──憲兵殿との”契約”を終えた私は、早速、由良に直接探りを入れてみる。
まどろっこしい事は嫌いだし、苦手な性分故だ。
「ちょっと良いか」
由良達新入りと共に、施設の説明に出掛けようとしていた秋月を呼び止める。
「由良だけ、私に案内させてくれないか。」
秋月はきょとんとした顔を見せたが、すぐに笑顔で承諾してくれた。
「はい、わかりました。じゃあ由良さんは、磯風さんにお願いしますね。」
普通、こんな突拍子も無い申し出をすれば「何故」と理由を聞くのが常だろう。
しかし秋月は、二つ返事で了承してくれた。
この素直さが彼女の長所でもあり、他人に騙されやすいという短所でもあるのだが。
「すまんな、訳は後で話そう。・・・では由良殿、こちらへ」
由良を連れだし、人の気の無い廊下を歩く。
私も由良も、沈黙を保ったまま、広い廊下に木霊する靴音だけが響いた。
「──この艦隊は」
最初に沈黙を破ったのは、由良だった。
「この艦隊は、みなさんとても楽しそうにされてますね。」
私は足を止め、振り返る。
「前の所属は、楽しくなかったのか?」
由良は笑顔で答えた。
「いえ、楽しかったですよ。」
由良は窓枠に肘を置き、外を眺める。
外は、再び厚い雨雲に覆われていた。今にも降り出しそうだ。
「指揮官は、高齢のおばあちゃんでした。艦娘のみんなにも優しく接してくれたし、辺境の地方警備隊だったので、戦闘もほとんどなく、平穏な日々でした」
──やたらよく喋る奴だな。こちらは何も質問していないが。
「・・・では、前の所属に戻りたくなるかもな。ここの司令は、変人だし、訓練は相当厳しいぞ。」
自分でも分かるほど、やや厳しい言葉をかけた。だがこれは意図してのことだ。
由良の秘密を暴くため、こういった問答は必要なのだ。
「・・・いえ、大丈夫です。前の所属には、もう戻れませんから。」
こちらに向き直った由良の顔は、今にも泣きだしそうだった。
「おばあちゃん、殺されちゃったんです。多分、軍内部の人に。」
つづく ('ω')