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[Go, Occult Research Club!]イケ!オカケン第四話:Stage.8「地下の紅い悪魔」

地下空間は、まるで異界のようだった。
4人は合流し、崩れかけた階段を降りた先はかつて貨物の保管庫だったであろう巨大なホール。

だが、今やその空間は――

島田「……なんだ、ここ」

島田が思わず漏らした。

壁一面にびっしりと刻まれた呪紋。天井から垂れる赤黒い照明。何より、空間の中心にぽっかりと浮かぶ、紅い魔法陣――。

そしてその中心に、彼女は立っていた。

???「……来たのねぇ、人間たち」

その声は、年端もいかぬ少女のように幼く、だが艶めかしく甘やかだった。

暗闇の中でふわりと浮かぶシルエットは、ボンデージ姿の幼女――しかし、背中には黒く小さな蝙蝠の翼。足元には、細く尖った尾がうねりながら揺れている。

お 玉様「アイヴィー……!」

お玉様が低く名を呼ぶ。歯を食いしばるような声音だった。

アイヴィー「えへへ、おひさしぶり、“火の巫女”。でも、私が欲しいのはあなたじゃない」

少女はにんまりと笑い、瞳をこちらに向けた。その視線は、まっすぐ――島田を捉えていた。

アイヴィー「見つけた……運命の人、かもね?」

島田「えっ、ちょ、えええぇえええ!?」
島田が悲鳴をあげる。

島田「な、なんで!? 今このタイミングで告白!? ていうか誰!? 小学生!? 悪魔!? なんで悪魔が俺を見てるの!?」

お玉様「適当な事を言っているだけじゃ、悪魔の言う事をいちいち気にするな」

白銀先輩が護符を構え、お玉様が尾をゆらりと巻き上げる。
霧が揺れ、空気が張り詰める中――白銀先輩が静かに問うた。

白銀「お玉様、あの悪魔?…は何者なんですか?」

お玉様はアイヴィーの方を一瞥し、静かに瞳を細める。そして、ゆっくりと口を開いた。

お玉様「……あれは“境界(きょうかい)”を歩く者。天と地、現と幽を越え、気まぐれにこの世に現れる存在じゃ。代償として“契約”という形で、魂の運命を捻じ曲げる。名を……アイヴィー

アイヴィーはにっこりと無垢な笑みを浮かべた。

アイヴィー「わたし、悪いことなんてしてませんよ?欲しがる子にちょっと力を貸しただけ」

お玉様はぴしゃりと声を上げた。

お玉様「嘘をつくでない。あやつが求めるのは、“美しき魂”――それもイケメンの魂をコレクションする趣味があるのじゃ!」

白銀先輩は眉をひそめた。

白銀「魂を……集めてる?」

アイヴィーはくるりと回って、口元に指を当てた。

アイヴィー「うふふ♡ だって、素敵でしょう? でも、叶わない恋は……もっと素敵」

アイヴィーの芯を突かない言に、一同が息をのむ。

お玉様「アイヴィー、何を目論んでおる。なぜ“あれ”を呼び出した」

アイヴィーは紅い魔法陣の中心でくるくると回る。まるで踊るように、唇を吊り上げた。

アイヴィー「退屈だったの。ただの、それだけ。お玉、アナタだって人間を使って楽しく遊んでいるそうじゃない?アタシの場合、亡霊と魂を使って遊ぶの」

そう告げたアイヴィーの瞳が、鈍く妖しく輝いた。
空間の気温がみるみる下がる。霊でもなく、生者でもない異質な存在の圧に、蓮華の額に冷や汗が浮かぶ。

お玉様「アイヴィー、おぬしが“峠の亡霊”を操っていたのか」
お玉様が低く問う。

アイヴィー「ふふっ。操ったんじゃないわ。力を貸したの。あの子はね、あの事故で死んだあと、ずっとここに縛られていた。でも、何かが足りなかったの。走る理由が。だから――私が与えてあげたのよ」

白銀「与えた……?」

白銀先輩が呟いた。

アイヴィーは魔法陣の中で、子どものように無邪気に笑った。

ア イヴィー「勝ち逃げされたくない、あの子はずっとそう思ってたの。“青い閃光”にね。だから、私が“契約”をしたの。誰にも負けることのない体――魂を粘土のようにこねて、走るためだけの亡霊RX-7を作ってあげたのよ

お玉様「つまり……」
島田が顔をしかめる。

島田「倒さない限り、ずっとあの峠に現れ、魂を狩り続けるってことか……!」

アイヴィー「そ。走ることがあの子の未練。止めたいなら、勝つしかないの。でも、普通の勝負じゃダメ。私達に挑むには、“契約”が必要なの」

蓮華が一歩、前に出た。

蓮華「……あたしがやる。もう一度、あたしが走る。今度こそ勝って終わらせてやる。それで兄貴の魂を、解放しろ!!」

その言葉に、アイヴィーは細く笑みを浮かべた。

アイヴィー「あなたには足りないものがあるわ」

蓮華「は?」

アイヴィー「“代償”よ。亡霊との契約を打ち破るには、対等の契約を結ばなきゃいけない。――あなたたちの“何か”を賭けてもらうの」

蓮華は迷いなく言い放つ。

蓮華「じゃあ、アタシの魂を賭けるよ!」

だが、アイヴィーはくすくすと笑いながら、肩をすくめた。

アイヴィー「ふふ……なんで今まであなたが何度も負けたのに魂を取られなかったか、わかる?」

蓮華「……!」

アイヴィー「女の魂なんて、いらな~いのよ♪」

蓮華「な、なんだと……!?」

蓮華の顔がわずかに引きつる。その言葉には、思いもよらない軽蔑の色がにじんでいた。

だが――その空気を切り裂くように、強い声が響いた。

「じゃあ、俺の魂でもくれてやるよ!!」

突然、島田が叫んだ。

場の空気が一変する。誰もが島田を見つめる中、彼は真っ直ぐにアイヴィーをにらみつけていた。

「お、おいダーシマ!?」「正気!?」
蓮華と樹里が同時に叫ぶ。

だが島田は、どこか覚悟を決めたような目をしていた。

島田「どうせ巻き込まれてばっかだったしな。少しは役に立つぜ。なぁ、悪魔。俺の魂で“契約”できるか?」

アイヴィーは一瞬きょとんとし、それから口元に小さく笑みを浮かべた。

アイヴィー「うーん……悪くない覚悟だけど……ごめんね?」

島田「……は?」

アイヴィー「あたしのガレージに、イケメン魂をズラ〜ッと並べるのが夢なの♡ それに……うーん、島田くん、惜しいけどタイプじゃないの」

島田「がーん!」

島田がその場に膝をつく。

アイヴィー「というわけで、契約は不成立。でも、せっかくだからチャンスはあげる。後日、あたし好みのイケメンを連れてきてくれる? そしたら、正式に“契約”してあげるわ」

蓮華「契約って、そんな軽いノリでいいのか……?」

お玉「悪魔なんてあんなものじゃ」

白銀「つまり、我々には猶予がある……ということね」

お玉様が蓮華に向き直る。

「ならば蓮華、準備を整え、後日に決着をつけるのじゃ。わらわの力は、いつでも貸そう」

蓮華は深く頷いた。

蓮華「……必ず終わらせる。待ってな悪魔!」

その場に、再び沈黙が訪れた。 だが、戦いの火はまだ消えてはいない。


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