SakeTami
ぬか@nukka('ω')
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「けんぺいさんのおしごと その21」

⇐「けんぺいさんのおしごと その20」https://nuka.fanbox.cc/posts/3070816


出港から二日後。

私達を乗せた提督の旗艦は、マリアナ諸島に近づきつつあった。

幸いなことに、ここまで敵艦隊との会敵は無い。

我ら艦娘の、敵海域への出撃もいよいよ間近だ。旗艦の甲板上では、艦娘達が艤装の準備を整えていた。

普段なら、これから臨む戦に向けて、意識を集中させつつ艤装の点検を行うのだが、どうも落ち着かない。

その原因は、調査のために加入した艦娘の地下組織「コミュニティ」だ。

先日のコミュニティの会議では、議長から「出撃する艦娘には、後日個別に任務を与える」と言っていた。

だが、出撃までそう時間も無いというのに、議長からは何も指示は無い。

無いなら無いで、いつも通り戦に集中すればいいだけなのだが、どうも何かがひっかかる。


「磯風。今日は珍しく、落ち着きが無いですね。」

浜風。姉妹艦であり、幾度となく共に死線を潜り抜けてきた戦友でもある彼女が、主砲の角度を調整しながら、さり気なく図星を突いてきた。

確かに気がかりな事があるとはいえ、なるべく表に出さないよう努めてきたはずだが、浜風は見抜いてきた。流石だ。

「いや、特に普通だが。何故そう思う?」

変わらず平静を装いつつ、浜風に問いを返す。

「だって・・・貴女がさっきからずっと磨いてるそれ・・・魚雷じゃなくて、大根」

「ん?」

手元を見てみると、右手にはワックスを付けた布、左手には大根。

大根だ。

「・・・いや、これはだな。今日の昼食には、この磯風特製・大根オムライスを皆に振る舞ってやろうと思ってな・・・」

「色んな意味で食べたくないですね、それ。ワックスでピカピカになってるし・・・」



それから数時間後。

旗艦はいよいよ敵海域付近に達し、所定の場所にて錨を降ろした。

本来青い海原は、南を望むと次第に血のような赤色になっていく。彼奴ら──深海棲艦の縄張りである証だ。

人が船で近づくことができるのは、ここまで。

これより先は、艦娘の出番。いよいよ出撃だ。


先程は、落ち着きがない事を浜風に見抜かれそうになったが、何とか誤魔化すことに成功した。危ないところだった。

しかし、このままでは戦いに影響が出かねん。

「コミュニティ」のことは、今回は忘れよう。

──そう思った矢先の事だった。

無線チャンネル56から、突如この磯風を呼び出す音が聞こえた。

「──駆逐艦・磯風。君に、任務を付与する。」

先日の会議の際に聞いた、変声機越しの低い声──議長の声だ。

出撃直前だというのに、何が任務か。

頭を切り替えようと思ったタイミングでの連絡に、私は少々怒りを覚えた。

とりあえず、応答して議長の続きを待つ。

どんな任務だか知らんが、適当に従ったフリをしてやる。

さあ、その御大層な任務とやらは、何だ?


「君は、この戦いで轟沈せよ。──仲間を、提督を助けたければな。」




              つづく('ω')



~登場人物~

・('ω')

艦娘を率いる提督。海軍中将。第3艦隊司令官 兼 呉鎮守府司令官。

今回の「マリアナ諸島奪還作戦」では、連合艦隊の司令を務める。

・憲兵

提督を調査するよう命ぜられた憲兵。独自で軍内部の闇を追う。

・磯風

艦隊の最古参にして歴戦の戦士。

憲兵と結託して、提督を葬ろうとする軍内部の闇を追う。


「けんぺいさんのおしごと その21」

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