SakeTami
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家出少女がお嬢様との百合拘束プレイにどっぷりはまってしまうお話し(その1)

 そこに現れた光景をどう表現すればいいのだろう。


 学校の教室よりも若干広い無機質なコンクリートの空間が目の前に広がり、天井には照明器具とは別に、機械仕掛けのレールのようなものが備え付けてある。

 そのところどころに、レールに沿って動くであろう釣り糸のような鎖が垂れ下がっていることから、たぶんその鎖に何かを繋ぎ合わせて釣り上げたまま動かしたり、もしくはそのままその位置に何かを繋ぎ止めておける仕組みになっているのだろう。

 そんな物々しい設備の下には、なぜかワンルームのような生活用の家具が用意されている。

 壁掛けのTVモニターに、大きいソファーやテーブル。人が三人くらい横になれそうなほど大きいベッド、など。


 ただ、それらの家具には一部おかしな点がある。


 設置されている大型家具はどれもこれもゴム製のものやステンレスの鋼鉄製で統一されていて、黒色と銀色が織り交ぜられた奇妙な色合いのものばかりなのだ。

 ソファーとベッドは黒くふてぶてしいゴムそのものでできているように見えるし、ソファーの近くにあるテーブルの足のところは鉄格子みたいにステンレスの棒が並んでいて、遠目からだとそれは一種の檻のようにも見える。

 なのに、それら違和感だらけの家具とは隔絶されたファンシーな印象の可愛らしいお人形さんが、部屋のあちこちに飾られているから、少女的にもかかわらず、アダルトチックな、かなり歪な空間が形作られてしまっていた。


 そして、この空間の何よりも奇妙な場所は、現在の私とサユリがいるとこから向かって左手側にある区画だけ、リビングの壁を無理やりこじ開けた狭い空間があり、その出入り口には鋼鉄の鉄格子がガッチリと聳え立ちながら、小さな牢屋を作り出してしまっていることだ。

 どこからどうみても、その空間だけは生き物を閉じめておくために用意された場所にしか見えなかった。


「え~っと、ねぇ、コトリ……? 大丈夫……?」


「あ、ごめん。ちょっと情報量が多すぎて脳の処理が追いつかなくって……」


 適当なことを言って、ぼうっとしていた言い訳をするけれど、私の頭の中は、なにがなんなのか理解しきれていない。

 一体サユリは、この場所で私に何をしてほしいのだろう……?

 まったくもって想像がつかない。

 

「だよね。びっくりするよね。でも、これから大事なことを伝えるから耳を澄まして聞いてね?」


「大事なこと?」


「うん、とっても大事なことだよ」


 サユリはそういって、私に向き直ると黒いワンピ―スに覆われた胸に手を当てて一呼吸置く。

 そして、私の目を淡い紫紺の瞳で真っすぐ見つめながら口を開いた。


「これからコトリには、ここで――私のペットになってほしいの」


「—————え?」


 サユリから放たれる「ペット」という単語に思考がフリーズする。

 世間一般でいうペットといえば、アレだ。

 ネコとかイヌとか、そういった可愛らしい動物のことだ。

 けど、サユリの言っているペットはそれとは違う類のものに感じる。

 

「ペ、ペットって……ネコとかイヌの、あのペット……?」


 それを確かめるために問いかけてみるけど。


「うん、そう。そのペット。――でも、わたしがコトリに求めてるのはただのペットじゃなくて、手とか足とかお顔とか。身体の色んなところを拘束具や縄で束縛されて、身も心も、何もかもわたしに管理されたまま、ネコやイヌ以下の性的な愛玩動物としてここで飼われる存在になってほしいの。ここはそのために作った場所だから」


「——————ッ」


 サユリは、いままでと何一つ変わらない落ち着いた声音で、そう言ってのける。

 私を人間として、ではなく。

 性的な消費を目的とした愛玩動物のペットとして、ここで飼いたい。と。

 最初から、そのつもりだった。と明言するように。


「やっぱり、ダメかな……? コトリなら、ぴったりだと思ったんだけど」


「えっと、その……なんていうか、ちょ――ちょっとまって! サユリはそれ、ほ、本気で言ってるの? それって、サユリが私をここに監禁するってことだよね? 私の自由を束縛して、逃げられないように手も足も拘束して、サユリが満足するまで私をここに閉じこめて……その、わ、私と一緒に……え、えっちなことをするって、ことだよね……?」


 もう一度、言葉の意味を確かめるように。

 サユリの真意を確認するために。

 私は、聞き間違いじゃないかどうか、サユリへ問いかけてみる。


「うん、そういってるんだよ。コトリを”わたしのもの“にしたい。コトリの全部を”わたしだけのもの”にしたいの」


「~~~~~~ッ!?」


 でも、サユリは本気だった。

 本気で私のことを――愛玩動物然り、所有物にしたがっているのだ。

 それはサユリの真っすぐな瞳を見ればわかる。わかってしまう。


「もちろん。コトリが私のペットになっている間は、それに見合った報酬をあげる。それに、ここにいれば、コトリは衣食住に困ることはないし、コトリが望むものは、わたしがなんでも与えてあげるよ」


 そう——これだ。

 出会ったときから、サユリは——こうだった。

 助けを求めた私の手を引いてくれて。

 言葉を紡げない私をリラックスさせるためにジュースも奢ってくれて。

 私が抱いているどうでもいい悩みを何もかも受け入れてくれて。

 疲れ果てた私の身体を休ませるために、温かいベッドや彩り豊かな朝食、それにお風呂までも用意してくれた。

 サユリは、私が望むものを何もかも与えてくれるのだ。

 自分で自分を殺そうとしていた私なんかよりも、サユリは私を大切に扱ってくれる。

 そんなサユリが、私みたいなどうしようもない存在を、ペットにしたい。と強く求めてくれている。


 願ってくれている。


 私を――

 東雲小鳥を――

 所有したい――と、心の底から深く望んでくれている。


 もし、その希望を叶えられるのが、私しかいないというのなら。

 私だけがサユリのペットになれるというのなら。

 私は――


「わ、私のほうこそ――サユリのペットになりたい!」


「え、ほんと……? ほんとにいいの……? コトリは後悔しない……?」


 私の言葉が信じられない。という様子で、サユリは言葉を連ねて私の真意を確かめてくる。

 正直、私も感情が昂っていて自分が何を言っているのかいまいちわかってない。

 たぶん、私はとんでもないことを同意しようとしているのだろう。


「後悔しないに決まってるよ。というか、サユリは私なんかでいいの?」


「なんかじゃないよ! わたしは、コトリじゃなきゃ嫌だよ! コトリがいい。コトリだから、いいの!」


 そんなズルい言い方をする私のもとへサユリは駆け寄ってきて、ぎゅっと手を握ってくれる。

 震えた手でしっかりと私を支えるように。


「わ、私も……っ、サユリじゃないご主人様は嫌だから。私たち、両想い……かも!」


 だから、私も。

 その震える手が傍から離れないように、サユリの手をぎゅっと握る。


「そっか、両想いなんだ? コトリもわたしを選んでくれるんだ? それは、なんか嬉しい……っ! すっごく嬉しい……っ!」


 無邪気な感情を剥き出しにしたサユリが飛びついてきて、肌と肌が触れ合う。

 お互いのぬくもりが絡み合って、熱がじわじわと溢れ出してくる。

 それが、とても心地よく感じるのはいけないことだろうか。

 女の子同士でお互いを求め合って、主従関係まで作り上げて。

 変じゃないだろうか。おかしくないだろうか。

 正直、私にはわからない。


「うん、だからその……お手柔らかにお願いしますね……ご、ご主人様……?」


 でも、私はサユリのペットになることを受け入れた。

 受け入れてしまった。


「そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。コトリの嫌がることはしないし、わたしのことが嫌いになったら、いつでも出て行っていいから」


 なのに、いつでも出て行っていいよ。なんて、明らかに矛盾してることをサユリは言い出す。

 これは、サユリの優しさなのだろう。

 けれども、なんだろう。

 その優しさを享受するのは間違ってる気がする。

 私は本当の意味でサユリのペットになりたい。

 人間みたいな自由なんて、愛玩動物になる私には必要ない。

 ただ、私という存在を求めてくれるサユリの傍に、ペットとして居続けたい。


「いつでも出て行っていいなんて、そんなのダメ。私をペットにするんだったら、私がどんな姿になっても最後まで鎖で繋いで面倒みてよ。私のご主人様になるんだったら、それくらい本気で私を愛してほしい」


 だから、私はその想いをサユリに伝える。

 どうせ、サユリと出会っていなければ私はここに居なかったし、どうなっていたのかもわからないのだ。

 もしかしたら、最悪な選択を選んでいた可能性だってある。


「え、それって……一生わたしに監禁されてもいいってこと? わたしに何もかも管理されちゃうんだよ? もしも、コトリが外に出たい、自由になりたい、って願っても、わたしはコトリのこと絶対手放したりしないよ? ずっとずっとコトリをここに閉じ込めて、わたしだけの所有物に、ペットにしちゃうんだよ? 本当にいいの?」


「うん、サユリになら、私の全部をあげていいよ」


「そっか……。それならもう。コトリのこと――自由にしておかなくていいよね? わたしの好きなようにしてもいいよね?」


「う、うん……っ」


 じゃあ、こっちに来て。と、有無もいわさずサユリは私の手を引いて、大きなベッドへ私を連れていく。

 ベッドには掛布団の類は見当たらず、ただシンプルに黒いゴムみたいなシーツに包まれたマットレスが設置されていた。

 サユリはその黒いベッドの中心に私をリードして、ちょこん、と座らせるとベッド下の引き出しから紅色の麻縄を取り出して傍に寄ってくる。


「両手を後ろに回してくれる……? 今からこの縄で、コトリのこと縛るから」


 見たことがないくらいサユリはほっぺたを赤く染めながら、束ねられた麻縄を目の前で解いていく。

 何メートルあるのかわからない長い麻縄がマッドレスの上にボト、ボト、と落下して音が鳴るのが、やけにいやらしく感じる。


「え、えっと……っ、こ、こういう感じでいい……?」


「うん、初めてにしては上手だよ。でも、腕と腕が重なるように少しだけ手首の位置ずらすね」


 なんとなく後ろに回した手首が、サユリの細い指にぎゅっと掴まれて、両腕が交差するように背中の高い位置へ上げられる。


「——あ」


 そこへ麻縄の硬くて柔らかい感触がしゅるしゅると擦れてきて、手首をぎゅちっと束ねてしまった。


「痛くない?」


「うん、平気……っ」


 そう問いかけながら、サユリは私の肩や二の腕の辺りを何度もさすってくる。

 手首の位置を低く下げるか高く上げるか迷っているみたいだった。


「じゃあ、胸の前にも縄を掛けていくね」


 けど、すぐに適切な位置を見つけたのか二の腕の外側を巻き込みながら、胸の上に二本の紅い麻縄が移動してくる。

 それが胸の上で真横にぐるっと一周したかと思うと、手首を束ねている縄に後ろで絡まりあってから、再び戻ってきて、胸の上ごと二の腕を胴体に縛りつけてしまう。


「次は、下だよ」


「……ん」


 吐息交じりに耳元でサユリが囁くと再び二の腕を巻き込みながら、今度は胸の下にも紅い麻縄が巻きついてくる。

 一周して、手首の縄に絡まり、もどってくるように、二周する。

 すると、今度は肘の辺りに擦れながら、二本の縄が表に出てきて、胸の下の縄に鉤爪のように引っかかりながら後ろへ戻っていく。


「ン……っ、ぁ……」


 それが、左右両方で行われて、手首の縄がぎゅちちっと上に吊り上がると。


「肩にも通すよ」


 片側の肩の上から胸の中心に縄が下りてきて、胸の谷間を強調するように縄が絡み合う。

 役目を終えた縄が今度は反対側の肩を通って背後へと戻っていく。

 そして、ウエストにも真横に縄が巻きつけられて、背中でぎゅちぎゅちと縄の音が響いたと思えば。


「どう……? 痛いところはない……?」


「う、うん。大丈夫」


 私の両腕は後ろ手に拘束されたまま、完全に動かせなくなっていた。

 

「これでコトリの両腕は使い物にならなくなっちゃったね」


「そ、そうなの……?」


「うん、今のコトリじゃ縄抜けは無理だよ」


 縛り上げた私の腕が動かないのを確認するように、サユリは各所の縄の閉まり具合をたしかめながら、私の肌の上をそっと撫でまわしてくる。

 その擽ったさに、変な声が漏れそうになるのを我慢しつつ、縄の束縛から抜け出せるかどうか、息をひそめながら確かめてみるけど、ぎちぎちと縄が肌に擦れるだけで、ほどける気配はない。

 ほんの少しだけ身を預けただけなのに。

 いともたやすく、両手の自由がなくなっていた。


「足も縛っていい?」


「え、足も?」


 そこに、足も縛る。とサユリに言われて、思わず両手に力がこもった。

 おかげで、ミチチっと縄が手首に食い込んでくる。

 けど、何も起きない。

 両手は背中から動かせないまま、そこに固定されているだけだった。


「このままだと、コトリは歩いて逃げ出しちゃうかもしれないでしょ?」


「い、いや、私は逃げたりなんかしないよ?」


「ほんと? 逃げないって言いきれる?」


「う、うん。逃げないよ」


「でも、コトリのこともっと縛りたいなぁ」


 後ろ手に固定されたまま、動かせない両腕を覆うように、背後からサユリが抱き着いてくる。

 おまけに、ねだるように耳元でささやかれる言葉が、真っすぐで。独占的に狂っているから、どう答えればいいのかわからなくなる。

 だって、足も縛られたら私は本当になにもできなくなっちゃうのだ。

 両手だけでも、動けないのに。足も。なんて。あんまりにも鬼畜だ。

 

「い、いいよ。サユリが縛りたいなら、縛って」


 でも、私はサユリを否定するつもりはない。

 今も胸の奥は激しく動悸を繰り返して、自分がどう息をしているのかも、正直わからないけれども。

 私は、サユリの全部を受け入れると決めたのだ。


「じゃあ、縛ってくね」


「うん……っ」


 ベッド下の引き出しから、サユリは新たな麻縄を取り出して、その縄を私の足へ這わしてくる。


 ——しゅる、しゅるる。ぎ、ぎちちっ。


 膝を折り曲げた状態のまま、片足ずつ施されるその縛り方は、独特で。

 太ももと脹脛が重なり合うところに、梯子模様の縄目が出来上がっていく。

 またも、身体の自由が失われていく。


「————ッ、っ」


 片方の足が縛り終えたところで、試しに足を開こうと力を加えてみるけれど、縄の縛めに邪魔されて私の足は膝を曲げたまま伸ばすことができなかった。

 

「はい、こっちもできたよ」


 その束縛感に意識が吸い込まれている間に、反対側の足も縛り終わり、強制的に正座をするような感じで、ベッドの上に座りこむ。


「これで、コトリは歩けなくなっちゃったね」


「~~~~っ」


 サユリにはっきりと明言されてしまうと、身体の自由がほとんどなくなったってことに気づかされる。

 今の私は、このベッドの段差から下へ降りることさえ、自力でできないだろう。

 それどころか、もしも、おしっこしたくてトイレに行こうとしても自分ではパンツを下げることさえできないし、そもそも、トイレにたどり着くこともできない。

 私はもう、自分で自分のこともできない囚われのお姫様と完全に同じ状態だ。

 そう思うと、より一層胸の奥が苦しくなって、思考がぼやけてくる。


「手足の自由を奪われた気分は、どう……?」


「わ、わかんない……っ、けど。その、ドキドキしてるよ……?」


「ほんと? 嫌だったりしない?」


「うん、今のところは大丈夫、かな……?」


「じゃあ、コトリはやっぱり素質があるのかも? ねぇ、もっと拘束増やしていってもいい?」


「ま、まだやるの……?」


「うん、コトリのこと。もっと拘束して、めちゃくちゃにしたい」


「~~~~~~~っ」


 なのに、サユリの願望をぶつけられて、さらに顔が熱くなる。

 めちゃくちゃって、なに?

 私、このあとどうなっちゃうの?

 サユリに何をされちゃうの?

 何もかもわからないことだらけで、頭の中がえっちなことで埋め尽くされていっちゃう。


「あ、ごめん。コトリはわたしのペットだから、わたしの自由にしていいんだったね」


「え、え……っ、? あぁ、う、うん……っ!」


 なんでだろう。

 わたしのペット。ってサユリに言われると、身体がゾクってした。

 私が、サユリのペットだから……?


「ふふ、戸惑ってるコトリ、可愛いよ」


「~~~~~ッ」


 サユリは私にニコっと微笑みかけながら頭をなでると、一度傍を離れて、いくつかの道具をべッド下から取り出し、私の隣へ並べていく。

 一つ目は、赤くてまん丸いゴルフボールみたいなのに黒いストラップがついたもの。

 二つ目は、ゴーグルのように目元を覆う形に特化した幅広の黒い革ベルト。

 三つ目に、金色に輝くDリングが付属された朱色に染まる重厚な革ベルト。


「まずは首輪から嵌めてあげるね」


「うぁ……っ」


 サユリは、その中の三番目。朱色に染まる重厚な革ベルトを手に取ると、正面からそれを私の首元に宛がってきた。

 優しく包み込むように。幅広い大きさのベルトをぐるっと一周首に巻き付けて。――バックルにストラップを通していく。

 

「苦しくない?」


「う、うん」


「もうすこし、締めるね」


「い、いいよ……っ」


 なのに、サユリは首輪の適度な締めつけ具合を当たり前のように私と一緒に探しながら、バックルのピンへストラップの穴をねじ込み、行き場を彷徨うストラップの先端を首輪のポケットの中へしまい込んでしまった。

 それだけで、強烈な圧迫感が私の喉元を支配してきて、手足だけでなく、私の存在そのものが拘束されてしまったような錯覚をおぼえる。


「次はこれね」


 サユリが二番目に手に取ったのは、黒色の革ベルト。

 外側の見た目は、ストラップとか金具が配置されていて訝しいけど、内側は無地でいて、柔らかそうな見た目をしてる。

 構造からして、目隠しなのは間違いない。


「どうして、目隠しなんてつけるの?」


「どうしてって、わたしがコトリに着けたいからだよ? それに、目が見えないほうが興奮すると思うの」


 その目隠しの存在が私には意味不明すぎて、子どもみたいな疑問をサユリにぶつけるけど、サユリは、問答無用でその目隠しを背後から私の目元へ重ねてきて、頭の後ろでストラップを絞り、バックルで固定してしまう。


「どう? 光が漏れてたりしてない?」


「うん。ぜんぜん、何も見えない……」


 それだけで、私の視界は完全に暗闇に支配されて、何も見えなくなってしまった。

 心なしか、手足を縛っている縄の感触が強くなったような気がする。

 視覚の情報が遮断されるだけで、身体はこんなにも敏感になってしまうらしい。


「じゃあ、最後の奴は、お口に咥えてもらうね」


「く、口に咥えるの……?」


「うん、このボールギャグでコトリの口の自由を封じるから」


 何も見えない視界の中で、もぞもぞ、とサユリが動く音だけが聞こえてくる。と思えば、カラカラ、と金具同士が擦れるような音も耳元で聞こえてきて、刹那に冷たいシリコンの塊がぴとっ、と唇に触れた。


「はい、コトリ。――口開けて?」


「————っ」


 暗闇から、耳元でそう囁かれて、胸の奥を鷲掴みにされたような気分になる。

 手足を縄に縛られて、視界さえも塞がれて、何も抵抗できないのに。

 サユリに、口も封じられちゃう。

 本当に、これを咥えちゃっていいんだろうか。

 後悔しないんだろうか。

 迷いに迷う。

 けど――

 

「ン……んぁ……ッ、あ――あぅ、んふッ!? んむッ、んぅうッ」


「もっと大きく開けて。奥深くまでちゃんと咥えるんだよ?」


 サユリは待ちきれなかったのだろう。

 小さく開いた私の唇を押しのけて、シリコンの塊が強引に口の中に入ってくる。

 グイグイ、と入ってくるその異物に。自分が何をしているのかわからなくなる。

 でも、私はサユリに言われるままに無我夢中で、それを咥えこむ。

 すると、ぴったりと歯の内側に納まる場所があって、口の中がシリコンの塊に綺麗に埋め尽くされた。

 

「うん、よくできました。そのまま吐き出さないようにね」


「ンんッ」


 口の中を埋め尽くすそれを私がしっかり咥えこんでると、頬を真横に割くように、頭の後ろへ向かうストラップが目隠しと同じ要領で締め上げられていく。

 ぎゅ、ぎゅぎゅっ、と私のほっぺたにストラップが痛いほど食い込んで、そこからズレないように。動かないように。

 サユリは丁寧にストラップをバックルに嵌めこんで確実に固定した。

 

「ングっ、んぅうッ……っ」


 試しに口の中に留まる異物を舌で押し出そうとするけど、それは無意味で。

 顔を上下左右に動かしても、ぜんぜんズレる気配もない。

 どうにかしようと思って、両手に力を込めてみても、両手は背中に束ねられたまま動かせないし、両足も膝を曲げたまま動かせない。

 もう、私は完全に無力な肉の塊に成り果てちゃってた。


「あとはこのリードを首輪のDリングに引っ掛けて――」


「ン……んぅう……っ?」


 なのに、サユリは私の首元に嵌っている首輪へ天井のレールから垂れ下がっていたであろうジャラジャラと甲高い音を響かせる鎖さえも繋いで。


「これでコトリはわたしの所有物。もう、一生手放さないからね!」


 私をベッドに押し倒すようにハグしてくる。


「——ンんッ!?」


 その勢いを受け止めきれなかった私の身体は、あっさりとベッドの上に仰向けに倒されて、サユリの抱擁を全身で感じることしかできない。

 身体を起こそうにも、サユリに抑え込まれているだけで何もできないし、逆にハグしてあげたくても両腕は縄に固定されてて、ただミチミチと音が鳴るだけ。

 今の私は抵抗することも、何かをしてあげることもできない。

 何もかも、サユリの成すがままの――サユリの所有物。


 私は、完全にサユリのペットになってしまったんだ。


「ングッ……っ!? んぅううっ、ん、ンんッ!」


 そう、自覚した途端。

 下腹部の奥が激しく疼いてきた。

 ぐつぐつと煮えたぎるように全身が熱を吹き出すように熱くなっていく。

 自分の身体に何が起きているのか、それがどんな感情なのかもわからないまま、拘束に悶える。

 真っ白になった思考で、何も考えず、拘束された身をただ夢中で捩っては、口の中の異物を噛みしめていた。

 でも、それをしたところで何かが満たされることはない。

 ただただ、切なくて。

 物足りなくて。

 ずっと、何かを求めてしまう。

 足りない何かを欲しがってしまう。


「ふふ、大丈夫だよ。コトリが欲しいものは、わたしが与えてあげるから」


「ンんッ!?」


 すると、無防備になっている私の股間へサユリの手が忍び込んできた。

 ワンピースの裾を巻き上げて、パンツの上から割れ目に食い込むように指先を押し込んで撫でてくる。

 

「パンツの上からでもわかるくらい湿らせてちゃって……そんなに拘束されるの嬉しかった? コトリってば、わたしよりも変態さんだったのかな?」


「ンっ、んん!? んぁ……っ、あ、あぁっ……ッ!? ンうッ、うぅうッ!?」


 それが気持ちよくて、初めて感じる刺激で。

 足りないものがそれだ。ってわかっちゃって。

 

「ここにもっといっぱい刺激が欲しいんでしょ? このままコトリの中に入れてもいい……? わたしがコトリのこと、いっぱい気持ちよくしてあげるから」


「ンッ、んぅ! ンんぅ!」


 囁くようにサユリが語りかけてくるから、私はただそれを求めて首を縦に振っちゃってた。


「ふふ、コトリのおまんこ、いっぱいかき混ぜてあげるね?」


 刹那、サユリの指がパンツの隙間をかき分けて直接おまんこに触れてくる。


「~~~~~~~ッ!? ンんッ、んぁ……っ、あ、あぁあ……ッ!」


 私のそこはぐちょぐちょに湿っていて汚いはずなのに、サユリはそんなのお構いなしでおまんこの入り口付近を指先や指の腹を使ってコネコネと突いてくる。

 アソコを触られてるはずなのに、なんでか頭の中が直接かき回されてるような気がして。

 その程よい刺激があまりにも心地良いから、思わず逃げ出したくなって、手を動かそうとしてしまうけれど。


 ギチ、ギシシッ。


「ンん、ん~~~っ、ん、んんぅううッ!」


 私の両手は背中に束ねられたまま動かなくて、空しく動く指先だけがただ宙を掴でいた。

 両足もそうだ。

 膝を折り曲げたまま縄に固定されて、ただ太ももを震わせながら、股を開いていることしかできない。

 

「ふふ、逃げても逃げても逃げられないね?」


「ンぁ、あ、あぅ……ッ、んぅう……ッ、うぅう……っ!」


 なのに、クチュクチュ、と何度も何度もおまんこの入口を擦られて、中に入るかどうかの浅いところずっと、ず~っと刺激される。

 ずっと、ずっと。

 なにもかもすべてサユリの成すがままに。


「いいよ。いっぱい気持ち良くなろ……?」


 だから、それは必然のできごと。


「~~~~~~~っ、ぅ! ンッ……ッ!?」


 何か、大きな塊が体の芯に湧き上がってきて、ふわっと弾けた。

 かと思うと、サユリの指先の感触がさらに鋭利な刃物のように敏感に感じるようになって。

 おまけに、身体を縛めている縄の感触や、喉元を圧迫する首輪の存在までも、強く歪に感じるようになっていった。


「ンふ、んっ、ンん~~~ッ!?」


 身体に触れるもの全部が気持ちよくて、頭がおかしくなる。

 身体がおかしくなっていく。

 私の身体、壊れちゃった。

 えっちなお肉になっちゃった。


「あれ、もしかして……コトリ、イッちゃった? これくらいで絶頂しちゃうなんて、コトリのおまんこ雑魚すぎるかも?」


 絶頂。という言葉をサユリから聞いて、自分が何を体験したのかやっと理解する。

 性的なオーガズム。

 サユリの指の刺激だけで、それを迎えてしまったんだ。


「こんな浅いところでイけちゃうんなら、奥のほうはもっとすごいだろうね」


 なんて、サユリは言うけれど。

 その間も、私のおまんこを触る指は、クチュクチュ、と動いたままで、ずっと刺激を繰り返してる。

 おまんこの入り口だけじゃない。

 敏感に充血したクリトリスまでも、上手に狙いに定めて触ってくる。


「ん、ン~~~~っ!? ん、んぅぅ~~~ッ、~~っ!? あ、あぁッ、んぁあ……ッ!?」


 口に咥えた異物を噛みしめて、無様に声を漏らすことできない私は、必死にその刺激に縋り付いて腰をびくびくと震わせる。

 だって、逃げられないのだ。

 どうしたって無理。

 サユリから与えられる刺激が気持ちよくて、心地よくて、手足に力は入らないし。

 ましてや、縄で縛られている。

 ほんの少しでも身体に力を加えるだけで、縄が肌に食い込んで、変に擦れてきちゃうから、それだけでも気持ちよくなっちゃうのだ。

 口に咥えた異物越しに、涎なんかもだらしなく溢れ出して、ただ惨めにサユリの愛を貪ることしかできない。

 

「いいんだよ。我慢なんてしなくていいの。もっといっぱいコトリの可愛い鳴き声聞かせて、ね?」


「ンッ、んん~~ッ、んぅッ!? ンぁ、あぁッ……ッ、ぁ……ん、んぅうッ……ッ!?」


 それをわかっているからなのか。

 私がどれだけ声を上げても、サユリの指の動きは相変わらずで。

 ずっと、同じ動きを繰り返しながら、私が欲しい。と思った場所を刺激してくれる。

 何度も、何度も、繰り返して。

 私が無意識に腰を逃がしても、深く、深く、吸い付いてくるように指を動かして、気持ちいいところを狙い撃ちしてくる。

 だから、二度目もすぐに訪れてしまう。


「~~~~~~~っ、ッ!? ンごッ……おッ!? あッ、ぁ~~~~~~ッ!?」


「そうそう、その調子……ッ! 上手にイケてコトリはえらいね? まだまだイケちゃうね?」


「ングッ、うぅうっ、んぁ、ンんッ……ッ、んぅ~~~ッ!?」


 時折、髪の毛を撫でられて、ほっぺたに添えられる手のぬくもりが、嫌に愛しく感じてしまう。

 もう、ダメだ。

 私にはもう、どうすることもできない。

 私の身体も、存在も、何もかもすべて。

 サユリによってエッチなものに、作り変えられていってしまう。

 私が、私じゃなくなっていっちゃう。


「ンぁ、あぁあっ、ぁ……ッ、あんッ……うぅう、んッ、ン~~~~ッ!?」


 それが怖くて、恐くて、たまらないのに。

 なぜか、この瞬間の何もかもが幸せで、世の中のことすべてがどうでも良くなっていく。

 ずっと、このままでいたい。

 このまま気持ちいいので、満たされていたい。

 ずっと、ず~っと、サユリにめちゃくちゃにされてたい。


「はぁ、可愛い……っ、すっごく可愛い……! 大好きだよ。コトリ……っ!」


「ン……ッ、んんッ!?」


 すると、口の中を埋め尽くすシリコン越しに、サユリが口づけをしてきた。

 下唇や上唇をあまがみするように、私の口から溢れ出した唾液とサユリの唾液を混ぜ合わせるように、甘くねっとりとした深いディープなキス。

 ぐちゅ、くちゅ、と厭らしい音を立てながらただひたすらに絡み合い。

 それが、幾重にも繰り返されていく。


「ンんッ、ん、んぅぅうッ!?」


 その不意打ちのようなキスに、全身がびっくりして、暴れだすけど。

 ただひたすらに、ミシミシ、と縄が全身を締めつけてくるだけで、なんにも起きない。

 それどころか、変に抗ったせいで肌という肌が敏感に反応してしまって、さらなる高みへと私の意識を誘ってくる。

 

「あぁ、好きッ! 大好きッ! コトリのことずっとここで飼ってあげるからね!」


「~~~~~~~~~ッ、~~~~~ッ、っ!?」


 興奮しきったサユリの声音と同時に訪れたのは三度目の絶頂。

 私の頭の中は完全に蕩けきっていて、もう、何が起きているのかもわからなくなっていた。

 それでも、サユリは一向に手を止めることなく、私の身体を嬲り続ける。

 それは、私の想像を絶するほど長いこと続けられて、それから私が何度絶頂したのかは覚えていない。

 

 ただ、わかるのは――


「ン、んん……っ、ん……?」


 サユリから与えられる快楽責めが終わったあとも、私は同じ拘束を施されたままベッドの上に放置されてしまっているということだけだった。


――――――――――――――――――――


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