大きな集落が妖怪の樹々と共に暮らしていた。
人々は贄として集落の者の命を樹々に捧げる代わりに、実りや知恵を得て生きていた。
しかし時代の変化に伴い、また人々が自立し始めたことで、樹々への信仰心は薄れ、恐怖と不満とが膨れ上がるようになり、集落を出て行くものが続出した。
樹々を支える贄の家庭は減っていき、ついに最後のひとつとなった。集落の衰退に見切りをつけた樹々も各地へ散逸し、残り十本となっていた。
先日、養子(ようこ)の祖母、妹、そして母親が贄として身を差し出した。
養子はその代わりに樹から食物を得た。
贄となる人間は養子が最後の一人だ。樹々は秘密裏に話し合いを進めていた。どうせ滅びるならば、養子はこのまま人の世界へ返すべきだ。いや、今更人の世に戻しても仕方ない、我々で責任をもってこの子を食べるべきだ。
何も知らぬ養子はただ自分が養分になる日を待っている。ついに食料も尽きたある日、妖怪の樹々たちが出した結論とは。