⇐「けんぺいさんのおしごと その19」https://nuka.fanbox.cc/posts/2933398
金曜日の早朝。
憲兵は、出撃する各艦隊の出発式に参列していた。
軍のお偉い方の「ありがたいお話」を聞き流し、('ω')提督のほうに目を遣る。
提督は、正面を見ながら真面目に話を聞いているようだ。
──いや、あれは目を開けながら寝ているな。涎が口元から垂れている。
なるほど、いつも表情が変わらないあの提督の成せる業だ。
隣に座っている秋月が、ハンカチで提督の口元を拭う。
それでも起きない提督が「ぐごご」といびきをかき始めると、秋月の反対隣に座っている磯風が提督の太ももをつねる。
その様は、まるで海軍中将とは思えない、介護を受けている老人のそれであった。
今回出撃するのは、連合艦隊司令である('ω')提督以下三個艦隊。
副司令として、二人の提督も同行する。
この提督二人は、若くして帝国海軍の中将となった、新進気鋭のエリートだ。
しかし、自分らより後に海軍に入り、あっという間に同階級に並ばれた上、今回は連合艦隊の司令として自分達を指揮する立場になったと来れば、良い気はしないのは確かだろう。
事実、二人の顔からは明らかに不満が滲み出ていた。
式典を終え、出撃する3人の提督と、旗下の艦娘達。
彼らは各々の旗艦に乗り込み、マリアナ諸島へ向けて出港した。
船を見送る水兵達と、いそいそと帰り支度をする軍の幹部ら。
そんなに早く帰っても、どうせデスクで新聞を読むくらいしか仕事が無いだろうに。
・・・とは言うものの、私もそろそろ失礼しなければならない。
この後すぐに「仕事」に移らなければならないからだ。
私は式典会場を後にしつつ、無線機を取り出し「仕事」を始めた。
つづく('ω')
~登場人物~
・('ω')
艦娘を率いる提督。海軍中将。第3艦隊司令官 兼 呉鎮守府司令官。
・憲兵
提督を調査するよう命ぜられた憲兵。独自で軍内部の闇を追う。
・磯風
艦隊の最古参にして歴戦の戦士。
憲兵と結託して、提督を葬ろうとする軍内部の闇を追う。
・秋月
艦隊の最古参だが、まだまだ艦娘として経験は浅いルーキー。