提督が示した写真は、憲兵隊教育学校の集合写真だった。
憲兵に任命されると、まずこの学校で数か月間の教育を受ける。
この写真は、その卒業写真だろうか?
1クラス、30人ほどの学生が写っているが、皆、制服に飾緒が付けられているところを見るに、卒業式のようだ。
私は、その学生らの中に、由良の姿を見つけた。
「おい、これは──」
私は、写真の彼女を指し示しながら、続ける。
「スパイは憲兵にもいた、ということか?」
提督は頷き、答える。
「いた、というより、現在も相当数いる、と見ていいよ。
由良は憲兵隊の中でも、ずいぶんと同志を増やしたらしい。」
由良め。よりによって、軍の中でも最も厳正でなければならない我が憲兵隊に、スパイの根を張っていたとは。
「──由良は今、どこにいる?」
今すぐ、彼女の身柄を確保して、尋問する必要がある。
「そういや、先日、辞令が出てたね。
おーい、朝潮ちゃん。私の机から、異動者一覧表を持ってきてくれるかな?」
「!! はい!」
少し離れたところで、起立して待機していた朝潮は、飼い主に呼ばれた犬のように反応し、小走りで資料を持ってくる。
その表情は、さながら獲物をご主人様に届ける犬のそれだ。
提督は、朝潮が持ってきた分厚い資料をぱらぱらとめくり、目を通す。
「由良、由良・・・あった、あった。」
「前任は、大湊の補給隊か。で、次の任地は・・・」
提督が黙り、こちらを見上げる。
「どこなんだ」
「ウチだわ」
つづく('ω')