⇐「けんぺいさんのおしごと その18」https://nuka.fanbox.cc/posts/2782691
マルマルマルマル。
私は一人、工廠の一角で無線を開いていた。
チャンネルを56に合わせ、時を待つ。
すると、由良の言った通り、普段使われていないはずのこのチャンネルに、時刻合わせの自動音声が流れ始めた。
「御機嫌よう、諸君。本日の定例会を始める。」
程無くして、誰かの声が聞こえてくる。
変声器越しの、低く不気味な声だ。
「さて、本日は良いニュースからだ。また一人、志を持つ艦娘が我々の同志に加わった。」
私のことだろう。しかし、艦名までは公表されない。
それはこの”コミュニティ”のルールがあるからだ。
──由良から教えられた、”コミュニティ”のルールは3つ。
一つ目は、メンバーは匿名で活動すること。
誰が”コミュニティ”メンバーであるかは、他のメンバーにはわからないようになっている。
二つ目は、会議の内容を決して外部に漏らさないこと。
もし情報漏洩があった場合は、厳しい”ペナルティ”があるとのこと。
そして三つ目は、この変声器の声の主である「議長」の命令は絶対であること。
議長から直々に、個々のコミュニティメンバーに命令が下ることがあるらしい。
・・・下らんな。
私の任務は、この”コミュニティ”が、提督を狙う組織と関係があるのか、またはその組織に関して何か情報を持っているのか、という事を探ることだ。
こんな宗教じみた組織に殉じるつもりはない。──
「そして、もう一つ連絡事項がある。」
議長は機械的な声で、淡々と続ける。
「現在、軍令部において次の大規模作戦が立案されている。
深海棲艦に奪われて久しいマリアナ諸島の奪還に向け、新たに連合艦隊が編成され、出撃となる予定だ。」
・・・何故そのような軍の最高幹部にしか知り得ない情報を知っている?
この議長という人物は、軍部における相当な階級にある者なのだろうか。
「この作戦に参加することになる艦娘には、後で個々に任務を付与する。
連絡事項は以上だ。他に何か意見等ある者は?」
無線機からは、様々な声で「意見なし」という声が聞こえる。
「それでは、本日の定時連絡は以上とする。」
3日程経った頃だろうか。
艦隊の艦娘達の間で、噂が立ち始めた。
どうやら、近々この艦隊に出撃命令がかかるらしい。それも、かなり大規模な作戦で。
噂を耳にして、私はすぐに議長の言っていたマリアナ諸島進攻作戦のことを思い出した。
それから程無くして、月曜日の朝会。
提督から正式に出撃命令が下った。
「え~、次もまた遠方への遠足になります。
場所はマリアナ諸島、出発は4日後の金曜日マルロクマルマル、お菓子は500円までですが、バナナはおやつに入りません。以上」
こうして、艦隊はマリアナ諸島へ出撃することとなった。
つづく('ω')
~登場人物~
・('ω')
艦娘を率いる提督。海軍中将。第3艦隊司令官 兼 呉鎮守府司令官。
・憲兵
提督を調査するよう命ぜられた憲兵。独自で軍内部の闇を追う。
・磯風
艦隊の最古参にして歴戦の戦士。
憲兵と結託して、提督を葬ろうとする軍内部の闇を追う。
・由良
艦隊に新たに配属された軽巡洋艦。艦娘の地下組織”コミュニティ”のメンバー。