秀才で容姿端麗の姉が、弟の提案に乗って太ることにした話 全文(最終96kg、公開部分4328文字+限定公開6846文字、計11174文字)
Added 2023-05-22 16:06:35 +0000 UTC「賢汰、相談があるんだけど」
時刻は午後8時頃だった。
夕食を食べ終わった後、俺は一つ上の姉である澄麗(すみれ)から真剣な表情で呼びかけられた。
「姉さんに悩みなんてあるんだ」
「……無いと思ってたの?」
「そりゃ、頭の出来も見た目も良いんだから。
全てが順風満帆にしか見えない」
俺は今月から高校1年生となり、姉と同じ学校に通っている。
だから姉の姿を校内で見かけることもあるのだが……
周りの生徒が二度見するほどの美貌を持ち合わせている。
顔立ちは凛として、眼はぱっちりと大きく美しい二重。
ほっそりした頬にシャープな顎、高めの鼻……
全身のスタイルも当然良く、ウエストはくっきり括れて無駄な脂肪が排除されている。
胸はしっかりとふくらんではいるが過度な主張はしない程度に収まっており、理想的なサイズだ。
スラッとした脚に女性らしい丸みを持つお尻と、下半身もハイレベルである。
しかも姉は単に綺麗なだけではない。
成績は優秀でクラスでトップは当たり前、学年でも1位を競う秀才だ。
これで運動まで得意なら鬼に金棒だが、流石に体育の出来は平均程度ではある。
まあ、容貌と頭脳が素晴らしいからそんなことは全然気にならないのだが。
……こんな姉と一つ違いである俺は、「姉には勝てない」という現実を絶えず思い知らされている。
今通っている高校も姉はそこまで苦労せずに合格したようだが、俺は一生懸命頑張って学力を引き上げて何とか受かった。
こんな状況で劣等感を抱かない方がおかしい。
それでも、姉とはなんだかんだで仲は悪くないのだが。
「貴方の言う通り、一見すると何も思い悩む必要がないように見えるかもしれないね。
しかし私には重大な欠点があることに気付いた」
「欠点……?どこにあるんだよ」
「……私はどうも近寄り難いらしい。距離を置かれてしまう気がしていてね。
性格や喋り方のせいかもしれないけれども、果たしてどうすべきか……
何か妙案があれば嬉しい」
……姉さんには近づきにくい、というのは事実だと思う。
明晰な思考回路、身体や顔の端麗さに圧倒されて壁を感じてしまうのだろう。
俺は弟だからあまり感じないが、周りからすれば高嶺の花で話しかけるのも勇気がいると言う所か。
だが、一体全体どうすれば姉がもっと話しかけやすい、フレンドリーな感じになれるのかと思う。
性格を変えるのが先決だろうが、無理だろうしあまり得策とは言えなさそうだ。
そもそも無理にキャラを変えても不審に思われるに過ぎない。
「……賢汰、何かアイデアが欲しい」
「もうちょっと待ってくれ」
そもそも何で凡才の俺に聞くんだよとは思う。
まあそれはいいとして、どうすべきか……
(……あっ、この手は……!)
……頬杖を付きながら頭脳をフル回転させていたのだが、ふと案が浮かんだ。
しかし……これを姉さんが受け入れるとは到底思えないのだが……
「姉さん、一つアイデアが浮かんだ」
「何々?」
「たくさん食べるんだ。そしてちょっと太る」
「……えっ?」
キョトンとした姉の表情は、いつもとは違って年齢相応の女子高生にしか見えなかった。
さて、俺は説明に移るとしよう。
「姉さんは容姿端麗すぎる。もし俺が他人なら声さえ掛けれない程だ。
あまりにもレベルが高いからみんな敬遠してしまう」
「……そう、かな……」
少し頬を染めて照れている姉さんを見て、ちょっとかわいいと思ってしまった。
しかし今は説明に集中することにしよう。
「だから、敢えて『お茶目な一面』というのを作るべきだと思う。
お菓子を我慢できずにバクバク食べてしまったり、
太るのを承知で美味しいものをいっぱい食べてしまう女子っているだろう。
姉さんみたいな人がそんな一面を持ってたら、ハードルが下がるんじゃないか?
そしてちょっとぽっちゃりした見た目になった方が、雰囲気だって丸くなると思う」
……本当に『取りあえず出してみました』という程度の稚拙な発想だが。
今まで太ったことも無く、自己管理も問題ない姉さんがこんな案を受け入れるとは思えない。
しかし……もし本当に姉がそんな風になったら……
あの完璧に近いスタイルの姉さんが、ムッチリした贅肉が付いて弛んだだらしない体型に……
そう思うと、何故だか心が高揚してくるのを感じる。
別に姉は嫌いではないのだが……これは一体どういう心境なのだろう……
「……賢汰?」
「ね、姉さん!?」
俺は心ここに在らずと言う感じだったらしい。
自分の世界に入ってしまってちょっと申し訳なく感じる。
「……さっきの提案だけど……いいよ」
「……ええっ!?」
ちょっと待て、本当にそれでいいのか?
絶対断ると思ってたんだが?
その高性能な神経回路の下した結論が、まさかの『OK』だったとは……
「貴方の言う通りだと思う。
私としては特段気に留めてなかったけど、外見が原因で近寄り難いというのは正しい気がする。
ちょっと太って雰囲気を丸くすること、それと甘い物を食べたりする姿を見せること……
実践すれば、今よりは普通の女子高生に変化できるかもしれない。
じゃあ今から始めよう」
「い、今から!?」
「早い方がいいでしょ?まずは甘い物を沢山食べる訓練から開始しないと」
……決断したら行動が早いのも姉の特徴だ。
即決にも程があるとは思うのだが……まあ気にしなくて良いか。
……そういやこの家ってお菓子とかあまりないんだけど。
「分かった、今からお菓子とかサイダーとか買いに行こう!」
「よろしく」
……
俺たちは近所のケーキ屋やスーパーに行き、色々なものを買ってきた。
ケーキやシュークリーム、スナック菓子やチョコ菓子、あとサイダーにジュース……
端的に言えば太りそうな食品ばかりである。
「さっき食べたばかりだけど……ケーキを眺めていると不思議とお腹が空いてくるね……」
買ってきたケーキを見て、姉さんは顔を綻ばせていた。
普段はキリッとした表情をしているのだが、今は甘いもの好きな普通の女子って感じだ。
何だ、姉さんも他の女子高生と変わらないんだな。
そう思うと安心してきた。
「じゃあ、早速いただくとしようかな」
「サイダーも飲んでみたらどうだ?」
「なるほど、炭酸飲料も飲み慣れた方がいいね」
食べる準備を整えてから、姉さんはケーキを食べ始めた。
「甘い……!美味しい……!」
目をキラキラさせてフォークを動かす様子は微笑ましい光景とさえ言えるだろう。
普段の姉とは別人のような姿だな……
確かにこんな様子を学校で見せたら、一気に打ち解けそうな感じがする。
続いて、姉さんはサイダーのペットボトルのふたを開けてコップに注いだ。
「シュワシュワしてる……!」
そしてコップを口元に近づけ、ゴクゴクと飲んでいった。
「ちょっと舌への刺激が強い気がするけど、美味しい。
また明日も飲んでみたいね」
「また買っておこうか?」
「ああ、頼もうかな」
こんな感じで姉さんはあっという間に買ってきたケーキを食べ尽くし、サイダーもたくさん飲んだ。
「今の姿を学校で見せたら、きっとみんなが近寄りやすくなると思う」
「私もそう思うよ。明日から実践したいね。
……あと、多少太ることにも着手したいと思う。
どれぐらい体重を増やせばいいかは分からないけど……」
「まあ、俺が『そろそろ良いんじゃない?』って言うよ」
「ありがたいね、これからもよろしく」
「おう」
---
……という訳で、俺は姉さんのためにお菓子や飲料を大量に買うことになった。
いずれは自分で買ってほしいけど。
そして一緒に食べ放題のお店に行くこともスタートした。
最初は『これ以上食べるのは無理……』とすぐに根を上げていた姉も、少しずつ食べれる量が増えていった。
そして気付けばカレンダーも5月に変わり、ゴールデンウィークに突入している。
今日は一緒にカレーを食べに行っている。
姉さんはいつの間にかご飯も大盛にして注文するようになっていた。
「美味しいよね、このお店」
「うん」
ニコッと笑いながらカレーをどんどん食べる姉さん。
かつては固かった表情も少しずつ柔らかくなっている気がする。
……柔らかくなっているのは表情だけでは無かった。
(姉さん、着実に太ってきてるな)
カウンター席に並んで座っている関係で、様子を少し伺うことができる。
ほっそりした頬は気付けば健康的な丸みを帯び、顎も柔らかいお肉が少しずつ蓄積されてきた。
胸も一回りは大きくなったらしく、以前よりも服を押し上げて強く主張するように。
その下のお腹も座ってるからかポッコリと少し出ていて、服がキツそうな感じもする。
スカートから出ている太ももは『スラッと』というより『ムチッと』と形容するべきだろうか。
明らかに3~4キロ程度では済まない増量を果たした姉さんを見て、俺の心は高鳴った。
そう、思ってた以上に姉はよく食べるのである。
今まで小食気味だったのが嘘みたいに、お菓子もご飯もいっぱい食べてゆく。
もしかするとこれが本来の姉の姿なのかもしれないが、それは分からない。
いずれにせよ、俺の提案のせいでほとんど完璧と言える姿をしていた姉さんが、どんどん太ってしまっている。
当然今でもかなりの容貌ではあるが、ぽっちゃりした感じは否めない。
その上よく食べるから、以前のような近寄り難い美人さんという雰囲気はすっかり失われている。
だが、それこそが姉さんの狙いだから何の問題も無い。
「姉さん、最近学校はどう?周りはどんな反応?」
「あー、食べてる事ね。
前よりもみんなとお喋りしやすくなったかも」
「そう、だったら良かった」
「みんなともっと仲良くなれた気がするし……
あと、美味しいものを色々知って食べるのは面白いね」
「良い事だ」
姉さんは自分の変化にどちらかと言えば喜んでいるらしい。
しかし……これ以上は太らない方が良いだろう。
この辺で止めといた方が良い。『そろそろ良いんじゃない?』と言って。
俺はきっと、今このタイミングでストップを掛けるべきなのだろう。
だが……ぽっちゃりした姉さんって、結構可愛く感じるんだよな。
もっと太ってもいいんじゃないかとか……思ってしまう自分がいる。
……自分から話を切り出すまで、放っておくか。
ああ、自分の食欲のままに食べまくって肥満になった姉さんの姿が脳裏に浮かぶ。
……見てみたいという好奇心が、止めたいという冷静な思考を妨げた。
---
姉さんがたくさん食べるようになって2カ月位が経過しただろうか。
梅雨の季節に差し掛かり、雨の予報も多くなってきた。
今日も天気が崩れて午後からはそこそこの雨が降りそうだ。
雨が降ろうが、関係なく登校しなくちゃいけない。
俺は憂鬱な気分になりつつも、いつも通り朝の支度を終えたのだが……
「ふんっ、何故……!
入らない……!」
姉さんの声が部屋の中から飛び出している。
何が『入らない』のかは明白だ。
「キッツい……スカート……!
ぐぬぅ……!」
そう、太ったせいで制服のスカートが中々入らなくなってしまった。
少し前からホックを閉めるのがキツそうな感じになっており、今はかなり無理やり押し込んでる状態だろう。
成績優秀な秀才が発したとは思えぬ音声が、扉越しに次々と聞こえて来た。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……!あと少しだから……!
えい……!……ダメだ……」
少しの間静寂が辺りを包み、それから扉が開いた。
果たしてちゃんと制服は着れたのだろうか。
出て来た姉さんのスカートを見ると、ホックを留める代わりに安全ピンで強引に穿いていた。
とうとうまともに穿くのは諦めたらしい。
(姉さんもとうとう肥満の領域か……)
無理やり穿いたスカートが食い込み、スカートの縁の上にはウエストの贅肉の段が乗っかっている。
ブラウスもパツパツになっていて、せり出したお腹のラインがハッキリと分かってしまう。
お腹の上方に位置する胸も相当大きくなり、ボタンが弾けそうな程にピッチピチである。
バストの自己主張はより強さを増し、うっすら透けたブラと相まってかなり刺激的になった。
スカートに包まれたお尻も見るからに大きくなってるし、その下から覗く太ももはムチムチとしっかり太くなった。
凛としていたはずの顔立ちは、現れつつある二重顎と丸い頬のせいで今では印象がかなり変わっている。
これでも、元が美人だからまだまだかわいい部類ではあるが……
以前の姉を知っている人からすれば別人に見えるかもしれない。
今でも十分太り過ぎなのだが……姉さんはいつになったら痩せたいと言い出すのだろう。
まさか俺がストップするまでお菓子を食べる量を増やし続けるつもりなんじゃ……
しかし、幾らなんでも自分で太りたくないとは思うんじゃないだろうか。
まあいい。こんなにだらしなく太った姉さんを見れて俺は嬉しいよ。
ひょっとして……俺はデブが好みなのか……?
いやいや……そんなはずはない。だけど……急速に太っていく姉を見て、もっと太った姿を求めてしまう。
……まだ放っておくか。
でも、既に当初の目的は達成されているはずなんだけどな……
『たくさん食べる』、『ちょっと太る』、どちらもクリアしている。
もしや、解き放たれた食欲の制御が効かなくなってるんじゃ……
---
あれから更に時間は流れ、梅雨の季節も過ぎてしまった。
今は本格的に到来した猛暑に耐える日々が続いている。
夏と言えばプールだ。
いよいよプールの授業が今日から始まる。
(おっ、2年がプールに上がっていってるな)
俺は教室を移動するために歩いていたのだが、偶々プールの近くを通ったら水着姿の2年生たちと遭遇した。
水着を着た女子の姿も当然視界に入るけど、あんまりジロジロ見ないようにしないと……って。
(あれ、姉さん……?)
周りの女子たちと比べて、明らかに2周りは大きな図体をした女子がいる。それが俺の姉だ。
……弟なのに、一瞬本当にあれが姉さんなのかと目を疑ってしまった。
顔はほっそりしていたのが嘘みたいに膨れ、すっかりと丸顔になっている。
二重顎も明らかに形成されていて、かつての繊細な美しさはどこへやらという感じだ。
今でも美しさやかわいさは感じるが、もう高嶺の花の美人という評価はできないだろう。
水着だからか、丸々と大きく突き出したお腹のラインがそのまま現れてかなり目立っている。
その上の胸はかなりデカくなり、無理に詰め込んでるのか水着が破れそうな程だ。
歩く度にプルンプルンと弾んでいて、クラスメートは目のやり場に困るだろうな。
水着ということで脚は全部見えており、弛んだ贅肉で包まれた太ももは周りの倍ぐらいの太さはある。
お尻の丸みも丸わかりで、でっかく突き出たヒップがブルブル揺れている。
姉さんは一瞬こっちを見たが、目を合わせようとせずにさっさと通り過ぎてしまった。
しかも急に歩くスピードを上げて。
後ろを振り返ると、お尻を更に大きく揺らしながら速足で進んでいく姉の姿が見えた。
……すっかり、デブになってしまったなぁ。
他の水着の女子と比べたらこうも太いのか。
しかし、こんな姿の姉を見るのも……中々悪くない。
……俺は何を考えているんだろう。
……
「賢汰……私の水着姿見てたよね?」
「えっと、そ、そうだけど……」
姉が帰宅して早々に、俺は姉さんの部屋に呼び出された。
……姉さんの顔は真っ赤である。
「どうやら私は相当な『デブ』になってしまったらしい。
周りからも『太ったよね』と言われるし、水着姿はかなりジロジロと見られた。
……こんなに恥ずかしいと思ったのは生まれて初めてかもしれない……
貴方にもかなりじっくり観察された訳だからね。今の私は注目を浴びる程の肥満なんだろう」
敢えて冷静に自己分析をしている姉さんだが、焦燥感が溢れんばかりだ。
自分を落ち着かせるためにこんな風に言っているのかもしれない。
「しかし、お菓子も毎日クラスで沢山食べて……友達と一緒に食べ放題のお店も行って……
周りと距離を縮めることに成功したのは間違いないはずなんだよ。
今では女子だけでなく、男子とも気軽に話せるようになった程だから」
あー、男子からは『近寄れない美しい姫君』みたいな扱いだったからなぁ。
今は『近所のおばちゃん』ぐらいだろうか?
「そして、かつての細い可憐な姿を捨て去ることで……より親しみやすい姿に変化できたはず。
けれども……度が越していたと思う。
『太ったことで周りに受け入れてもらえた』と思って、ますます食べる量が増えていって……
とっくの昔に「ちょっと太る」という目標は達成していたのに、自分でも不思議なほどに食生活は堕落の一途を辿って行った……
賢汰はまだ『そろそろ良いんじゃない?』って言ってない、と言い訳して……
食欲のブレーキはまともに効いていない」
……流石に分析自体はかなり冷静沈着であり、姉さんらしい。
だが、終始顔を紅潮させながら話しているのを見る限りでは、かなり感情を抑え込んでいるように見える。
「賢汰、ハッキリ断言してほしい。今の私は太り過ぎか、食べ過ぎか……」
姉さんはそう言って、こっちを見つめて来た。
これは正直に伝えるしかないだろう。
「ああ、太り過ぎで食べ過ぎだ。
だけど……この状況を止めなかった俺が悪い」
「……そんなことは無いよ。
常識的に判断すれば、ゴールデンウィーク辺りで体重と食事量を増加させるのを中断すべきだった。
それを闇雲に食べ続けてブクブクと肥えた私に問題がある。
……正直、こんなに……情けない身体になるとは思ってなかった」
そう言って、半泣きになりながらお腹の贅肉を掴む姉さん。
シャツからはみ出したおへそ周りの肉が指に捕らえられ、もにゅもにゅと形が変わっていく。
「……賢汰、姉さんからの頼み事があるんだけど……
どうやったらダイエットできるかを教えて欲しい。そして自分だけでは対処不可能だから手伝ってくれたら有難いね。
代わりに勉強を教えてあげるから……どうだろう。
力を貸してくれないかな」
「おう、手伝うに決まってるよ。姉さん」
こんなに弱気な姉の姿は見たことがないかもしれない……
そして、俺の方が優位に立っているという場面も……
長年感じていた劣等感が、今薄まってきたのを実感する。
そして、姉さんが太った姿を見るのが愉しくて、気持ちが高ぶるというのも事実らしい……
このまま太っても良いんだけど……
いや、痩せたいと言ってるんだから協力してあげないとな。
---
夏休みの中盤に差し掛かっているこの頃。
姉さんのダイエットが始まってから1カ月は経っただろうか。
成績優秀で合理的な判断の出来る姉にとって、計画的な減量などお茶の子さいさい……
なんてことは無かった。
「姉さん?」
「ひゃ……!ノックしてよ……!」
「それはごめん。
ところで、またポテチ買ったの?」
姉さんの部屋にノックせずにいきなり入ってみたら、期間限定のポテチを頬張っている姉の姿があった。
ダイエットを頑張っている風には全く見えない。
「い、いやこれは……違うんだ。
『美味しいから食べて』と友達に貰ったのであって、自分では買ってないから……」
そんな風に言い訳をしながらも、姉さんの手は袋の中に伸びては口にポテチを放り込み続けている。
「ダイエットしてたんじゃなかったの?」
「ううっ、賢汰、この姿は見なかったことにしてほしい……」
「俺が見逃したところで、また脂肪が増えてしまったという事実は変わらないけど」
「そ、それはそうだよね。分かってる。分かってはいるんだ。
でもついつい食べてしまう……」
そう、姉さんはダイエットが全くできていない。
一度莫大に増えてしまった食欲を抑え込むのが困難らしく、中々食事量を戻すことができないようだ。
何か月間もお菓子漬け、大食漬けになった姉さんの身体は、ひたすらに食べ物を求めて脂肪を増やし続けていた。
「今何kgあるんだよ」
「……89kg……だけど」
「マジかよ、俺よりも20kg以上重いぞ」
「う、嘘でしょ!?
男の貴方よりも私の方が遥かに重いって言うの!?
どうしよう、本当に凄く太ってる!」
姉にとっては意外な事実だったらしく、取り乱しているが……
別に見た目からしてかなりのデブなんだから、そこまで驚くような話かとは思う。
(……姉さん、太ったなぁ)
改めて姉の姿を見つめてみると、かつてクールだったとは思えない程ホットになっている。
……当然、物理的な意味で。
部屋は冷房が効いてるはずなのに、姉さんの顔と身体には汗がダラダラと大量に流れていた。
汗だくの顔は丸みを増して、二重顎は首という存在を覆いつつある。
ぱっちりと大きく開いていたはずの眼は、若干ではあるが頬に邪魔されて細くなってしまった。
顔もデブそのものだが、上半身も下半身もすっかり太くなっている。
二の腕は太もも並みの太さになり、贅肉がたぷんと頻繁に震えてしまう。
胸は思いっきり膨らみ、Hカップはありそうな巨大すぎるバストに育っていた。
だが着けれるブラを持って無いらしく、下着という支えを失った二つのスイカは重力に負けて垂れ気味になっている。
着ているキャミソールがはち切れそうだし、普通に歩いてるだけでもゆっさゆっさと勢い良く揺れまくってて……
かつてはしっかりと膨らみはあっても品のあるバストだったのにな。
そんなバストをも上回るインパクトを持つのが、まさしく太鼓腹となった腹回りである。
キャミソールを捲り上げて堂々と顔を見せており、貫禄さえ感じる程だ。
太鼓腹とは言うが、実際にはもっちりと柔らかい皮下脂肪ばっかりで構成されている。
この間触らせてもらった時は、もう感触が心地よくて……
時を忘れる程に夢中になってしまい、『もういいでしょ!』と怒られるまでお腹から手を離さなかった。
まあ、本人からすればこんなに腹が出っ張ってるのは溜まったものではないだろう。
そしてお尻と脚も上半身と張り合うかのように太さを増していた。
ヒップはスカート越しだろうが何だろうが、大きく突き出ているのがよく分かる。
でっぷりしたウエストとムッチムチのヒップに必死に耐えるスカートが可哀そうに見えてくるな……
丈の短いスカートからはこれでもかとぶっとくなった太ももが伸びている。
両脚に隙間は無く、歩く度に擦れ合ってブルンと脂肪が震えている様子が容易に観察可能だ。
どこからどう見ても肥満体型な姉さん……
何も弱点が無くて、どんなことでも失敗せずにそつなくこなす、クールでかわいい才女だったはずなのに……
こうなったのも、俺の提案が原因である。
申し訳ないという気持ちもあるが、こんな立派なデブになったのも……嬉しい。
太った姉さんを見ると、心がとても……何だろう、この感情は……
まあ、とにかく俺の姉はデブになったという訳だ。
「ね、姉さん……いい加減服とか買い替えた方が……」
「いや、決して面倒に思ってる訳じゃないんだよ。
私は『服を買い替えたら油断して更に太る』という罠に陥りたくないだけなんだ。
それにダイエットしたらサイズの大きな服など無用の長物でしかな……」
「ダイエット出来てないだろ」
「む、むぅ……うるさい……なぁ……」
ムスッとしてる姿が小さい子供みたいでかわいい。
だが、実際問題買い替えた方がいいとは思うが。
ブラは着けれない、キャミソールは腹がほとんどハミ出る、
そしてスカートはそろそろお尻を包み切れなくなってきた……
こんな格好で外を出歩くのは恥ずかしくないのだろうか。
「恥ずかしいだろ、そんなんじゃ」
「は、恥ずかしいよ……!スカートだって、その……手で押さえてるし……!
ショーツ見えてるんじゃないかって、冷や冷やしながら歩いてるんだから……!
視線だってかなり感じてるし……!でも買い替えたら負けな気がして!」
「もうとっくに『負け』なんだが」
「……そうだよね」
姉さんの顔はすっかり赤く染まっている。
それは暑いからだけではなく、羞恥の感情に由来する所が大きいだろう。
「まさか私が……体型の自己管理も出来なくなってるなんて……
情けない。でもこれ以上は太らないようにしたいと思ってる……」
「ああ、そうしないとな。
でも姉さんならきっといつか痩せれるよ。元々は細身だったんだから大丈夫」
俺はそう言いながら、姉の肩をポンと叩いた。
まるで、こっちの方が年上になった気分である。
「ありがとう、賢汰……
姉さん、諦めずに努力するよ」
「その意気だ」
……俺が終始優位に立っている。
かつて感じていた劣等感とやらは、もうどこかに逃走したような気がした。
---
俺の姉は昔から頭の回転が速く、秀才だと褒められていた。
今でも勉強はよく出来るし、成績も学年トップにまで上り詰めている。
きっとこの調子で名門大学に進学するのだろう。
まさしくエリートさんである。
「け、賢汰!
ちょっと助けて!」
「どうしたんだよ
……って、ああ……」
そんな秀才が、夏休み太りのせいでスカートを穿くことに四苦八苦している。
……実にヘンテコな光景だな。
結局、姉さんは大食家にすこぶる向いていたらしい。
定着した大食の習慣は自分の理性ではどうにもできず、『食べたい』という感情に負け続ける状況だ。
とうとう夏休みの間に1日も痩せることは無く、気付けば96kgという体重になっていた。
……当初の「ちょっと太る」という目標とはかけ離れた状態だ。
だけど、これぐらいダメダメな感じの方がいいのかもしれない。
「ホック届かないから!引っ張って!」
「いや無理だろ!何センチも離れてるぞ!」
「どうしたらいいの!?」
「えっと、俺に聞かれても……
あっ、ヘアゴムと安全ピンで何とかなるんじゃないか?」
「……そういうことね!今から試してみる!」
ドスドスと床を揺らしながら部屋に入っていった姉さん。
これが華奢で近づき難い美人だったとは想像もできないだろう。
顔自体は元々良いから今でもかわいいけどな……
少し経ってから、また重い足音を立てて姉さんが戻って来た。
「ふぅ、何とか穿けた!
早く学校に行こう!」
姉のウエストに目線を落としてみると、伸びたヘアゴムがスカートの両端を繋ぎとめていた。
辛うじてスカートが穿けている状態だが、ファスナーもほとんど開いててかなり情けない感じだな……
これでも一度買い替えてるはずなんだけど。
「おう、早く歩かないと遅刻するかもな。
姉さんは歩くのが遅いから。始業式の日に遅れるのは恥ずかしいぞ?」
「一言も二言も多い!さっさと行くよ!」
「あはは」
……
「今日はクラスの子と一緒に晩ご飯を食べる予定なんだよね」
電車の中で、姉さんが急に話しかけてきた。
「良かったな」
「良かったって?いつものことだけど……」
「いや、みんなと仲良くなれたってことだろ?」
「……そうだね、私も変われたってことかな。
ありがとう、賢汰」
「……どういたしまして」
……俺の提案は、決して適切でも最良でも無かっただろう。
結果として姉さんは100kg近いデブになってしまったのだから。
だが、何だか今の姉は親しみやすくなった気がする。
食欲に勝てずダイエットに失敗するなんて、何ともかわいらしい。
それにこんなに太った姿もこれはこれで魅力的……
まあ、とにかく悪くは無かったということだ。
「……ダイエット、これからも手伝って」
「分かってる」
……ただし、問題が一つある。
どうやったら……姉さんの体重増加を止めれるのかが、分からないということだ。
一応は手伝っているのだが、本人が全然努力できてないからな……
……まあ、分からなくてもいいか。
痩せれないところがかわいいし、何ならもっと太った姿も見てみたいからな……なんてね。
(END)