日々の不摂生は体に現れる、というのはこういうことなんだろうとお燐はぼんやりと考えていた。彼女の主人である古明地さとりは旧地獄の地霊殿の主にして怨霊も恐れ怯むさとり妖怪だ。その彼女が煽情的な…はずの衣装を身にまとってお燐の前に立っている。
「ほら、ぜんぜん着れてるじゃない」
まったく問題ないようにさとりは言うが彼女を包むバニースーツはぎりぎりまで張りつめていた。
「太ったなんて言われるほど体型も変わってないでしょ」
お燐の前でさとりがくるりを体を回してアピールする。その姿は北の果てに住むという飛べない鳥を思い起こさせた。
整った顔立ちは以前よりふっくらとした印象を与える程度ではあるが、下に目線をずらしていくほどにその体の変容は顕著になる。痩せた胸元は体重相応に豊かに、二の腕はぷよぷよと太く、でっぷりと前に横にせり出したお腹はバニースーツがギチギチと締め上げてもなお太く、くびれとは逆方向に広がっている。そのお腹を支える腰は以前よりもずっと大きく太く、彼女が足を動かすたびに行き場のない贅肉がぶにぶにと変形する。
どこで何を間違ったのだろうか。お燐の知る彼女は痩せぎすの少女だったはずなのに。
たしかこの服を買ったときは胸も腰もぶかぶかで自分の貧相な体に赤面していたんだっけ。あの頃に比べると、最近は1日4食だし、合間合間にお菓子を食べるようになってるし、それを許してしまう私の責任なんだろうか。
お燐の思考が現実から過去へ向かうところをさとりの声が引き留める。
「どう?これで明日のクリスマスパーティーも思いっきり楽しめるわね」
さとりの言う「楽しむ」とはすなわち「食べる」と同義だ。まったく色気のない話ではあるが、たまに羽目を外す程度なら問題ないのだ。だが、そろそろ外れっぱなしの羽目をなんとかしないと元に戻らなくなってしまう。
(いや、もう手遅れかも…)
お燐の前でさまざまにポーズをとるさとりだが、その姿はセクシーというよりも滑稽に近い。彼女の第三の眼は心の奥底まで見えるはずなのに、自分の体型だけは見えないらしい。
体をそらせて腰を捻ったポーズを取ろうとした瞬間、ビリっと布の裂ける音がした。
「え?」
そこからはあっという間だった。スーツの縫い目はみるみる広がり、押し込められていた脂肪がその隙間を一気に押し広げる。
バァンという破裂音とともにさとりを包んでいたバニースーツはちぎれ飛んだ。
露わになった彼女の体はどこもかしこも脂肪がたっぷりとついて、スーツに抑え込前れていた時よりもひとまわり大きく見える。
お燐はため息とともに彼女に告げる
「お召し物ををお持ちしますね。それと明日からダイエットです」
部屋をあとにするお燐が見たさとりの表情は体型に対する羞恥か、ダイエットに対する忌避感なのか。
(せめて1週間は続くといいんだけどな…)
あまりにも慣れ親しみすぎた「挫折」という言葉がお燐の中で首をもたげていた。
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おまけの差分作成用のPSDファイルです。
各状態の背景なしキャラクターと背景、擬音がレイヤー分けされているのでお好みの差分を作れます。よかったら楽しんでください!