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フルルのオヤツ

沼地。広範囲に及ぶ湿地帯は冬場においても、ジメジメした空気に包まれる。冬場における食糧を求め大小様々なモンスターが訪れる。 沼地を主とするイーオス達にとっては、獲物と外敵の両方が到来する。 「ギィ…?」 とあるイーオスがぴくんと何かに反応する。遠くに羽の音が聴こえたのだ。群れに一鳴きし、周りのイーオスも止まり空を見詰める。 羽音が大きなり影が見えてくる。直後、どすんっという地鳴りと共にそれは降りてきた。 「……いたた、着地失敗………」 白い皮を服のように纏い、ぶよぶよの翼、丸みを帯びた尻尾を持つフルフルの少女が尻餅を付いて降りてきたのだ。 イーオス達はギィギィと不快な鳴き声をあげ、縄張りを主張する。フルフルを取り囲むように、隊列を組み威嚇を始める。 「……ふわああ……疲れた……」 しかしフルフルは特に気にした様子はなく、呑気に大きな欠伸をする。眠たげな瞳をこすり、ゆっくりと座る。 フルフルの背後に回ったイーオスが、姿勢を低くし飛びかかる。 「んむ」 「!?」 一瞬の出来事で何が起きたか他のイーオスに分からなかった。いつのまにか飛びかかった筈のイーオスがフルフルに咥えられていた。フルフルは苦い顔をして、ちゅるんと吸い込み 「んっ」 ごっくんっと呑み込んだ。白い喉が膨らみ降りていった。 「……おいしくない……」 そう言いながら近くにいたイーオスをつまみ上げ再び咥え、呑み込んだ。 「……足りない……ん?」 足跡を見つけるフルフル。それには見覚えのある足跡。彼女の大好物の一つケルビのものだ。 「……いっぱい食べれるかなぁ……♪」 群れを食べ尽くしたフルフル………フルルは嗅覚を頼りにゆっくりと洞窟に向かい歩き始めた。 洞窟内の水辺には沢山のケルビが水や、群生する草などを食べていた。彼らはまだ子供で、食事が終わると皆遊び始めた。この洞窟はまだ他の肉食モンスターに見つかって居らず、安全だった。その入口からひたひたと迫る白い怪物が現れるまでは。 「ほらほらこっちだよ♪」 「まってよぉ~!」 追いかけっこをする二匹のケルビ。二匹は兄弟であり、逃げる兄を必死に追いかける。弟の脚力では追い付けず、その場で疲れて止まってしまう。 「もう、置いてかないでよ……!」 はぁはぁと息を切らせながら、涙目で背中を見詰める。ふと、ぽたりと弟ケルビの頭に何かが垂れ落ちてきた。 「なにこれねばねば………え?」 垂れ落ちてきたねばねばの液体。それを疑問に感じる間もなく、 ばくんっ! 弟ケルビの全身が何か柔らかく、熱いものに包まれた。 「な、なにこれ!?や、やだ、やだぁ」 何が起きたか理解できない。全身を先程のねばねばが包み、狭いピンク色の肉壁が広がる。自身がどうなっているのか、分からないままごっくんと音を立てる。弟ケルビは更に狭い肉の洞窟に呑み込まれていった。 「………居たぁ♪」 天井を這いながらフルルは獲物を発見する。眼下には彼女の大好物であるケルビが二匹走っていた。兄弟なのか楽しそうに追いかけっこをしている。ふと一匹が疲れたのか、その場で止まる。 (……いただきまぁす♪) フルルは心の中でそう告げると、大きな口を開く。垂れ落ちてきた涎がケルビの頭に垂れ落ちる。 「……あむ♪」 ばくんっ!首を伸ばしケルビの体を覆うように唇の中に収め、天井に引きずり込む。 「んぐ………ごっくんっ!」 唇に引き込むと同時に丸呑みにする。空腹だったし辺りに悟られない為もあるが、なによりお腹で動く感触を楽しむ為だ。 「………動いてる。ふふ、ごちそうさま」 お腹をさすると、次なる獲物の味を想像し涎を垂らした。ぼたり、ぼたりと垂れた唾液が水溜まりを作った。 「あれ?」 兄ケルビは綺麗な茸が群生する場所で待っていた。もうそろそろ半泣きでやってくる筈の弟が来ないのだ。 「どうしたのかな?転んで泣いてるのかな?」 心配になり来た道を戻る兄ケルビ。 「どこぉ?ねぇ?からかってないで出てきてよ!」 不安になり、呼び掛ける兄ケルビ。しかし反応がない。 「ん、な、なに?」 びちゃりと、何か踏む兄ケルビ。ねとねとした水溜まりで湯気を立てている。足に絡み付くそれは、天井から垂れていた。 「……!?」 見上げるとそこには巨体を持つ人影。それは親から教わる天敵のフルフルだった。 「……ん、まだ居たぁ♪」 怯えて動けない兄ケルビ。フルフルの白いお腹からぐううう~と轟音が響き、兄ケルビの鼓膜を震わせる。 「……ひ、ひぃ……」 縮こまり、震えることしか出来ない兄ケルビにフルフルは微笑む。 「……もしかしてさっきのは弟くん?」 「え……?し、知ってるの?」 「……うん?……弟くん、一人じゃ寂しいよね?……今から会わせてあげる?」 「あ、会わせて!どこにいるの?」 予想外の言葉に相手がフルフルというのも忘れ、近寄る兄ケルビ。次の瞬間、 「……うぐっ」 フルフルの腕が兄ケルビをつまみ上げ、お腹に押し当てる。ぶよんと柔らかい白いお腹。不思議と落ち着いてしまう。 「………私のお腹の中♪」 「!?」 ぐりゅるるる~……おにいちゃん………ぐるるるる~! 鈍い蠕動音が響く中僅かに漏れた弟の声。認めたくない事実が兄ケルビに理解させられる。 「……直ぐに会わせてあげる……いただきまぁす?」 フルフルの柔らかそうな唇がゆっくり開いていく。それを呆然と眺める。そして悲鳴をあげる間もなく。 「……あむ、ぐちゅ………ごっくんっ!」 一瞬にしてひと呑みにされてしまうのだった。 「……ごちそうさま……けぷっ」 久しぶりの好物を食べたフルルは満足そうにお腹を撫でる。ぽこ、ぽこ……内側で僅かな刺激を感じて、微笑むフルル。 「………二人ともゆっくり溶かしてあげる……心配しないで?……みんな食べて送ってあげるから……寂しくないよ?」 そう呟くように優しくお腹に囁く。ケルビの兄弟をひと呑みにしたフルルは、ゆっくりと天井に登ると更なる獲物を求め、奥へと進んでいった。


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