パシンがギャラリーとして使っている空間。
創作活動の初心と原動力となるものを忘れないように、
パシンの思い入れのある作品やアイテムが置かれている。
【作品解説】
展示作品としてのほかに、動画「びゃッこパスの狂人画廊シリーズ」の新背景として制作しました。
それまでは暗く猟奇的な部屋の背景でしたが、オクターヴスタジオは、あらゆるものが白い世界のビャッコパシティの景色に近づけたデザインで、「新たな世界へのいざない」をテーマに、作者のアバターとしての役割を持つパシンの趣味を反映させています。
作者は60〜80年代ごろの建造物のデザインを好み、Dream pool のような空間に、三つのステンドグラスの窓を取り付けました。
この景色は本厚木駅の地下通路にある化粧室前のステンドグラスから着想を得ました。
また、ヴェイパーウェーヴという音楽ジャンルによく使われるアートワークにも影響を受け、左右対称の景色、石像、ブラウン管モニター、南国風の観葉植物が配置されています。
柱に巻き付いているのは「デンキウソウ」というビャッコパシティの植物で、花の中央で光っている実を、びゃッこパスは食べます。
これは「アイデアが思い浮かんだときに頭に出る電球」というステレオタイプの表現から着想し「電球を食べることによりとめどなくアイデアが溢れ出る」という、作者のアイデアマンとしての自負と験担ぎを表しています。
中央に並んだ4人の天使の石膏像は、作者が生み出したキャラクターで、特に気に入っているキャラクターです。
左から、バイオロイドの「エスモヨ・クリン」、気弱で人見知りな芸術家の「美原真知子」と、そんな彼女を先生と慕い愛し合う「ヤスナ」、ゾンビ化した後遺症を持ちながらも社会復帰を目指す「鹿羽存美(かばね ながみ)」。
作者は過去に描いたキャラクターを気に入っていても、次から次へと新しいキャラクターのアイデアが生まれるために再び描いてあげられないことがしばしばあり、そんな彼女たちを忘れていない、ちゃんと覚えているよというアピールを込めています。
デンキウソウの壺が乗った鏡の椅子は、作者が過去に制作した動画「狂人画廊」のオープニングに登場した椅子のリメイクです。
動画に登場する椅子に乗っているのは、びゃッこパスが中から顔を覗かせた壺であり、こちらはネットで「3回見たら死ぬ絵」というミームとして有名なベクシンスキーの絵のオマージュです。
オクターヴスタジオ版では顔が花に変わっておりますが、こちらは手前にデスクを表示した時のオブジェクトとして作ったものをそのまま椅子の上に持ってきただけで、特に深い意味はありません。
また、花びらのデザインが縁だけになっているのは、作者が迷走するデンキウソウの花のデザインに悩んでいる際に、試しにChat GPTに「ファンタジーな花のデザインに悩んでいる」と相談してみたところ、「縁だけの花びらなんてどうでしょう?」と回答し、そのアイデアが気に入ったので取り入れました。
なのでこの作品はある意味画像生成AIの産物と呼べなくもないのかもしれませんね。
椅子の下にいるのは、パシンが作り出した「アグリンブス」というマスコットです。
名前の由来は「aggregation+limbs」で、四肢の役割をツインテールに集約したデザインになっています。
こちらは作者が愛してやまない「四肢欠損」からいかにしてグロテスクな要素を薄め、ホラー要素と痛々しさを残しつつ、表現規制が強まる昨今のインターネットで動かせられるかと模索していたところ、同じく作者が大変好んでいる「シテヤンヨ」のような髪行類の要素を混ぜれば、作者の趣味を表現しながら人に愛されるマスコットにできると考え、このデザインに至りました。
また、アグリンブスには「一見不幸のように見えても、その人なりの生き方や人生の楽しみ方があるので、むやみに可哀想なもの扱いをしないでほしい」という密かなメッセージも込められています。
床に散らばっている電球は、「まだ形にできていないアイデアたち」を表し、動画では全てデスクの影に隠れてしまいますが、これは「まだまだ君たちの見えていないところでこんなにアイデアが溜まっているんだぞ」という伝わらないメッセージとなっております。
「コッカキア」と書かれたビンは、ビャッコパシティでよく見かけるジュースの空き瓶。
ピンクの模様がある白い丸いものは、ビャッコパシティの生物「メンガイ」。
そして、「デスクに描かれている文字」「オクターヴスタジオという名前」「天使の像」。
これは作者の人生や作風に大きな影響を与えた、米米CLUBというバンドに出会うきっかけとなる「Octave」というアルバムのオマージュです。
デスクに描かれている文字は
Hallelujah! Don't miss this moment, fly away! The disk with the 12 gospels will lead you to a new world!
「ハレルヤ!今を逃さずに飛び立て!12の福音を記した円盤が、君を新たな世界へ導くだろう」
と書かれており、アルバムの一曲目にある「Tomorrow is another day」のイントロとサビから引用しています。
「12の福音を記した円盤」というのは、このアルバムに収録されている曲が12曲だからです。
作者はこのアルバムから米米CLUBを知り、その芸風の多彩さから多大な影響を受け、まさにそれまでの自分が知らなかった「新たな世界」へと導かれたのです。
オクターヴスタジオの背景も「米米TV Onoda-san」のスタジオの雰囲気を意識しています。
そんな思い出深い米米CLUBというバンドへのリスペクト全開で、「新たな世界へのいざない」をテーマに、オクターヴスタジオがデザインされました。