SakeTami
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サンプル⑥【新春けもケット10】

こんにちはこんばんは、ぱぱを🐼🐾です。


サンプルは今回の⑥で最後となります!ちなみに①〜⑤までは新刊の中に組み込まれているのですが、この⑥は会場で新刊に付属するオカズポストカードの内容となっておりまして。今回担当してくださったのはもつさん(@R18_0000)です!オカズポストカードということは当然カラー絵なので、是非楽しみにしていただければなと思います🐻


尚、今回のオカズポストカードは会場限定での頒布となるわけですが、イベントへ来られないFANBOX支援者様向けにデータ版での公開をしようと考えています。期間限定ではありますが、カードの裏面に印刷されているURLとパスワードを共有する形になるかな。一度メモしておけばいつでも見られますので…どうぞ会場に行けなくて悲しい想いをしてしまった人もご安心ください。なんたってもつさんの絵は素晴らしいのでね!!全国の皆様にもお届けせねばなるまい…。



長くなりましたが、これにて先行公開サンプルは終了となります。お付き合いくださりありがとうございました。おしながきなど出来上がりましたら公開いたしますので、もうしばらくお待ちください!




(あと作品タイトルがめっちゃ土直球で笑ってしまった。こんなんつけてたっけ…)



※以下、サンプル本編。

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タイトル:臭気判定士のお仕事

****


「スン……スンスン……あ〜、ここっぽいですねぇ」


「ここか? ラインには何の異常もねぇけどな」


「今見た感じだと、この辺りは消毒液がかかってないですね。ベルトの裏側とか、今見れますか?」



 ラインの稼働が止まっている土日の間に、僕はとある依頼を受けて酒造製造メーカーの工場へと来日していた。その人物はこの場で工場長の役職を持っている、重川踏弥(しげかわ ふみや)さんという熊のおじさんだ。背丈もそうだし、胴体も横にデカい彼を見た時最初は驚いた。デカすぎて自分とは全然違う生き物なんじゃないかと。これでもおじさんと僕は、同じ獣人種だ。種族は違えど、僕と同じように飯を食べて、同じように仕事をして、寝て……。


「……うっわ汚な‼︎ なんだこりゃ!」


「あ〜……水垢が溜まってますね。この……スン……酒瓶についたニオイはこの水垢に原因があると思います」


「うえぇ〜きったねぇ〜……おいおい、んだよこれ」


 最近酒造に使っている瓶が雑巾臭いとのことで、僕はその原因となるニオイの元を突き詰めていた。前任者から話は聞いているが、重川さんはウチの会社に勤めている臭気判定士たちを偉く気に入っているのだそう。だから粗相しないように、相手の機嫌を損ねないように仕事をしていたのだが……そこら辺は問題なさそうだな。


「はぁ……アイツら社員を早出させて掃除させるか……」


 週明け、工場作業員らはきっと地獄を見るだろう。何せ一度も洗われてなさそうなベルトの裏側を掃除させられるのだから。残念ながら僕は清掃業者ではないので、そういった部分では関わる事はない。申し訳ないけど、こうなったのも従業員らが普段清掃をサボっているせいだし。


「他に発生していた油のニオイですが、前に来た時よりだいぶ薄くなりましたね。概ね良好です」


「おう。お前が色々ニオイ対策してくれてっから、鼻がきく従業員のヤツらも今のところ元気にココで働けてるぜ。あんがとよ」


「いえいえ、それが僕の仕事ですから」


「ところで、前によく来てたお前んところの犬の社員はどうしたんだ?」


「あー……先輩、ですか。先輩は急遽実家に帰るとか何とかで退職されてしまって……」


「ふぅん……そうか。それまた急な話だな」


「ですよね。僕も直接話をすることは叶わなくて……本当に突然だったんです」


 お得意様ファイルにも記載があったけれど、重川工場長は前任者である先輩犬社員をえらく気に入っていたようだった。僕もその先輩にはよくしてもらっていたのだが、突然断りもなく急に退職してしまったから挨拶もできなくて……。今はどこで何をしているのかはわからないが、社長曰く実家に帰ったのだそう。家庭事情もあるからこれ以上は詮索できないけれど、僕なんかにこの大企業の仕事が務まるだろうか。……いかんいかん、新人だからって弱気になるのはよくないぞ僕。ちゃんと資格試験に合格して、臭気判定士になれたんだから。もっと自信を持ってお客様と接しないと。



「ま、アイツが来た時は工場内もかなり汚れてたしよ」


「そうなんですか?」


「ああ、今よりずっと酷ぇ環境だったぜ。それを改善してくれたのがアイツだったんだが……残念だ」


 少し眉毛をハの字にしながら、重川さんはそう言い放つ。相当前任者のことを気に入っていたのだろう。僕も……重川さんに気に入っていただけるよう立派に仕事をこなしたいなと、そう思った。


「ところでよ、別の部分も見てもらいてぇんだが……」


「別の? ええと……」


 困ったな、仕事自体は昼で終わるつもりだったのに。重川さんは工場内だけでなく、他にも悪臭発生源があるからと僕に仕事を依頼してきた。こういうイレギュラーな対応は受けないのが吉、一度会社へ持ち帰ってから検討しますと言うのがセオリーなのだけれども。


「ああ、もちろん金は払うよ。追加報酬としてな」


「でっでも、見積もりとかもありますし、そんないきなりは出来ませんよ!」


「ああ、お前のとこの社長さんには話つけてある。別に今さっき決めたことじゃねぇから安心してくれや」


「……そうなんですか?」


 大手の、しかもお得意様とあればこういった事例は珍しくないのだろう。既に上の者と話がついているのだったら……そう思って僕は仕方なく仕事を請け負うことにした。本当は早く帰って休みたかったのだが、これも出世する為には必要なステップだと考えよう。


「実は工場以外にも悪臭が発生しててな……そこを見てもらいてぇんだ」


「ははぁ、なるほど。どんなニオイなんですか?」


「んんー……どんなって言われてもな……」


 ニオイにも色々あるからな。甘ったるいニオイ、苦そうなニオイ、酸っぱいニオイ、鼻が痛くなるような刺激的なニオイ。表現するのが難しいかもしれないけど、でも何となくのイメージを伝えてもらうだけでどんなもののニオイか絞れる可能性があるので聞いておきたい。僕はひと息つきながら、重川さんの返答を待ち続ける。すると彼は思い出したようにこう言った。


「なんか発酵したみてぇな、ムワッとくるヤツだ」


「発酵した……むわ……」


「なんかなぁ、熱気がすごくて……毛皮が一瞬で湿気るみてぇなヤツ」


 水気が多くて、どこかにカビでも発生したのだろうか。そんなことを思いながら、僕は重川さんの後をピッタリとついて行く。それにしても彼の体がデカすぎて前が見えない。しかも結構その、汗のニオイがすごいな……。紺色作業着の背中は汗染みが浮かび上がっており、インナーとして着ている黒シャツはもう汗を吸いきれていないのだろう。だけど働く男の人って感じがして、イヤな感じはしない。


「……ん? どうした?」


「へ?」


「そんなに鼻ぁヒクヒクさせて、なんか気になるニオイでもあったか?」


「えっ……いや、なんでもないです」


 指摘されるまで気づかなかったが、僕は音がするぐらい鼻を鳴らしてニオイを嗅いでいたらしい。危ない危ない……イヤな気持ちにならなかっただろうか? キツすぎる汗のニオイを指摘すれば怒るお客さんだっているからなるべく気をつけていたのだが、仕事柄どうしてもこういったニオイには敏感になってしまう。入社後すぐに数ヶ月ほど携わっていた案件は化粧品メーカーだったので、汗のニオイをしっかり消臭できているか品質チェックをしていた時期もあった。その名残からか、こういった男特有の汗の香りが鼻前をかすめると体が反応してしまう。


「この奥なんだがよぉ」


「はっ、はい!」


 あの頃の案件は大変だったな……。新人は厳しい現場で学んでこいと行かされた化粧品会社では、それはもう毎日死ぬほど他人の色んなニオイを嗅ぎまくった。顔をタオルで覆った雄の獣人を仰向けで寝かせ、その周りでみんな鼻をスンスン鳴らしながらじっくり時間をかけて嗅ぐ作業。ニオイを嗅ぎ分け、評価し、フィードバックを行なって制汗剤などの品質を向上させていく。それが僕ら臭気判定士の仕事だったが、あの時は毎日仕事終わりに倒れ込むようにして布団で気絶していたっけ。


 ニオイを嗅ぐ仕事は思った以上に集中力が必要だ。そして……忍耐力も。四、五十代獣人の腋の香りはとにかく強烈で、毎日涙を流しながら嗅ぎ回ったものだ。何度もNGを出してはメーカーに作り直させ、結果的にはスプレーを三秒ほど振りかけるだけで獣人特有の汗のイヤなニオイが八割ほど消せる素晴らしい商品となった。それは僕を含む複数の臭気判定士の努力とも言える。もちろん香料の配合製作に携わった化粧品会社の人の努力もあるのだけれど。



「わ……」


「わりぃな散らかってて。ここは獣人独身寮に住んでねぇヤツが使う更衣室でな。ここ、なんか生乾きみてぇな……その、すっげぇ汗臭くてよ。どっからニオイが発生してるのか調べてくれねぇか?」


 真ん中に背もたれのないボロいベンチ、そして壁際一面にはかなり年季の入ったボロいスチールロッカーが。室内に入り込んだ瞬間鼻を押さえたくなるような強烈な汗の香りが僕へと襲いかかる。先ほど言っていた制汗剤開発案件に携わっていなければ即トイレへ駆け込んでしまうような、そのレベルの激臭だった。こんな劣悪な環境で酒造工場の従業員たちは作業着に着替えているのだろうか、これでは嗅覚が鋭い者からバタバタと倒れてしまうだろう。


 そんな窓もない密室の中で、僕は一際ニオイ立つロッカーを鼻で探し当てた。少し嗅げばすぐわかるようなその激臭は、正直中を開けるのが怖くてたまらない。一度重川さんに場所を指摘すると、彼は何の躊躇もなくそのロッカーへと手をかける。


「まっ待ってください、これ開けたらヤバいんじゃ⁉︎」


「でも開けて中を確認しねぇとニオイの元は消えねぇんだろ?」


「いやでもその、あ、じゃあ車の中からガスマスク取ってくるので!」


「車まで戻るの大変だろ。駐車場まで遠いしよ。まぁいっぺん開けてみようや。おらっ!」


「えっあの、ちょっ‼︎」


 僕の忠告を完全に無視し、おじさんは何の躊躇もなく持ち鍵を使用し扉を開けてしまった。何か危険物があった時のためにガスマスクを用意していたというのに、準備する前に開けられては何の意味も成さないではないか。そうやって言う暇もなくこじ開けられたギシギシと音のするロッカーには、見るからに汚れたまま放置されていそうな布の数々が敷き詰められていた。


「うええぇっゲホッ! ……なっ、なんですか、これ」


 食べ物が腐ったニオイの方がまだマシだったと思う。縦長ロッカーの床面には団子のように丸められた黒い布の塊が。一体これは何だと感じる前に、僕の頭はこの塊のシルエットが何なのか瞬時に理解できた。……靴下、だ。脱ぎ捨てた靴下が丸まったみたいな、そんな形にそっくりだと言える。


「……なぁ、中鍵さんよぉ。アンタ、こういうの興味あんだろ」


「え? ……え、あの、重川さん、何言って」


「臭気判定士ってのはクセェの嗅ぐのが好きでそういう変態的な仕事してんだろ? 違うか?」


「なっなに言ってるんですか、違いますよ、それは誤った認識です!」


「ウソつけや。さっきからオレの汗のニオイ嗅いで興奮してたんだろ」



 その目は、さっきまで一緒に仕事をしていた時の優しい重川さんとは思えないような鋭さがあった。僕を睨みつけ、ふん……と言いながらぶっきら棒な態度を取り始める彼。そして臭気判定士のことを馬鹿にするような態度で、これには僕の中に眠っていた怒りの感情が込み上げてくる。


「一般的な臭気判定士ってのは別に誰でもなろうとすればなれますけど、獣人の中でも特に嗅覚の優れた者でないと勤まらない案件だってあるんです! 僕はそのスペシャリストになる為に、毎日勉強を頑張って資格をとったんですよ! そんな、変態扱いするだなんていくらお得意様でも許せません!」


「ふぅん、随分ハッキリとモノを言うじゃねぇか。臭気判定士のプライドが許さねぇってか」


 普段温厚な僕がこれだけ怒りを前面に出しているのに、重川さんは全く微動だにしなかった。確かに、身長差や体の横幅からして自分の二倍……いや三倍近くあるし、小さな僕が何を言ったって彼の心には響かないのだろう。少しだけ熊という種族を羨ましいと思ったけれど、僕は犬獣人に生まれたことを誇りに思っている。犬獣人は嗅覚が優秀な者が多いし、それに頭もいいとされているから。粗暴で乱暴で、しかも強面が多いとされる熊獣人と比べたら犬の方がはるかにマシだ。


「じゃあよ、本当に興奮しねぇのか試してみようぜ」


「……え」


「なんだ、怖気付いたのか? やっぱお前はこういう汗クッセェの嗅ぐのが好きな変態だって? ん?」


「ちっちが……そんな……そんなんじゃないです……」


「じゃあヤってみようや。お前がそういうので興奮しねぇって証明できたら、土下座でも何でもして謝ってやるよ。何なら今回やってもらった仕事の報酬に多少色をつけてやる。そしたらお前の給料にも反映されるだろうからな」


 腕を組みながら自信満々にそう言い放つ重川さんに、僕はほんの少し、いやかなりビビっていた。なんなんだ、この自分が悪くないという感情に満ち溢れた堂々とした表情は。どう考えても仕事のことを侮辱した彼の方が悪者だというのに、すごくモヤモヤする。だがさっきの言葉、報酬に色を付けてくれるというのはつまるところ僕の評価に直結するというわけだ。僕が雄のニオイを嗅ぎ回す変態ではないということの証明、そして将来役職持ちになる為の前準備、この二つが出来るというのなら僕は……。


「……わかりました。じゃあどうやって証明すればいいんですか?」


「服を脱げ」


「へ?」


「それともなんだ、無理矢理脱がされてぇのか」


「いや……え? 服?」


「だから早く脱げって言ってんだよ! おら逃げるなや‼︎」


「え゛っ、あのっ、ちょっと‼︎ どこに指引っ掛けて‼︎」


 いきなり服を脱げと言われて、脱ぐ馬鹿がどこにいる。明るいベージュ色の、この前クリーニングに出したばかりの作業服に手をかけられると、僕の素肌は一瞬のうちにして人目に晒されてしまった。生ぬるい更衣室内の空気が僕の毛皮へ入り込み、何だか少しだけゾワッとする。上着を脱がされれば、次はズボンだと言いながら彼はズボンに手をかけてきて――。


「まっ待って、ズボンはだっ‼︎」


「なぁにがダメだ、別に男同士だからいいじゃねぇか。……おらっ、抵抗するならこうだ」


「ぎゃっ、あっ‼︎」


「……大人しくしてろや。手首に痕、残したくなけりゃな」


 上半身全裸にされ、僕は壁に押し付けられながら両腕を何か布みたいなもので縛り上げられる。ギュウウッと結ばれたその布のせいで、僕の手首は血流を悪くして軽く痺れていた。このまま無理に動かせば血流が悪くなり、うっ血してもっと痛い思いをすることになるだろう。


「なにしてっ、こんな、乱暴するなんて‼︎」


「ピーピーうるせぇな〜……まぁいいけど。ここはウチの工場の敷地内、だしな。それに窓もねぇから外まで声が漏れることもねぇだろうよ」


「な……何を言って……」


 態度が豹変したおじさんを前に、僕は尻尾をグルンと巻きながら震えていた。何だ? 何で震えてる? ……恐怖、だ。僕はおじさんに対して、怖いという感情を抱いている。無理矢理上半身を裸にされて、しかも今は腕まで縛り上げられてズボンも、パンツも、何なら靴下まで脱がされている。蹴りを入れてやろうと思ってたのに体が思うように動かず、それから僕はへたり込むようにしてヒンヤリとした地面にケツをついていた。


 座りながら見上げるおじさんの体は、さっきよりもかなり大きく見えて怖い。そして舌をベロンとマズルから出して、一回舐め回すようにして……。ご馳走を前に舌舐めずりをする妖怪、だ。怖い、なんで僕を見てそんな……そんなこと……。


「ちっせ〜なお前の作業着。まぁいい、よく見てろよ?」


「あ…………あの」


「なんだ、何か言いたいこと。あるのか? あるなら言ってくれや」


 元々そのロッカーに入っていた二つのうち一つのハンガーを取り上げ、おじさんは僕の着ていた作業着やズボンやらをそこへかけていく。その状態で更にあのおぞましいニオイのするロッカーへと戻され、僕は体のいたるところから汗を垂らして心拍数を上げていた。何をしているんだ、おじさんは今……僕の仕事服を……え? あのロッカーに?


「お前の服、いいニオイがすっからさ。これで消臭剤代わりになるんじゃねぇかな。ガッハッハッハ!」


「なにしてっ! なにしてるんですか! 早くそこから出して!」


「出す? 出すわきゃねぇだろ。消臭剤は”一つ“じゃ足らねぇしよ」


「え……」


「お前も消臭剤代わりだ。今からあそこ、入れてやっから」



〜つづく〜














※ここから挿絵チラ見せ

























もつさんのカラー原稿は身に沁み渡る良い薬です……ええ。見下ろす作業着熊のおじさんはこれからワンコをどうするつもりなんでしょうか……とっても気になりますねぇ……。会場へ行かれる方は是非紙媒体でもお楽しみいただければ幸いです🐼ちなみに前回、前々回のオカズポストカードとはまた違った紙質を使ってみました。どうだろう??

サンプル⑥【新春けもケット10】 サンプル⑥【新春けもケット10】

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