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(特別全体公開)物好き冒険者の青年が達磨女売りからエルフの姉妹を買うお話(ハードなお話注意!)

【まえがき】

 こちらはかなりハードな作品(R-18G)になりますので、閲覧の際はご注意ください。また、最後に僕のちょっとした誰得回想もあります。このお話を読んで性癖に合致した方は、良ければ見ていってください。

 また、これの続編も書きましたので、よろしければ是非(こちらは支援者さん向けです)

 https://ky0usuke.fanbox.cc/posts/7856892




【本編】


 とある街にある市場。多種多様な店が並び、同じくらい多種多様な客がひしめいている中を縫うように、その青年は器用に歩いていた。


 特段目を見張るところはない青年だ。身なりを見るに、冒険者か用心棒――どちらにせよ、多少の荒事もこなすことは推測できるが、その程度であれば別にこの市場だけでもごまんといるだろう。


 故に彼は誰からも警戒されることなく、市場の中をスイスイと進んでいく。


 そんな彼が、ふいと横に逸れた。市場の中にある裏路地めいた空間。そこに吸い込まれるように入っていったのだ。


 それでおしまい。誰も彼のことなど気に留めておらず、ただ普段通りの喧噪が市場には溢れていた。




 裏路地に入れば、人の数は一気に少なくなる。浮浪者がたむろしている場所が多少ある程度だ。射し込む日差しもまばらなその路地を、まるで普段から通り慣れているとでも言いたげに、青年は歩いていく。


 そうして何度か曲がり角を曲がり、階段を下りては上り、複雑怪奇な経路を経て、彼は目的地へとたどり着いた。


「バカヤロウ! 二度と来るんじゃねえ!」


 青年の目の前で、店から客が叩き出される。叩き出された男は脱兎のごとく逃げ出していった。そんな様子を見ながらも、青年は怯むことなく、目指してきた店のドアを開けるのだった。


「――ああ、旦那かい。いらっしゃい」


 かつてこの場所にあったのであろう民家を無理やり改造して営まれているこの店の主は、人間ではなく魔物だった。種族は不明だが、二足で立ち、四肢は太く、そして頭髪は無い。一対の牙が口からはみ出ており、肌の色は人のソレよりも遙かに浅黒かった。


 オークと言われる種族に近い見た目をしているが、店主は自分の種族について語ることがなかった。そして青年も、それを詮索することはしない。彼らは“売り手と買い手”という、単純ながら強固な関係性で結ばれている。それだけで十分だった。


「良いのは入ってるかな?」


 青年が店主に尋ねると、店主は軽く苦笑い。どうやら今日の品ぞろえはあまりよくないらしい。


「せっかくだから、見せてもらおうかな」


 けれど青年はそれで買い物をやめる気はなく、あくまで店主に品物を見せてもらおうつもりらしい。


「そういうことなら、どうぞ」


 見かけと先ほどの横暴さとは打って変わり、店主は馴染みの客に対する丁寧な態度で青年を店の奥へと案内した。


 果たしてこの店が何を取り扱っているのか。店の外見からでも、あるいは店の入り口から見ただけでもついぞ判別することの出来ないその真相は、すぐに明らかになった。



 ■ ■ ■ ■ ■


「ぁ……ぇ……た、す……け……」


「く……くる゛し……」


「ん、ぎぃ……ィ……ぃ……♡」


 店の奥に進むと、いくつもの呻き声が聞こえてくる。すべてが女の、苦しそうな声だ。


 吊されていた。女が、少女が、幾人も幾人も。


 どの女も一様に手足がない。切断部分は様々だが、誰もが手足のない、まるで達磨か、肉の塊のようだった。その状態で首に麻縄をかけられて、天井から吊されてる。


 女たちの首に縄が食い込み、ギリギリと締め上げる。しかし、手足を失った女たちの首は自重で窒息にまで至ることは出来ず、脳を酸素不足と苦痛で麻痺させられながら、じっくりと痛めつけられているのだ。


 そんな女が、店の奥には無数に吊されていた。まるで、先ほどまで通ってきた市場にあった肉屋。そこと同じような売られ方だ。


「あ、あなた……に、人間ですよね……!? た……助けて!」


 そんな女たちの中でも、まだ元気のある女が何人かいる。彼女たちは青年の姿を見ると、懸命に助けを求めた。


 しかし、青年が彼女たちの声に応えることはない。それもその筈、彼はこの店の常連であり、今日もいつも通り、こうした達磨女たちを買うためにここに来たのだから。


「ここの子たちはまだ処置前?」


「ええ。ここで腹の中にある無駄なもん全部出させて、そのあと魔法かけます。本当は、旦那みたいなお客さんにお見せするとこじゃないんですが……」


「いいよ、こういうのが見えた方が面白いしね」


 まるで野菜畑でも見ながら世間話をしているような様子。達磨女たちの悲鳴など鳥のさえずりとでも言いたげな無関心さで、彼らはそのまま奥へ奥へと進んでいくのだ。


 因みに青年と店主の言う“処置”とは、達磨女たちに最後の魔法をかけることだ。


 捕まった女たちはまず店主によって“加工”される。これは手足を切り落として達磨にすることを指す。もっとも、元々達磨にされてから仕入れる女もいるため、加工の程度はまちまちだが。


 そしてその次に行う工程が、いま青年たちが通ってきた場所で行われている“吊し”である。ああして縄で吊して放置しておき、自分自身が肉の塊であり商品であり、そしてもう自分自身で死ぬことも出来ない無様で価値のない達磨女だと思い知らせるのである。


 因みに、吊しの都合上、暴れて反抗的な達磨女や、人間であったときに肥え太って乳房や尻肉にばかり肉付きのよかった達磨女ほど苦しむようになっていた。


 そして吊しの間に、達磨女たちは身体の中を空っぽにされる。三日から五日ほど水分だけを与え、不純物を全て体外に出させる。


 その後、店主の言っていた“魔法”をかけられるのだ。


 この魔法自体は一般にも知られており、食事や排泄の必要が無くなる魔法である。長期間の探索時に使われることもあるが、飲食はこの世界における重要な娯楽のひとつであり、それを制限することからあまり普及していない魔法でもあった。


 ――こうした加工の過程を経て“商品”となったのが、今から青年にお披露目される達磨女たちだった。




 ■ ■ ■ ■ ■


「今回はあまりよいのが無くてねぇ……。旦那のお眼鏡に適うかどうか」


 加工場を通り過ぎ、青年と店主は商品のお披露目場所に到着する。とはいっても、簡素な椅子と商品倉庫につながるドアがあるだけだ。青年はそこに腰掛け、これからお披露目される商品の登場を待ち望むように微笑していた。




「じゃあまずは、こいつからいきますか」


 店主がゴロゴロと音をさせながら商品台を転がしてくる。頑丈な土台に車輪がつき、その中央からは太い棒が一本伸びている。棒には当然縄が掛けられ、そこから達磨女が吊されているという寸法だ。


「かふっ……ぅ……」


 商品台が揺れることで、縄は軋み、首は絞まる。しかしそれに抵抗することも出来ずに運ばれてきたのは、赤い髪をした達磨女だった。


「ほれ、自己紹介しろ」


 店主に促されても、赤い髪の女は黙ったままだ。しかし、そんな反抗的な態度が客の前で許されるわけがない。


「ギ……ッ!?」


 鋭い音が響き、赤い髪の女の身体に赤い筋が刻まれる。店主が手にした鞭が襲いかかったのだ。


 ただ鞭打たれるだけでも苦痛だろうが、加工された達磨女にとっては身体が揺れる度に首が締め付けられて苦痛が増していく。赤い髪の女にとってもそれは例外ではなく、苦しそうな表情をしながら、ゆっくりと声を振り絞り始めた。


「な、なまえ……なんて、ねえ……。赤髪の、とか……女戦士とか……そ、そんなふうに……呼ばれてた……ぜ……。ぇふ……」


 どうやらこの女は、かつては戦士として活躍していたらしい。女として戦士の道を選ぶことだけでも珍しいが、身体に残る古傷や鍛えられた腹筋を見るに、どうやらそれなりの腕だったようだ。


 もっとも、そんな腹筋と比較するように柔らかさを隠せずに垂れ下がる乳房や尻肉が、彼女が女であることを如実に示すようで皮肉ではあるが。


「どうしてこんな風に?」


 青年は、女戦士のことを見つめながら質問をする。どの達磨を買うか、それは女の境遇や様子で決めるのが、青年のいつものルーティンだった。店主も口を挟まず、女戦士が不躾なことをすればすぐに叱れるよう、鞭だけは手に持っている。


「へっ……知りたきゃ、教えて……やるよ……。この、ド変態、野郎……」


 反抗的な様子の女戦士であるが、既に何度かこうして客前に連れ出されては虐待を受けたのだろう。鞭と苦痛に恐怖して、青年へ自らの身の上を語り出す。


「――オレは、孤児の生まれでよ……。気が付いたら、貧民窟で他の仲間たちと暮らしてたよ……。オレたちなんて、野良犬や虫ケラ以下だぜ……。叩かれて踏みつけられて、散々ヒドい目にあってよ……」


 女戦士は、絞まる喉のせいで苦しそうに呻きながらも自身の境遇を話す。なるほど、達磨になっても戦士として鍛えていた首の太さは健在のようで、吊られた状態ながらも、比較的スムーズに言葉を繋いでいた。


「だから、頑張って腕っ節強くしたんだ……。もう、クズどもに踏みつけられるのなんてゴメンだって……。そうしたら、オレは案外才能があったみたいで……噂を聞きつけた興行師から声がかかってよ……賭けの剣闘試合に出ることになったんだ……。そこでも、けっこう勝ったんだぜ、オレ……。稼ぎも、孤児だった頃からじゃ考えられないくらい貰えてよ……。仲間たちにも感謝されて……。げほっ……ごほっ……ぉぇ……」


 女戦士は時折不自然に咳き込んだ。こんな状態で吊られているなら当然にも思えるが、何人もの達磨女を見てきた青年は、それが“吊るし”の影響だけではないことを見抜いている。


 彼は言外に“何か加工をしたの?”と店主に視線で尋ねた。


「ああ、流石旦那ですわ。この達磨女はね、乳や尻の肉付きはいいんですが、如何せん鍛えすぎてて腰が太すぎましてね。これじゃあお客さんに人気が出ねえと思って、左右の肋骨を数本抜いたんですわ。おかげで、どうですかこのクビレ。悪くないでしょう?」


 店主のセールストークは流暢だった。確かに女戦士の胴体には不自然なくびれが出来ている。それは、人体に当然あるべきである骨を抜かれたことによるモノらしい。結果的に、女戦士の乳と尻肉のボリュームとの対比が鮮明になりつつ、横隔膜の収縮がひどく不安定になり、彼女は呼吸するだけでも不自由を強いられていた。


「クソッ……この、外道がよ……。それで、ええと……畜生……なにが……いけなかったんだろうな……。たぶん、どっかでデケえ賭けを潰しちまったんだ……。それか……いや、わかんねえ……。とにかくオレは、負けて……そのまま、めちゃくちゃにされた……。負けて、普通ならそこで終わりなのに……色んなとこから観客が出てきて、オレのことボコボコにするんだよ……。昔みたいに、殴られて、踏みつけられて……。手足折られて、千切られて……死ぬかと思って……でも、死ねなくて……今、こうしてる……」


 首に食い込む縄に苛まれながらも、赤髪の女戦士は自分の境遇を語った。青年はその話に同情するでもなく顔をしかめるでもなく聞き入っている。


 強いていうならば、興味深そうに。そんな青年の様子を見て、女戦士の方がぞっとするくらいだった。


「何かアピールできるところはある?」


「ハッ……ねえよ、そんなもん……。こんな身体になって……なにもねえ……」


「旦那、申し訳ないですね、こんなもんで。肉付きはいいんですが、固いし生意気だし。加工したはいいんですが、抱く目的のお客にはあんまりウケが良くないんですよ。鍛錬用のサンドバックにでもどうです?」


「そりゃいい……。サンドバックにして……さっさとオレを殺してくれよ……。こんなの……」


 女戦士の厭世的で絶望しきった様子は、青年の好みではなかったようだ。彼が肩をすくめると、店主は申し訳なさそうに女戦士が吊された台を引っ込める。


「クソッタレ……誰か……殺してくれ……。頼むよ、だれか……」


 女戦士の恨めしそうな声は、すぐに倉庫の奥に消えていった。


「次は――こいつなんて、どうです?」


 しかし、商品の在庫はもちろん女戦士だけではない。奥の商品倉庫から聞こえるすすり泣きやうめき声は、片手では足りないくらいだ。


 そのうちから、店主は再び青年の好みに合いそうな女を連れてくるのである。




「このっ……! やめろっ……お、おろ……せ……ちッ!」


 次の声は、吊されているとは思えないくらい元気だった。若い女――というよりも、幼ささえ感じるような声。その主が元気である理由は、すぐにわかることとなる。


「どうですかい、旦那。珍しい魔法使いの達磨女です。どうやら自分の身体に細工をしたみたいで、こんなナリですが大人なんだそうで」


「き、サマ……ッ! このサラサ様に、無礼を……ッ!」


 店主が語る間にも、首に食い込む縄に顔をしかめながら体幹の筋肉だけで暴れ回っている達磨女は、茶色い髪を一本の三つ編みにまとめた少女――10歳になりたてくらいの見た目であった。


 肉付きは薄く、肋骨の浮いた身体。小脇に抱えられそうなくらいコンパクトだが、わずかにぷっくりと膨れた乳房と尻肉が、女であることをアピールしてくる。


「お、おまえ!? おまえ、人間だな! ちょうどいい! た、助けてくれ!」


 身体が軽い故、吊しの効果も些か薄いようだった。サラサと名乗ったその少女は、聞かれてもいないくせに自らの身の上を語り始める。


「わ、私は、大魔法使いのサラサだ! お前も、この世界で生きているならば使ったことくらいあるだろう!? 浮遊の魔法に指向性を与えたのも、発火の魔法を改良したのも私だ! わ、私を助けたら、この頭に残っている英知を全部授けてやる! 大魔法使いの弟子になれるのだぞ!」


 青年は顔をしかめる。彼自身、わめき立てる声が嫌いな訳ではない。助けを乞い、必死に購入を求める達磨女の声などはむしろ好ましいとすら感じる。


 しかし、目の前のサラサの声はキンキンと響き、あまり青年の好みではない。


「ま、まて! 私の言葉を聞け! 私を救えば、私の弟子たちすらも味方になるぞ! お前自身がなにもせずとも、最高の魔法使いたちが配下になるのだ!」


「まあ、こいつは旦那みたいな方の好みではないでしょうなぁ」


「その言い振りだと、これを気に入った客がいるのかい?」


 未だに自分の価値を喚き立てるサラサのことを無視して、青年と店主は語り合う。ちなみにサラサも知らないことだが、彼女自身が口にした“弟子たち”とは、サラサをここへ売り払った張本人たちである。


 彼女の遺産と知識を狙った弟子たちは、サラサの信頼を得て全てを奪う算段を立ててから、彼女をこの達磨屋へ売ったのである。もちろん、サラサの魔法を封じる首輪をつけてから。そうして売られたサラサは、非力な少女の身体で店主の加工台に乗せられ、華奢な手足を切り落とされたのである。


 首に巻き付くのは、麻縄以外にも魔法封じの首輪。これがある以上、サラサは非力な少女以下の存在でしかない。


「へえ、旦那とは別のお得意さんが気に入ってくださいましてね。ただ、金の工面が追い付かないそうで、三日後にまたいらっしゃるそうで」


「そうなんだ。どんなお客さん?」


「魔物のお得意さんなんですがね。なんでも、頭のいい女を捕まえては、その頭の中身を食うのが好きだそうで。生きたまま食うのが一番美味いってことで、うちで買ってもらったら、そのまま椅子に座らせて、頭を開くんですよ。で、そこから脳を食うと」


「なるほど。なら、その人に譲らないとね」


「何度か見ましたが、なかなか見ものですな。達磨女ども、わけのわからないことを喚くんですわ。魔法をかけてるんで汚いもんは垂れ流しませんが、食うのが上手いんで長く生きたまま、脳が小さく小さくなって死んでいくんです。残った身体は、まあ豚の餌ですな」


「そのお得意さんが許してくれるなら、食事の様子は見てみたいな」


 青年のその言葉を合図にして、店主はサラサをまた倉庫へと戻していく。彼に買う意思が無いとわかったのだろう。


「い、イヤだ! 助けて! お願い、何でもする! 何でもするから! セックスだってする! ペットにだってなる! お願い! お願い! イヤだ! 生きたまま脳を食われるなんてイヤだ! お願い! イヤ! イヤイヤイヤイヤ……ッ!」


 半ば発狂したようなサラサの声は、倉庫のドアが閉じるのと同時に途切れた。




「まあ、ここまでは前座ってことで……」


 店主は微笑みながら青年に語りかける。店主自身、青年とは長い付き合いだ。“商売の仕方”というものを、しっかりわかっている。


「わかってるよ。気に入りそうなのはこれからなんだろ?」


 青年もさして不快な色なども見せずに、椅子に悠然と座ったままだ。背後の加工場から聞こえてくる悲鳴や嗚咽なども、全て楽しむように。


 店主が次の台を引きずってくる。そこには、二つの商品が吊されていた。


「かふッ……ふ……ぅ……ッ! あ、あな……た、……に、んげん……?」


 先ほどまでの二人、女戦士と魔法使いとは異なり、今度の商品はだいぶ苦しそうだった。黒い髪を短く切りそろえた方は、ぶら下げられながら苦悶の表情で青年を見る。対してもう一人、同じような黒髪を長く整えている方の商品は、逆にぴくりとも動かなかった。


「た、たす……け゛て……」


「これは、どっかの村を襲った魔物たちから仕入れたもんでさァ。人間ですぜ。村娘二人、加工するときに聞いてみたら、何でも仲の良い幼なじみだったそうで」


「なるほど。人間二人まとめては珍しいね。髪が短い方は元気だけど……その、髪の長い方は?」


「ああ、こっちの方は吊しの間に死んじまいましてね。散々泣き喚いてたんで、体力を使ったのかもしれません。いやぁ、手際が悪くてお恥ずかしい。――ただふたつ吊しておくと見栄えが良いし、生きてる方がどうしても一緒にって言うんで、このまま吊してるんでさ」


「あ、ぁ……、ミィ、ちゃん……し、しんじゃ……ったぁ……」


 どうやら、長い髪の方はミィと言う名前らしい。確かにぐったりとして生気は感じられない。魔法によって腐敗が止められているが、達磨女というよりも正しくただの“肉”だ。


「普通なら珍しい魔族や高貴な身分の人間を買いたがるんで、旦那みたいに人間を買おうって人は珍しいんですわ。こいつらも人気がなくて、旦那が買わないから、まあ豚か魔物の餌ですなぁ」


「ヒッ……!」


 身の毛もよだつ宣言を聞いて、生きている方の達磨女は息を呑む。しかし、種族的には同じ人間であるはずの青年は、そんな悪逆の提案を聞いても表情を崩さなかった。


「そうして餌にするのも、ちゃんと商売にするんだろう?」


「へっへ……旦那にはお見通しですわな。魔族にも人間にも好きな方はいらっしゃるんでね……この死んでる方の達磨と一緒に、生きたまま豚に食わせるんですよ。さっきの旦那みたいに、そういう風景を見て楽しみたいって言う魔物の旦那はたくさんおるんです。魔法をかけてるんで、すぐには死なないんです。食われて食われて、身体が半分になっても生きてる時もあるんですよ」


「い、いやッ……! お、お願い、します……、だ、だんな……さま……。か、買って……買って、くださ……い……」


 自分に待ち受ける凄惨な仕打ちを宣言されて、達磨女の顔面が恐怖と絶望に染まる。そして、濁流の中で細い枝を掴んだときのように、懸命に青年へ向けてアピールするのである。


「わ、わたし……ネムって、言います……。む、村で……村で……一番、おっぱいが……大きい、です……」


 訊いてもいないことを達磨女――ネムは語り始める。確かにネムの乳房は大きい。達磨にされた後でもたわわに垂れ下がり、なんならその重さ故にネムの首を締め付けて苦しめている。


「ぜ、絶対に……ご、ご奉仕、します……。な、なにされても……文句、言いません……だ、だから……。ほ、ほら……こんなに、んぎッ……お、っぱいも……おおき、い……」


 ネムは必死の形相で、しかし青年にむかって媚びへつらい笑いながら自己アピールを繰り返す。まるでミノムシのように身体を揺らし、乳房を揺らし、手足が生えていたら青年の足下にまで這い寄り、足にキスをするような勢いだ。


「――将来の夢は?」


 そんなネムに対して、青年はひとつだけ質問をした。


「あ……え……? しょ、将来の……ゆめ……?」


 まるで知らない概念と言わんばかりに呆然とするネム。しかし、彼女は知っている。確かに将来の夢を持っていた。だが、こんな風になって、もう全部忘れてしまっただけ。


 それを、青年の質問によって思い出さされた。


「あ……ぁ……。しょ、将来の……ゆめ、は……。ひ、ぐ……ミィ……ちゃんと、一緒に……ぅっ……。き、きれいな……お嫁、さん……」


 先ほどまでの媚びた笑顔が消え、ネムの目から涙がこぼれ落ちる。何てことない、しかしもう絶対に叶わない夢を語り、自分の身体を見下ろして絶望に浸る。


「――じゃあ、なってもらおうかな。豚たちのお嫁さんに」


 ネムの回答に満足して、青年は彼女たちを買わないことを決めた。彼女たちを買うことよりも、豚の嫁として貪り喰われる方が見たくなったのだ。


「あっ……!? な、なんで!? どうして! い、イヤ! イヤだ! 助けて! お、おねが、いします……ッ!」


「彼女たちに花嫁衣装を着せて豚に喰わせると、きっと受けるよ」


「さっすが旦那。いいですなぁ」


 ネムの声は、青年と談笑しながら店主が吊し台を撤収するに伴って小さくなっていく。後日の話ではあるが、ネムとミィは青年の提案通り、花嫁衣装のまま豚に供されたそうだ。


 言葉の通じない豚相手にも懸命にネムは媚びて本当に“花嫁”になろうとしたらしいが、豚にそんなことが理解できる訳もない。彼女たちが豚の餌になっていく光景は、観客たちを大いに楽しませたという。




 ■ ■ ■ ■ ■


「こちらが、今おすすめ出来る最後ですぜ」


 店主が引きずってきたのは、ひときわ大きな吊し台だった。先ほどのネムとミィと吊していた台も二人を吊るすせいで相当に大きかったが、今度はさらに一回りほど大きい。


 その理由は明白。今回吊されているのは三人だったからだ。


「――エルフかい?」


 場慣れしている青年も、流石に驚いたように店主へ訊ねた。店主は自慢げに微笑む。


 吊されている達磨女は三人。その三人ともが、顔形は整い、髪は美しい金色、そして耳の先端が尖ったエルフ種族だった。


 今までエルフの出物が無かった訳ではない。しかしそれは、だいたいは未成熟な子供であった。はぐれたところを誘拐されて加工されたエルフ。それだけでも貴重ではあるが、いま吊されている三人はそれぞれ成人に近かった。


「エルフの村を襲った奴らがいましてね。そこからの収穫です」


「珍しいね。エルフなんて、もっと使い道があるだろうに」


「そこはまあ、日頃のお付き合いの賜物ってやつですな……。ほら、ご挨拶しろ!」


 店主に怒鳴りつけられると、吊されている三人のエルフ――髪を太い三つ編みにまとめている者、長い髪を後ろで一本に縛っている者、他の二人とは対照的に髪を短く切りそろえている者のうち、短くぱっつりと髪をまとめているエルフが口を開いた。


「お、お会いできて……光栄です、旦那様……。わ、私……エルフの、シンシアと……言います……」


「わ、私は……ふたりの母の、サリアと……申します……」


 母と名乗ったのは髪を三つ編みにしている方だ。年齢による体格差があまり大きくないエルフではあるが、確かにサリアは肉感に富んでいる。乳房も尻肉もたっぷりと実り、経産婦らしい肉付きの良さ。そのぶんだけ、首に食い込む縄のキツさに苦しんでいるようだが。


「ほ、ほら……ご、挨拶を……」


 サリアが残る一人、ポニーテールのエルフに挨拶を促すが、彼女は刺々しく敵意に満ちた視線で青年を見つめる。


「い゛……ッ!?」


 そんなエルフを叱るように、店主の鞭が飛ぶ。何の受け身も防御も出来ない白い素肌に赤い傷が刻まれ、彼女は苦しそうに声を漏らした。彼女の身体に残る鞭の痕を見るに、どうやら相当に反抗的な振る舞いをしているエルフのようだ。


「お、お姉……ちゃん……。ちゃん、と……自己紹介……」


「あ、あたし……は……あ、アリシア……だ……ッ」


 絞まる首に悶えながらも、ポニーテールのエルフはそれだけ名乗った。


「わ、私たち……え、エルフの、母娘……です……。ど、どうか……かってくだ、さい……」


 話しぶりから恐らく妹と思われる短髪のエルフ――シンシアが、青年に向けて精一杯の笑顔を作りながら懇願する。母である三つ編みのサリアも同じく笑顔を作っているが、絞首がきつすぎてあまり余裕はないようだ。


 シンシア、そしてアリシアともに決して肉付きで母親に劣っている訳ではない。ふたりとも両手で収まらないような大きさの乳房に、ほっそりとした胴体、そして掴みやすそうな尻肉。造形が人間とは根本的に異なっていた。彼女たちを見た後では、先ほどの人間達磨など箸にも棒にもかからないとすら思える。


「商売が上手いね。これの後にあの人間を見せられたら、確かに売れないよ」


「へへっ、恐れ入りやす」


 店主と青年の会話を、エルフたちは怯えた顔で眺めている。なんとか媚びてセールストークをしたいが、彼らの会話を邪魔して気分を損ねたくない表情だ。


「わ、わたし……たち……な、長生き、な種族……ですから……ず、ずっと……お側で……お仕え……できます……。だ、旦那様の、一生ぶん、ご奉仕……します……」


 シンシアはひきつった笑顔のまま青年に向けてアピールする。しかし、自分たちの長寿を思えば思うほど、この先の一生、想像できない長い時間の間こんな無様な身体のままであると実感できてしまう。現に、自分の姿を見下ろして、情けなくてアリシアは泣いてしまっているくらいだ。


「ほれ、旦那に笑顔見せねえか」


 反抗的かつ媚びないアリシアの様子を見逃すわけもなく、再び鞭が飛ぶ。アリシアは鞭に打たれながらも、決して媚びることはなく、店主を必死に睨み返す素振りさえ見せていた。


 そんな対照的な姉妹のことを、青年は気に入り始めていた。


「ねえ。このエルフたち、僕が買わなかったらどうなるの?」


「ッ……!」


 買われなかったらどうなるか。そんなこと、想像したくもない。けれど吊されたエルフたちには、自らの耳を塞ぐ自由すら残されていなかった。


「そうですなぁ……。まあ、エルフは寿命も長いんで、廃棄はしないでこのまま売り続けますな。そのぶん値段も張るし、こっちも信頼できるお客にしか見せないんで、旦那以外に買う人が出てくるかはわかりませんが」


「い、いや……ッ!」


 先ほどまで媚びていたシンシアの顔が恐怖に染まる。


「い、いやです……ッ! お、おねがい、しま、す……ッ! 買って……買って、ください……ッ! こ、このまま……何百、年も……つられ、たまま……なんて、イヤ……ッ!」


 シンシアの懇願。サリアもアリシアも、口には出さないが思いは同じようだった。


 見た目も整い、寿命も長く、そして服従度合いは対照的な二人のエルフ姉妹。


 青年は、この達磨女たちを買うことに決めた。


 しかし、三人ともではない。


「それじゃあ、その姉妹を連れて帰ろうかな」


 青年の“つれて帰る”という言葉に安堵した様子を見せたシンシアだが、すぐに表情が曇る。


「あ、あの……お、お母さん……は……?」


 そう。母親は購入されないのだ。


 しかし、店主も青年も、シンシアの言葉になどは耳も貸さずに金のやりとりを始めている。


「お、おねがい、します……。お、お母さん……も、いっしょに……」


 それだけ言って、それ以上の言葉をシンシアは継げなかった。サリアは顔に絶望の色を浮かべながら、それでもシンシアに視線で“なにも言うな”と諭した。


 青年の心が変わっては困るから、何も言えない。この地獄の窟のような場所に母親を残していく。


 その事実に恐怖しながらも、母娘は抱擁すらすることが出来ぬまま、今生の別れをするのであった。




 ■ ■ ■ ■ ■


「あっ……ご主人様……。お、おはようございます……」


 青年に買い取られてから数日。


 シンシアは、青年の家で愛妾として扱われていた。


 店主はプロなだけあり、加工時の手足の傷は何ら問題なく、吊られていた首の傷も数日で癒える。長い商品生活で汚れた身体を青年によって丁寧に手当され、そうして達磨としての着心地を考慮した簡素だが暖かい服に身を包めば、シンシアは自分が数日前まで暗い倉庫の中で裸で吊られていたとは想像も出来ないほどだった。


 手足の無いシンシアに出来ることは殆どない。夜は青年の寝るベッドで抱き枕となり、あとは彼が求めるままに身体を捧げるだけだ。


 青年からどんな仕打ちを受けるか内心で恐れていたシンシアだが、青年の態度はある意味で拍子抜けだった。


 朝起きると、まずはシンシアに口づけをする。そして頭を撫で、二度三度と優しく抱きしめる。


 魔法によって食事も排泄も必要ではなくなったシンシアだが、青年は彼女を食卓によく同席させた。そうして何て無いことを話し、彼女が望めば食事もさせる。


 そんな優しい青年の所作は、夜も変わらなかった。


「ご主人様……今日も、私を使ってくださるのですか? あ、ありがとうございます……」


 ベッドに寝かされているシンシアに青年が覆い被さってくる。先ほど青年に着せてもらった服を脱がされれば、彼女はすぐに裸の達磨状態だ。


 シンシアの四肢の先端は、柔らかくフリルで飾られたカバーで包まれている。そうしているとまるで自分が、かつて手足がある頃に遊んだ人形のようになっていると、シンシアは感じていた。


「んっ……♡」


 青年の手がシンシアの乳房に触れた。優しく指先でなぞるように動き、彼女の肌を火照らせる。


 男性と交わった経験の無かったシンシアにとって、性感とは何かということは、正直よくわからなかった。しかし、青年に媚びるため、わざとらしく甘ったるい声を出してみせる。


「ご、ご主人様……♡」


 青年の手が楽しむように乳房を揉みしだき、そうして更に下へと下りていく。彼がシンシアの腰を掴み、固定すると、否応無く自分がモノのようであると彼女は思い知らされた。


 けど、青年の興を削ぐことも出来ない。そのまま、彼の肉棒をまるで欲するかのように懸命に腰を持ち上げ、おねだりする。


「ご主人様……♡ し、シンシアのおまんこを、どうぞお使いください……♡」


 普通の人間であれば勃起など出来るはずのない達磨女を前にして、青年の肉棒は固く屹立している。そうしてそのまま、シンシアの分厚く暖かい膣肉をかき分けつつ、肉棒を挿入していくのだ。


「ッ……ぅ……♡」


 シンシアの顔が一瞬苦痛に歪む。つい先日まで処女だったエルフの少女だ。未だに男性の肉棒を受け入れるには苦痛が伴う。


「あ、も、申し訳ございません……ご主人様……」


 痛みに喘いでから、シンシアは青年の機嫌を損ねていないかと心配して詫びる。しかし青年はシンシアに怒るどころか、彼女の目尻から流れる涙を指先で優しく拭い、頬を撫でる仕草までしてみせた。


「あ、ありがとうございます……ご主人様……♡」


 そうして青年の腰が動き始める。痛みはあるが、しかし同時にシンシアの身体も火照ってくる。彼の一挙手一投足から、“愛情”と表現する以外に考えられない温かみを感じ、彼が達磨女を奴隷として買うような人間であると思えなくなってくる。


「ご、ご主人様♡ す、好きです♡ 愛しています、ご主人様♡ お慕いしています♡」


 そうしてシンシアは、青年からの愛情に必死に答えようと、自らも愛情表現を繰り返す。青年の頬にふれることも出来ず、足を彼の腰に絡めることも出来ないシンシアに出来るのは、愛を囁くことと膣穴を必死に締めることくらいだが。


「あっ♡ ど、どうぞ♡ 私のナカに、お出しください♡ ご主人様のお子種、エルフのおまんこに♡ どうぞ♡ んっ……ぅ……♡ ッ、ぅ……ふぅ……♡」


 そうして青年は絶頂に達し、シンシアの子宮へ向けて精液を絞り出す。シンシアはただ、自分の胎内に流れ込んでくる熱い液体の感触に身震いすることしか出来なかった。


(エルフが、人間と交わるなんて……)


 血族としての意識が強いエルフにとって、人間との性交や繁殖などは想像もしない事柄だった。シンシア自身、今でもこの行為を完全に許容している訳でもない。


 しかし、彼女にはどうすることもできない。こうして青年に奉仕し、使われ、彼に気にいられることでしか生きられないのだ。


 そして彼がシンシア自身に暴虐を働かないのだとすれば、もはや彼女が何か意地を張れる理由など残ってはいなかった。


「ご、ご主人様……♡ ご主人様の汚れたおチンポを、私が口で綺麗にします……♡」


 五体満足の時には想像も出来なかった、人間に対するお掃除フェラ。そうして奉仕を褒められ、身体を綺麗にされて寝かされると、安堵のせいであの倉庫に置いてきた母親のことすら忘れてしまいそうになる。


「――――がハッ……は……ッ……ぁ……。く、ッソ……ぉ……」


 しかし、そんなシンシアを意識を、寝室の脇から聞こえてくる声が引き戻すのだった。




 ■ ■ ■ ■ ■


 シンシアが青年からまるで愛妻のような扱いを受ける中で、アリシアはまったく別の扱いを受けていた。


 彼女の定位置は、青年の寝室。その隅にある吊し台だ。あの店で売られていた時と変わらず、まるで肉のように吊り下げられている。


「あ、あの……お姉ちゃんは……」


 シンシアも、姉のことが気にならないわけではない。日夜聞こえる、吊された姉の呻き声を耳にしては、青年へ恐る恐る訊ねる。


 しかし青年は一言、“アリシアが素直になれたら下ろしてあげるよ”と言うだけ。それ以上踏み込んで質問をすることは、今のシンシアには出来なかった。


 アリシアの扱いは、吊されている以外にも粗雑であった。


「づッ……!? う゛……ッ!? こ、の……ゲス……! がッ……ぁ……!」


 まずは毎日たっぷりと、青年から鞭で打たれる。生意気な口を利いても、睨みつけても、文字通りアリシアには手も足も出ない。


 青年の鞭を受けて、アリシアは自分が店で店主から受けていた鞭打ちは、商品として相当に気を遣って行われていたものなのだと知った。青年の鞭は容赦がない。アリシアの肌を傷つけ、ぶら下げられたままの状態でユラユラと揺らし、彼女の細い首を苛むように締め付ける。


 しかし、青年によるアリシアへの仕打ちはそれだけではなかった。


「ガハッ……ッ! あ、ァ……ッ!」


 手に持つ鞭を紐状のモノから、先端が平たく加工された馬上鞭に持ち替えてアリシアへの“教育”は続く。その平たく固い部分で、アリシアの秘所を叩き慣らしていくのだ。


 敏感な秘所を鞭で打擲され、アリシアの目には涙が浮かぶ。痛みと苦しさと屈辱で頭がおかしくなってしまいそうだった。それでも、今は無き村で教えられたエルフとしての誇りを胸に、懸命に青年の責めに耐えようとする。


「お、お姉ちゃん……もう……!」


 そんな姉の抵抗をベッドから見ていたシンシアは、青年ではなく姉を説得しようと試みた。


「あ、あ゛たしは……ッ! ま、まけ゛、ない……ッ! え、エルフ、の……ッ! ほこ、り……ッ!」


 シンシアの説得にも応じることなく、アリシアは歯を食いしばって青年の責めに抵抗する。しかしそれは、まだ自分の立場をわかっていない、愚かで無駄な抵抗でしかなかった。


「シンシアはちゃんと自分の立場を弁えたよ? アリシアもそろそろどうだい?」


 青年に問いかけられても、アリシアは憤怒と軽蔑に満ちた視線で彼を見つめるだけだ。


「――いけないなぁ、そういうのは。そういう達磨は、こうやって吊して、たくさん手をかけて……ちゃんとしたマゾにしないといけないんだ」


 そう言いながら青年は、文字通りアリシアに“手をかけた”。彼女の腰を掴み、ゆっくりと下の方向へと引っ張っていく。


「あ゛……ガ……ッ!? コヒュッ……ッ……!?」


 達磨の状態では決して自重で死ぬことの出来なかったアリシアの首が急激に絞まっていく。気道と血管が圧迫され、脳に必要なモノが届かなくなる。


(あ……、あたし……死ぬ……)


 それは、アリシアにとって救いであった。待ち望んだ瞬間でもあった。しかし――


「――――ッ……!!!! がはっ……! げほっ……ごほっ……!」


 せっかく購入した達磨女に対してそんな安穏とした死を青年が許すはずもなく、アリシアが意識を手放す直前に彼は手を離した。


 アリシアの喉にわずかながら呼吸が戻る。そのか細い生命線は、アリシアに生への執着を思い出させるに十分だった。死にたくても、生きたくなくても、勝手に身体が呼吸してしまう。


「ハッ……ハッ……あ、ぁあぁ……! あぁああぁぁぁ……ッ!」


 目の前まで訪れた死の恐怖を前にして泣きじゃくってしまうアリシア。そんなアリシアに向かって、再び鞭が飛ぶのだ。


 そうして肉体的な苦痛を与えていれば、数日でアリシアは大人しくなる。反抗的な視線は変わらないものの、エルフの誇りや人間に対する軽蔑などは示さなくなった。


 それを見届けて、青年は次の調教へと移る。


 アリシアを運び、便所へと連れて行ったのだ。彼女たちは魔法によって飲食も排泄も必要としない。それはつまり、青年がアリシアを便器として使うことを意味していた。


「ふ、ふざけるな……! あたしは、そんなこと……ッ!」


 目の前に差し出された肉棒から漏れ出てくる小便を飲めと言われたとき、当然ながらアリシアは拒否した。吊り下げから解放されたのをいいことに、芋虫同然の身体で這って逃げようとしたくらいだ。


 当然、青年に捕まる。そしてその後は、アリシア自身の置かれた立場をわからせるための調教が、再び“吊るし”の状態から始まる。


 短くなった足先に重りをくくりつけ、じっくりと重量を増していく。ただ身体だけで吊られているのとも、青年によって引きずり下ろされそうになっているのとも異なる、決して死ねないが許容量を越えた絞首。


「ッ……!? ッ、ガ……は……ッ! ァ……ッ!」


 アリシアは声も出せず、ただ自分の首が伸びていくのを感じることしか出来なかった。




 そうして姉が苛まれている最中にも、シンシアは青年と仲睦まじい情事を行っていた。最近では正常位だけではなく、後背位、さらにはシンシアを青年が持った状態での騎乗位まで。様々な体位で性交を楽しんでいる。


 シンシアも、性交の快楽というものがわかり始めていた。青年に愛撫され、肉棒に奉仕し、子宮に精液を受け止める。その一連の行為に、言いようのない悦びを感じていた。


「――買われて幸せかい?」


 夜の交わりの後、シンシアを傍らに寝かせながら青年は訊ねる。


「は、はい……♡ 私、ご主人様に買われてとっても幸せです……♡ ご主人様に買われて、本当に良かったと思います♡」


 それは、偽りのないシンシアの言葉だった。


 だが青年は微笑んだまま、次の言葉を繋ぐ。


「本当に?」


 そうして青年に見つめられて、シンシアは言いようのない恐ろしさを感じた。自分でも知らない自分の本心を、彼に見透かされているように感じたのだ。


 本当のことなんてシンシアにはわからない。けれど、彼が全部見透かしているのであれば、嘘はつけない。シンシアは自分の中で、必死に彼に求められている答えを探した。


 本来、五体満足で対等な立場であれば決して行うはずのない自問自答。シンシアが、自らの青年の所有物であり、彼の機嫌を一寸でも損ねてはならないと自分自身に暗示している証拠だった。


「――ほ、本当は……」


 しばらくの沈黙の後、シンシアは遠慮がちに口を開く。


「本当は……ご主人様のことがまだ、よくわからなくて……怖いです……。こんなに優しいのに……どうして、手足の無い奴隷を買うのか、とか……。姉さんに、どうして酷いことを、するのか……とか……。ど、どうして……どうしてあの時……母さんを買って、くれなかったのか……とか……」


 シンシアは語り終わった後、不安そうに青年を見上げる。しかし青年は怒るでもなく、ただ満足したよう微笑むだけ。


「あっ……ご、ごめんなさい……。し、幸せです……。と、とっても……幸せです……」


 シンシアは自分の発言を取り消すように首を振りながら笑顔を見せる。青年は、それ以上は何も言わなかった。


 シンシアは、青年の機嫌を損ねたのではないかと思うと恐ろしく、何度眠ろうとしても眠ることが出来なかったのだった。


 吊し調教の効果が出たのか、しばらくすればアリシアは従順な便器になっていた。


 便所に連れて行けば自分から口を開く。それどころか、便所以外の場所でもこぼさずに小便を受け止めきれるほどに成長していた。


「は、はい……。あたし、アリシアは……ご主人様の達磨小便器です……。どうぞ、エルフの口めがけて……気持ちよくお小便をなさってください……」


 その言葉を合図にアリシアは口を開ける。じょろろろろろろろろろ、という遠慮のない放尿音と共に、彼女の口へ黄色い放物線が吸い込まれていくのだ。


「ごぶっ……!? がぼっ……んくっ……んっく……んっく……んっく……」


 むせかえりながらも、アリシアは青年の尿を飲み尽くす。最近では小便器だけではなく、アナル舐め奴隷としても役立つようになってきた。床に仰向けで寝かされたアリシアの上に青年が腰を下ろすと、その舌と唇で愛情たっぷりに青年の尻穴を舐めしゃぶるのだ。


 しかし、そういった役目が終われば、アリシアは再び吊されたまま。毎日愛でられている妹との扱いの差は、全く変わらないままだった。




 ■ ■ ■ ■ ■


「お、お願い……し、します……っ!」


 ある日の夜。その懇願は、シンシアではなくアリシアから発せられた。


「あ、あたし……も……、や、優しいのが、いいです……っ! 苦しいのとか、便器扱いとか……い、イヤです……っ!」


 つい今朝まで気丈に振る舞っていたアリシアと同一人物とは思えない、気弱で涙混じりの声。


「お、オナホでいいです……。ご主人様のおチンポシゴくためだけの穴にされていいから……だから、お願いします……や、優しく、してください……ぃ……」


 簡単に言えば、アリシアは折れてしまったのだ。


 エルフの長い寿命、それこそ目の前の青年が死んでからもずっと、自分が意地を張ってどうなるのだと。そもそもこんな身体になってまで“エルフの誇り”なんてうそぶいて、いったいどうなるのかと気がついてしまった。


 それであれば、このまま妹と二人で彼に愛でられていたい。彼が死んだ後自分たちがどうなるかなど考えることも出来ない、消極的な現実逃避。


 アリシアは長い調教を経て、ついにそれを受け入れたのである。




 アリシアが吊し台から下ろされ、ベッドへ寝かされる。先ほどまでの荒々しい手つきとは違う青年の優しい手のひら。アリシアの金色の髪を撫で、首の傷を労る仕草に、彼女は感じたことのない安堵を覚えた。


「あ、あたし……初めてだから、やさ、しく……してください……」


 従順なアリシアに対して、青年はどこまでも優しかった。彼女の身体を拭き、そしてじっくりと愛撫していく。先ほどシンシアを抱いたにも関わらず肉棒を屹立させ、アリシアへと狙いを定める。


 丁寧に秘所を指でほぐし、無い手足をバタバタと動かして快感の逃がし方がわからないアリシアを慰める。そうしてゆっくりと青年は肉棒をアリシアの秘所へと挿入していくのだ。


 そうやって姉が“女”になっていく様子を、シンシアは隣でまじまじと眺めていた。以前まで恐怖と苦痛で怯えながらも反抗的だった姉の表情が、嘘のようにほぐれていく。その様子は、シンシアから見てもとても幸福に見えた。


(ああ、これでいいんだ……)


 そう。何も気に病む必要は無かった。こんな身体になっても、こうして愛でてくれるご主人様に出会えたことが幸福なのである。その幸福をかみしめながら、自分たちは達磨エルフらしく身体でご主人様を満足させていけばいい。


 シンシアの頭にはそれしかなかった。今まで感じていた恐怖も不安も、全てが消えていく。


 だって彼女たちには――手足のない、自分たちで生きることが出来ない彼女たちには、そんな選択肢しかないのだから。


 自分たちの判断が、諦観と妥協から生じる逃避であることに気がつかないまま、アリシアとシンシアは達磨オナホとしての余生を受け入れた。


 青年に抱かれる彼女たちは、とても幸せそうだったという。



~~~~~~~~~~~~

【あとがき】

 最後までお読みくださりありがとうございました。

 スケブで依頼を頂いた作品なのですが、公開案件でしたのでせっかくならとファンボで全体公開にした次第です。達磨のお話はいくらでも書きたいので、よければ下のリンクからスケブの受付再開通知をオンにしてお待ちください。夏ごろには再開したい……出来る、かな……?

 https://skeb.jp/@ky0u_suke_re


 本来こんなことを書くガラではありませんが、「達磨女首吊り」って僕にとってとても大きな性癖なので、少しだけ自分語りさせてください。


 元々僕が達磨性癖に目覚めたのは、とある雑誌の都市伝説特集みたいなコーナーで、現代都市伝説のひとつである「達磨女」を見た時でした。寝入った夜にもその手足のない女性の姿を思い出してうなされる程のトラウマでしたが、いつしかそれが反転し、達磨女に欲情するようになっていました。

 次にその性癖が加速したのは、「未踏文化開発推進機構」さんという個人サイトで掲載されていた、達磨の女の子が機械的な器具で吊るされているイラストを見た時でした。苦しんでいるわけでもなく、手足の切断面はレースのカバーで覆われていて……とかく、綺麗でエロスにあふれた達磨イラストでした。ここから、“綺麗なリョナ好き”という僕のよくわからない性癖が発言するとともに、「達磨女首吊り」というジャンルに強烈に惹かれるようになりました。

 その後、朝凪先生やaccio先生といったリョナにおける著名な皆様からお出しされる達磨、あるいは達磨女首吊りを摂取して毎日楽しく生きていたわけです。異能者少女欠損合同、本当に傑作なので皆さん買いましょう♡

 そして今回機会を頂けて、こうした作品を書くことが出来ました。ご依頼者の方はこれまた僕の性癖にガッチリ噛みあう達磨を描かれる先生なので(“達磨女首吊り飲尿させ”作品があった時はひっくり返りました)、緊張と嬉しさの中でこの作品を書きました。改めてお礼申し上げます。

 この作品が、ご依頼者さんだけに限らず、読んでくださった皆様の性癖に消えない傷を残せますと幸いです。


 また最後になりますが、この作品はご依頼者さんの素敵なアイデアを基にしつつ、前述した多種多様なリョナラーの皆様が築いてきた物の要素を詰め込んだ物になります。隠れ切れていない部分もあるかもしれませんが、もしよろしければ御一読下さいますと幸いです。

 厚くお礼申し上げますと共に、これからも沢山の達磨女首吊り作品が生まれることを願っております。


 二次創作ですが、ちょっとだけ達磨女首吊りの出てくる作品がございます……探していただければ、拙作を元にして描いていただいたイラストも見つかるかと存じます……。

 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19824249


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