霞がかった意識に徐々に輪郭が戻ってくる。
四肢に力を入れてみると、動く。
どうやら拘束はされてないようだ。
前後の記憶の整理がつき、現状の確認をすべく瞼を開けると、広い空間が視界に開けた。
日の光の届かない地下の、しかし自然に存在しえない細工の施された柱と壁面と彫像が、規則的に並ぶ灯篭に照らし出される。
どこか歴史を感じさせる祭壇。それが第一印象だ。
上半身を起こす。やはり全裸のままだ。
アンも、システィナも、不動遼子も、姿が見えない。
三人は無事なのだろうか。
今のところ妖魔の姿も見えず、即座に襲われる気配もなさそうだ。
クレオは、招き寄せられるように灯篭の導く先に歩いていく。
予想が正しければ、ここは〝百鬼殿”の深部。
であるならば、この先にいるのは…。
「よくぞ参った。外つ国の退魔師よ」
圧倒的な妖気を放って、〝奴”はいた。
配下の一体も侍らせずに、この百鬼殿の…いや、東京に巣食う全ての妖魔の主「幽良蛇真」が、クレオ一人を出迎えていた。
階段を昇った先の玉座より見降ろしてくる。
その高低差がそのまま彼我の立場を暗示しているかのようだ。
意を決して、クレオは一歩一歩と諦めていく。
「他の皆はどうしましたの?」
「あの者らか。知ってどうなるものでもあるまい?」
「………」わたくしをこの広間から出す気はないと、そういうことですのね。
「…なぜ、わたくしだけを?」
「理由か。そなたは人間の退魔師の組織の中で長たる者と聞き及んでいる。ならば、同じく妖魔を統べる我が自らその身を召してやろうと思うたのよ。戯れにな」
「ッッふふッ戯れですの…?皮肉なものですわね!その戯れで貴方は滅ぶのだから!」
「!」蛇真の眉が吊り上がる。
クレオはここまで無策で歩いてきたわけではない。
残された霊力の全てを注いで詠唱を終わらせ、いつでも召喚できる状態でいたのだ。
そう、自らが呼び出せる最上位の天使を!
一時の契約の証として、クレオの髪が金へと染まる。
宙に出現した輝く門から荘厳な姿を持った、明らかに先の戦いで呼び出したそれより高い力を内包した騎士が降臨し、一瞬で蛇真の振るった扇で両断された。
「…え……?」
目の前の光景を、最後の切り札が光の粒となって霧散していく様を、呆けて見ていた。
やがて理解が追いつくと、クレオは絶望と共に膝から崩れ落ちる。
傍らに寄り、見降ろしてくる蛇真の表情には憤怒が滲んでいた。
「この期に及んでまだ弓を引こうとは…興醒めだ。早々に終わらせてくれようぞ」
荒々しくクレオの両脚を掴み、開帳された性器へ、蛇真はその名の如く自在にうねる太き肉棒を突き入れた。
ズグ…ズググッ…グボォッッ!
「ぐゥ…ッ…アッ!?あががッひぎぃぃアアッ!!」
クレオのあげる悲鳴は、レイプをされる者の叫びではなく、より悍ましい行為の産物である。
それもそのはずだ。蛇真が打ちつけるたび、亀頭の抉る深度は上がっていく。
一度目は膣内まで、二度目は子宮口を貫き、三度目ではその奥を叩き、腹部を盛り上げた。
ズグググッ「ほごぉォッガハァッ!!」
四度目にて、内より引き起こされる隆起は彼女の正中線上を胸のすぐ下まで達し、そして五度目が叩きつけられ…
ズボォッ「ご…ッ………ッ!!!…ォ…ッゴボガボゴボッ」
肉創はクレオのマンコから口までを突き抜けた。
串挿しの刑、ここに相成る。
哀れな騎士団長は大量の泡を吹き、病的に痙攣しながら、次第に熱を失っていった。
引き抜かれたクレオの亡骸は、肉体を朽ちさせぬ術を施されて飾られる。
そこには、過去に妖魔との戦いに敗れ、壊滅していった組織の長たちが物言わずに並んでいた…。
「…ん…?…ふぇ…団長?」
混濁した意識の中、アンはクレオの声を聞いた気がした。
別れを告げる、不吉な言葉だった。
「何…ここ?」
目を醒ますと、薄暗い冷えた地下洞。
身体を探ると、一糸纏わぬ姿にされていた。
よく見れば体型がおかしい。
スレンダーを自負していたボディラインが、腹部を膨らませて台無しになっている。
「うぷッ!?」
突然の吐き気に見舞われ、胃からこみ上げるものを激しく床にブチまけると、それは大量の精液だった。
思い出したくもない惨状が突きつけられる。
だがアンには、オークの輪姦劇も、魔人との戦いも、漁村での敗北と救いも、修道騎士見習いとしてクレオにしごかれた日々も、幼き日の立志も、思い返す時間は残されてはいなかった。
ザザザザザ…
据えた臭いに惹かれて、地下洞の〝住民”が這い寄ってきた。
「…?…なん…です?…何か…います?」
巨大なものではない。
それはすぐ近くにまで気配を感じながらも未だ視認できないからだ。
その一つが指先に触れたときに初めて、悍ましき正体をアンは知る。
「ひッ!?」
カサカサと這い回るそいつらは、この百鬼殿の中でも最も低俗な蟲型の妖魔だった。
本能に従い這いずるだけで、最低限の命令さえも覚えられない扱いの困るそれらは、持て余されてこの地下洞に飼育されていた。
そんな空間にアンは放り込まれたのだ。
数えることすら困難な数に囲まれている事実を知り、アンの瞳が絶望に揺れる。
「たす…たすけ…わぁあァああアアアアッッ!!ふがもごぼッ!?…ッ…ッ!!………」
数百、数千の蟲が一斉にアンの身体を覆い尽くし、或いは穴という穴に身を潜り込ませていく。
「ンン…ッ…ッッ……!!……… 」
子宮と腸内を埋め尽くして中で一匹一匹が統一性なく蠢きまわり、喉の奥までもミッチリと塞がれ、断末魔の声さえもあげられないまま、アンの身体は光も届かぬ地の底で、蟲の織り成す黒い波の中に消えていった…。
「う…?」
地面が遠い…。
前が破れてるけど、ライダースーツも着てる。
まだあの巨人に犯されてるのか…?
両腕両脚を肉の縄で吊られた遼子の視界には、こちらを眺める幾千もの低級妖魔。
瞳に下劣な獣欲を滲ませながらも襲い来る気配がなく、彼我の距離も過分にある。
ホールと呼ぶに相応しい広大な空間。
遼子の身体を支える縄を結んだ二本の柱、それが突き立つ10メートル四方ほどの台座と、低級妖魔の居並ぶ斜面の間は溝で隔絶されている。
「………ッ」
説明されなくても理解できる。
これは処刑場だ!
何もかも、あの時に似てやがる!
憎悪と、わずかな恐怖を含んだ遼子の視線の先には、処刑人たる五体の妖魔が下卑た笑みを浮かべていた。
そう、〝五体”だ。
遼子と斬り結んだ黒いゴブリン。
不定形の白い粘液。
遼子を犯して失神にまで追い込んだ巨人。
…さらに、人を楽々と飲み込めるサイズのワーム型の異形。
遼子はすぐに得心した。漁村で哀れな少女の肉体から生まれ出たアレの、元締めに違いない、と。
そして五体目…。
奇妙だった。
矮小な体格のそいつは、感じる妖力の乏しさからも明らかに他の四体と並ぶに場違いに思われた。
他の妖魔にへりくだりながらも、中心になって何かを話してる様が、この場を仕切っているのがそいつだと示している。
名はマシラ。遼子には初見だった。
奴を知る者であれば、この処刑がそいつの発案で組まれた悪趣味な〝ショー”であると思い至ったことだろうが、知ると知らざるの間で大した意味は恐らくないだろう。
ワーム型が動き出し、遼子の真下に陣取ると、彼女を拘束する肉の縄がすべて外され、大きく開けられた口の中へと落下した。
「……くっ!!」わたしを捕食させる気か!?チクショウ!!
しかし、ワームは遼子を丸呑みにするでも、噛んで咀嚼するでもなく、下半身を咥え込むだけであった。
腕を縁に欠けて脱出を図るが、魔人に股間を脱臼させられてろくに動かない身では難しい。
ズンッ「ウッ!?」
視界の届かない妖魔の体内で、恐らくはワーム型の〝舌”にあたる器官がマンコへと捻じ込まれた。
女の秘所を無粋に嘗め回すソレは、すでに緩くなった子宮口を抜けて最も深いところでのたうち、遼子の腹部を歪ませる。
「あぐぐグ…ッくぅ…ッ!!このッ!このぉッ!」
動く両腕で頭部を殴りつけても、ぶよぶよと弾き返されて妖魔はまるで堪えない。
ズブッ「ひぅッ…ッ!!なにッ!?」
〝二本目”が遼子の中に侵入する。
生物の舌が一本などという常識は通じない。
一本目によって滑りがよくなった体内を易々と子宮内へと進み、暴れまわる。
より複雑にモコモコと変容する腹。苦悶は倍になる。
「くぁァアッ!!くそぉッ!!ぐ…そぉオオッ!!」
遼子の抵抗も激しさを増していく。
刀も薬もない、仲間もいない状況で、何ができるわけもない。
奇跡など訪れないこともとっくの昔に知った。あの夜に。
だからこそ、こいつらを屠るための牙を研ぎ続けてきたのに、結局巡って〝同じ場所”に戻ってしまった。
何の為に戦ってきたというのか…。
苦痛以上に身を焦がす以上の煩悶の情に、涙が溢れる。
打ちひしがれる遼子の姿を、妖魔どもが揃って嘲笑う。
三本目はライダースーツを穿って肛門へと捻じ込まれる。
腸を、胃を、喉を駆け上り、口から突き抜けると、まるで遼子の舌が長くなったようだ。
「おぼごッ!?ご……オ…ッッ!!
いよいよ声も出せなくなってくる。
全身を埋める舌が尋常ではない圧迫をもたらし、遼子の抵抗の質が変化する。
脱出を図るものでない。
少しでも苦痛を和らげようという、グロテスクな死の舞踏。
マシラが〝客席”に何か声をかけると、落胆した表情で座る低級妖魔の一団があったが、遼子に気づく余裕などない。
四本目がまた子宮に、五本目が肛門からまた口へと貫き、振るわれる彼女の両腕はもはやワームの身体を叩かず、狂ったように宙を掻くだけ。
挿入される数が増えるごとに、遼子の腹はミチミチと膨張していき、口からのたうつ舌の絡み合いも複雑になり、彼女の挙動から理性が薄れ、落胆と共に座る妖魔が増えていく。
身を引き裂くような激痛の中、遼子の視界が白い靄に包まれる。
妖魔たちの姿が掻き消え、苦痛までもが感じなくなった。
知っている場所だ。
夜ごとに訪れる機会が増えた、世界から隔離されたような、かつての基地を模した部屋。
わたしの格好もライダースーツではなく、特務部隊〝HEAT”の制服となり、ソファーに座っていた。
〝いつも通り”隣には藤崎が寄り添っていて、優しく笑いかけてくる。
わたしの前のテーブルには、あの日以来飲んでいないコーヒーが湯気をたてている。
「……?」
そろそろ何か言ってきそうな藤崎が、今日はずいぶん黙っている。
しかも、薄く透けていた彼女の身体が、はっきりと濃いものとなっていた。
「…え!?鷹山!那須!」
藤崎だけではない。ソファーの後ろには、不敵に笑う鷹山と、思慮い気遣いを感じる笑みを向ける那須の姿がある。
いや、彼女たちだけではない。
「副長…!アンソニー…川地…ボブ…皆…!」
第一小隊の全員が、わたしを囲っていた。
かつて幾度も見た悪夢のように爆ぜたりすることもなく、皆が優しげに笑っている。
…ああ、そうか。わかった…。わたしは、もう…。
「隊長」藤崎がやっと口を開いた。
彼女の言葉に頷き、わたしはコーヒーを手に取り、一息で飲み干した。
「藤崎…わたしは…」
「もう、いいんですよ。ゆっくり休んでください、不動さん」
いつものように膝を進めてくる藤崎に身を預け、力を抜いて目を瞑った。
「おやすみなさい」
「あぁ…おやすみ。少し…疲れたよ…」
部屋を覆う白い靄はせばまっていき、小隊の面々と鷹山と那須が散っていく。
ソファーも、藤崎も、最後に遼子自身も粒となって、彼女の意識は光の中に消えていった…。
マシラが制止の声を発し、ワーム型の動きが止まる。
妖魔の口から生えた遼子の肉体は、原型を辛うじて保っているものの、腹は破れる寸前まで歪に膨らみきり、口からも両の手で足りぬ数の舌がのたうっていた。
一体どれほどの質量を詰め込まれたのであろう。
しかし〝ある目的”のために、マシラは正確に把握しており、その数を高らかに告げると、観客席の一部が湧いた。
虚ろに濁った瞳。
完全に抜け殻となった遼子の肉体が地に降ろされると、先刻湧いていた数体のオークのグループが台座に上がってきた。
マシラの提案した娯楽。
哀れな退魔師が何本の挿入まで耐えられるか当てるという、残虐な〝遊び”だった。
ビットはなく、そして報酬は遼子の肉体。
下劣な妖魔たちにとって、人間の女は死体さえも陵辱の対象なのだ。
オークたちは遼子に群がり、ガバガバに広がりもはや収縮することもなくなった下半身の二穴と、半開きで固まった口、そして残されていた胸の孔へと思い思いに肉棒を突き入れ、反応のない彼女を貪った。
その狂宴は遼子の肉体が精液袋と化し、あらゆる孔から汚い白濁を溢れさせても、尚終わらない。
涙腺を通して目尻から零れ落ちる精液は、彼女の涙のようであった…。
仲間の死を未だ知らず、囚われのシスティナは皮肉にも真逆、命の生まれる最も近い場所にいた。
「くぅ…うあァァあッ!!」グボォ…
膣口から自ら這い出して、ゴブリンの幼体が息吹をあげた。周囲から続く祝福の歓声。
「ハァ…ハァ…」
荒い息をつくシスティナに、〝人間の”シスターが歩み寄り、治癒の術を施す。
驚愕と共に睨むと、彼女の首には枷が嵌められ、恐怖の表情を浮かべて震えていた。
服装から〝剣の姉妹”のエージェントだとわかる。攫われてきたのだろう。
「…わたくしを治させて…。……!」
何度でも使い回すつもりだといのか。
恐らくは、目の前のこの女性は自分への回復を拒むか失敗すれば即座に処刑されるだろう。
しかし…。
しかし、それは、彼女が自らの命共々システィナの身を諦めるまで、延々と妖魔の仔を宿し、生み落とし続ける未来が待つことを意味していた。
また別のゴブリンに犯され、それを怯えた表情で凝視する名を知らぬ同僚の前で、システィナは思う。
わたくしは…〝何”になってしまおうとしているのか。
黒いゴブリンに破壊された四肢は動かず、妖魔たちの性処理用の肉壺とされている。
…本当にそれだけだろうか?
「は…ぅ…ッ!?んぁアアッ!!」
人間と比較にならないペースで成長する妖魔の胎児をまた生み落とし、苦悶に呻き、また回復される。
システィナは百鬼殿に巣食う数多の妖魔に種付けをされた。
オークにはゴブリンと比較にならない絶倫ぶりと射精量で、腰が痙攣するほど犯し尽され、その後何体もの幼体が争うように膣口を抉じ開けた。
トロルには、わたくしの肉体を破壊するような深く激しい注送で肉棒を叩きつけられ、腹がそのたび前方に大きく突き出した。
いくら射精してもわたくしが孕まない理由を、その愚鈍な妖魔は肛門から入った精液を口から吐き出してもまだ理解できなかった。
「ひ…ぎゃあアアッ!!ぐぼぉ…おェええッ!!ッッ…!!」
「ひぃぃ!!」
不定形型やワーム型は、子宮でしか生まれない亜人型の妖魔とは異なり、わたくしの至る孔からも這い出した。
子宮はもちろん、直腸や胃、果ては乳腺内で身籠り、泡を吹いて白目を剥いて、四肢の動かない身でのたうち回りながら次々と異形をこの世界に送り出す。
妖魔の母胎となり続け……母胎?
「!!……そんな…まさ…か!?」
恐るべき可能性に行きついた。
回復のための奴隷とされるシスターに告げる。いや、懇願する。
「あなた!わたくしの回復を、もう止めてくださいませ!」
「!?……ッッ」
シスターは引きつった表情を浮かべ、目を伏せてフルフルと首を振る。
当然でしょう。
わたくしを死なせれば、彼女も死ぬ。
あるいは〝それ以上”の地獄を味わうのだから。
しかしそれでも…彼女を道連れにしてでも止めなければ…!
「あ!」すぐに次の妖魔に持ち上げられた。
人型の巨妖。地上で戦ったあの魔人と同種と思われる。
一メートル以上もある巨根で秘所を抉り抜かれ、意識が戻ったときにはわたくしの腹は蛙のように丸々と膨れていた。
ドクン…と波打ち、メリメリメリと股間を押し拡げて、巨妖の仔が生まれようとしていた。
「ふぎゃあああアアッ!!こ…ごろしてェェエッ!!もう…ッ…ごろし…ぎゃあアアッ!!…あぐ!!」
大の男ほどの大柄な〝胎児”が抜け出た穴は無残に拡がり、ガクガクと病的に痙攣して、いよいよ召されようと思うと、傍らのシスターの施術で生還させられてしまう。
「オ!ここかぁ!ガキ生ませてぇ奴募集の人間の女ってぇのは!かなりの上玉じゃねぇかオイ!」
「!!…いや、いやぁああ!!」
現れたのは歩く生殖器。
〝百鬼衆”の中でも指折りの暴虐の化身、〝腸抉”。
とうとうこんな大物にまで御用達となった我が身…。
あぁ…神よ。わたくしを…どんなかたちででも、この場所から解放してくださいま…
ズボォッ「くぁアアアッ!!」
システィナの心中の祈りは、無粋な挿入によって断ち切られる。
腸抉による、陵辱という言葉すら生温い暴行により、失神した彼女が意識を取り戻したのは、冷たい床の上だった。
上体を起こすと、汚らわしい精液が我が身の至る所にこびりついた惨状はそのままであったが、仮初の自由を得ていることを認識できた。
あの腸抉は傍らにいない。拘束具をつけられてるわけでもない。どういうつもりなのか。
そもそもこの広い静寂に包まれた空間は、何のための場所なのか。
煌々と照らされる祭壇のようなものが、奥に見える。
「…え!?…こ、これは……!」
人が並んでいた。…否、かつて人であった者たちが、生前の姿を維持されたまま、柱に埋め込まれて飾られていた。
恐らくは、妖魔によって犯し殺された時のものであろう苦悶の表情のまま、精液と触手で構成された異形の柱に、哀れな姿で埋め込まれていた。
「なんという…なんという非道を…」
見覚えのある顔。わたくしの記憶が正しければ、それぞれかつて妖魔を排するべく結成された幾つもの組織の、トップやそれに準ずる方々。
…消息不明で亡骸すら見つかっていなかったと聞き及んでいましたが、こんな惨い仕打ちを受けていたなんて…。
死して尚、その身も魂も解放されずに囚われ、無念でしょう…。
「……え!?」
哀しき人柱に心を痛めるシスティナの眼に、信じられない、信じたくないものが映った。
囚われる寸前まで、共に戦った、自らの属する“剣の姉妹”東京支部の団長、クレオの姿があった。
「そん…な…ッ!クレオ団長…!?」
驚愕に見開くシスティナの眼前で、他の面々と同様に、断末魔の苦悶に美貌を歪ませていた。
虚ろな瞳のクレオと目が合う。
「……何が…あったの…ですか?団長…」
「教えてやるよ」
「!?…あなたは!」
振り返った先、先刻まで自らを散々に犯し壊しかけていた腸抉の巨体が現れていた。
身構えるシスティナの横を通り過ぎ、柱に埋め込まれたクレオに近づいていく。
「この上玉の女なぁ、蛇真様にぶっ壊されたのよぉ!こんな風によォ!!」
「何を!?」
あろうことか腸抉は怒張した頭部をクレオのマンコに突っ込み、腹を突き破りかねない勢いで胸の上に達するほどに突き上げた。
物言わぬ骸のまま、クレオは苦悶の表情のまま揺さぶられる。
「…こんな……酷い…ッ」
システィナと共に、人々の安寧を目指して戦い続けた末に、志半ばに斃れた団長。
骸となって尚、安らぎを得られず、魂までも穢され続ける尊厳なき彼女の姿に、システィナは落涙する。
「少し違ぇか?こうだったかぁ!?」
頭を引き抜き、今度はぬらぬらとのたうつ幾本ものの生殖器で、クレオの穴という穴を抉り始めた。
膣に、肛門に、両の胸の先端に、次々と捻じ込まれる亀頭は、彼女の肉体を内より捏ね回し、歪ませる。
生者であれば、たとえ鍛え抜かれた退魔師であっても廃人と化すか絶命してもおかしくない苛烈な陵辱。
「やめなさい!やめなさい!やめ…!」
ズボォ…!
システィナの眼前で、クレオの口から何本もの腸抉の一部が突き抜けた。
その本数はあきらかに肛門から入り込んだものよりも多い。
「ヒャヒャヒャ!さすがは上玉、気持ちいいぜぇえ!生きてるうちに犯りたかったってもんだ!」
「……あぁぁ」
膝から崩れ落ちるシスティナを腸抉が覗き込んでくる。
「心配すんな。お前は殺さないし、死なせねーよ。俺様たちと末永く、仲良くやろうぜ」
慈愛も慈悲もない、悪意と欲望に満ちた下卑た笑いが貼りついていた。
人々の救いのため、戦い続けた優しき女性。
そんな彼女が最期に〝成ってしまった”ものとは…。
「きゃああああッ!!」
ビルの間を悲鳴が彩る。
地上にて、新たな惨劇の幕が上がる。
此度の蛇真の計画の主眼は、東京陥落へ向けた妖魔の軍全体の兵力の底上げにあった。
蛇真と直属の百鬼衆の力は強大なれど、末端の低級妖魔まではそうとも言えず、繰り出しては駆逐されてきた。
勢力図の塗り替えは一進一退ではあったが、しかし、ある存在によって、数の増強だけではない、思わぬ恩恵がもたらされた。
「なんだこいつら!?我々の術が!聖なる力が全く利かないぞ!」
「来ないで、来ないでェェェッ!いやぁああ!!」
団長クレオと最高戦力のシスティナを奪還すべく、副団長の指揮の下に集結した修道騎士たちは、東京に派遣された〝剣の姉妹”のほぼ全軍だった。
それが、たった数十体の妖魔に壊滅しようとしていた。
だが、彼女たちの名誉の為に触れるならば、決してその練度が低かったわけではない。
相手はただのゴブリンやオークではない。
システィナから生み出された彼らは恐るべき特性を得ていた。
聖なる力への完全な耐性。
”剣の姉妹”の修道騎士たちにとって最悪の、〝天敵”ともいえる存在になっていたのだ。
「へへへ…見ろよ!おめぇのガキがおめぇの仲間を犯りまくってんぜ!傑作だなァ、ヒャハハハ!」
「はは…ハハハハ…」
腸抉に触手でぶら下げられ、戦場…いや一方的な蹂躙の場を見降ろすシスティナ。
その瞳に生気はなく、渇いた笑いを零すだけの壊れた肉人形だった。
「な!あれは…システィナ…だと!?」
副団長の瞳が絶望に見開かれる。
彼女は悟った。この妖魔たちの力の源泉がシスティナにあることを。
「……お前は…妖魔の母になってしまったのか…」
至る所で騎士たちが組み伏せられていく。
ある者は精液袋と化すまで輪姦され、ある者は巨大な生殖器で肉筒のように中心を抉り抜かれ、ある者は消化器官全てを挿し貫かれた。
ほとんどはこの場で犯し殺され、一部はシスティナの回復役兼性処理用玩具として百鬼殿に連れ去られ…
〝剣の姉妹”はこの日、壊滅した―。
東京に住まう者たちにとって、人類の盾の一角を失った衝撃は甚大だった。
すでに各組織へ通達されていた妖魔の異常繁殖の情報と相まって、人々が抱く日常の崩壊への危機感。
東京放棄論が市井に満ち始める中、都内のある場所にて、〝彼女たち”は顔を合わせる。
関西に中枢を移した政府が、東京に唯一残した行政機関。
厳戒態勢が敷かれたその建造の中、赤い絨毯の上を双子の従者を連れた巫女が険しい表情で歩く。
退魔師を統べる者とも称される朱宮神社の頭目、〝朱雀の巫女”こと朱宮紫守。
大会議室と廊下を隔てる重厚な扉の前で彼女を待つのは、政府の擁する対妖魔組織、〝特捜部”の指揮官たる立花莉子。
普段以上に刺々しい空気を纏い、紫守と視線を交錯させ、眼鏡を指でツイ…と上げた。
「来たわね。直に会議も始まるわ」
「お待たせしましたわ。行きましょう」
ガコ…ギギギギィィ…
扉を押す莉子に続く紫守。
開け放たれた会議室には錚々たる顔ぶれが揃っていた。
新たな力を得た妖魔との戦いは、激化していくことだろう。
だが、諦めない者たちはまだ多く残っている。
人類の反撃は、ここから始まるのだ!
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大変お待たせいたしました(o_ _)o
前話から間を置いてしまい、応援いただいている皆様に申し訳がありません(-_-;)
これにて、「魔群胎動」編は完結です。
「俺たちの戦いはこれからだ!」的な幕引きとなってますが、打ち切りENDではありませんよ(笑)
もし、どこかの選択肢でシスティナさんたちがグッドルートを選んでいたなら、“剣の姉妹”は壊滅せず、会議の場にはクレオ団長と共に出席して、遼子さんは「わたしは外で待ってるよ」とアンと一緒に待ってたことでしょう。
むしろ次の戦いの、冒頭シーンって感じですね。
…しかし、そうはならなかった。そうはならなかったからこそのバットエンドです。
takitakinathom
2023-07-07 16:41:38 +0000 UTC