかりで結構きつかったわ。』  これについては私もジミーと同じ意見だ。私達は日本に来てからずっと京都にいたけど、京都は観光客が多すぎてあまり楽しめなかったし、平日なのに列ばかりで体にこたえた。  『じゃあ明日の観光地は結構マイナーな観光地にしてみるか』  『私絶対にブツゾーが見たい!日本に来てブツゾーを見ないっておかしいわ!』  『また姉ちゃんのブツゾー好きが始まった』  『でもブツゾーってどこも混むんでしょ?ママはもう混んでいるところはいやだわ。』  『でもブツゾーは見てみたいし…』  『じゃあ観光地はブツゾーがあるところにするとして、ジェシカは一人でブツゾーを見たらいいんじゃないか?』  『えぇっ!?せっかくなら家族一緒で見たいわ!』  『正直俺も長い列に並ぶのはいやなんだ。それにジェシカだけ日本に対する熱量が違うから、ちょっと俺達も申し訳ないんだ。』  『パパ…』  『ママもせっかくの日本旅行だからジェシカは一人で行動してもいいと思うわ。大きな冒険もできそうだし。』  『分かったわ。せっかくだから一人で行動してみる。』  こうして私達一家は京都ではなく日本の地方都市へと移動して、私は一日一人旅をすることになった。  翌日、私はガイドブックに紹介されていた仏像を見るため、それが置かれてあるお寺を見ることにした。ただ、音量注意という看板がある上、私は昨日までと違って一人で観光していたので、剣や和室を見てもあまり面白く感じられなかった。  『わぁ!本当にブツゾーがあった!ガイドブックにあった通り凄く大きいわ!』  でも、やっぱりガイドブックに紹介されていた大きな仏像を見ると、一人でも来て良かったと思うことができた。  『みんな目を瞑って手を合わせている。そういえばお寺に入ったらお願い事をするんだっけ…』  仏像が置かれていたところはどうやらお願い事をする場所だったようだった。そこで私は叶うわけがないと思っていた、あまりにばかげた願い事をしてしまったのだ。  (もっと日本を観光してみたいので、私を日本に住めるようにして下さい!)  目を瞑っていたはずなのに、一瞬、目の前が光ったような気がした。そう、わたしの願い事は叶えられてしまったのだ。  気がつくと、私はお寺の外にいた。仏像があったところからは出ていないし、何より出口への行き方を知らないので、まるでワープしたような気分であった。  すぐに、視界がすごく低いことに気が付いた。まるで常にしゃがんでいるような感じなのに、確かにぴんと立っている。それにただし買いが低くなっているのではなくて、人、電柱、信号、自分以外のすべてのものが今までよりも大きくなっていて、自分だけが小さくなったように感じた。  さらに、ふと自分の手を見てみるとそれも変わっていて、青白い肌は小麦色に変色しており、長かった爪は深爪気味になって、大きさも指の長さも一回り小さいようなものになってしまっていた。慌てて足を見ると、足も変わっていて、筋肉のついた暗い肌のものになっていた。さらに、もともと来ていた服は白のワンピースだったのに、いま私が来ている服は謎のTシャツに赤の短パンをはいていて、服装まで違っていたのだ。  私は何かおかしいと思って、近くにあった大きなガラスへと駆け寄った。そして、そこ映った「自分」の姿は、元の私の姿とかけ離れていた。  目は細く少し吊り上がっていて、眉と目との距離が離れている。鼻は筋が通っていなくて、小さくぺちゃりとなっている。肌は暗く、全体的に顔立ちはのっぺりとしながらも子供じみている。そして、髪は短くて、それは「彼」が男の子であることを意味している。  目の前の男の子驚いた顔をして、目をぱちくりさせている。そして私が手を動かすとその男の子も同じ動きをして、私が顔の筋肉を動かすと表情も変わる。つまり、私はこのアジア人の男の子になってしまったのだ。  「な、なんで!?」  私が驚いて叫ぼうとすると、それは英語ではない別の言語に変換された。それはこの日本で使われている言葉、日本語であった。私は知らないうちに、年齢相応の日本人が使う日本語を完全に身につけていた。全く学んだことのない新しい言語が使えるのは奇妙な感覚で、まるで頭の中に次々と新しい単語の意味が現れていくようなものだった。気づいたら、今まで雑音だった日本人同士の会話の意味がすっかり分かるようになっていた。  日本語だけでなく、私はこの男の子のことが次々と分かるようになっていった。名前は本田大洋、年齢は12歳、この仏像がある土地に住んでいること、この寺には家族でよく行っていること、自分が今まで決して体験していないような日本での記憶が次々と「思い出され」ていったのだ。  「大洋、こんなところにいたのか。お参りは終わったしもう帰るぞ。」  「え!?」  そして、日本人の男性が私の頭に手ををポンと乗せた。一瞬誰かと思ったが、すぐにこの日本人の男の子の「チチオヤ」であり、お寺から新しい自分の家へと帰ろうとしていることがわかった。  「もうお寺に用はないだろ。お前も家に帰ってゲームしたいって言ってたし、俺がお寺に行こうとした時めんどくさがったじゃんか。」  「えっと、その、今はダメなんです!あの、色々あって!」  「何変なこと言ってるんだ。俺も午後は休んでいたいんだ。」  私はこの体になった原因を調べるためにこのお寺を調べたいし、なにせ本来の私は明日の夜飛行機でアメリカに帰ってしまうので、とにかく私は帰りたくなかった。でも側から見れば、これは男の子がダダをこねているようにしか見えていなくて、この新しい父親に強引に手を繋がれこの寺から離れることになった。  翌日、本来私は飛行機でアメリカに変える時間に、知らない日本の家のベッドで一人泣いていた。  「う、うぅっ…」  結局、今日もあの神社に行ってみたけれど、私の元の家族であるホワイト一家はいなかった。私の元居たホテルにも電話してみたけれど、個人情報を理由にしてはぐらかされたうえ、いざ行こうとしても今の私は日本人の男の子のみなので行くお金がなかった。  つまり私は万事休すだった。  「違うの…私はただ、日本を観光したかっただけなの…日本人になんかなりたくない…!」  これは私の本音だった。確かに私は日本のことが大好きだったが、それは観光する場合であって、日本人として一生日本で暮らすことまではしたくなかった。それにパパ、ママ、ジミーと二度と会えずに遠く離れた土地で暮らすのにも耐えられなかった。  「私、なにしてるんだろ…」  私はふと元の「私」について気になった。私はこうして日本人の男の子になっているけど、元の私って今どうしているんだろう。パパとママは日本の警察に連絡してくれたのかな。それとも私はこの男の子と入れ替わって、パパとママはそれに気が付いていないのかな。そういえば私って結構かわいかったな。長いブロンドの髪、大きな青い目、今の私にはもってないな…  「って、何考えてるの私!」  思わず私は叫んでしまった。こんなの、私がめったにしたことのない考えで、まるで男の子がするようなものじゃないか。違うのよ私。今のはただの悪い思い付きだから、心配しなくていいわ。  だから、股間がきついのも、見なかったことにするのよ…


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