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閉鎖病棟体験その11

 閉鎖病棟体験11

 

「こんにちは、川嶋さん。ご飯の時間ですよ」


「ンんッ!? ん、ンん〜〜〜〜ッ!? ンん、ん、ん~~~ッ!」


「そんなに欲しがらなくても大丈夫ですよ。ちゃんと、飲ませてあげますから」


 もう、何度繰り返されたのだろう。

 スリープサックによって完全に拘束されている麻乃の口を塞ぐマスクへ看護師さんがいつものようにチューブを繋ぐと。次の瞬間には、大量の流動食が喉の奥へ直接注ぎ込まれてくる。


「お、んぉ、おぉお……ッ、ン、ンん~~~~~ッ!」


 このような人権を無視した給餌を施行するために、アナトミカルマスクを被せられた麻乃の頭には、顔の下半分を覆いつくすフェイスクラッチマスクがハーネスベルトによって固定され、その内側に聳え立っているシリコンの突起物を喉の奥まで突き上げるように無理やりねじ込まれている。


「お、ぉ~~~~~ッ、ぉぉ……ッ!」


 ——ミシ、ギチ、ギチチチチッ。


 だから、麻乃は、呼吸をするのも憚られる息苦しさを耐えしのぎながら、アナトミカルマスクのチューブを通された鼻から「ンふぅ」と甘い吐息を漏らし、ネックコルセットに固定された頭を仰向けにしたまま、微動させることも許されない腰をグネグネと震わせる。


「~~~~ッ、っ~~~~ッ!?」


 すると、お尻の中に留まっているアナルプラグが内側から麻乃の下腹部を圧迫して、強烈な不快感と一緒に排泄欲を促してきた。

 でも、麻乃がいくらお尻に力を入れたところでその排泄欲は解放されることはない。

 肛門の入口で残り続ける異物感は四六時中お尻の中に居座って、麻乃の脳内リソースを汚らわしい排泄欲求へと染め上げてくる。

 それに抗うように麻乃が身震いするたびに、クリトリスの包皮を剥くように嵌められたリングや乳首を十字に穿つピアスからも、下腹部の奥が疼くような刺激が送られてきて、一向に満たされない情動が延々と積み重なっていく。


「お、おぉ……ッ、んお……っ、ぉぉ……ッ」

 

 けれども。

 それでもいい。

 もう、どうだっていいのだ。

 

「ンんッ、ん~~~っ、んぅうう~~~ッ!?」


 最初はあんなにも苦しくて、流動食を受け入れるのが嫌だったのに。

 胃が流動食に満たされれば満たさるほど、ぐちゃぐちゃになった思考はふわふわと霧散していき。そのあとは下腹部の奥がじゅくじゅくと熱を孕んで、何も考えられない多幸感だけに包まれていく。


「んぉ……ッ、お、おぉお〜〜〜ッ!?」


 乱れていた思考が整理されていくように。

 自分で自分の身体を慰めたい願望が溢れ出して。

 激しく疼く乳首やおまんこに両手をのばしたくてたまらなくなる。


 それがもっと欲しくて。

 早く、気持ちよくなりたくて。

 もっと、強い刺激が欲しくなっちゃって。


「おぉ、お、おぉおおおぉおおお〜〜〜〜ッ!?」


 ただひらすらに、全身を縛めている拘束具に抗う。


 ——ギチッ、ギチチチチッ。


 でも、拘束衣によって胸の下に縫い付けられた両腕は、重複するスリープサックの膜に完全に抑えつけられ、麻乃の身体はベッドの一部になるように全身の至る所を抑制帯に束縛されている。

 ただそこに存在しているだけのオブジェクトへ成り果てている麻乃には、本能のままに。自分の赴くままに。自分で自分の身体を慰めることは一切、許されていないのだ。


「ンぉ……ッ、お、おぉおお……ッ、おぉお~~~ッ……ぉぉッ!」


 それでも、麻乃はラバーの上から締めつけてくるベルトに自ら肌という肌を擦りつけて、強烈な密着感による僅かな摩擦から生じる刺激を貪りつくすように一心不乱になって快楽を味わうことを繰り返す。


 それがスリープサックに完全拘束されている麻乃に許された唯一の自由だった。


「あらあら、すごいわね。流動食を飲むだけでこんなに腰振っちゃって……もうすっかり性欲に塗れた精神病患者にしかみえないわ。順調に治療は進んでるみたいね」


 そんなときだ。

 こんな日々を、何日も、何日も、送っている麻乃の鼓膜に、看護師さんとは違う目的を抱いた女の人の声が響いてくる。

 同時にアナトミカルマスクに包まれた頭から、スリープサックによって拘束された下半身に向かって、胸や腰、太ももから足首までの範囲をなりふり構わずさわさわと撫でられていく。

 重複したラバーの膜に包まれていてもわかるほど、その手はどこか優しく。

 されど、麻乃の柔肌を舐めまわすようにねちっこく纏わりついてきて。

 何一つ抵抗できないように拘束された麻乃を自分の所有物のように品定めしているような。

 支配欲に満ちた触り方だった。

 

「はい、99番さんは毎日この調子で食事のあとはずっと甘えた声をあげながら、身体を抑制帯に擦りつけることしかしていません。それにここ最近は自ら流動食も欲しがるようにもなりました」


「特注で用意した拘束具もお肌にぴったりだし、排泄も機械で問題なく行えて特に異常はなさそうね。あとはここ最近控えてる刺激を追加してあげれば処置は完璧かしら」


「ンんっ、ん、んッ!? んん~~~ッ!?」


 その人物が誰なのか。

 何も見えない視界の中で、麻乃はやっと理解した。

 麻乃に精神病患者の立場になる研修を受け入れさせ、この病室に監禁したのち、担当医として突然目の前に現れ、強制入院のことを告げたきり姿を見せていない新井さんだということを。


「ふふ、こんにちは川嶋さん。担当医の新井です。元気にしてましたか? あれから一か月が経ったけれど、ここでの生活にはなれましたか?」


「——ンぐッ!? ンんッ!? ングううううッッ!! お、ぉおおおおおおッッ!! おッ、おごっ!? お、おぉおおおおおッ、おぉおおッッ!!」


 麻乃は思わず、手足のすべてに力を込めて声を荒げる。

 全身を包み込むスリープサックが、ミチミチと軋み声を上げ、その上から幾重にも締め上げられた抑制帯がベッドに擦れるたびに喉から漏れ出す呻き声と混じって不協和音を奏でしまう。

 だが、そんなことどうだってよかった。

 今はとにかく、すぐそこにいる新井さんに麻乃が正常であることを伝えられたら、それだけでいい。


「そんなに暴れなくて大丈夫よ。川嶋さんの治療は順調に進んでいるから、何も心配することはないわ。この調子で治療を続けていけば、以前よりも増してもっと体調が良くなるはずだから、このままゆっくり治療を続けていきましょう? まだ治療は始まったばかりですから」


 なのに、麻乃に告げられる言葉は相変わらず無慈悲なもので。

 麻乃の訴えなど、何一つ参考になどされない。


「ンぉ、おぉおッ!? お、おぉおおッ!? おぉおおおおお~~~ッ!?」


 それがわかりきっていた答えだとしても、麻乃はおまんこからドロドロに愛液を垂れ流しながら言葉にならない声で死に物狂いになって訴える。

 ここから出して。

 もう、許して。と——

 だって、精神病患者として扱われている麻乃をこの状況から解放する権限を持っているのは、他でもない新井さんだけなのだ。

 このチャンスを逃したらいつになっても麻乃はこの閉鎖病棟から出られない。

 このままでは、ずっと拘束具に行動を制限されたまま、いつになっても気持ちよくなれず過ごすことになる。

 そんなの、とても耐えられない。

 麻乃は、今すぐ気持ちよくなりたいのだ。


「お、ンぉおおおッ! お、おぉおおおおお~~~ッ!! おぉおおおッ!!」


「そうね。そうよね。たしかに焦せっちゃうわよね。早くここから外にでて元の生活に戻りたいわよね。その気持ちとってもわかるわ。でも、大丈夫よ。川嶋さんの病気が良くなるまで私がちゃんと責任をもって診てあげるから、焦らずゆっくり治療していきましょう? そのためにも、これから川嶋さんには特別な病室に移ってもらうことにったわ。あそこのベッドは少し狭くて窮屈だけれども、今の川嶋さんなら、きっと何も問題なく快適に過ごせると思うから、安心して身を預けて頂戴ね」


「お、ぉおおおおおッ! お、んぉ、おおおおおぉおおおッッ!?」


 新井さんはたったそれだけの言葉を淡々と告げると今もなお拘束に抗うように訴えを続けている麻乃を横目に「じゃあ、あとはお願いね」と看護師さんへ言葉を残し、病室を出て行ってしまう。


「それでは、川嶋さん。病室の移動に取り掛からせていただきますね」


「私たち二人でしっかり対応させていただきますので、安心して身を預けてくださいね」


「ンぐぅううッ!? ンんッ。ん、ンんんんッ!?」


「では、抑制帯から外していきますよ」


「ン~~~~~~ッッ!?」


 その後ろ姿を見送った二人の看護師さんが、全頭マスク越しの麻乃の訴えを意に返さず、抑制帯のベルトを外していく。

 一つ、二つ、三つ、四つ。と上から順番に外されていくが、それはあくまでも麻乃をベッドに縛り付けているだけの抑制帯でしかない。

 麻乃の身体を完全に拘束しているのは他でもない白いラバーの膜で構成されたスリープサックだ。

 それが麻乃の身体から外されることはなく、看護師さんは白い繭になっている麻乃の身体をうつ伏せに転がすとクロッチ部にある閉じたオープンジッパーを開放して、アナルプラグに接続されたホースを取り外し、カテーテルのチューブにも専用のクリップで栓をして、尿パックと切り離した。

 

「排泄管理具との接続、解除しました」


「それでは、川嶋さん。こちらのストレッチャーへそのまま移乗しますよ。落ちたら危ないので暴れないでくださいね」


「ン、ん~~~ッ!? んぐうううッ!?」


「では、行きます」


「んむぅうう~~~~~~~ッ!?」


「はーい、暴れないでくださいね~」


 知らぬ間に運ばれてきたストレッチャーには、麻乃が寝転がっていたベッドと同様に抑制帯が散りばめられており、二人の看護師さんによって身体が強制的に移乗されると、スリープサックと抑制帯の連結が行われていく。

 きっと、病室の移動中に麻乃がストレッチャーから転落しないための対応なのだろう。


「ンん~~~ッ!? んぉ、ぉおお~~~~ッ!」


 けれど、麻乃はそんなこと納得も同意もしていない。

 アナトミカルマスクに塞がれた完全な暗闇の中で、自分の身体が好き勝手に動かされる異常事態に身体を魚のように跳ねさせて、全力で暴れる。


「何も心配ないですよ~」


「ン、んんん~~~~ッ!?」


 でも、看護師さんたちは、全力で嫌がっている麻乃に怯まず、暴れる麻乃を強引に抑え込んでストレッチャーへ身体を固定していく。


「すぐに終わりますからね」


「んむぅううううう~~~~ッ!?」


 ただでさえ麻乃には自由が残されていないというのに。

 抗っても、抗っても、麻乃よりも強い力で、肩や足首の動きを封じて、一か所ずつ着実に、抑制帯が固定され、麻乃は無力な塊に変えられていく。


「ンぉ、お、おぉおお~~~~ッ!」


 それは、麻乃が初めてこの閉鎖病棟へやってきた日に見かけた車イスの患者さんと同様の扱いをされていることに変わりなかった。

 あの時に感じた違和感の正体をいまさらになって理解してしまう。

 麻乃は、ここへ連れてこられた瞬間から、看護師さんたちから精神病患者にしか診られていなかったのだ。

 

「ンぐッ、ンん~~~~ッ! んぉ、おぉおおおッ、おご、お、おぉおお~~~~~ッ!?」


 その現実を。

 事実を。

 理解すればするほど。

 麻乃の下腹部の奥は、心臓の鼓動と一緒にドクドクと高ぶり、そこに収まっていない何かを欲しがるようにきゅんきゅんと力を込めてしまう。


「お、おぉお~~~~ッ、お~~~~ッ!」


 自分が終わっちゃってるのに。

 取り返しのつかないさらに深いところへ連れていかれようとしているのに。

 えっちな気持ちが溢れ出して、頭の中がそれだけでいっぱいいっぱいになる。

 

「お、ぉおおおおおおッッ!! おッ、おごっ!? お、おぉおおおおおッ、おぉおおッッ!!」


 まるで、そうされることを自ら望むように。

 全身を包み込む無慈悲な束縛感に酔いしれるように。

 甘い声を漏らして。喉を詰まらせながらも全力で看護師さんに抵抗する。


「これ、ほんとにすごい患者さんですね……」


「そうね。こんなにも暴れちゃうなんて、本当にとんでもない患者さんだわ。早く、新しい病室へ連れていってあげなくちゃダメね」


「は、はい、そうですね」


「急ぎましょう」


「ン、んぐっ、んぐぅうぉおおおおお~~~~~ッ!? お、おぉおおお~~~~ッ!」


 ここに居る限り、麻乃は看護師さんたちに精神病患者として扱われ、正常な女の子として見られることはないのだ。

 それは最初から気付いていた。

 ずっと知っていた。

 わかっていた。

 なのに、その違和感の正体を自分の都合の良いものへと変換して、あの日に告げられた強制処置入院のことさえも、麻乃を驚かすための演技なのだと思い込んでいた。

 ——あくまでもこれは研修で。

 ——何もかも全て偽物の体験で。

 ——疑似的なものだと信じて。

 ——微かな希望を願い続けていた。

 でも、そんなのまやかしだ。

 これは、研修でもなんでもない。

 ただ、えっちなことしか考えられない女の子になるように。

 何一つまともな思考ができないモルモットになるように。

 麻乃の思考を狂わせ、肉体そのものを性欲の塊へと改造するための罠だったんだ。


「上半身の連結終わったわ」


「下半身もできました」


「それでは、川嶋さん。病室の移動していきますよ」


「お、おぉおおおっ、おぉおおおッ!!」


 看護師さんたちは全身を一つの白い塊へ拘束されている麻乃を容赦なく抑制帯で縛り上げ、ストレッチャーへの拘束を終わらせる。

 そして、カラカラとストレッチャーのローラーを転がし、クッションに包まれた病室から仰向けに固定されたままの麻乃を連れ出していく。


「お、おぉお~~~~ッ、おぉお~~~~ッ!」


 無機質な廊下を自分の意思に関係なく移動していく感覚は、健常者の麻乃が体験するのには異質なものだった。

 車イスに座っているときは、抑制帯で縛り付けられていたとはいえ、まだ進行方向に顔を向けていた。

 けれど、ストレッチャーではその感覚もない。

 ただ、一方的に。寝そべっている身体がどこかへと運ばれていく。

 車イスに拘束されながら移動するときよりも、自分が無力な存在なのだと思い知らされる。

 全頭マスクに顔が覆われていて、何も見えない視界だからこそ、なおのことその感覚は強くて。

 不安感から、そこから抜け出そうとしても、抑制帯がギチギチ音を鳴らすばかりで、何も意味を成していないことが自分の存在の否定にさえも思えてきて、ただ空しさが溢れてくる。


「お、おぉおお~~~~ッ!?」


 なのに、麻乃の身体はこの瞬間にさえ興奮を露にしてしまっているのか。下腹部の奥はずっと疼いたままだった。

 スリープサックの締めつけが、ベッドに拘束されていたときよりも鮮明に強く肌に感じて。

 もっと、手足に力を込めてその締めつけ感に抵抗したくてたまらない。

 

「お、おぉお、お、おぉおお~~~~ッ!!」


 だから、麻乃は息を切らしながらもどうにかして拘束から抜け出せないかと全力で抵抗をつづける。

 そうしている間にも、何階なのかもわからない階層で麻乃はエレベーターの外へと連れ出され、ストレッチャーは無慈悲にも長い無機質な廊下を移動していく。

 一本になっている廊下の道中には、ところどころに専用のカードキーを必要とする重厚な電子扉が一枚、二枚、三枚。と用意され、麻乃を乗せたストレッチャーが扉を潜り抜けるたび、帰り道を塞ぐように一枚目の電子扉から順番に閉じていってしまう。

 その厳重さがあらわす場所はどんな場所なのか。

 視界を封じられている麻乃には、知る由もない。


 それでも看護師さんは足を止めることなく奥へと進み。

 廊下の突き当りにある壁に面した四枚目の扉を潜り抜けたころ。


「さぁ、川嶋さん。新しい病室に到着しましたよ」


 暴れすぎてへとへとに成りかけている麻乃へ終着点にやってきたのだ、と言葉を連ねる。


「お、んぉおお~~~ッ!」


 扉のさきで待ち構えていた病室は、何もない殺風景なただっぴろい部屋の空間に、銀色に磨きこまれた冷蔵庫のような外観の扉がコインロッカーのようにずらりと壁一面に立ち並んでいる部屋。

 下段から上段まで最大三段になったそれぞれの扉一つ一つには、No.〇〇〇という記号が数列に関係なく割り振られ、それとは別に赤と緑のランプが点滅していた。

 ストレッチャーに乗せられている麻乃は、そのうちの一つである緑のランプが点灯したNo.99の銀色の扉の前へと連れていかれるが、そこには病室のベッドのようなものは見当たらない。


「ベッドメイキングするので少し待っててくださいね」


「ンんッ! んぉおお~~~ッ!」


 看護師さんはストレッチャーに拘束されている麻乃をそのままに、緑のランプを点灯させた銀色の扉を手前に引っぱる。

 そこからズルズル、と死体安置所のコールドキャビネットのように人が収められるくらいの2mほどの黒いベッドマッドレスが現れたのだが、そのマッドレスの上下には無色透明のラバーを思わせるような膜が鏡合わせに張り巡らせされていた。

 さらにベッドマッドレスを支えている土台の側面にあたる鋼鉄製のフレームには、カテーテルやアナルプラグに接続する排泄管理用のチューブらしきものから、卑猥な形状を模したありとあらゆる大人の玩具じみたステンレス製の性具が散見していた。

 

「ん、んん~~~っ、ん、ンぉおお、おぉぉッ!」


 それらの道具の点検を看護師さんが行っている間も、延々と拘束に抗う麻乃の声が広い室内に木霊する。

 看護師さんはそんな麻乃を横目に、点検を終えた道具をもとの位置に戻して、ベッドマットレスを覆うように被さった無色透明の膜を上段のほうへとスライドするように鋼鉄のフレームごと持ち上げた。

 開け放たれた空間は、人一人が手足を窄めて寝転がるのに最小限の広さしか用意されていないものだったが、そこは紛れもなく、麻乃がこれから寝転がるための唯一のベッドスペースのように見えた。


「それでは、準備ができたので拘束外していきますね」


「スリープサックも脱がしますので、暴れないようにお願いしますね」


「お、おぉおおッ!?」


 看護師さんたちは、スリープサックと連結されている抑制帯に手を付けることはなく、ネックコルセットが嵌められた麻乃の首元から、胸の上下。さらにはウエストや、太もも、膝上に膝下。足首などに施していたラバーのベルトを次々と外し、最後にスリープサックのジッパーを完全に開放していく。


「お、おぉお……ッ! んぉ、ぉぉっ!」


 全身を締め付けていた圧迫感が刹那に緩まり、未だ拘束衣によって束縛されているのにも関わらず、えも言えぬ解放感に麻乃の腰は前後に揺れ動いて、保護衣に包まれてる太ももをこすり合わせてしまう。

 そこからギュチギュチとゴムの擦れる音が全身に伝達してきて、唯一外気との接触をゆるされたクロッチ部分のスリットから伸び出るカテーテルに愛液が滴り落ちる。


「んぅッ、んぉお~~~ッ、おぉ、お!」


 とはいえ、スリープサックから解放されても、麻乃の身体は未だにラバーの繊維に覆われていて、自由はない。

 No.99という数列が胸元に刻み込まれた白いラバーの拘束衣によって、両腕の自由は完全に胴体へ縫い留められてしまってるし、顔にいたってはアナトミカルマスクとフェイスクラッチマスク。そして、ネックコルセットという装具のせいで何一つ自由なんてない。

 

「さぁ、新しいベッドへ移動しますよ」


「お、おぉお~~~ッ!?」


 そんな状態の麻乃を看護師さんたちは強引にスリープサック内から引っ張り出して、無色透明の膜の下にある黒いベッドマッドレスへ移動させようとしてくる。


「あ、だめだめ、暴れちゃだめですよ~」


「んぉおおっ、お、おぉおおッ!」


 だから、麻乃は、何をされるのかわからなくて、抵抗した。

 全力で、力の限り、拘束衣に封じられた身体で肩を左右に振ったり。

 小鹿のようによちよちとした足取りしか取れない不安定な歩幅で、看護師さんがいない方向へ逃げるように縦横無尽に動いて、その場から逃げようとする。

 

 看護師さんの言うとおりに動いてしまったら、先ほどまで拘束されていたスリープサックと同じような何もできない状況に貶められてしまう。

 そんなことには、なりたくない。

 麻乃はただ、気持ちよくなりたいだけなのだ。

 なのに——


「おとなしく言うこと聞いてください」


「お、おぉおお、おぉお~~ッ!」


「体ぶつけたら怪我しちゃいますからね。さぁ、こっちいきますよ~」


「おぉおお、お、んぉおおお~~~ッ!?」


 どんなに身体に力を込めて抵抗しても看護師さんの力に勝てず、指定された方向へと身体が引っ張られていく。

 もともと麻乃は力が強いほうではなく、華奢な体躯の女の子だったけれども。

 この閉鎖病棟にやってきたころよりも、明らかに筋力が低下している。

 その力量の違いは、まるで子供と大人の力比べみたいに思えるほどだった。

 

「お、おぉおおッ! んぉお~~~~ッ!」


 けれども、麻乃は何度でも抵抗する。

 もうすでに、麻乃の抵抗は考えがあっての行動じゃなく、ただの反射的な行動でしかないけど。

 抵抗するこの瞬間だけは、自分がまともである証明だと麻乃には思えたのだ。

 だから——

 だから——


「すっかり興奮しきってるみたい。仕方ないけど、電気ショック流しましょうか。リモコンのスイッチお願いします」


「は、はい……っ!」


 ピッ。


「————————おごおぉおおッ!? お、おぉおおッ!? んごぉお~~~~~~~ッ!?」


 看護師さん同士の会話が交わされてすぐに、強烈な刺激がクリトリスと乳首を襲う。

 脳みそが焼けこげるような意味の分からない刺激に身体がフリーズして、何も見えない視界が暗転したかと思えば、床に転がったまま起き上がれなくなる。


 一体、今。麻乃は何をされたのだろう?


 それを理解しようと思考をめぐらせても、乳首とクリトリスが余韻を残したようにチリチリと疼いてることしかわからない。


「また暴れたりしたら、同じように電気流しますからね。いいですか?」


「お、おぉおお……ッ! おぉおおッ……ッ!」


「ちゃんと言うとおりにしてたら、すぐ終わるので、もう少しの辛抱ですよ」


 床に転がったままの麻乃には、看護師さんの言葉を理解するほどの余裕もなくて、ただ委縮しきったまま、看護師さんに連れられて、ベッドマッドレスのような柔らかい感触の台の上へ寝転がされる。


「まずは必要なものから取り付けていきます」


「はい、お股開きますよ。おとなしくしててくださいね」


「~~~~~~~ッ」


 二人の看護師さんは、ただのお人形になりさがった麻乃にそう告げてから、麻乃の両足をM字開脚するように持ち上げて、拘束衣のクロッチにあるスリット部分から股間を露にさせるとカテーテルとアナルプラグに排泄管理用のチューブを連結していく。

 

「次は、気持ちよくなれるように、おまんこに玩具入れますね」


「そのまま、動かずにいてくださいね~」


「ンぉ……ッ!? お、おぉお!? ン、ンん~~ッ、ん、んん、ンぉ、おぉお~~ッ!?」


 それが完了すると、一人目の看護師さんが拘束衣のクロッチ部分にあるスリットを大きく解放したまま、ぐちょぐちょに濡れそぼった麻乃のおまんこを露にさせ。もう一人の看護師さんが台の側面にいくつか並んでいる卑猥な形状のものから、ひときわ歪でゴロゴロと太く長い形状をしたステンレス製の玩具に、ドロドロのローションみたいな液体をまぶしていく。

 そして——


「はい、入れますよ~」


「んぉおお~~~~~~~~~~ッ!? お、おぉお~~~~~~~~ッ!?」


 グリグリ、とねじ込むように満開に開ききった桜色の穴の中へゴロゴロした野太い異物を強引に押し込めていく。


「一回、出しますね~」


「ンんーーーーッ!? ん、ん、んぉ、おぉおおお~~~ッ!?」


 それが膣壁をかき乱して奥へと入り込んだかと思えば、今度は傘になった部分が膣壁を引きずりながら外へと出てくる。


「はい、もう一度入れます」


「お、おぉおおおおッ、お、おぉおお~~~~ッ!?」


 けれど、またすぐにおまんこの奥へと押し込められ、先端部が中で突き当たって、腹筋が裏側から突き上げられる。


「馴染むまで繰り返しますよ~」


「お、おおおおっ、ぉぉ!? お、おぉおお~~~~ッ!?」


 ずっと待ち望んでいた刺激に、委縮しきっていた麻乃の脳みそが一瞬でぐちゃぐちゃになっていく。

 もう、先ほどまでの不安など何一つ脳裏に残っていない。


「はい、入れますね~」


「ん、んん、ンぉ、おぉお~~ッ!?」


 ——気持ちいい。

 ——すごく、気持ち良い。

 自分の意思に関係なく、おまんこに異物が出入りしてるだけで。

 何もかもが満たされていく。


「抜きますよ~」


「お、おぉおおッ!? んごぉお~~~~~~~ッ!?」


 そのあまりの気持ちよさに、おまんこが脈動して。

 腰がびくびくと跳ねあがる。

 出たり入ったりする冷たい感触が、次第に麻乃の体温と絡み合って、自分の身体と一つになっていく感覚が、ものすごく心地いい。

 麻乃は、ずっと、この刺激を待っていたのだ。

 

「おぉお、お、おぉおおおッ、ンぉ、おぉおお、おぉおおお~~~ッ!?」


 だから、麻乃は与えられる快楽に必死に縋り付く。

 ずっと、ず~っと、それを味わうために。

 それを、自分の一部にするために。

 必死におまんこを震わせて、それをぎゅっと咥えこむ。


「うわ……っ、本当に、これだけを求めてる患者さんなんですね。酷いことされてるのにこんなにも気持ちよさそうに喘いじゃって……」


「ンぉ……ッ!? お、おぉお!? おぉおお~~~~ッ!」


「そうね。かわいそうだけど、この子は拘束されて、気持ちいいことされるのが大好きで仕方がない患者さんなのよ。ここはそういうおかしな患者さんのためにある病室だから、この子にとっては幸せな場所に違いないわ」


「お、おおっ、ぉぉ!? お、おぉおお~~~~ッ!?」


「まだ、私よりも若いのに……」


「んぉおおっ、お、おぉおお~~~~ッ!」


「えぇ。まだ18歳だってね。でもこれがここでの現実よ。心苦しいこともあるけれど、これが私たちの仕事だから、しっかり慣れておきなさい」


「お、おぉおお……ッ! おぉおおッ……ッ!」


「はい、わかりました」


「さて、いい感じに馴染んだので、このままクロッチのジッパー閉じちゃいますね」


「お、おぉおおッ! お、おぉ、おおおおッ!」


 麻乃のおまんこの中へその歪な玩具を完全に挿入し終えると、玩具が外へ出てこないように、看護師さんは保護衣と拘束衣のクロッチにあるジッパーをコードとチューブだけを残して閉じた。

 その間も麻乃は、おまんこの中にある玩具を必死に咥えこんで、快楽を貪ることに耽り続ける。


「次は、特別なお布団掛けますよ」


「足は肩幅に開いたまま、楽な姿勢に伸ばして動かずにじっとしててくださいね」


「フェイスクラッチマスクも外すので、まずはネックコルセットから外していきますね」


「おぉおおっ、おぉ、おおおおッ!?」


 M字に開いていた下半身が、楽な姿勢へと戻されたかと思えば、首を固定しているバックルが緩められ、首の締めつけが軽減されていくとネックコルセットがいともたやすく外される。


「はい、次はフェイスクラッチマスク外しますね~」


「~~~~ッ!?」


 さらに看護師さんは、麻乃の後頭部にあるフェイスクラッチマスクを固定しているハーネスベルトも一か所ずつ緩めていく。


「おぉ……ッ!? おぁ、ぁ……ッ!? おごッ……ッ!?」


 下顎から頭頂部や後頭部までを抑えつけていた締め付けが緩くなり、喉の奥の同じ位置で固定されていたはずのシリコンの塊が口腔内から瞬く間に抜けていく。

 その感覚に、喉がびっくりして、強い吐き気に襲われるけれども。

 麻乃の生暖かい温もりを秘めた異物は、ズルズルと口の中から引き抜かれていき、

 

「おぁ、あ、あはっ、ン、んぶッ――あっ!? ——お、おぇッ……!? お、んぁ、んはぁッ、あ……あ、あぁ……ッ!」


 白く濁った粘液を纏わせたままテラテラと光り輝いて、麻乃の口の外へと姿を現した。


「あ、あう、うぁああぅ、んっ、あぅぃえうはい……ッ! あ、あうういえッ! おぇ、あういえううあいッ!!」


 久しぶりの口呼吸に合わせて、何か喋ろうとするが、アナトミカルマスクによって大開きになっている口からは、意味のある言葉は発せられなかった。

 口の中で歯形にフィットしたマウスピースが顎の動きを阻害して、疲労しきった呂律の動きを不安定にしてしまってるのだ。

 それが嫌で嫌でたまらなくて。

 

「あぁ、ああああッ! うううぅううッ! あぅううううッ! おぇうううう~~~ッ!」


 言葉ならないのなら、最初から言葉じゃない声を叫べばいいと思って、麻乃は赤ちゃんみたいに泣き声をあげて、なんでもいいから訴える。


「それでは、お布団掛けていきますよ。呼吸と給餌用のマスクもあるので、しっかりお口に咥えてくださいね~」


「あぅッ、うぅううッ!? うぅッ、う、んぶッ!? ぶふッ——ご、おぉおッ、おぇっ、ぇえッ!? ——ンっ、ンぉおおおッ、おごッ!? おぉ~~~~~~~~~ッ!?」


 されども、看護師さんは、先ほどの無色透明の膜を下へ降ろして麻乃の上に被せていく。

 黒いベッドマットレスごと完全に麻乃の全身を包み込むように被せられる無色透明の膜は、それなりの厚みを有しているのか、見た目に反してずっしりとした重さを兼ね備えていた。

 顔に当たる部分には、給餌用のシリコンの塊と呼吸補助用の機構が内蔵された鼻から下の顔半分を覆うマスクがあり、鼻腔周辺に外部の機構と繋がる呼吸スペースを作りながら、麻乃の口周辺を完全に覆い隠し、その内側で口腔内へシリコンの塊をぐりぐりと押し込み、喉の奥を掻き分けていく。


「お、おぅ、うぉお、おぉおお~~~~~~ッ!?」


 その脅威的な感覚は、先ほどまで麻乃が咥えこんでいたフェイスクラッチマスクに内蔵されていた異物と大差はない。

 呼吸するための気道を塞ぐか塞がないかのギリギリの長さでシリコンの塊は喉の奥に留まり、鼻でしか呼吸できない麻乃に、ありえないほどの苦しさを与えてくる。


「おぉおおおおおおッ、おぉおおおおおお~~~~~~ッ!」


 それを吐き出したい衝動にかられるけれども、上から看護師さんに無理やり抑えつけられているからか顔から逃がすこともできない。

 そうしてる間に、鋼鉄のフレームがカチッ、と完全に土台と合わさり、鏡合わせになった無色透明の膜が完全にベッドマッドレスを包み込むと。


「バキュームしますね」


「はい、お願いします」


 もう一人の看護師さんが銀色の扉の内側にあるスイッチを押す。


「ンんッ……!?」


 ——ウィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイッ。


 空気を吸い上げるけたたましい機械音が響いて間もなく、麻乃を包み込んだ無色透明の膜で織りなされた密閉空間が、限りなく隙間をゼロに近づけていくように一瞬で収縮していく。


「ンんッ、ん、んぉおッ!? お、おぉおお~~~~ッ!?」


 その得体のしれない感覚に、麻乃は思わず声を漏らす。

 だが、その間にもずっしりとした重みのある膜によって、額も、首も、肩も、お腹も、腰も、太ももから、足の指先のすべての何もかも、一緒くたに抑えつけられていく。


 ——ミシ、ミチチチッ、ミチッ。


「お、おぉおおッ、おぉおお~~~ッ!?」


 次第にその重みはさらに増して、肌の至る部分をなりふり構わず圧迫する。

 少し前まで自由のあった両足は肩幅に開いたまま完全に動かせなくなり、わずかに震える麻乃の柔肌の動きさえも許さないように密度を高めていってしまう。

 

 それなのに——


 ————ウィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイッ。


 けたたましい機械音は止まることなく続いて、今度はベッドマッドレスごと麻乃の身体のすべてを押し潰してくるかのように、強い圧が上下から襲い掛かってくる。

 

 ——ミシッ、ミチチチチチチチチッ。


「お、おぉおお~~~~っ、おおっ、お、おぉおお~~~~ッ!?」


 肩を震わせて、腰をグネグネと震わせても、それは変わることはなく。

 どんなに藻掻いても、足掻いても。おまんこや、お尻の穴、そして尿道など。下腹部に残り続けている異物感をそのままに、得体のしれない抱擁感が麻乃の肉という肉を小さく圧し潰し、収縮させるように、圧縮させてくる。


「ンお、おぉおおおっ、おぉおぉぉおおおおお~~~~ッ!?」


 そうして出来上がっていくのは、しわ一つ存在しない無色透明な膜によって黒いベッドマッドレスの表面にパッケージ化された白い拘束衣姿のマネキン。

 その外観は、一枚の板のように空気が触れる僅かな隙間も存在せず、拘束衣が織りなすベルトの質量から乳首を穿つ十字のリングの形。さらには華奢な体躯に秘められた一つ一つの骨格の形状さえも、無償透明の膜の上に浮き立たせられていた。


「おぉおおおッ、お、お、おごっ、おぉおおおおッ、ぉおぉぉおお~~~~ッ!?」


 経験したことのない圧倒的な締めつけ感に、麻乃はただ声を漏らすように叫ぶ。

 だって、この拘束は、今までの比にならないくらい完全に麻乃の身体を拘束している。

 まるで、地の底に埋められてしまったかのような。

 とてつもなく、大きな存在に全身の自由すべてを鷲掴みにされているかのような。

 麻乃のませた力では、絶対にどうすることもできない完璧な拘束を施されちゃっている。

 

 これは、——ダメなやつだ。

 絶対に、受け入れちゃいけない。

 このまま続けられたら、麻乃は——二度と、元の生活にはもどれなくなっちゃう。


「んごぉおおおおおッ! お、おぉおおお!! お、おごッ、お、ごっ!? お、おぉおおっ、おぉおおおおおお~~~ッ!?」


 ピンク色に染まっていた思考が、瞬く間に正気へと戻り。

 死に物狂いで声を上げる。

 けれども。


「次は、給餌と呼吸管理するためのマスクに呼吸用のホースと給餌用のホースを着けますね」


 看護師さんは無色透明の膜と一体化している黒いマスクの外部にある接続部へ、それぞれのホースを確実に繋ぎ止めていってしまう。


「——んぉ……ッ!? お、おぉお……ッ、——お……ッ、————おぉ……ッ!?」


 その刹那だ。

 呼吸が自由にできなくなり、途端に息が苦しくなる。

 今まで自由にできてた呼吸が、なぜかままならなくて、パニックになって、暴れる。

 でも、手足のどこも動かない。

 無色透明の膜にパッキングされた身体は、ベッドマッドレスと一体化したまま、麻乃を肉の塊に仕立て上げている。


「おぉお…………ッ、お————ッ、お………ッ、おぉお……ッ!?」


 苦しくて。

 息ができなくて。

 肺が酸素を求めて、暴れる。


「お、おぉお……ッ、お、おぉ……ッ、お、おぉお……ッ、お————ッ、おぉお……ッ!?」


 なのに、空気は少ししか吸えなくて。

 吸っても吸っても楽にならないのに。

 なんでか呼吸は続けられる。

 苦しいのに。

 空気がほとんどないのに。

 かろうじて、息をしてる。


 その意味のわからなさが、恐くて。

 一瞬にして身体が委縮して、全身が縮こまったまま動けなくなる。


「おぉお……っ、おぉ……ッ、お……ッ、おぉお……ッ」


 だから、ただ必死に呼吸だけを意識して。

 鼻から酸素を吸うことだけに集中する。


 吸って、吐いて。

 吸って、吐いて。


 ずっと、それだけを繰り返す。


「~~~~ッ、っ、~~~~ッ」


 そうしている内に、息をするのが少しずつ楽になってきて。


「んぉおお……っ、お、おぉおお……っ、おぉお……っ、~~~~~ッ!」


 息が苦しかったのは、それほどまでに酸素を浪費していたからなのだとやっと理解する。


 ふすぅー。ふすぅー。と。

 興奮することなく、静かに落ち着いて呼吸していれば、苦しくなることはないらしい。


「~~~~~ッ、~~~~~ッ、~~~~~ッ!」


 だから、麻乃は呼吸に集中して。

 ゆっくりと「ふすぅー、ふすぅー」と意識的に肺を動かす。

 そうしていないと、あっという間に胸が苦しくなってしまうから。

 それが嫌で、がんばって息を整え続ける。


「どうやら、やっと呼吸に慣れてきたみたいね」


「そうですね」


 二人の看護師さんはそんな麻乃の様子を確認しながら、周囲に道具を残さないように麻乃から取り外した拘束具をストレッチャーの上に回収していく。

 そして、数分もかからず、その片づけを済ませ。


「それでは川嶋さん。私たちはこれで失礼しますね」


「最後に扉だけ締めていきますよ」


 麻乃を磔にした土台の外側にある銀色の扉へと手を掛ける。


「おぉお……ッ!? おぉおおおッ……ッ!? —————ッ、お!?」


 足元のほうへ身体がズルズルと移動していき、どこかに突き当たるようにして、麻乃を乗せた台は動きを止める。

 それがコールドキャビネットのような銀色の扉が閉められたことなのだと麻乃は知らない。


「~~~~~ッ、~~~~~ッ!?」


 それでも、ふすぅー。ふすぅー。と麻乃は呼吸を繰り返し息をする。

 しばらくして、ピピッ。という機械的な音が鼓膜に聞こえるとガチャンッ。という鉄と鉄がぶつかような物々しい音が狭い空間に響き渡って、自分が狭い空間の中に収納されたのだと理解してしまう。


「おぉお……ッ!? お、……ぉぉ……ッ、お、おぉお……ッ!?」


 そうして、訪れたのは自分の声だけが反響する静寂の世界。

 自分の鼓動の音と一緒に、呼吸をしている感覚だけが身体に音として伝わってくるだけで、それ以外は何一つ聞こえない。


「~~~~~~~ッ!? おぉお、ぉおおおおおおおおおおおッ、~~~~ッ!?」


 その静寂に叫び声をあげても、現実は何も変わらない。

 身体は圧縮されるような強烈な抱擁感に包まれたまま、わずかな酸素を求めて呼吸を繰り返すことしか許されず、麻乃の身体は何一つ動かすことはできない。

 なのに、お尻の穴と、おまんこの中に入っている異物が、そんな絶望的な束縛感の中で、得体のしれない快楽を脳裏へと想起させてくる。

 もう、ダメなのに。

 全部終わっちゃってるのに。

 泣き叫ぼうとする身体は完全に拘束されて、息を乱すことも許されないのに。


「おぉおおお…………ッ、ぉお…………ッ!」


 気持ちよくなりたくて。

 めちゃくちゃに、壊してもらいたい。

 もう、どうなってもいい。

 とにかく、気持ちよくしてほしい。


 そんな狂った願望だけが麻乃の脳裏を——ずっと埋め尽くしてる。


 だから、だろうか。


 ————ヴヴッ、ヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」


 おまんこの中で激しい振動が突如として沸き起こり、麻乃の脳みそがぐちゃぐちゃに揺らされる。


「ン、ンん~~~ッ、!? ~~~~ッ、ッ、~~~~~ッ、おぉッ!?」


 咄嗟に、その刺激に対処しようと身体を動かそうとするけれども、麻乃の全身はベッドの一部になったかのように無色透明の膜に完全に磔にされていて、どこも動かない。

 無色透明の膜の中で、ただ、ビクビクと震えるだけ。

 

 ————ヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「んぉ、おぉおお……ッ!? おぉお~~~~ッ、っ、~~~~~~ッ!?」


 なのに、玩具は止まることなく、おまんこの中で激しい振動音をさらに強めて麻乃をさらなる快楽の淵へと追いやってくる。

 それが最高で。

 堪らなく気持ちよくて。


「~~~~~ッ、っ!? んぉ、おぉおおッ……ッ!?」


 なりふり構わずおまんこを締め上げて、震え上がる玩具を全力で噛みしめる。

 

 ————ヴヴッ、ヴヴヴヴヴヴヴッ、ヴィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイッ。


「お、おぉおお~~~ッ!? ンぉおおおおッ~~~~~ッ!?」


 麻乃が求めれば求めるほど玩具の振動はさらに強まり、頭の中で、何かがはじけ飛ぶ。


「——ぉごッ、お……ッ、—————んぉぉおッ……ッ、ッ!?」


 頭の奥が明滅して、もっともっと気持ちいいのが欲しくなって。

 拘束されている身体を無作為に暴れさせながら、腰を前後に揺さぶって快楽に全神経を集中させる。

 けれど——


「———————ッ、お、~~~~~ッ、ッ、お!?」


 興奮しきった熱量で呼吸していると、あっという間に酸素が足りなくなって、息ができなくなる。

 空気を吸おうと必死に鼻で酸素を吸い上げても、わずかな量しか空気は吸えなくて、つまりに詰まった肺が悲鳴を上げる。


 —————ヴヴヴヴッ、ヴヴッ、ヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴヴウヴウヴヴウヴヴウウヴウッ。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ、ッ!?」


 なのに、玩具は止まらず動き続ける。

 おまんこの中で、ずっと、ずっと。

 膣壁をぶるぶると刺激して。

 隣接する肉という肉と震わせて、お尻の中のアナルプラグや、クリトリスに嵌り込むリングさえも巻き込んで、麻乃の下腹部を全体的に刺激する。


「おぉおお~~~~~ッ、おっ、お、おぉっ———————おごっ、ぉおおッッ!?」


 自分が息をしているのか。

 生きているのかもあいまいで。

 真っ白な思考は、自分が何者であるのかも教えてくれない。

 ただ必死に反射的に動く身体が、与えられる刺激を享受するように受け入れて。

 いつまでも続いていく刺激の中で、ふすぅー。ふすぅー。と呼吸を繰りかえす。


「お、おぉおおッ、んごッ、お、おぉ~~~~~~~ッ!? —————————ッ!?」


 そんな麻乃の喉の奥へ、突然何かが流し込まれてくる。

 味も匂いも感じない。

 何が含まれているのかもわからないドロドロの液体が、気道を塞ぐギリギリの長さで喉に居座るシリコンの先端部から滝のように流れ出してくる。

 それは、麻乃の胃袋をあっという間に満たしていき、何も思考ができていない麻乃の身体を高ぶらせて、さらなる刺激を欲しがるように、身体の感覚を作り変えていく。


 まだ、たりない。

 もっとほしい。

 もっと、もっと、気持ちよくなりたい。

 めちゃくちゃになりたい。


「~~~~~ッ、っ!? んぉ、おぉおおッ……ッ!?」


 苦しくて、息をするのも、激しく脈打つ心臓も、絶え間なく蹂躙されてるおまんこも、全部、全部、精一杯だというのに。

 麻乃の身体は狂ったように快楽だけを求めて激しく震えて止まらない。

 繰り返し、繰り返し、まっさらな思考で、与えるられる快楽に全神経を集中させる。


「お、おぉおおおッ、おぉ~~~~~ッ!? お、んぉおおおおおおお~~~~~~ッ!?」


 だって、麻乃がどんなに嫌がって、抵抗したところで、この現実からは逃げられない。

 

 ただひたすらに。

 淡々と。

 麻乃の意思に関係なく。

 麻乃の身体は快楽を求めて呼吸を繰り返すのだ。

 それは、途切れることなく。

 連続して、永遠に続いていく。


 ——10分。


「お、おぉおおっ、!? お、おぉお~~~ッ!?」


 ———ヴヴヴッ、ヴヴヴヴッ、ヴィィィィィィイイイイイイイイイイイイイッ。


「おぉおお~~~~ッ!?」


 ——20分。


「おぉ、お、おおおッ、お、おぉおおッ、おぉおおお~~~~~~~~~~~~ッ!?」


 ———ヴヴッ、ヴッ、ヴヴヴィィィィィィィイィイイイイッ。


「おぉお、ぉおおおッ、お、おご———ッ、お、おぉおお~~~ッ!?」


 ——30分。


「んぉ、おぉお——————ッ!? お、おぉお~~~~~ッ!?」


 そうやって、時間だけが過ぎ去り。時が流れても、その瞬間は終わらない。

 終わってくれない。


「おぉ、お……ッ、おぉおおッ! おぉおおっ、おぉお~~~~ッ!? ———おごっ、おッ!?」


 ———————ヴヴヴヴッ、ヴヴッ、ヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴヴウヴウヴヴウヴヴウウヴウッ。


「おぉおッ、お、おぉおおッ!? ————————ッ、お、—————————おぉおおッ!?」


 1時間でも。2時間でも。この瞬間は続いていく。


 そこに思考というものは存在せず。


 いつになっても楽にならない呼吸を強制されながら、おまんこの中をたゆまなく玩具に刺激されて。

 麻乃は、真空パックされた身体を、なりふり構わず震えさせ。

 ずぶずぶに濡れそぼったおまんこから、愛液が終わりなく溢れ出すように。

 ただ、真っ白な多幸感で脳内を満たし続けるだけ。


「—————————ッ、お!? おぉおおッ!?」


 そんな麻乃のお尻の穴から、今度は浣腸液が流し込まれてくる。

 ぐるぐる、と掻きまわれる不快感に腹を捩らせて、耐え忍ぶも。

 いつになっても、それは身体の外には出ていくことはなく、逆止弁を閉じたアナルプラグが排泄をせき止めてしまう。


 —————ヴヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴッ、ヴヴヴヴッヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ。


「ンぉぉおおおッ、おごぉおおッ、おぉ~~~~~~ッ!?」


 その間も麻乃のおまんこの中では玩具が激しく暴れ動いて、性的な快楽を脳内へリピートさせてくる。


「お————ッ、おぉ、お——————ッ、おぉお……ッ、お~~~ッ!?」


 次第に酸素が足りなくなって、肺が強く締めつけられては、圧縮された身体を暴れさせる。


「~~~~~~ッ、お、おぉ、おッ、~~~~~~~~ッ、おぉおッ!?」


 でも、麻乃の身体に自由はない。


 真空パックされた身体で、ただひたすらにお腹の不快感に耐えながら、思考を真っ白にして、与えられる刺激を享受するだけ。


 それがずっと、ず~っと。


 終わることなく繰り返されていく。


 頭の中も。身体も。何もかもめちゃくちゃにされたまま。麻乃はここで管理され続けるしかない。


 なぜならそれが、麻乃がここにいる理由なのだから————。






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