太る可能性が100%と判定された女子高生の話(4)
Added 2022-11-28 16:44:49 +0000 UTC[4] そろそろ11月でやっと過ごしやすい気候になってきた。 そして運動もしやすいダイエット日和が続いている。 でも……中々痩せないんだよね。 「はぁ、ふぅ、はぁ……」 「頑張ろう、藍璃!」 「うん……」 放課後、智里と一緒に校庭の周りを走ったりしてるけど……やっぱり身体が重い。 贅肉がたぷたぷ揺れ、太ももが擦れ、胸が邪魔してくるのが辛い。 それでも一応続けてはいる。でも雀の涙程度しか脂肪を燃やせていないと思う。 ちなみに隣を走っている智里も実は少し太ってきている。 どうも私が美味しそうにお菓子を食べるのを見過ぎて食欲が増えたらしい。 ウエストにも贅肉が付いてちょっと弛んだ体型になっている。 だからダイエットに協力すると言うよりは一緒にダイエットするという感じ。 でも……私なんかよりもずっと痩せてるし、服を着てたら大して分からないレベルだけど。 当然向こうの方が走るのはずっと早く、息切れすることも無い。 私のペースに合わせてるから智里のダイエットにはなってない気がするよ。 運動が終わってから、私たちは体操服から制服に着替えた。 「藍璃、今何kgあるの?」 「81kg……これでも前よりは3kg減ってるから……」 「良かったね、少しづつ減ってて。 私はうっかり食べ過ぎてダイエット中なのに2kg太っちゃった」 「元が大して太ってないから……大丈夫だよ」 確かにダイエット中に2kg太るのは問題だけど…… 今の私よりも20kg以上軽いんだから別に気にするほどじゃないと思う。 実際着替えている際に見た時もウエストの括れはあったし、ちょっとおへそ周りにお肉が付いてる程度でしかない。 二の腕がプニプニしてるのを気にしてるみたいだけど、私なんてブヨブヨに弛み切ってるから。 あの白衣の男性が「今日体重がピークでそのあと減少する」って言ってたけど、まあ正しかった。 高精度?らしいから、あの機械は。 でも減り方はゆっくりしたもので、2カ月で3kg減っただけ。 こんなものかもしれないけど……体重が35kgも増えちゃってるから…… 元の体型に戻るにはこのペースだと2年は掛かりそう。 それにしても……走ってる時の私はみっともないよね…… 隣にいる智里は普通に走ってるのに、私は呼吸が乱れてて、汗をたくさんかいてるし…… 体操服はきつくてパツパツで、脂肪が盛大に揺れて何とも情けない。 こんなダイエットも嫌になってくる。けど諦めたら100kgまで一直線。 あの時……『あなたの太る可能性は100%です』って紙を貰った時に…… 本当に真面目に考えてたら良かった。 終わりの見えないダイエットにため息しか出ない。 「藍璃、大丈夫?」 「ごめん……智里、大丈夫だから……」 暗い顔をし過ぎたのかも。心配されてしまった。 「一緒に頑張ろうよ、ダイエット」 「ありがとう……」 この子みたいな友達がいてくれて良かったよ。 ただ、きっと智里の方がすぐに元の体型に戻れると思うけど。 私は学校帰りにまた例の施設の前に来た。 特に誰もいないだろうな、と思って中を覗くと一人の女子高生がいる。 「(一体どうしたんだろう……)」 そう思って中に入って見たら…… 女子高生が白衣の男性に詰め寄っている。 「あなたはこの街の女子たちに太る液体を飲ませたそうですね?」 「そんな事実はありません……」 目線を逸らしながら白衣の人は言う。 でもこの女子高生は言葉を続けようとする。 「いいや、証拠は揃ってますよ!しらを切らないでください!」 「そ、それは……」 ……あれ、もしかして。 私が太ったのも……? 「すみません……」 「な、何ですかこんな時に!」 男性の言うことを無視して、その女子高生に話しかけてみる。 「その話って……本当なんですか……?」 「そうです!あなたも被害者?」 「えっと……多分……」 私がそう言うと、白衣の人がうなだれた。 そして女子高生の方を向いてゆっくり口を開く。 「……もう観念するしかありませんね。私がやりました。 これもテクノロジーの発展に必要不可欠なのですが……やり方がまずかった」 「認めましたね。ではまずこの子に謝りなさい」 「実は測定前、特殊な水を飲ませて体質を変えていました。だからあんな結果になったんです。 太るに決まってるのです。勝手なことをして、申し訳ない……」 「えっと……そうなんですか……?」 「はい……機械の精度自体は確かなのですが……お客様の食欲のブレーキをちょっと弄りまして……」 「そんなこと……できるんですね……」 何だか話が急展開でよく分からない。 でも、この人が私を太るように仕組んだらしいことは分かる。 本当だったら最悪。ただ、この白衣の人自体はそこまで悪意があるようには見えない。 今怒りをぶつけるよりも…… 「だったら……痩せる水でも飲ませてください!」 「できます!それも開発してます!だから今回は見逃してください!どうか!」 深々と頭を下げる男性。 そしてその様子を訝しそうに眺めている女子高生。 その両者の近くに置かれている謎の機械。 異様な空間だった。 「分かりました……元に戻れるなら……許します」 「……こんないい子で良かったですね、全く! 他に後何人にこんなことをしたんですか?」 「2人にも似たようなことを……連絡先は分かります。万一の時に控えていますから」 「すぐに連絡して謝罪しに行きなさい、あと痩せる水も持って来るように!」 「はい……取りに行きます……」 そう言ってから、白衣の人は奥にある棚まで行った。 「ありがとうございます……」 「いえいえ!全然礼には及びませんよ!」 ところで、この人は誰なんだろう? 大人の男性相手にもかなり強気で、しかも証拠も揃えてるとか言ってたし…… 「何者なんですか?」 「私?私は函伊綾音と言います。あなたの名前は?」 「豊佐藍璃(とよさ あいり)です……」 「私は単なる女子高生ですよ。藍璃さんと同じ」 「そうですか……」 年齢は多分あまり変わらないのに、とてもしっかりしている。 それに雰囲気もただ物ではない感じ。 そんなことを思ってたら白衣の人が戻って来た。 「これが食欲を抑え、脂肪を消費しやすくして痩せさせる水です。 今飲むだけで体質がすぐに変わります!」 差し出された水を私はすぐに飲んだ。 「……ありがとう……ございます」 私たちは全員、建物から出た。 「じゃあ、次また会う日まで!お元気で!」 「はい、お元気で」 綾音さんはそう言ってから、白衣の人の傍に行く。 「今日はずっと見張っておきますからね!早く次に行きなさい!」 「はいっ!」 男の人が女子高生にビクビクしている様子を見ると、何だか面白い。 結局綾音さんの正体は分からなかったけど、とにかくこれで良かった……のかな。 --- 結局私は痩せる水を飲んでから、2カ月もしない内に一気に痩せた。びっくりするぐらい急激に。 54kgまで減っていて、あとちょっとで前の体型に戻れる程。 『痩せる可能性が100%』というのも、ある意味合ってたのかな。 「智里、一緒にダイエット頑張ろう!」 「そうだね!」 今日も放課後、二人で一緒に走ることにしたのだった。 ……そういや智里、何だか先月よりも太ってる気がするような?まあいいや。 [END]